Windows 8.1カウントダウン

大きな改良が加えられたWindowsストアの仕組み

 Windows 8.1の一般公開まで、1カ月を切った。今回は無償配布ということもあり、急速に更新が進むことが予想されるが、先日更新があったiOS 7のように急速なアップデート率を達成できるかどうかが気になるところだ。

 今回は、おそらくはアップデートに必須となるであろうMicrosoftアカウントとWindowsストアについて見ていくことにしよう。

 RTMは、現時点では、開発者向けに用途が限られているため、一般公開まではPreview版を元に説明を進めます。

ストアアプリをインストールできるPCの台数制限が緩和

 Microsoftは「Windows App Builder Blog」で、アプリケーションのローミングユニットを増やすとアナウンスした。具体的にはこれまで5台までのPCという制限が、81台までに緩和されることになった。

 きっと、81は8.1を意識した値なのだろう。Microsoftでは、この変更により、ユーザーがより多くのデバイスでアプリを使えるようになることで、特に広告ベースのアプリでは、これまでよりも収益が増える可能性があるとしている。これで、信頼済みとして関連付けられるPCは無制限、ストアアプリは81台ということになり、ほとんどの場合、制限がないに等しいということになったわけだ。実施は10月9日(米国時間)からで、Windows 8およびWindows 8.1での合計となっている。時差の関係で、日本時間では10月10日ということになるのだろう。

 ストアアプリは少なくとも、10月10日までは、5台のPCにしかインストールができない。自分の使っているPCの確認は、アカウントを表示させると「お使いのPC」で一覧を見ることができる。各PCには削除ボタンが用意されていて、それをタップすると、そのPCではインストール済みのアプリであっても使えなくなる。10月8日以降は、ここに81台までのPCを並べることができるようになるのだろう。

これまで5台までだったPCの制限は81台となることになった。このレイアウトにも変更があるかもしれない

 Windows 8.1では、標準で添付されているアプリと、ストアを経由してユーザーが個別にダウンロードするアプリの双方が使える。たとえばメールやカレンダーは標準アプリだ。標準アプリについては、Microsoftアカウントとは関係なく、Windows 8.1が稼働するPCであれば、どのPCでも利用できるようになっている。ストアそのものも標準アプリの1つなので、実行してアプリを物色するところまではできる。だが、アプリをインストールしようとすると、Microsoftアカウントの有無が問われ、アカウントがあったとしても5台を超えるPCである場合は、どれかのPCを削除することが求められるというわけだ。

使いやすくなったストア

 Windows 8.1 Previewでは、ストアのデザインが大きく変わっている。スクリーン左端にサイネージのようにスタッフのおすすめアプリやストアの新着アプリが順次表示されるようになっているほか、おすすめアプリ、新着アプリ、人気トップ(有料)、人気トップ(無料)が一覧でき、個々のカテゴリで、さらに詳しい一覧を確認することができる。Windows 8のストアでは、ゲーム、ソーシャル、エンターテイメントといったジャンルでの分類だったが、そこに変更が入っている。

ストアのレイアウトが大きく変わり、アプリを探しやすくなった。アプリを検索するボックスも常時表示されている

 また、お勧めアプリを表示するかどうかも基本設定で指定できる。常に「アプリの検索」ボックスが表示されるようになったのもいい。アプリの名前を知っていれば、ここにその名前を入力するのが手っ取り早い。

 Windows 8までは、アプリを見つけて、その詳細を見なければ分からなかったが、Windows 8.1では一覧でインストール済みかどうかが分かるようになっている。

インストール済みかどうかは、一覧画面で分かるようにもなっている

 さらに、アプリをタップして、詳細を表示させると、Windows 8までと同じようにスクリーンショットと説明を見ることができる。それに加えて、評価とレビューを見ることができたり、そのベンダーが提供する他のアプリを探すことができるようにもなっている。

各アプリについては、評価とレビューが表示される。他のモバイルOSでは当たり前だった機能だ

 これらの変更によって、ユーザーはストアで、今までよりもずっとアプリを探しやすくなったし、アプリについての詳細情報を明確に知ることができるようになっている。

 さらに、その設定にも変更が入っている。たとえば、アプリの更新について、Windows 8では「アプリに合った更新プログラムを自動的にダウンロードする」ことを指定しておくことができた。つまり、更新があった場合、ダウンロードまでは自動的に行なわれるが、インストールするかどうかは個々のアプリについてユーザーが指示しなければインストールは行なわれなかった。

 Windows 8.1 Previewではここが「アプリを自動的に更新する」となり、この設定を有効にしておくと更新インストールが自動的に行なわれるようになった。

インストールしたアプリは自動的に最新の状態に更新されるように設定できる

スタート画面には必要なタイルだけを表示

 インストールしたアプリは、スタート画面にタイルとして表示されなくなる。Windows 8では、無条件にスタート画面に追加されていて、調子に乗ってインストールしていると、スタート画面がわけの分からない状態になりがちだった。

 ストアアプリのインストール後、すべてのアプリを表示させると、今、インストールしたアプリが新規のラベルが付いた状態で表示されることで分かる。また、アプリは名前順、インストール日順、使用頻度順、カテゴリ順に並び替えることができるので、インストール日順にすれば、今、インストールしたアプリが先頭に表示される。

 このすべてのアプリの中から、アプリを選び、「スタート画面にピン留めする」を指定することで、スタート画面の末尾にタイルが表示されるようになる。それを自分の好きな位置、そして好きなタイルサイズで表示されるように指定すればいいわけだ。

 ちなみに、SkyDriveでは、スタートスクリーンのタイルも同期の対象にできるので、複数台のPCで、インストールされているアプリ、されていないアプリにばらつきがあっても、あるPCでスタートスクリーンにアプリのタイルがあれば、他の全部のPCでもタイルが表示される。そして、インストールされていないアプリを実行すると、ストアにアクセスして、その場でインストールが始まる仕組みになっている。

 使っているPCにどんなストアアプリがインストールされているかは、ストアのアプリケーションメニューで「マイアプリ」を開けば分かる。さらに、チャームからPC設定を呼び出し、新設された項目「検索とアプリ」を開くと、「アプリのサイズ」という項目がある。それを実行すると、そのPCにインストールされているすべてのアプリが一覧でき、個々のファイルサイズを確認できる。また、アプリをタップすると「アンインストール」ボタンが表示され、そのタップでアンインストールができる。ここでは、ストアアプリだけではなく、標準アプリもアンインストールができるようになっている。タブレットPCなどで、極端にストレージが少ないようなケースでは重宝するかもしれない。

ストアのアプリケーションメニューでは、従来のようなカテゴリ別の一覧にもアクセスできる
PC設定の「検索とアプリ」で各アプリのサイズを確認したり、その場でアンインストールができる

無償のアプリと有償のアプリ

 無償のストアアプリはインストールできるPCの台数制限が大幅に緩和されたことで、そのビジネスチャンスを拡げることができるだろう。その一方で、有償のアプリはどうか。アプリの中では大量のPCにインストールされてしまってはビジネスモデル上、困るケースもあるにちがいない。

 そのために使われるのが、App Specific Hardware ID(ASHWID)だ。Windows OSやMicrosoftアプリのインストール時に、そのPCが以前インストールしたものと同じものであるかどうかを確認するために使われてきたものと同様の仕組みだ。アプリ開発者はASHWIDをチェックすることで、デバイスを特定できる。そして、そのIDをクラウド経由でレポートさせるロジックを用意しておくことで、実行したり、コンテンツを閲覧したりするデバイスを制限できる。

 この仕組みによって何十台ものPCに、高価なコンテンツがインストールされて、コンテンツプロバイダの利益が阻害されないようになっているわけだ。

 ストアアプリの制限緩和と、これらの仕組みによって、今後、ますますアプリの種類が増えていくことが期待される。

 同じことができるアプリが、デスクトップアプリとストアアプリの両方で提供されている場合、きっとストアアプリの方が選ばれるようになるだろう。現時点では、Instant Go(以前のConnected Standby)対応のPCは、一部のものに限られるが、2014年以降はどんどん増えて当たり前の環境になるはずだ。

 だが、デスクトップアプリは、その恩恵を受けられない。スリープ中にはデスクトップアプリは完全に停止してしまう。その一方で、ストアアプリは必要なネットワーク通信の内容をOSに登録しておき、スリープ中にも、あたかも起きているかのように通信を続け、必要に応じて通知などでユーザーにイベントを知らせることができるからだ。今のスマホのように振る舞えることは、これからのWindowsデバイスにとって、とても重要な要素となるだろう。そのときのためにも、ストアアプリはもっともっと充実してもらわなくては困る。

(山田 祥平)