Windows 8.1カウントダウン

Windows 8.1 RTMを試す

 おそらくはソフトウェア開発者からの声が数多く寄せられたのだろう。MSDNやTechNetでRTMが公開された。当初の表明とは異なる施策で、Microsoftが真摯に意見を聞き入れてくれたということだ。これでWindows 8.1をターゲットに開発を進めている多くの開発者が、一般公開に先駆けて製品テストをスタートさせることができ、一般向け販売の開始時には、新しい環境で動作保証された製品が数多く揃うに違いない。

開発者向けにRTMを公開

 8月27日にRTMしたWindows 8.1だが、当初はOEM各社にだけに配布される予定だった。だが、急遽、MSDNやTechNet会員向けに提供されることになり、9月9日にサブスクライバーダウンロードに公開された。公開された日本語版のISOイメージは、64bit版が約3.7GB、32bit版が約2.76GBとなっている。

 Windows 8.1は、既存Windows 8ユーザーに対して、アップグレード提供が無償で行なわれることになっているが、その方法がどのようなプロセスになるのかはまだわからない。現時点では、RTMとして公開されたディスクイメージを使い、クリーンインストール、または、アップグレードインストールを行なうといった方法でしか評価ができない。

 まずは試しにということで、これまで8.1 Previewを稼働させていたパナソニックの「Let'snote SX1」を、いったんフォーマットし、RTMをクリーンインストールしてみたが、特に何の問題もなくインストールが完了した。

 インストール直後はXGA(1,024×768ドット)解像度だったが、チップセット情報のインストールで液晶解像度のハードウェアスペック通りの表示となった。実機は、もともとWindows 7がプリインストールされている製品だが、パナソニックでは、それにWindows 8をクリーンインストールするための手順と、必要なドライバ類を公開している。RTMのクリーンインストール後、その手順にしたがって、Windows 8用のモジュールを適用するだけで、問題なくWindows 8.1が快適に使えるようになった。つまり、8.1は多くの場合、8用のドライバ類が揃っていれば問題はなさそうな印象だ。

 インストールに要した時間は15分程度。クリーンインストールなのでアップグレードよりもずっと速い。Preview版ではローカルアカウントでのインストールができなかったが、RTMではちゃんとできるようになっている。これも約束通りだ。最初はMicrosoftアカウントの入力が促されるが、それをスキップすることができるようになっていた。

 ちなみに、Microsoftアカウントでログオンすると、Previewでの環境が引き継がれ、スタート画面、壁紙といったさまざまな要素が同期され、瞬く間に使い慣れた環境になる。

インストール直後は、ガイダンスも表示される。ロック画面はデフォルトでこんな派手なイメージになった
スタート画面は実にあっさりしている。デフォルトは1画面に収まる
デフォルトのデスクトップ。Vistaっぽい雰囲気だ

日本語対応も順調

 インストール後、ザッと様子を見る限り、Previewとそれほど大きな違いはない。見かけの点ではデフォルトのロック画面とデスクトップの壁紙が違う程度だ。

 チラホラと残っていた英語表記の部分も日本語になっている。例えば、画面の解像度で、「テキストやその他の項目の大きさの変更」において、「Let me choose one scalling level for all my displays」となっていた部分は「すべてのディスプレイで同じ拡大率を使用する」という表記になった。

Previewでは英語だった部分も日本語になっている

 また、このチェックボックスをオンにすると、カスタムサイズオプションで任意の拡大率を指定できるのだが、Previewでは100、125、150、200%……という固定区切りだったものが、Windows 8のときのように任意の値を入力できるように戻っていた。ただ、Windows XP形式のスケーリングを指定することができないのはPreviewと同じだ。

 そのほか、各種のダイアログボックスでの各設定項目の説明が、よりわかりやすいものになっているなど、最終的なチューニングがきちんと行なわれていることが分かる。ただし、ヘルプはインターネット経由で参照されるのだが、そこはまだ英語のままだった。

やっかいなIMEは相変わらず

 日本語入力についてはちょっとやっかいな仕様になっている。というのも、物理的に日本語キーボードが接続されているにもかかわらず、クリーンインストールでは、USレイアウトのEnglishキーボードがデフォルトとなっていて、日本語を入力することができなかった。これについては、コントロールパネルで優先順位を変更し、場合によっては英語キーボードを無効にすることで、日本語レイアウトのキーボードで日本語入力をオンオフしながら入力するという従来の方法を実現することができる。日本語IMEとして追加でATOK 2013を入れてみたが、これも特に問題なく使えるようだ。

 多くの場合、すでに任意の設定がされている状態からのアップグレードになるだろうし、メーカー製PCのプリインストールPCでは、各社がきちんと設定した状態で出荷するだろうから、こうした問題は起こらないとは思うが、自作機などにクリーンインストールする場合は注意が必要だ。

 「アプリウィンドウごとに異なる入力方式を使う」がオフになっているのは、Windows 8、8.1 Previewと継承されている。ここは、好みに応じてオンにしておくといいだろう。

IMEの仕様は決して使いやすいとはいえない。必ず設定されるUS配列の英語キーボードは削除してしまった方が使い勝手はよさそうだ

細かい仕様変更も散見

 PC設定についてもPreviewと比べて用語などがずいぶん整理されている。また、「PCとデバイス」において、タッチパッドの項目が追加され、「入力中に誤ってカーソルを動かさないように、クリックが作動するまでの待ち時間を変更します」に対して、「待ち時間なし」、「短い待ち時間」、「中程度の待ち時間」、「長い待ち時間」を設定することができる。デフォルトは「中程度の待ち時間」だ。

 面積が広くなる一方のタッチパッドだが、文字入力中に手のひらなどがふれて、思わぬ位置にカーソルがジャンプしてしまうことを回避するための設定だ。キーボードの打鍵中にはパッドを無効にし、打鍵が停止してからパッドを有効にするまでの時間を指定できる。これで入力中のイライラが解消されるかもしれない。もっとも、メーカー製のPCであれば、専用のユーティリティがこうした機能をサポートしていることも多い。

入力中にタッチパッドを無効にして誤操作を防ぐ仕組みが設定できるようになった

 OSとSkyDriveとの統合についてもうまくいっているように見える。ただし、同期に時間がかかるのは相変わらずで、手元の環境では実際には約40GBのファイルがあるが、デフォルトではオフの「すべてのファイルにオフラインでアクセスする」をオンにしたあと、半日ほど放置したが4分の1ほどしか同期が進行していない。この分だと2~3日は時間がかかりそうだ。一般向けのアップデート後のパフォーマンスがちょっと心配だ。

 ちなみに、SkyDriveは、Previewの時点でシステムフォルダの1つに昇格しているが、RTMでは、そのプロパティで場所を変更できるようになっていた。お気に入りやピクチャ、ドキュメントなど、個人用フォルダの中のシステムフォルダの多くはプロパティで場所を変更できるが、SkyDriveもまたその1つとしてファイルシステム内の任意のフォルダを指定できるようになったのだ。さらに、SkyDriveフォルダはもちろん、その中にあるファイル、フォルダについて詳細表示で表示させると「利用可能性」という項目見出しが追加されていて、それらがオフラインで利用可能かどうかも分かるようになった。これらは実に歓迎すべき仕様変更だ。

SkyDriveはシステムフォルダで、その場所を任意のフォルダに指定できるようになった。異なるドライブでもかまわないし、ネットワークドライブでもかまわない

開発チームのスピード感

 このように、Previewが公開されてから、さまざまな意見や感想があちこちから集まったのだろう。細かいことであっても、きちんと対応し、微調整をしてきているのには感心した。MicrosoftがPreviewを公開したのは6月27日、サンフランシスコで開催されたカンファレンス /build 2013 の基調講演のときだった。そして、8月27日にRTMするまでの2カ月で、これらの変更を仕様に盛り込むことができたのはすごいことだと思う。

 このMicrosoftのスピード感には、もはや、Windows を変えることを怖れないという開発チームのムードさえ感じられる。もしかしたら、このことは、今後、Windows Updateで躊躇せずに機能のリニューアルや仕様変更を仕掛けてくるようになる兆しだといえるのかもしれない。

(山田 祥平)