やじうまミニレビュー

1,000種類以上のノートPCで使える85gの超小型ACアダプタ「FINsix Dart」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Dart。ガンメタルのほかブルー/マゼンタ/シルバー/オレンジの5色がラインナップされている

 「Dart(ダート)」は、ノートPC向けの超小型ACアダプターだ。100gを切る軽量筐体と、国内外1,000機種以上のノートPCと組み合わせて使える汎用性の高さが特徴だ。先日の山田祥平氏の連載でも紹介されていたので、ご記憶の方も多いことだろう。

 米国のベンチャー企業FINsix(フィンシックス)が開発したこの製品、筆者もおよそ1カ月前に購入し、継続して使っているが、非常に優秀な製品というのが率直な感想だ。今回は写真を中心に、本製品の特徴を紹介する。

クラウドファンディング開始から3年経って日本上陸

 本製品は2014年4月にクラウドファンディングサイトのKickstarterに登場し、約半日で目標額の20万ドルを突破。最終的に2倍超の45万ドルを集めることに成功した。しかし製造は紆余曲折、約半年後と予告されていた出荷開始時期は大幅にずれ込み、2年後の2016年7月にようやく出荷に至った。このまま出荷されないのではと疑われていた時期もあったほどで、いまもKickstarterのページには、支援者の殺気立ったコメントが残されていたりする。

 もっとも、2年をかけただけあって、出荷にいたった製品の評判は上々で、その後FINsixのアジア総代理店を務める丸文が、2017年夏にあらためてクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING by T-SITE」で先行販売を実施。これは、日本国内での利用を前提に電気用品安全法認証(PSE)を取得したモデルで、この秋から日本国内で販売が始まったモデルも、この仕様に準じたものだ。

ACアダプタらしからぬオシャレな梱包箱。メーカーはFINsix
開封。昨今のスマートフォンなどを思わせるパッケージングだ
本体一式のほかに持ち歩き用のポーチ、さらに日本語を含むユーザーガイドが付属する

プラグの交換で国内外1,000機種以上のノートPCに対応

 さて、本製品の最大の特徴はなんといっても筐体の小ささ、そして軽さだ。プラグ直付けの本体は、ACアダプタというよりも、小型のUSBアダプタが引き伸ばされた程度のサイズでしかない。ノートPCに標準添付されるACアダプタとは、まるで別物のように感じられる。

 重量はわずか85gということで、スマートフォン1台分よりはるかに軽い。一般的にノートPC標準添付のACアダプタは、ケーブル部分を除いても300g前後はあるのがザラなので、本製品に置き換えることで4分の1程度になる計算だ。またケーブルがかなり柔らかく、バッグの中に入れるさいもまとめやすくなるので、標準的なACアダプタの数分の一と言われる体積差以上に、荷物の量まで圧縮される印象だ。

製品本体。ACアダプタというよりも、縦に長いUSB変換アダプタといった印象
横から見たところ。100-240V対応なので海外の多くの国で利用できる
ケーブルを挿し込んで使用する仕組みだが、一度挿し込んだら抜く機会はまずない

 本製品はさまざまなノートPCに対応する汎用性が売りだが、ノートPCの電源コネクタの形状は、メーカーおよび製品によって異なるのはご存知のとおり。ではどのようにしてその差異を吸収しているかというと、本製品には9種類の電源プラグが添付されており、先端を交換して使う仕組みになっている。

 この9種類のなかには、筆者が使用しているThinkPad X1 Carbon(2016)の角型プラグのような、それほどメジャーではないプラグもしっかり含まれている。メーカーサイトを見るかぎりでは、VAIOおよびDell、HP向けのプラグについてのみ、メールで問い合わせることでメーカーから無償で送付されるとのことだが、それ以外はすべて標準添付だ。

 ちなみに本製品が非対応としているのはPanasonic製品、AppleのMacBookシリーズ、MicrosoftのSurfaceシリーズなどだが、MacBookなどUSB Type-Cに対応したオプションケーブル単体およびセット品はすでに海外では予約を受付中で、国内でも「年末発売予定」とされているので、こちらが発売されればカバー範囲がさらに広がるだろう。対応機種の詳細は丸文のサイトにある互換性リストを参照してほしい。

交換用の電源プラグ9種類が付属する
利用する電源プラグを決め、ケーブルに挿し込む
今回は筆者手持ちの、ThinkPad X1 Carbon(2016)に合った角型プラグを使用
ケーブルの反対側をACアダプタ本体に挿し込む。コネクタ形状は同一だが、使い勝手を考慮すると、後述するUSBポートが近いほうがノートPC側、遠いほうがこのACアダプタ側になるよう挿すとよいだろう
接続完了。これで使えるようになる
ThinkPad X1 Carbon(2016)の純正ACアダプタ(上)もかなりコンパクトな部類に入るが、本製品(下)と比べるとその体積差は圧倒的だ
ノートPCに挿し込んだところ。65Wの出力があるので、多くのノートPCに対応する
ここまで小さいとACアダプタというより、プラグ部が少し大きい電源ケーブルのようだ

給電用USBポート搭載でスマホなども同時充電可能

 本製品のもう1つのメリットは、給電用のUSB Type-Aポートが1基搭載されていることだ。ちょうどプラグ部の手前から分岐する形になっており、これを使うことでノートPCに給電しながら、手持ちのほかのデバイス、たとえばスマートフォンやタブレット、モバイルバッテリなどに給電が行なえる。

 筆者個人としては、せっかく小型軽量が特徴の製品でありながら、こうしたプラスアルファのギミックを搭載して体積が増えることに当初は否定的だったが、実際に使ってみるとノートPCを使いながらスマートフォンを充電したり、給電しながらスマートフォンでテザリングを行なえたりと、実に重宝する。なによりそれほどかさばらず、邪魔にもならない。

 このUSBポートがあることで、ふだん1個口のUSB充電アダプタを携行しているのであれば、それが不要になり、荷物をトータルで軽量化するのに役立つ。出力は5V/2.1Aなので、タブレットなども充電できてしまうのがありがたい。

プラグの手前にUSBのType-Aポートがある。ここにUSBケーブルを挿して外部デバイスを充電できる
スマートフォンを充電しているところ。テザリング中に給電が行なえるのでモバイルで重宝する

長期的に見てコストパフォーマンスは高い

 ここまで1カ月ほど継続して使っているが、発熱もACアダプタとしては控えめで、またコイル鳴きなどもなく、非の打ち所がない。7cmあるボディが壁面から本体が直立する形になってしまうため、壁面のコンセントに垂直に挿し込んで使うのはあまりおすすめしないが、そこは使い方にもよるだろう。

 効果が高いのはやはりモバイルユースで、本製品をバッグに入れて外出先や出張先に持ち歩き、標準のACアダプタは自宅やオフィスの据え置き用途に特化させるとよいだろう。ノートPCを持って外出するさい、ACアダプタを持参するか否かいつも迷うという人でも、本製品くらい軽ければ、バッグのなかに放り込んでおくことに躊躇はないはずだ。

 価格は12,000円ということで、市販のノートPC互換アダプタ(5,000円前後)に比べると高価だが、これら互換アダプタがノートPCに合わせて買い替えを余儀なくされるのに対して、交換用のプラグが標準添付された本製品は、ノートPCのメーカーを変えても使い続けられる可能性が高い。初期投資の額は張るが、長期的に見るとコストパフォーマンスの高い製品ということで、全モバイラーにおすすめしたい。

ケーブルが柔らかいので小さくまとめるのも容易。手のひらにすっぽりと収まってしまう
海外ではすでに予約が殺到しているUSB Type-C版「DART-C」の動向も注目しておきたい。出力も65Wと十分で、互換アダプタでは動作しないUSB PD対応ノートでの利用も期待できる
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