やじうまミニレビュー

もうちょっとボタンが欲しい人へ。普通に使える9ボタン軽量ゲーミングマウス「Rival 5」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Rival 5

 SteelSeriesが7月に発売した「Rival 5」は、9ボタンを搭載した有線ゲーミングマウス。一般的なゲーミングマウスは6ボタンのものが多く、比較して3個多い計算になる。店頭価格は9,000円ほどだ。

 多ボタンマウスは、ボタンを増やすために一般的な6ボタンマウスの配置を崩してしまうものも多い。すると普段のマウスとは使用感が変わって、使いこなすのに慣れが必要になる。MMORPGなど多くのボタン操作が求められるゲームで便利な反面、ほかのマウスとの使い分けが難しくなり、ある種の玄人向けな製品になりがちだ。

 本機はその点に配慮しつつ、ゲーミングマウスとしての性能もしっかり確保し、誰でも安心して使える多ボタンマウスに仕上げている。実機をお借りしたので、使用感を含めて見ていきたい。

 なお本機の試用において、検証環境としてマウスコンピューター製ゲーミングPC「G-Tune HP-Z」を使用した。Core i9-11900KとGeForce RTX 3080 Tiを搭載するハイエンドモデルだ。

「Rival 5」と「G-Tune HP-Z」

耐久性8,000万回のスイッチなど高性能

 まず基本的なスペックを確認しよう。

【表】Rival 5のスペック
解像度100~18,000dpi(100dpi刻み)
最大速度400ips(SteelSeries Qck表面で)
最大加速度40G
光学センサーTrueMove Air
スイッチ耐久性8,000万回
ボタン数9
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)68.15×128.8×42mm
インターフェイスUSB
ケーブル長2m
重量約85g(ケーブル含まず)
店頭価格9,000円前後

 光学センサーはPixArtと共同で開発されたTrueMove Air。解像度は最大18,000dpiで、専用ソフトウェア「Engine」により100dpi刻みの調整が可能。レポートレートは125/250/500/1.000Hzの4段階。

 左右ボタンのスイッチには、「次世代ゴールデンマイクロIP54スイッチ」を搭載。8,000万クリックの耐久性に加え、防塵・耐水性を謳う。名前にあるIP54というのがおそらく防塵・耐水性を示していると思われるが、あくまでもスイッチだけの話で、製品全体に耐水性はないだろう。それでもホコリや手汗による不具合に強いなら、耐久性も高いだろうと期待はできる。

 本体重量は約85gと軽め。ケーブル長は2mで、マイクロファイバー製メッシュケーブルとなっている。

普段使いできる形状に違和感なく3ボタンを追加

真上から見たところ。オーソドックスな形状と言える

 次に実機を見ていく。本体サイズはゲーミングマウスとしては標準的で、軽量化のためのボディの穴などはない。形状も先端の方が左から右に少し傾斜している程度で、奥から手前に向けて少し膨らんでいる。これもよく見る形状で、奇をてらったところはない。

 手にしてみると、サイズの割には軽いと感じるのは確か。無難に見える形状ながら、ボタンや側面は上手く手に沿うよう反った形状になっており、フィット感はかなりいい。元々が約85gという軽さだが、それ以上に軽いと感じる。

 筐体の素材はABSプラスチック。表面はざらつきのある表面処理で、親指が当たる部分は強めのざらつきにするなど、部位によって少しずつ処理を変えている。全体としてはさらっとした手触りだ。

 センサー位置はボディのほぼ中央。ソールは上部と下部に大きめのものが1枚ずつ使われている。ソールは貼り換えを考慮してか、ソールのすぐそばに指をひっかけてはがせる穴が空いている。

底面。ソールが剥がしやすいように小さな穴が空いている

 ボタン類は、上部には左右クリックとホイール、DPI切り替えボタン。ホイールは回転のみで左右のチルト操作は非対応。左側面にある2ボタンも標準的な位置にあり、親指で押してブラウザの進む・戻るなどの操作に普通に使える。

 ぱっと手にして、普通のマウスとして使うのに、何ら違和感がない。オーソドックスで無難、誰が持っても違和感なく使えそうな印象だ。これが本機にとって、とても大きな魅力となる。

 注目すべき残りの3ボタンを見ていこう。搭載位置はいずれも左側面で、2つのサイドボタンのすぐ上に1つ、そして親指を置く位置から先端に向かう方にもう1つある。

左側面。4つのボタンがあるように見える

 「あれ、追加のボタンが2つしかないぞ?」と筆者も最初は困惑したのだが、サイドボタンの上にあるボタンは、実は上下に動くスイッチになっている。上と下に入力できるので、これで2ボタン分というわけだ。

 このスイッチは2つのサイドボタンよりも出っ張っており、上下の入力の際にうっかりサイドボタンを押したりしないようになっている。またサイドボタンと組み合わせることで、感覚的には上下左右のボタン操作ができる。

 もう1つの親指の先にあるボタンは、シンプルに押すだけのもの。くの字に曲がった大きめのボタンで、くの字の手前でも奥でも正しく押せるようになっている。一般的な男性の手より少し小さめの筆者の場合、ほんの少し親指を伸ばせばくの字の下の方に届く。押したい時にすぐ押せて、誤入力もしにくい、いい距離感だ。

 ケーブルはかなり柔らかくて軽い。他社のゲーミングマウスに使われている編組ものと比べても遜色ない柔らかさだ。またケーブルの付け寝が少し上向きになっているのも特徴。

右側面。こちらにはボタンはない
ケーブルはかなり柔らかい

シンプルながら強力なカスタマイズツール

「SteelSeries Engine」の画面

 次にソフトウェア面をチェックする。専用ソフト「SteelSeries Engine」は公式サイトからダウンロードする。最近はPCに接続すると自動的にソフトウェアのインストールが始まるゲーミングデバイスが増えているが、本機にそういった挙動はない。

 UIはとても洗練されており、ボタン設定や速度、イルミネーション等の必要な機能が小さいウィンドウにまとまっている。ゲーミングマウスを使い慣れた人なら、一目見て使い方が理解できる。

 ボタンは追加の3つに関しては、デフォルトではF1、F2、F3キーが割り当てられている。何かの拍子に押してしまうと思わぬ挙動になりかねないので、いったん無効化するか、必要な機能を割り当てておくといい。

左側面のボタンの位置が見えるよう、左側面の図も選べる

 ボタンの割り当て機能は強力で、キーボード入力やOSのショートカット機能などプリセットが多彩に用意されている。さらにN回入力や自動リピートなどの機能付加、入力時間の調整が可能なキー入力マクロ機能も用意されている。

多彩なキーを設定できる上、リピート入力なども可能
キー入力マクロも自由に記録・調整できる

 イルミネーションはゾーンごとに分けて光り方を変えられる。ゾーンはホイール側面と手前側のロゴ部分が各1カ所。左右のラインは実はそれぞれ4分割されており、計10カ所を個別に設定できる。光のグラデーションも美しく、マウスのLEDライティングとしてはかなりよくできている。明るさ設定は4段階で消灯も可能なので、光らせたい部分だけ光らせるといった使い方も可能だ。

イルミネーションのゾーンは4カ所と見せかけて10カ所ある

 これらの設定を複数保存し、指定したアプリケーションを起動した際に切り替えることも可能。ゲーミングマウスに求められる機能をきっちり入れて、シンプルなツールにまとめ上げていると感じる。

 ちなみにWindows側のマウスの設定で、「ポインターの精度を高める」にチェックしている(いわゆるマウス加速機能)場合、「SteelSeries Engine」のウィンドウの上部に「あなたのマウスの設定は、Windowsポインターオプションの影響を受けています」という通知が出る。

 通知をクリックすると、マウストラッキングにネガティブなので、加速は使わない方がいい、というアドバイスが出る。その下部にある「設定を直してください」というボタンを押すと、「ポインターの精度を高める」のチェックが外れる。なお「SteelSeries Engine」側にも加速機能として「手の動きのスピード」の調整項目がある。

 ゲーミングマウスは加速を使わない方がいいというのが通例だが、面倒くさがりの筆者は常に加速ありで使っている。「今後は表示しない」をクリックすれば通知も消えるので使用上の問題はないが、押しの強さは印象的だ。

マウス加速を止めるよう、強く推奨される

軽いボディに適度な重心

 本機の使用感をお伝えするのに、FPSの練習ソフト「Aim Lab」をテストしてみた。筆者が普段使っているのは、Razer製の小型軽量マウス「Viper Mini」。これと交互に持ち替えながら、基本となる「Spidershot」をプレイした。

 プレイ感としては、61gと超軽量の「Viper Mini」に比べれば若干の重みを感じるのは確か。ただ持ち上げて重いと感じるほどの差はなく、むしろ重みのおかげで止めたい場所できっちり止められる感覚がある。

 実際に「Aim Lab」の結果を見ても、スコアは大差ないものの、射撃精度は少し良い結果が出ているようだった。本機は軽いなりにも底面左寄りにしっかりとした重心が感じられ、ほぼ重心が感じられない「Viper Mini」とは使用感が違う。ただ軽さを追求しただけの製品ではなく、意識してこのウェイトバランスにしているのだと思われる。

 左右のボタンはスイッチの硬さやストローク、音などで特筆すべき感触はなく、カチカチという音とともに入力される。サイドボタン等も含めて、特に違和感を覚えるものはない。ケーブルはとてもソフトで、操作の邪魔になることは一切なかった。

持ち替えつつのプレイ3周目。上が「Viper Mini」、下が「Rival 5」のもの。ほかの試行においても「Rival 5」の方が射撃精度が少し高かった

普通に使える高性能・軽量マウスでありつつ、9ボタン搭載という魅力

 本機の魅力は、一般的な6ボタンマウスとしての使用感を崩すことなく、3つのボタンを使いやすい配置で追加したことにある。多ボタンのマウスは一般的な6ボタンマウスの配置を崩すものが多く、普段の使用感も変えてしまうが、本機にはそれがない。この原稿も本機を使用しながら書いているが、追加されたボタンが気になることはなく、問題なく使えている。

 またボタンの数を増やしながら軽量化を進めたところもポイントだ。サイズからすれば十分に軽量だし、それでいてしっかりした重心もあるので、触ってみると好みのバランスだなと感じる人が多そうだ。

 加えて、ゲーミングマウスとしての高い性能を確保している。最大18,000dpiの高解像度や、8,000万回のクリック耐久性と防塵・耐水性を謳うスイッチなど、ゲーミングマウスとしてハイエンドに近い性能を誇る。

 あとはユーザー各々が、9ボタンで足りるのかどうか。足りないのであれば、よりボタン数の多い製品を選べばいいだけの話だ。「もう2、3個ほどプログラマブルなボタンがあれば便利なのに」と思っている人は、本機なら普段の使用感もゲーミング性能も損なうことなく使える。

 店頭価格は現時点では9,000円前後で、有線ゲーミングマウスとしてはそこそこ高価な部類ではあるが、センサーやスイッチの品質と軽さを考えれば妥当な価格。多ボタンながらオーソドックスな形状で地味に見える(電源を入れるとLEDがかなり派手だが)のが、長所でもあり短所でもある。好みと用途に合うなら、ぜひお試しいただきたい。