Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ

Windows 10の日本語環境を知る

 日本で使われるOSである限り、日本語環境にこだわるのは当然だ。Windowsとて例外ではない。今回は、その入力や表示について見ていくことにしよう。

代り映えしない日本語IME

 現時点でInsider PreviewはBuild 14279が3月4日にリリースされている。次の大きなマイルストーンとされる「Redstone1」に向かって着々と準備が進んでいるようだ。ロック画面とログオン画面の壁紙を共通にし、同じ壁紙を表示したままでログオンができるなど、ちょっと新しさを感じる変更もあった。

 この新しいビルドでは、日本語のMicrosoft IMEについての改善も含まれているという。タイピングレスポンスが向上したのに加え、予測変換の候補についての変更もあるらしい。とは言え、実際に使ってみるとそのどちらもあまり変化は感じない。わざわざ特筆するような改善があったと期待しない方がいい。ただ、変換効率については、巷で言われているほど悪くはないと感じている。こうして普通の文章を書いている分には、特に大きな不満はない程度には変換してくれる。

 予測候補については、その表示までの文字数を指定したり、過去の入力履歴を使用するかどうか、クラウド候補を使用するかどうかを決めておくオプションが用意されている。デフォルトではクラウド候補はオフになっている。これは、Bingを使ってクラウドから候補を取得する機能だ。なお、入力中のテキストは暗号化された状態でBingに送信される。

詳細設定でクラウド候補を使用するかどうかを設定しておける。デフォルトではオフになっている

 これらの設定をうまく使うと、ほとんどタイプしないで文章を完成させられるかもしれない。まともにキーボードが叩ける時には、それほど便利さを感じないかもしれないが、片手しか使えないとか、ソフトキーボードを使わなければならないといったケースでは、大幅な省タイプが実現される。数文字入れれば候補が表示されるので、タブキーで候補から入力したいフレーズを選べばいい。もちろん、スペースキーを叩けば通常の変換になる。

 候補一覧のうち、クラウドから取得した候補には「Bingオートサジェスト候補」として雲のマークがつく。たとえば、「かいとうや」と入れれば、現在の人気ドラマ「怪盗山猫」が出てきたりするわけだ。でも、この原稿を書くためにオンにしたりオフにしたりしているうちにクラウド取得ができなくなってしまった。どうにも不安定だ。どうせなら「いつか」くらいを入れれば「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」くらいを出してほしいところだが、そうは問屋が卸さない模様だ。ちなみに、このあたり2月にリリースされたATOK 2016あたりなら完璧にこなす。

新しくなって予測変換が快適になったはずのMicrosoft IME。「うたの」と入れても予測しない
ATOK 2016では当然のように予測候補が表示される

キーボードレイアウトの呪いは解消せず

 スタートメニューの設定には「時刻と言語」というカテゴリが用意されている。この中の「地域と言語」では、言語の入力や表示についての設定ができる。日本語のオプションではハードウェアキーボードレイアウトが指定でき、日本語キーボード(106/109キー)か、英語キーボード(101/102キー)を選択できる。

 日本語キーボードを繋いでいるのに英語キーボードとして認識されたり、あるいはその逆だったりと、連綿と続いてきた持病ともいえるキーボードレイアウト誤認識だが、ようやくこうした簡単な方法で設定ができるようになったかと思いきや、変更するとサインアウトを求められ、それにしたがってサインアウトして、もういちどサインインしても、設定自体は変わっているが、キーボードのレイアウト認識については、設定変更前と同じままだ。

 キーボードレイアウトの誤認識は、よく起こりがちでありながら、それを修正する方法が極端に難しい。デバイスマネージャーでキーボードを見つけて、そのドライバを変更するといったことをいつまで強いるのかと思う。ここはひとつ、早期の改善を望みたい。願わくば、異なるレイアウトのキーボードを接続しても、正しく個別にレイアウトを指定することができるようになっていてほしい。HIDデバイスのハードウェアIDを調べて、レジストリを書き換えるといったことでしかできないなら、それをできるとはいわない。

言語のオプションでハードウェアキーボードレイアウトができるように見える
ハードウェアキーボードレイアウトが手動で設定できるようになったかのように見えて実はできない

日付と時刻を任意に書式設定

 日付と時刻については、タイムゾーンを自動的に設定できるようになっている。接続されたネットワークによって、今、その環境がどの地域にあるかを認識し、タイムゾーンを切り替えるのだ。海外で使うモバイルノートPCなどでは便利な機能だ。ただ、渡米中に日本での予定を入力するような時に混乱してしまう可能性もある。そのため、デフォルトではこの機能はオフになっている。必要に応じてオンにしておこう。

 また、日付の形式については、週の最初の曜日、日付と時刻について、長い形式と短い形式をいくつかのパターンから選択できる。それ以上にカスタマイズしたい場合は、コマンドリンク「日付、時刻、地域の追加設定」をクリックすると、コントロールパネルが開くので、そこから「日付、時刻、または数値の形式の変更」を選び、「追加の設定ボタン」で日付タブから自分が好きな書式を設定できる。

 例えば短い形式の日付に曜日を添えたいのであれば、

yyyy/MM/dd'('ddd')'

と指定しておくことで、

2016/03/08(火)

と表示されるようになる。この短い日付は、タスクバーの右端の時刻、日付表示や、エクスプローラーの日付時刻、更新日時などでも使われる。また、週の最初の曜日はカレンダーアプリなどで使われる。

時刻と言語の設定ではタイムゾーンを自動的に取得するように設定できる
スタートメニューの設定では限られた候補の中から書式を選べる
自分で設定することで細かく書式を設定できる。曜日を表記するようにしてみた
タスクバー右端の時刻表示にも曜日を出すことができる
短い日付はエクスプローラの日付時刻欄でも使われ、曜日が表記されていることが分かる

個人情報を預けるからこその学習

 Windows 10は、音声や手書きの入力、キーボード入力などを収集し、それを学習するようになっている。また、最近のカレンダーの予定、メールで届いた予約確認情報なども参照する。それが気になるのであれば、設定の「プライバシー」の「音声認識、手書き入力、入力の設定」で、「自分の情報を知らせない」ボタンを押すことで、音声認識やCortanaの機能がオフになるとともに、クラウド側に保存されている情報も消去される。

 Microsoftの説明によれば、

 「Cortanaが有効になっている場合、カレンダー、連絡先、Cortanaでトリガーされた場所、閲覧履歴など、お使いのWindowsデバイスから一部の情報がアップロードされ、Cortanaにあなたへのおすすめが表示されます。スピーチ、手描き、タイピングを個人設定し、有効にしている場合、カレンダーと連絡先もアップロードされます。この情報を消去すると、Cortanaにあなたへのおすすめを表示できなかったり、お使いのWindowsデバイスでスピーチ、手描き、タイピングを個人設定できなかったりします」

となっている。クラウドに情報を渡さない限り、Windowsでの体験は著しく劣ったものになってしまうことを覚悟する必要がありそうだ。

Siriに追いつき追い越せCortanaさん

 そのCortanaだが、日本語対応はしたものの、あいかわらず、まだまだ感が強い。

 Cortanaの設定では、各種のプライバシーに関することを設定できるほか、通常は、音声での問いかけにはマイクボタンを押す必要があるが、その代わりに「コルタナさん」と呼びかけることで、自動的に聞き取りモードに入るようにしておける。

 これによって、キーボードを叩けなくても、また、音声を入れるためにマイクのボタンをクリックしなくても、必要な指示をシームレスにCortanaに与えられるようになる。

 デスクトップが表示されているときに「コルタナさん」と呼ぶと、聞き取りモードになって、指示を待つ。

 ここで「今日の天気は?」などと聞けば天気予報を読み上げてくれる。ここまでできるのだから、iOSのSiriのように「5分経ったら教えて」くらいは理解して欲しいものだ。現時点では「5分後にアラーム」と言わなければならない。「明日の朝9時に起こして」ではきちんとアラームをセットするなど、理解できることとできないことが少しチグハグな印象がある。日本マイクロソフトによれば「育成中」とのことだが、どうにも成長が遅いように感じられてならない。華麗に成長した姿を拝める日を楽しみにしておきたいと思う。

コルタナさんと呼ぶだけで応答するようにも設定できる
少しずつ成長しつつあるCortanaだが、まだまだ育成中
翌朝8時のアラームをセットさせてみる
アラームがオンになった
アラームアプリに指定した時刻がセットされている
自分の情報をクラウドから消去することもできる

(山田 祥平)