やじうまミニレビュー

厚さ29mmもあるスマホってどんなもの?プロジェクタに20,000mAhバッテリ搭載の「XPLORE 2 Projector」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
XPLORE 2 Projector

 このところ攻めた仕様のユニークなスマートフォンやタブレットを生み出しているBlackview。そのBlackviewがまたもや“機能を積めるだけ積んでみました”的なスマートフォン、「XPLORE 2 Projector」を発売した。

 XPLORE 2 Projectorはその名前から想像できる通り、プロジェクタ機能を内蔵したスマートフォンである。先々月、同社の「Active 12 Pro 5G」というプロジェクタを内蔵したタブレットを紹介したばかりだが、今度はスマートフォンでも搭載してきた、というわけである。

 今回サンプル提供があったため、簡単にレビューをしていく。ただ、本機は技適を取得していてその番号の表記もあるものの、Active 12 Proとは異なり、国内で5GHz帯のWi-Fiを利用するために必要なものはクリアしていなかった。残念ながら取得予定もないとのことで、今回は中国・深センへの出張中に試している。

 ちなみに直販価格だが、メモリ12GB+ストレージ256GBモデルは8万9,800円、メモリ16GB+ストレージ1TBモデルは10万1,900円となっている。価格だけで選べと言われたら、後者を差し置いて選択肢はないと思うのだが……ただ、スペックの割に控えめな価格だからか、記事執筆時点では売り切れとなっていた。

【10月9日追記】9日時点で12GB+256GBモデルは9万3,400円、16GB+1TBモデルは10万5,800円となり予約注文となりました。チェックアウト時に、11月30日まで使えるクーポン「3Q3M7C5CXBX7」を適用するとそれぞれ8万7,522円、10万324円となります。

これでもか!とばかりにスペックを盛り込む

 XPOLORE 2 Projectorも、以前紹介したActive 12 Pro 5Gと同様、参ったか!と言わんばかりのスペックを詰め込んだ製品である。プロセッサの部分はActive 12 Pro 5Gをも上回り、スマートフォンとしては驚異的だと言わざるを得ない。ざっくりそのスペックからご紹介しよう。

【表】XPLORE 2 Projectorの主な仕様
プロセッサMediaTek Dimensity 8300
メモリ12GBまたは16GB LPDDR5
ストレージ256GBまたは1TB UFS 4.0
ディスプレイ3,200×1,440ドット/120Hz表示対応6.73型AMOLED/Corning Gorilla Glass 5
OSAndroid 15ベースのDokeOS 4.2
カメラ5,000万画素メイン+2,000万画素ナイトビジョン+5,000万画素前面
無線Wi-Fi 6/Bluetooth 5.4
対応バンド2G: 2/3/5/8
3G: 1/2/4/5/6/8/19/BC0
4G: 1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/
20/25/26/28A/28B/30/34/38/39/40/41/66
5G: n1/3/5/7/8/20/28/38/40/41/77/78/79
スロットNano SIM×2、うち1基はmicroSDカード兼用
そのほかNFC、IP68/IP69K防水防塵/MIL-STD-810H
バッテリ20,000mAh、120W HyperFast充電
本体サイズ186×87.8×29mm
重量710g

 プロセッサは~……と言いたいところなのだが、まずは本体サイズと重量から述べたい。本体サイズは186×87.8×29mm、重量は710gとなっている。そう、記載の間違いではない。厚みが29mmで重量は710gだ。下手したらUMPCよりも重く、ゲーミングノート並みに(もしくは以上に)厚いのである。20,000mAhバッテリとプロジェクタ内蔵、そして防水防塵耐衝撃のタフネス性による代償は大きいと言ってよく、この一点のみで人を選ぶスマホであることは間違いない(ただ、筆者はその価値は十分にあると思っている)。

Blackview XPRORE 2 Projector。ディスプレイは3,200×1,440ドット/120Hz表示対応のAMOLEDで美しい
本体左側面。SIMカードスロットは爪で即座に引き出せる。また、プロジェクタのピント調節用ノブも見える。本体と同系統の色のボタンは音量で、オレンジのボタンは機能をカスタマイズ可能だ
本体右側面には電源ボタンとプロジェクタ用の吸気口
本体底面にはUSB Type-Cの口(カバー付き)と、ストラップホールが見える
本体上部には排熱口、赤外線ブラスター、そしてプロジェクタのレンズが見える
まあ、まずはこの710gのスマートフォンを持ち歩くかどうか、だろう

 プロセッサはDimensity 8300だ。以前紹介したActive 12 Pro 5GはDimensity 7300だったため、これを上回る性能のもの、ということになる。メモリは12GBまたは16GB、ストレージは256GBまたは1TBということで、このあたりは20万円超えのフラグシップに比肩するモンスターとも言うべき仕様だ。

 さすがに最新のSnapdragon 8 Eliteなどと比較すると性能的には見劣るが、3世代前のハイエンドに比肩し、現代でも一線級として使えるものだ。ベンチマークでも高いスコアを示しているほか、実際の使用においてストレスに感じることはなく、「崩壊スターレイル」「鳴潮」「ゼンレスゾーンゼロ」といった3Dゲームも、高画質で十分プレイ可能であった。

Antutu Benchmark V11ではなんと160万点超え……Snapdragon 8 Gen 3に迫る性能である
PCMarkの結果
3DMarkの結果
Geekbench 6のCPUスコア
Geekbench 6のGPUスコア(OpenCL)
Geekbench 6のGPUスコア(Vulkan)

 ただ、筐体は大きく一見放熱に有利だと思われたが、プロジェクタや大容量バッテリも内蔵している関係で、実はそれほど得意ではないようだ。ゼンレスゾーンゼロを30分程度プレイしてみたところ、バッテリ温度が45℃まで上昇したという警告が出て、戦闘中のフレームレートも目視では20~30fps台に落ちた。もっとも、本製品はゲーム向けではないし、これでゲームをプレイしようと思うユーザーも少ないと思うので問題はない。

 ディスプレイは3,200×1,440ドット表示対応の6.73型AMOLEDとなっている。液晶ではないためコントラスト比は非常に高く、黒は引き締まって表示される。また、ドット密度が高くリフレッシュレートも120Hzとなっているため、緻密でスムーズな映像表示が印象的だった。

 カメラは背面のメインが5,000万画素で、センサーはSamsungのJN1となっている。また、暗い環境でも撮影できるナイトビジョンカメラも搭載するのがユニーク。前面は5,000万画素だ。カメラの画質は「並」といった印象で、取り立てて語ることはない。

残念ながら深セン最終日は台風18号上陸直前で天気に恵まれなかったが、曇の日らしいあっさりとした絵が撮れた
こんな都会でも野良猫は普通にいたりする
室内でやや光量が少ないところでの作例
食べ物の写真は……至って並みだ

プロジェクタと超巨大なバッテリ

 注目のプロジェクタ機能だが、これはActive 12 Proと同様、アプリ「プロジェクター」を介して有効にする。ただActive 12 Proと大きく異なるのは、オートフォーカス非対応でソフトウェア上から手動で調整ができず、本体左側面のダイヤルで手動調整する必要がある点と、縦画面の場合は投影方向が反時計回りに90度回転している点だ(これは画面とセンサーの関係で致し方ない)。輝度は100lmとやや暗いが、最大100型相当に投影できるのはやはりすごい。Active 12 Proと比較して本製品のほうが機動性が高いので、利用用途や機会も増えそうだ。

 プロジェクタの投影はそれなりの熱が伴うのだが、本製品はファン内蔵で冷却する。投影中は小型ファンが勢い良く回転し、それなりの音を発したが、幸い風切り音がメインですごく不快というわけではない。また内蔵スピーカーが強力のため、コンテンツの音が聞こえなくなるということはない。

 実際今回は出張中にホテルのベッドに寝っ転がって、天井に動画を投影して鑑賞したが、快適そのものだった。ホテルには大きなTVが備え付けられていて、Miracastによって投影することもできたのだが、上半身を起こさなければならない姿勢と、完全に寝た姿勢とではやはり後者のほうが楽だ。

天井に投影しているところ
こちらは壁面に投影しているところ

 もっとも、今回の出張で筆者が一番恩恵に預かったのはこのプロジェクタ機能ではなく、20,000mAhのバッテリだった。深セン到着初日に午後2時に飛行機を降りてから、満充電の状態で中国聯通のSIM(香港回線のローミング)を挿入し、それからテザリングをオンにてし、ほかのスマートフォンやPCを接続して使い始めた。そして夕食時にちょろっと持ち出して20分程度使い、テザリングをオンのまま一晩過ごしたが、翌朝7時にチェックしたところバッテリはたったの4%しか減っていなかった(つまり残り96%)。

 2日目の取材で連れ回し、SNSのチェックやWebサイトの巡回、そして就寝前の20分程度のプロジェクタ動画視聴やゲーム(ゼンレスゾーンゼロ)を45分程度プレイしたが、それでもまだ80%残っていた。3日目は午前に散歩がてらに写真を撮影し、チャットやWebサイトの閲覧など、ほぼずっと使い続けたが、結局午後4時の飛行機搭乗時点でまだ64%もバッテリが残っていた。

 つまり、使い方にもよるが2泊3日程度の出張であれば、本機用のモバイルバッテリやACアダプタを持ち歩く必要はない(かもしれない)ということである。本体は確かに710gと重いのだが、周辺アクセサリの重さとは完全に相殺可能だ。

プロジェクタ付きデバイスの未来

 XPRORE 2 Projectは高性能なプロセッサ、大容量メモリとストレージ、タフな筐体、そしてプロジェクタ内蔵機能など、考えられる機能を全部詰め込んでみました的な、夢のスマートフォンだ。一部バンドの技適未取得が残念でならず、現時点では至高の出張用スマホだが、次期モデルでは満を持して日本でも正式投入してほしい。

 筆者は常々プロジェクタがもっと普及してくれたらなぁと思っている。家の天井の照明がすべてプロジェクタ付きだったら……と思うレベルだ。ただ、現時点での小型モデルは照度不足が課題のようだ。何か技術的なブレイクスルーがもたらされれば、もっと身近になるかもしれない。XPRORE 2 Projectorはそんな未来を垣間見させてくれるスマートフォンだ。