Windows 10カウントダウン
ユニバーサルウィンドウズプラットフォームが目指す将来
~最新ビルドでOfficeを使う
(2015/5/13 06:00)
Windows 10のアプリケーションモデルはWindows Universal Platform(WUP)が主たるものになることが表明された。Technical PreviewはInsider Previewと呼称が改められ、現時点ではBuild 10074がWindows Updateによる更新、ISOともに公開されている。今回は、最新ビルドとほぼ同時に公開されたOffice 2016などを見ながら、Windows 10の将来を見ていくことにしよう。
UWPアプリがメインストリームのアプリケーションモデルに
Windows 8.x におけるアプリケーションは、従来のWindowsと互換性を持つWin32デスクトップアプリと、Windows 8.x専用のいわゆるWinRTアプリ(モダンアプリ)の2種類があった。Windows 10でのメインストリームは、このうちモダンアプリがとWUPアプリに置き換わる。もちろん過去との互換性のために、Windows 10では、8.x用に開発されたモダンアプリを動かすこともできるので、アプリケーションモデルとしては3本建てということになる。
WUPアプリは、Microsoftが言うところの2~3年後には10億台に達するというあらゆるWindows 10デバイスで動くことになっている。10億台という数の規模としてはAndroidスマートフォンのほぼ1年分の出荷台数に匹敵する。この値にはWindows PhoneやXboxなども含まれ、そのすべてで動くアプリがWUPアプリということになる。ただし、WUPアプリは過去のWindows 8.x以前との互換性はない。まったく新しいアプリケーションモデルとなる。つまり、Windows 10のメインストリームはWUPとなり、これまでのデスクトップアプリはこれまでPCと呼ばれてきたデバイス専用のサブプラットフォーム的なものになると考えていい。
WUPアプリは、普通のユーザーが使う分にはデスクトップアプリと区別がつかないものとなるだろう。デスクトップ上のウィンドウとして稼働するし、タスクバー上のタスクボタンとしても表示される。見かけの上ではこれまでのデスクトップアプリと何も変わらないからだ。
さらにデスクトップアプリはWUPアプリへの移行を求められるようになる。多くのベンダーはそれにしたがうことになるだろう。少ない工数でデスクトップアプリをWUPアプリにすることができて、そのデメリットがないのなら、対応デバイスが多い方がビジネスとして成立させやすいからだ。
しかも、すべてのアプリは単一のストアで販売されるようになる。これまでは、パッケージやウェブサイトなどで個別に配布されていたフリーアプリ、有料アプリだが、それらはストアを介しての入手になる。ストアで配布されるアプリは、Microsoftのチェックを通ったものだけなので、入手する側としてはある程度の安心を担保できる。Android OSのように「提供元不明のアプリ」のインストールを許可するかどうかといった選択肢はない。隔離された空間で稼働するため、クラッシュなどで他のアプリを巻き込む心配もない。
Officeが予言するアプリの将来
デスクトップアプリとWUPアプリそれぞれをMicrosoftがどのように位置づけたいかを知る上で、Officeアプリの存在が参考になる。
今、Officeを構成するWordやExcel、PowerPointなどは、WUPアプリとしてのOffice Previewと、デスクトップアプリとしてのOffice 2016の双方が公開されている。
ここではWUPアプリとして提供されることになるであろうOffice Previewのはずなのだが、まだ方向性が定まっていない印象がある。例えばOneDriveの扱いだ。Office 2016のExcelなどから使われるファイルオープンのコモンダイアログは、参照コマンドでOneDriveを参照できるが、Office Previewでは、コモンダイアログでローカルにあるファイルしか参照することができない。
Windows 10では、OneDriveの扱い方がこれまでから変更され、ローカルに同期されていないファイルは通常のファイルエクスプローラから参照できなくなってしまっている。Office 2016のオープンダイアログではクラウド上のOneDriveにあるファイルを参照できるが、Office Previewではそれができないのだ。Office Previewの公開と、Office 2016の公開との間には期間が空いているので、こうしたチグハグな面が見受けられるのかもしれない。
さらに、双方を使ってみて気が付くのは、Office Previewが「ドラッグ&ドロップ」という操作を、ほとんど無視して作られている点だ。少なくともWordとExcelはそうなっている。PowerPointについてはドラッグ操作はできる。できなければ本当に使いにくいものとなるだろう。タッチを前提にすればそれでもかまわないのだが、実際、UWPアプリはデスクトップ上のウィンドウとして、マウス操作によっても使われることは多いはずだ。そこで、オブジェクトの移動やコピーなどの操作をドラグ&ドロップでできないのは不便だ。
さらに、Office Previewは1つのファイルしか開けない。別のファイルを開いたときに、それまで開いていたファイルを参照する方法がない。
こうした振る舞いを見ていると、今、デスクトップアプリとして提供されているOffice 2016は、実は、UWPアプリとして再構築されて登場するのではないかと勘ぐりたくなってくる。サンフランシスコで開催されたカンファレンス Build 2015では、実にさまざまなことが発表されて驚かされたが、デスクトップアプリとして成立しているOffice 2016が製品版がリリースされるまでの短期間にUWPアプリとして生まれ変わることができれば、Microsoftが描き、開発者らに対して提示している未来は信頼にたるものだという何よりも説得力ある証拠になるのではないだろうか。もっとも、OfficeがWindows 8.xやWindows 7サポートしないということはありえないし、そのためにはデスクトップアプリであり続ける必要があるから話はやっかいだ。
もっともHoloLensのようなデバイスでフルセットのOffice 2016が理論的には動くようになったとしても、そこには実用性は見出せないだろう。そのためにもOffice Previewのようなサブセット的な存在が必要だということなのかもしれない。いずれにしても、あらゆるものをアダプティブにするために、MicrosoftはすべてをUWPの世界へと牽引していかなければならないのだから、これからの展開からは目が離せない。
まだまだプレビュー
Build 10074を常用環境のWindowsとして見たとき、正直なところ、まだまだ実用にはほど遠い状態だ。だが、少なくとも手元では、OSそのものがクラッシュしたことは以前のビルドを通して1度もない。タッチが不可能になったり、マウスカーソルが表示されなくなったり、あるいは、キーボードを認識しなくなったり、スタートメニューがうまく反応しなくなることはあっても、なんらかの方法でOSは再起動ができるし、それによって正常な状態に戻る。
また、新ブラウザであるProject SpartanことMicrosoft Edgeも、レンダリング処理については速度面でも大きく改善され、体感で高速であることを実感できるようになった。これはこれで大きな進化だが、この状態で、これまでのIEに代わって常用できるかというとまだまだだ。お気に入りバーがうまく機能していなかったり、鳴り物入りで喧伝されたウェブページのメモ機能などは、まだ実装が不完全だ。
その一方で、ニュースアプリやスポーツアプリを使ってみると、レイアウトアダプティブな世界を実感することができる。Windows 8.xでのニュースやスポーツは、フルスクリーンのイマーシブアプリとして提供されていたし、基本的には情報が横へ横へとスクロールしていくようになっていた。
Insider Previewにおけるニュースやスポーツは、フルスクリーンでもスクロールは縦だ。そして、ウィンドウ表示にして、そのウィンドウサイズを変化させると、そのサイズに応じてコンテンツのカラム数が変わり、つじつまの合うようにコンテンツがレイアウトされて表示される。現ビルドでは画面の回転がうまく機能していないが、タブレットなどを回転させ、スクリーンを縦長にしたり、横長にしたりしても同様だろう。おそらくスクリーンを横方向にスクロールさせること、あるいはアプリごとに方向を変えることは、UXとして自然ではないとMicrosoftは判断したのではないだろうか。
ちなみにInsider Previewには、「開始する」というアプリが用意された。これは、Windows 10を使い始めるにあたってのチュートリアル的存在で、
・スタート
・検索
・Project Spartan
・アプリ
・フォト
・マップ
・Xbox
・エクスプローラー
・個人設定と設定
・タッチとキーボード
・更新プログラムとフィードバック
という各カテゴリについて、覚えておきたいヒント要素を学べるというものだ。日本語化もされていて、ザッとWindows 10で変わったことをおさらいするには役に立つかもしれない。そして、このアプリもまた、ちゃんとレイアウトアダプティブになっているところがミソだ。
そのほか最新ビルドで気がついたところとしては、デスクトップのパーソナル設定が変わったところだ。これは、Windows 8.xでコントロールパネルの「個人設定」を、新しいUIにしたものだ。気になるのは、ここでデスクトップの背景や各オブジェクトの色が指定できるのだが、その色がひどく限定的な点だ。例えば白がないなど淡色が含まれていない。これが意図的なものなのか、それともたまたままだ実装が不完全だからなのか。実に謎が多い。