Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ

Edgeが示すWindows 10の不可解さ

 Windows 10 Insider Preview Build 14267が公開された。リカバリ後再起動できないという致命的な不具合が修正されたほか、標準ブラウザのEdgeに多少手が入っているようだ。今回は、そのEdgeについて見ていこう。

お気に入りバーが改良されたEdge

 今回のビルドで追加されたEdgeの新しい機能の1つが、お気に入りバーの表示に際して、タイトル付き、アイコンのみを選択できるようになったというものだ。だが、アイコンのみでは役に立たないことはすぐに分かる。フォルダを作ってもそれを区別する方法がないからだ。

お気に入りバーはアイコンのみを表示するように設定できるようになったが、フォルダがあるとまるで役にたたない

 そもそも、Edgeでは、お気に入りやお気に入りバーを整理するということがまったく考えられていない。まるで、この機能を使うなと言わんばかりだ。ファイルシステムの中で、これらのファイルがどこにあるのか、何を基準に並べられているのかなどなど、標準的なインターフェイスからはたどりつくことができないのだ。

 これは、Microsoftがお気に入りやお気に入りバーなどに入れて使うほどに頻繁に利用されるサイトは、できる限り早期にユニバーサルアプリに移行して欲しいという意向なのだろう。ただ、世の中にはOS標準のブラウザが必要で、それを基準にしなければならない世界もある。そのためにシンプルで高速なブラウザとしてEdgeを用意したにすぎないように思える。

 そもそもWindows 10では、異なるデバイスの間で、お気に入りの内容は相互に同期することになっているが、少なくとも手元の環境ではそうならない。仕方がないので、Chromeをインストールして、そこで同期されたブックマークをEdgeにインポートするといった手でしのいでいる。お気に入りを全て削除して最初から全部やり直そうと思っても、20年近くの間にたまりにたまったお気に入りを何千個も一度に削除する方法が用意されていないのはどうかと思う。

 今回のアップデートでは、このほか、ダウンロード後の通知がウィンドウとしてポップアップし、その場で実行するかどうかが分かりやすくなっている。Edgeにも少しづつ手を入れ始めていることは分かるが、どうにも基本的な部分での不具合が目立ちすぎるのはいただけない。

Edgeでのダウンロード時の終了は別のウィンドウがポップアップするようになった

同期がうまく機能しないEdge

 EdgeにはInternet Explorerにはなかった機能として、組み込みのリーディングリスト機能が用意されている。ここに登録しておいたWebページは、ほかのデバイスのEdgeからリーディングリストとして同期されることになっている。「ことになっている」と書いたのは、少なくとも手元の環境ではその同期が行なわれないからだ。

 手元の環境は、十数台がInsider Previewばかりになってしまっていて、昨秋(2015年)にリリースされたBuild 10586だけで構成した環境ならうまくいくのかもしれないが、こうした基本的なことさえうまくいっていないのはどうかと思う。

 リーディングリストは、例えば移動中などに見つけたWebページを、あとでゆっくり読むために登録しておくためのものだ。いわゆる「あとで読む」系機能として知られているものだ。Windows 8では、独立したアプリとして存在したが、現在は、Edgeの組み込み機能になってしまった。そのため、ほかのブラウザからこの機能にアクセスできないといった不便もある。AndroidやiOS用にEdgeが提供されていたり、あるいは、モバイルアプリとしてリーディングリストが提供されていて、その同期が正しく機能していれば便利な機能だと思うのだが、現時点ではその願いは叶いそうもなく、今まで通り、Pocketなどの著名アプリを使っている。

 ただ、Edgeは、これらの便利ユーティリティによる拡張ができない上に、各ユーティリティが登録用に提供しているJava Scriptも使えないので「見ているページを後で読む」ということさえとても不便だ。

関連付けを無視するEdge

 Windows 10の標準ブラウザがEdgeであることは、設定の「システム」-「既定のアプリ」で、Webブラウザを確認すれば分かる。もし、どうしてもEdgeを使い続けることができないなら、ここで、ほかのブラウザに変更することができる。もちろんWindows 10には、全てのアプリ等のメニューには存在しないが、昔懐かしいInternet Explorerも入っていて、ここで指定すれば、それが標準のブラウザになる。

 Edgeは既定ではブラウザが開く拡張子やプロトコルとして、


    拡張子
  • HTM
  • HTML
  • PDF

    プロトコル
  • HTTP
  • HTTPS
  • MICROSOFT-EDGE
  • READ

を開くようになっている。これはコントロールパネル内の「既定のプログラム」で分かる。

Edgeが開く項目の設定を確認する

 ここでPDFがEdgeで開くように設定されていることに気が付く。Webページ上にPDFへのリンクがあった時に、それをクリックするとEdgeが開くが、この設定のためだ。

PDFファイルがEdgeに関連付けられている

 業界標準としてのPDFをブラウザでサポートしているのだから、特別なプログラムをインストールしなくてもブラウザで読めるようにしておけば、知識のないユーザーには便利だろうという配慮だろう。Windows 7辺りまでのWindowsプリインストールPCは、ほとんどの場合、Adobe Acrobat Readerをメーカー側がプリインストールしていたが、最近の製品ではそれがないのは、なんらかの話し合いが行なわれたのだと思われる。

 もちろん、ユーザーが独自にAcrobat Reader DCなどをインストールすれば、この設定は書き換わる。ところが、書き換わった状態であるにも関わらず、EdgeでPDFへのリンクを開くとEdgeがそれを開くのだ。設定を確認しても、Edgeとの関連付けは解除されている。

Adobe Acrobat Reader DCをインストールすると、PDFはそちらに関連付けられる。その結果、ファイルシステム内のPDFファイルはDCが開くようになる。ところがWebページ内のリンクを開いた時にはあいかわらずEdgeがPDFを開いてしまう

Insider Previewに新しいリングが登場したらしい

 Windows 10は使いやすいOSだとは思うし、Windows 8までの矛盾もうまく排除されているようにも見える。だが、例えInsider Previewとは言え、こうした基本的なところが放置されていると、本当にこのまま信じていていいのかどうかという不安にもかられてしまう。

 現ビルドの時点で、この現象を回避する方法は見つかっていない。少なくとも手元の環境ではそうだ。Build 14267は、ブルースクリーンが多発するなど、ちょっと不安定なバージョンだ。どうにも環境を選ぶようで、特に、外付けグラフィックスを持つ環境で問題が出ているようだ。その前のビルドは、Intelプロセッサ内蔵グラフィックスでの不具合が多発していたので、現在は、この辺りを裏側で調整しているのではないかと見られる。

 Insider Previewは、開発途上のバージョンを提供するもので、ある程度の不具合は仕方がないものと受け入れる必要があるが、さすがに、ここまでじゃじゃ馬だと、リングをスローに戻そうかなと思ったりもする。ちなみに、Microsoftでは、前回のビルドからInsider Previewに従来のFastリング、Slowリングに加え、リリースプレビューと呼ぶさらに安定したリングを用意するそうだ。「そうだ」と書いたのは手元の環境では、どれもそのリングを設定することができない状態だからだ。既に選べるようになっている環境の方もいるようだが、これまた原因は謎のままだ。できることなら数台はこの新しいリングに設定したいと思うのだが、そうはいかないのがつらい。

(山田 祥平)