Windows 8.1カウントダウン
Microsoftアカウントと密接につながるWindows 8.1
(2013/9/4 00:00)
ついに完成(RTM)したWindows 8.1。その大きな魅力の1つはMicrosoftの各種クラウドサービスが、OSに統合されている点だ。ただし、それにはMicrosoftアカウントの存在がポイントとなる。今回は、Windows 8.1のリリースに向けて、Microsoftアカウントについて考えてみることにしよう。
アカウントが同じなら設定も同じに
Windows 8.1が8月27日にRTMし、ハードウェアパートナーに対する配布が始まったという。残念ながら、MSDNやTechNetの会員向けのサブスクライバーダウンロードは提供されず、ソフトウェア開発者やITスペシャリストも、一般配布のタイミングである10月17日を待たなければならない。この連載でも、10月17日の当日までは、Preview版を元に話を続けることにしたい。
さて、Windows 8では、ローカルアカウントの代わりに、Microsoftアカウントを使ってログインできる。あるいは、ローカルアカウントとMicrosoftアカウントを関連付けて、シングルサインオンの仕組みを利用できる。
Microsoftアカウントは、かつてWindows Live IDとして知られていたもので、Microsoftの各種クラウドサービスを利用するために必要となるものだ。
Microsoftアカウントと関連付けられたPCは、信頼済みデバイスとなり、かつては10台までのPCを信頼済みデバイスとして登録することができた。
ところが、いつのまにかこの上限が撤廃されている。Microsoftの説明によれば、
Microsoft は信頼済みデバイスの管理方法にいくつか変更を加えました。たとえば、信頼済みデバイスごとに一意の名前を付ける必要がなくなりました (どれがどれだったかを覚えておく必要もありません)。数の制限がなくなり、いくつでも信頼済みデバイスを指定できます。
以上の理由から、セキュリティ情報ページから信頼済みデバイスのリストを削除しました。2 か月間一度も特定の信頼済みデバイスにサインしなかった場合、そのデバイスは Microsoft アカウントから自動的に削除されます。これによって、気づかないうちに信頼済みデバイスを紛失したり盗難にあったりしてもアカウントのセキュリティが保護されます。後でいつでも信頼済みデバイスを指定できます。
とある。つまり、Micrsoftアカウントには台数の上限なく、PCを追加することができるようになったわけだ。
Microsoftアカウントに関連付けられたPCは、その設定が同じアカウントに関連付けられたほかのPCと同期される。
Windows 8では、
- パーソナル設定
- デスクトップの個人設定
- パスワード
- 簡単操作
- 言語設定
- アプリの設定
- ブラウザー
- その他のWindowsの設定
以上の項目が同期の対象だった。
Windows 8.1では、
- パーソナル設定
・スタート画面
・デザイン
・デスクトップの個人設定 - アプリの設定
・インストールされているアプリ
・アプリデータ - その他の設定
・Webブラウザ
・パスワード
・言語設定
・簡単操作
・その他のWindows設定
と設定が細分化されている。かなり細かく同期するしないを設定できるようになっていることが分かる。
そして、これらの同期は、SkyDriveを介して行なわれる。Windows 8.1ではSkyDriveもまたOSの一部となり、個別にインストールする必要なく、PC設定で同期に関する詳細を設定できるようになっている。
信頼済みPCの台数の上限が撤廃されたこと、さらに、SkyDriveアプリを別途ストアから調達しなくてもよくなったことで、ファイルや設定の同期が何台のPCからでも可能になったわけだ。
信頼済みPCは無制限、ストアアプリは5台まで
信頼済みデバイスの上限がなくなったのに対して、ストアアプリをインストールできる上限はあいかわらず5台のままだ。6台目のPCに同じストアアプリをインストールしようとすると、既存のPCを解除するように促すメッセージが表示される。これは、無料のアプリであっても同様だ。
ただし、ここで任意のPCを削除してしまっても、そのPCでアプリを使うときには、別のPCを削除すればいい。アプリそのものはそのままPCに残るし、アップデートなども行なわれる。起動ができないだけなのだ。だから、多少は面倒だが、5台を超えるPCがある場合には、使うPCを変えるたびに、削除と追加を繰り返せば、その都度、同期が行なわれる。無制限の信頼済みデバイスのうち、同時に5台のストアアカウントが限定されるということであれば、運用で不便はなんとか解消できるだろう。
また、ストアと関連付けるアカウントは任意のものを追加することもできる。複数のアカウントを用意しておけば、たくさんのPCがあってもそれほど不便を感じることはないだろう。ただし、アカウントが異なる場合、アプリデータの同期が行なわれないため、その点で多少使いにくいかもしれない。
整理すると、
- Windows 8.1にMicrosoftアカウントでログオンするとSkyDrive経由で各種の同期が行なわれる。
- Microsoftアカウントに関連付けられたPCは信頼済みPCとなる。
- 信頼済みPCの台数に制限はない。
- 同じMicrosoftアカウントでインストールしたストアアプリは5台のPCで使える。
- Microsoftアカウントは複数の取得が可能。
- ストアで別のアカウントに切り替えれば、ダウンロードとインストールができる。
- ストアのアカウントを切り替えても、いつでも元に戻せる。
- ストアのアカウントとログオンしているアカウントは別でもいい。
ということになる。
8.1へのアップデートはMicrosoftアカウントが必須か?
Windows 8.1は、10月17日の時点で、ストア経由で配布されることになっている。Preview版では、アップデートは更新プログラムをインストール後、ストアのアップデートページを開き、そこでアップデートを開始した。
本番では、その更新がWindows Updateでくるのか、特別なページが用意されるのかは、現時点では分からないが、Windows 8.1へのアップデートには、Microsoftアカウントが必須となることは間違いなさそうだ。もし、Windows 8をローカルアカウントで利用していて、Microsoftアカウントとの関連付けもしていない場合は、Windows 8.1へのアップグレードが事実上不可能ということになるだろう。
Widows 8.1へのアップグレードは、無償配布ということもあり、Windows 8ユーザーの多くがアップデートをすることになるだろう。AndroidやiOSなど、モバイル系OSの多くが、キャリアや端末ベンダーに依存しながらも、無償でOSをアップデートするのが当たり前になってきている中で、今後、Microsoftは、Windowsのアップグレードを有償にするつもりがあるのかどうかも興味深い。無償配布にすることで、これまでよりもOSの世代交代がうまくいくのなら、その方がOS世代の分断が少なくなり、クラウドサービスを含む戦略的な面でも展開が容易になる可能性もあるからだ。それによって、今、Windows XPがいつまでも使われ続けているような状況を最小限に食い止めるようなこともできるかもしれない。いろんな意味で、今回の8.1アップデートは、今後のMicrosoftの方針を左右することになりそうだ。