Windows 8.1カウントダウン

発売直前。一般公開までに知っておきたいWindows 8.1

 Windows 8.1の発売まで、後1週間を切ったところで日本マイクロソフトは製品事前説明会を実施、この新しいOSの位置づけと、新機能などについて解説した。今回は、Windows 8.1プリインストールで発売される「VAIO Duo 13」をソニーからお借りすることができたので、それで検証しながら、製品版のWindows 8.1がどのようなものなのかを見ていくことにしよう。ただし、出荷前の製品なので、詳細が変更される可能性もあることをご了承いただきたい。

ITデバイスのモバイル化トレンドに対応

 説明会の冒頭で、日本マイクロソフトの藤本恭史氏(業務執行役員Windows本部本部長)は、現状としてスマートフォンとタブレットが急成長していることを示し、今後のITデバイスがモバイル化することは必然であるとした。今、デマンドはデバイスを手に持って歩けることであり、同社もまた、今、モバイルにベット(賭ける)するという。そのためにも、タブレットとレガシーなPCの垣根を取り払うことは重要で、PCやタブレットという定義自体を変えることも考えなければならないという。

 PCの体験を内包しながら、タブレットの体験も含んでいる。さらにコンシューマーが求めるデバイスと体験、そして、企業が求めるエンタープライズクラスのソリューションを併せ持つこと。それが、Windows 8.1の担うテーマだ。

 Windows 8.1は、Windowsの新バージョンととらえられる場合と、Service Packととらえられる場合がある。いずれにしても、MicrosoftとしてはRapid Releaseをアピールし、ハードウェア、ソフトウェア、サービスという3つの要素が、それぞれ別途に進化していく中で、それぞれのアップデートタイミングは異なるものの、常に、最新の環境を届けたいとし、その戦略を具現化したものがWindows 8.1なのだという。

Windowsに統合されるBing検索

 既報の通り、Windows 8.1へのWindows 8からのアップグレードは無償で提供される。また、パッケージ製品も用意される。Windows 8ユーザーは日本時間の10月17日20時のタイミングで、ストアアプリ内のトップなど、分かりやすいところにアップグレードを見つけることができるようになるという。

 そのアップグレードを適用することで、Windows 8はWindows 8.1になる。もちろん、アップグレードをしないという選択肢もある。

 Windows 8.1へのアップグレードを選んだユーザーは、さまざまな新機能を得られるようになる。

 まず、Windows 8.1にはBing検索が統合されている。スタート画面、デスクトップ、いずれにおいても、チャームを出して、検索をタップして検索ボックスに文字列を入力すると、それに応じてオートサジェストが行なわれ、候補となるキーワードが列挙される。

 キーワードを決定して検索を実行すると、ローカルコンピュータにあるドキュメントや、インターネット上にあるWikiや関連サイトなどが列挙される。Wikiのリンクをタップした場合、Wikiアプリがインストールされていれば、それがページを開いてくれる。

 このように、1つの検索ですべてをカバーするのがWindows 8.1の検索だ。ターゲットを意識することなく、美しく表示された検索結果を得ることができる。

 特に「エンティティ」と呼ばれる組織や団体、固有名詞、個人名、地名などを検索した場合は、その結果として「ヒーローアンサー」と呼ばれる特別な様式で検索結果が表示され、そこからさまざまな知識、コンテンツを得ることができる。

 検索エンジンは進化し、すでに文字列をマッチングするだけではなく、意味を理解する時代がやってきているが、今回のWindows 8.1に実装された検索はその第一歩だという。目指すべきゴールは自然語検索だそうだが、現時点では単語を分かちがちで入れる方が、期待にマッチした検索結果を得やすいという。

チャームの検索で、検索ボックスに文字列を入力すると、インクリメンタルサーチ的にオートサジェストの一覧が表示される
エンティティと呼ばれるキーワードでは、検索結果がヒーローアンサーとして表示される。それとは別にローカルPC内のファイルやウェブの検索結果も同じ画面内に表示され、フリックで一覧できる

大きく変わるIMEのフレームワーク

 一方、日本語入力には欠かせないIMEも変わる。Windows 8までは、デスクトップ版のIMEをモダンアプリで使うという方法がとられていた。ATOKなど、サードパーティ製アプリについては今後もこの方式になるそうだ。

 これに加えて、Windows 8.1では、MicrosoftによるモダンIMEとしてMicrosoft IMEが提供されることになった。これは、ストアアプリ専用のIMEで、モダンアーキテクチャの元に新規に開発されたものだ。

 固有のプロセスで、言わば特権階級的に動き、各ストアアプリのミドルウェア的な位置づけで動くようにIMEのフレームワークが拡張されている。そのため、アプリの障害がIMEに影響しない堅牢性が保たれ、さらには、IMEが保持するデータにアプリがアクセスできないためセキュアであるといった利点が得られるという。

 Windows 8のソフトウェアキーボードは、お世辞にも使いやすいものとはいえなかったが、例えば、新しいMicrosoft IMEでは、iOSやAndroidでお馴染みのフリック入力がようやく使えるようになった。ただし、この新しいソフトウェアキーボードは、新たなフレームワークの元にMicrosoft IME内に実装されたものであり、サードパーティ製のIMEから利用することはできないという。このあたりは、ジャストシステムなどの有力サードパーティに追加取材をしてみる必要がありそうだ。以前の取材では、このフレームワークこそが、1年前のWindows 8リリース時に彼らが要望していた日本語入力のあり方そのものだったことがわかっているからだ。

フリック入力ができるようになった新しいソフトウェアキーボード。Microsoft IMEの一機能として実装され、他のIMEからは使えない

コンテンツ表示に最適化された新しいフォントの追加

 Widows 8.1の画面表示を見ると、そのフォントが今までのものとはちょっと違うことに気がつく。タイポグラフィーにも手が入り、少しでも美しい日本語での表示を求めた結果だ。

 日本マイクロソフトには、Windowsに関する日本の要求をRedmondの本社に伝える機能を持つ部署があり、そこでの議論の中で生まれた機能は数多いという。

 例えば、Windows 8.1には、新フォントとして、游ゴシック、游明朝体が追加される。それぞれ細字、太字、標準の3ウェイトが用意され、高い解像度で美しく表示されることを目指して設計されているという。

 これらのフォントは字游工房からライセンスを受けたもので、既存のMicrosoftフォントとの互換性を保つためにグリフやARIB文字が追加されている。そして、ストアアプリからは、Windows APIを使ってこれらのフォントを呼び出すことができるようになる。

 これまでメイリオやMS UIゴシックが使われていた場面の多くで、この新しいフォントが使われるようになり、また、コンテンツ表示に最適化されていることから、標準メールやカレンダーといったアプリでも使われる。

 また、今回のInternet Expolorer 11では、ePUB3のレンダリングにおいて、CSS3の縦書き標準ガイドラインに準拠するために、ルビと縦中横がサポートされるようになった。フォントの追加と併せて、日本語コンテンツを楽しみやすい環境が提供されるようになったということだ。

新しい標準メールはPreviewから大きく変わっている。フォントも游ゴシックが使われていることがわかる
游明朝と游ゴシックの標準ウェイト

ストアアプリの充実に向けて

 Windows 8.1の使い勝手を高めるには、ストアアプリの充実は必須だが、そのためにさまざまな要素が新しくなった。

 まず、アプリのサイズはこれまでの2GBから8GBに緩和された。これは、特に、ゲームベンダーからの要望が強かったものを反映した結果だという。

 また、PDFのレンダリングエンジンが用意されたり、音声合成を利用できるようになるなどの進化もある。

 特筆すべきは、連絡先やカレンダーの情報にアクセスするAPIが新設されたことだ。これによって、サードベンダーの予定表アプリが標準カレンダーのデータをハンドルできるようになったり、あるいは、旅行アプリが、ユーザーのカレンダーを併せて表示するようなこともできるようになる。

 InstantGoのサポートについては、Windows 8.1から正式サポートとなったとされているが、8.1の目玉機能ともいえるOSへのSkyDrive統合については、まだ明確な回答は得られていない。ただし、少なくともInstantGo対応のVAIO Duo 13については、スリープ時のSkypeアプリはメッセージの新着を音で通知するが、SkyDriveの同期は実行されないようだ。

 このように、さまざまな変化をもたらすWindows 8.1だが、10月17日20時にいよいよアップデートが一般公開される。ぜひ、その新しさを体験してほしい。

 というわけで、この連載は、次回以降「Windows 8.1 ユーザーズワークベンチ」として、その詳細を解説していくことにする。

(山田 祥平)