やじうまミニレビュー

全ユーザー必携、USB Type-Cケーブルやポートの仕様が一目瞭然になる「USB Cable Checker3」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
「USBCableChecker3」。同社サイト上では略称の「UCC3」が用いられていることも

 ビット・トレード・ワンから、差し込むだけでUSBケーブルの仕様をチェックできる「USB Cable Checker3(UCC3)」が登場した。名前からも分かるように、2019年に発売されたロングセラーとなった従来モデル「USBCableChecker2」の後継だが、ケーブルに加えてポートもチェックできる機能が追加され、別物と言っていい製品へと進化している。

 9月19日からすでに販売が始まっている本製品だが、今回は一般販売に先駆けてKickstarterで行なわれていた先行支援の品を2カ月ほど試用した感想を、従来モデルとの違いを中心に紹介する。

見た目も中身も従来モデルとはまるで別物

パッケージ。店頭売りを意識したデザイン

 まずは外見から。本体は樹脂製の黒いボックス状で、手のひらにすっぽり収まるサイズ。従来モデルは基板を透明なアクリル板でサンドイッチしただけの簡素な作りだったので、まるで別の製品のようだ。側面にUSBポートを備えることから、見た目は小型のUSBハブに見えなくもない。

製品本体。従来は基板をアクリルパネルで挟んだだけの構造だったが、今回は樹脂製ボディに収められている。サイズは約70×40×22mm

 もっとも使い方は従来モデルとほぼ共通で、側面のUSBポートにケーブルを挿したあと電源を入れることで、上面の液晶にさまざまな測定結果が表示される。取得した情報が1画面で収まらない場合は、本体右側面にあるスイッチを押すことで2画面目以降を表示できるのは、従来との違いの1つだ。ちなみに従来モデルの電池はCR2032だったが、本製品では単四形乾電池へと変更され、入手性が向上している。

 対応するUSBポートの形状は、片方が「C」「A」のどちらか、もう片方が「C」「microB」のどちらかという組み合わせなので、実際のケーブルで言うと「C-C」「A-C」「A-microB」の3種類に対応することになる。Lightningは非対応なほか、従来モデルにあったminiBは省かれている。

ポート類があるのは手前側の側面のみ。向かって左にUSB Type-CとStandard-A、向かって右にはUSB Type-CとmicroBを搭載する
背面には電源ボタンを備える。2秒押すことで電源がオンになる
右側面のボタンは、情報が複数画面に渡る場合の画面切り替えなどに用いる
単四形乾電池×2で駆動する。電池の入手性が向上したのはありがたい
従来モデル「USBCableChecker2」(右)との比較。まるで別物のようだ
厚みもかなり異なるが、これは単四形乾電池を内蔵することが大きく影響している

「ケーブルチェックモード」は何ができる?

 実際の使い方を見ていこう。本製品はケーブルチェックモードのほか、後述するポートチェックモードの2つの機能を備えており、電源を入れるとこの2つの機能のどちらかを選択する画面が表示される。

 通常はデフォルトの「AUTO(自動判別)」にしておけばよいのだが、AUTOではポートチェックモードにおける一部仕様の検出が行なえないとのことで、必要に応じて手動で切り替えてやる必要がある。

 まずはケーブルチェックモードから。左右の両ポートにUSBケーブルをつないだ状態で電源を入れると、画面上に取得した情報が表示される。従来モデル「USBCableChecker2」は小型液晶に加え、LEDの点灯でステータスを判別する仕組みだったが、本製品ではすべての情報が液晶画面に表示されるようになったほか、E Markerの内容を読み取れるようになったのが大きな進化だ。以下、具体的な用途ごとに、どこを見ればよいのかを紹介する。

両端にケーブルをつないで電源を入れると測定結果が表示される

充電/データ転送/映像出力など対応可能な用途を調べる

 ケーブルチェックモードでもっとも参照頻度が高いのは、最上段のWire Connection(結線状態)だろう。結線状態を見れば、どのような用途に対応し得るケーブルなのかを判別できる。といっても細かく覚える必要はまったくなく、大雑把なポイントを抑えておけばよい。以下に具体例を記す。

 まず「VBUS」「GND」が点灯していれば、少なくとも充電には使えることが分かる。さらにこの2つに加えて「D+」「D-」が点灯していれば、充電に加えてデータ転送にも対応していることになる。片端がA端子のケーブルは、この4つのアイコンで仕様を判別できる。

 両端USB Type-Cケーブルの場合、もう少し点灯パターンは細かくなる。たとえば「TX1」「RX1」「TX2」「RX2」はDisplayPort Alt Modeで映像信号を出力するのに必要な結線で、これらが点灯していなければ、DisplayPort Alt Modeによるディスプレイ出力には使えないと考えてよい。

 Thunderboltケーブルはフル結線なので、この映像信号伝送用の結線も合わせて、10個のアイコンすべてが点灯することになる。ただしアクティブケーブルなど一部の例外があるので注意したい。詳しくは後述する。

Thunderbolt 5ケーブルを接続したところ。「Wire Connection」の10個のアイコンすべてが点灯しているほか、Cable Typeも「Type-C Full Coupled」とあり、全結線であることが分かる
これはAppleの240Wケーブルを接続したところ。こちらは「TX1」「RX1」「TX2」「RX2」が非表示になっており、映像出力に対応できないことが分かる
充電専用ケーブルを接続した例。点灯しているのが「VBUS」「GND」のみで、データ転送には対応できない。Cable Typeにも「Power Only」と表示されている
こちらのケーブルは「VBUS」「GND」に加えて「D+」「D-」が点灯していることから、データ転送にも対応することが分かる
従来モデル「USBCableChecker2」では結線の有無はLEDの点灯状態で判別しなくてはならなかったので、格段に分かりやすくなった

ケーブルの品質をチェックする

 「VBUS+GND Res」という項目はケーブルの抵抗値(mΩ)を表しており、数字が小さいほうが抵抗値が低い=高品質ということになる。同じスペックのケーブルが複数あり、なるべく高品質なものだけを残してあとは処分したいという場合に役立つ。現在であれば、手元に大量にあるA-microBケーブルの選別に役立つはずだ。

A-microBケーブルを接続したところ。このケーブルの抵抗値は293mΩ
こちらのケーブルは754mΩ。さきほどのケーブルよりも品質が低いと考えてよい

USB PDで最大何Wまで対応するかを調べる

 USB PDでの充電時に最大何Wまで対応するかを知りたければ「PDPower Capability」を見ればよい。「240W」「100W」「60W」に加えて、USB PD非対応の場合は「No PD」と表示される。従来モデルにはなかった機能で重宝する。この機能をもっとも必要とする人も多いのではないだろうか。

「PDPower Capability」は、USB PDが最大何Wまで対応するか分かる。これは最大240Wで、ほかに100W、60Wがある
A-microBケーブルはもともとUSB PDに対応しないので「No PD」と表示される

E Markerを内蔵しているかどうかを調べる

 USB Type-CケーブルではおなじみE Markerの有無を見るには、「Vconn Res」なる項目を見ればよい。E Markerを内蔵していれば「eMarked」と表示されるので、規格違反のケーブルも見破ることができる。

E Marker内蔵ケーブルであれば、「Vconn Res」のところに「eMarked」と表示される。またその下段に「EMC(E Marked Cableの略) data avaiable」とあり、本体右側面のボタンを押すことでE Markerの内容を表示できる

最大電圧や最大電流、転送速度を調べる

 E Marker内蔵のケーブルは、本体右側面のボタンを押すことで、E Markerに書き込まれた詳細情報を表示できる。初期画面ではUSB PDが最大何Wまで対応するかのみ表示できたが、ここでは最大電圧(V)最大電流(A)を分けて表示できるほか、さらにUSB PD EPR(Extended Power Range)に対応していれば「EPR」というアイコンが表示されるなど、付加機能についても知ることができる。

 さらにこの画面ではUSBの転送速度も知ることができる。具体的な速度が表示されるわけではなく、「USB4 Gen4」といった規格名で表示されるので、頭の中で「なるほどUSB4 Gen4ということは最大80Gbpsなのだな」といった具合に変換してやる必要があるが、利用頻度の高い機能だろう。とはいえ初心者にはややハードルの高い部分かもしれない。

Thunderbolt 5ケーブルにおけるE Markerの詳細画面。最大電圧が「50V」でUSB PD EPRに対応、最大電流が「5A」、速度が「USB4 Gen4」、つまり最大80Gbpsであることが分かる
こちらのケーブルはさきほどと同じく最大電圧が「50V」最大電流が「5A」だが、速度は「USB 2.0」、つまり480Mbps止まりだ。ちなみに「VID」が「Apple」となっていることからも分かるようにApple純正のケーブルである
こちらのケーブルは速度は「USB3.2 Gen2」、つまり最大10Gbpsであることが分かる

「ポートチェックモード」は何ができる?(充電器/モバイルバッテリ編)

 さて本製品は、ここまで見てきたケーブルチェッカーとしての機能に加えて、充電器やデバイスのポートチェック機能も新たに搭載している。ここでは充電器、モバイルバッテリ、スマホ、PCの順に、どのような情報を取得できるのかを見ていこう。

 なおこのポートチェックモードでは、実際にデバイスと通信してPDO(Power Data Object)などの情報を取得するため、用いるケーブルのスペックが低いと、そこがボトルネックになる可能性がある。Thunderboltケーブルなど、なるべくスペックの高いケーブルを用いたほうがよいだろう。

充電器やモバイルバッテリ、さらにはスマホやPCなどに搭載されているUSB Type-Cポートの仕様をチェックできる。従来モデルではなかった機能だ

 まずは充電器。USBケーブルを接続して電源を入れると、対象のUSB Type-Cポートの情報が一覧で表示される。最初の画面ではUSB PDのバージョン、最大出力(W)などの基本的な情報が、次の画面では具体的なPDOが表示できる。PPSやEPR、AVSなどの機能に対応している場合もその旨が表示される。公式な仕様にない機能が見つかることもしばしばだ。

 なお複数ポートを搭載している充電器では、単ポートだけを使う場合と複数ポートを同時に使う場合とで、最大出力などの値が変わってくるのが一般的だ。本製品はこうした場合も、使用状況ごとに分けてチェックすることで、それぞれの状況ごとの仕様を表示できる。

iPadの付属品としておなじみAppleの20W充電器をチェック。USB PD2.0対応、最大出力は19.9Wであることが分かる
具体的なPDOも表示できる。この充電器は5V/3Aと9V/2.2Aの2択だ
Appleの140W充電器の例。USB PD3.0対応、最大出力は140W、EPRもサポートしていることが分かる
PDO一覧画面。最大100WまでのPDOが表示される。PPSには対応していないようだ
PDO一覧画面(EPR)。USB PD EPRに対応した100W超のPDOが表示される。またAVSでは15~28Vの範囲で電圧の可変に対応することが分かる

 続いてモバイルバッテリ。充電器と基本はほぼ同じだが、充電器と異なるのは、出力(Source)だけでなく入力(Sink)、つまりモバイルバッテリ自体の充電に用いられるPDOも表示できることだ。同一ポートで出力/入力を兼用している場合も問題ない。

 なお本製品起動時のモード切替が「AUTO」のままだと、入力(Sink)の値が読み取られない場合があるので、その場合は手動でポートチェックモードを選択した上でチェックを行なうとよい。冒頭に述べた機能制限がこれだ。

充電器と同様、モバイルバッテリについても仕様をチェックできる
cheeroの最大18W対応モバイルバッテリの例。USB PD 3.0対応で最大18W、5V/2.4AのApple規格にも対応していることが分かる
出力時のPDO一覧。PPSなどには対応しておらずシンプルだ
入力時のPDO一覧。この製品はたまたま出力時と同じPDOだが、製品によっては異なる場合も多い
これは別のモバイルバッテリ。5V/2.4AのApple規格のほか、Quick Charge2/3に対応していることが分かる
出力時のPDO一覧。こちらはPPSにも対応しており、3.3~11Vの範囲で電圧の可変に対応することが分かる
Sinkの値が読み取られない場合は、「Auto」ではなく「Port check」モードを手動選択するとよい
PDOを取得、表示する機能は「CT-2/3」などのテスターでもおなじみだが、本製品は電池を内蔵しているため給電ケーブルなしで動作できるといった利点がある

「ポートチェックモード」は何ができる?(スマホ/PC編)

 最後に紹介するのは、スマホやPCといったデバイスのUSB Type-Cポートの仕様をチェックできる機能だ。充電/給電はもちろんデータ転送の速度、さらには外部ディスプレイ出力への対応の可否など、さまざまな仕様を知ることができる。

スマホのUSB Type-Cポートの仕様もチェックできる。ここではiPhone 16 Pro MaxのほかPixel 10 Pro XLで検証している

 接続すると充電器などと同様、ポートの基本情報が表示されたのち、出力時のPDO、入力時のPDOがそれぞれ表示される。さらにこれに加えて、ポートがどのような機能を備えているか、取得可能なあらゆる情報が表示される。転送速度や、DisplayPort Alt Mode対応の可否などもここに表示される。

基本情報。これはiPhone 16 Pro Maxに接続した場合で、最大出力は4.5W、DisplayPort Alt Modeに対応していることが分かる
リバース充電時のPDO。5V/0.9Aということで、1つ前の画面にあった「4.5W」と一致している
本体充電時のPDO。基本的には5V/3.0Aの最大15Wだが、ほかにBattery PDOおよびVariable PDOとして4.7~15.7Vも定義されているようだ
VDO情報。デバイス側から返ってきた情報すべてが、複数ページにわたって表示される。Product Typeを見るとUSB接続時にどのような用途を想定しているかが分かる
VDO情報の続き。最大転送速度は「USB4 Gen2」相当。Appleの公式なスペックでは「USB 3.2 Gen 2」とされているが、同じ10Gbpsなので表現が異なるだけと見られる
「Pixel 10 Pro XL」もチェックしてみた。さきほどのiPhone 16 Pro Maxとよく似ているが、DisplayPort Alt Mode対応のアイコンが表示されないなどの違いはある

 またPCについても、これらスマホと同じく情報を表示できる。PCの場合、USB Type-Cポートの詳細な仕様をメーカーが公開していない場合も多いので、チェックすることで初めて判明する仕様も多い。

 なおこれらの詳細情報は、Discover Identityコマンドによりデバイスから得られたもので、一般ユーザーが通常目にしない項目も多い。同社が用意しているオンラインマニュアルでは各項目の詳細が紹介されているので、意味が分からない場合はそちらを参照されたい。

PCのポート仕様もチェックできる。今回はThinkPad X1 Carbon(2019)で検証した
基本情報。表示される項目はスマホの場合とほぼ同一だ
外部への給電時のPDO。メーカーサイトでは記載されていないことも多い情報だ
本体充電時のPDO。公称スペック(最大45Wでの充電に対応)と一致している
VDO情報も同様に表示される。Thunderbolt 4対応のはずだが速度は「USB 2.0」、USB 3.2とUSB4は非対応と表示された。詳細は不明だ

長期にわたって役立つ製品。ただし成り立ちの理解は必須

 以上のように、目についた機能をざっと紹介しただけでこのボリュームであることからも、本製品の多機能ぶりがよく分かる。型番からして従来モデルのマイナーチェンジのように思えるが、用途は大幅に広がっており、ケーブルチェッカーという名前の枠を超えた製品に仕上がっている。

 一方で、たとえば速度については「USB4 Gen4」「USB3.2 Gen2」などと規格名で表示されるので、自力で読み替える必要があるなど、利用にあたっては多少なりとも知識が求められる。またアクティブ方式のThunderboltケーブルのように、正しく読み取れない製品も一部あるなど、計測機器レベルの精度を求める製品ではない。

 このあたり、メーカーも「ホビー向け商品です」としており、このような仕様であることについて、その成り立ちからして理解して納得できる人向けの製品と言っていいだろう。この点はくれぐれも注意したいところだ。

Thunderboltケーブルは全結線のはずだが、全長2mのアクティブケーブルは「TX1」「RX1」「TX2」「RX2」が表示されないなど不正確な表示になる(ケーブルタイプもUSB 2.0となっている)。このように仕様上の制限は少なからずある

 実売価格は公式販売サイトで9,328円。決して安くはないが、1つ持っておけば長期にわたって役に立つことは間違いない。またケーブルのチェックしかできなかった従来モデルと違って多用途に使えるのもプラス要因だ。従来モデルは早期に売り切れ、欠品が長期間続いたという事実を考慮すると、本稿を読んでピンと来た人は、今回のモデルも早めに調達することをおすすめする。

外部への給電機能を持たないUSB充電式のハンディファンでは、Power Roleが「Sink(充電)」のみであることが表示された。このようにあらゆる機器のポートをチェックできる