山田祥平のRe:config.sys
まずはともかく日本を丸裸に
2025年12月20日 06:12

デジタル庁が日本政府の公的統計データをJapan Dashboardとして公開している。デジタル庁のデータに基づいたオープンな政策立案・実施を目指す取り組みの一部だという。各方面から公開されている情報を分かりやすく可視化している。これがあれば今の日本が強いか弱いかを改めて確認することができそうだ。公開が始まって約半年が経過し、教育をはじめとしたさまざまな用途に使われているという。
デジタル庁がJapan Dashboardを公開
デジタル庁が公開したJapan Dashboardは、これまで各省庁に散らばっていた行政データ、しかも、データがそこにあるのにExcelやPDFファイルの中に埋もれていて発見しにくかった情報を一元化し、グラフなどを使って可視化するチャレンジだ。
白書などは各省庁が発行していて、ある程度のことは分かるのだが、そのデータを深掘りしていくのが難しい上に、どうにもひとりよがりな印象は拭いきれない。だから、今回の公開は、個人的にはようやくここまできたかという感慨がある。これで誰もが日本を明確に健康診断できるようになったといえるからだ。
ここで素晴らしいのはデータの入手のためにデジタル庁が新たに調査などをしたわけではないということだ。つまり、既存のデータをどう見せるか、どう活用すれば、何が分かるかを明確にしただけだ。
基本的に内閣府が収集したデータで、各種数値は定期的に更新される予定だという。データの使い道はあくまでもエンドユーザーが決め、その分析もエンドユーザーに依存する。仕組みとしてはMicrosoftのPower BIを使っているようだが、インタラクティブに日本という国を再確認することができる。
集めた情報をデジタル化し、放り込んでおくだけだったブラックホール的なものでも、集めていないよりはずっといい。だが、今回は、その有象無象のデータを自由自在に分析のために使うことができる。
さらにこの存在を各AIエージェントが活用できるAgent2Agent(A2A)プロトコルやModel Context Protocol(MCP)で扱えるようになれば、より有効に生かせるだろう。AIは、こうしたDashboardがなくても公開されたデータを集めてきて、なんらかの結果を出してくれるかもしれないが、その元データをエンドユーザーがちゃんと理解しているかどうかは、その先の分析に大きな影響を与える。
見える化ポータルサイトのリニューアル
今回は、まず、経済/財政/人口と暮らし(市区町村ごと)に関するダッシュボードが公開された。
- 人口: 人口、婚姻・出生等
- 経済: 就業・労働、所得・課税等
- 教育: 学校数・教員数等
- 社会保障: 医療体制、医療費、検診受診率等
- 暮らし: 安全、居住等
- 社会基盤: 社会基盤
- 地方行財政: 基金、歳出・歳入等
という7つの大分類で約300の指標が整理されている。
1つの指標を地図で見たり、ほかの地方公共団体などと比べることができ、その関係性としての分布や相関関係を散布図で確認することができる。
もっと深掘りが必要なら指標データを一括ダウンロードして手元のAIに分析させればいい。
実はこれまでも経済/財政と暮らしの指標として「見える化」のポータルサイトで内閣府が関係省庁と連携し、その見える化を試みてきた。今回のダッシュボードは、その操作性の向上と機能の拡充によるリニューアルでもある。
リニューアルの基本方針は、利用者からの主な要望をかなえるかたちで検討されてきた。特に操作性の向上と機能の拡充に伴うユーザーエクスペリエンス(UX)の改善に重点を置いているという。操作性とデザインの改善や時系列分析への対応、複数指標の分析や、指標の一覧性、検索性の確保、ダウンロード機能の改善などを中心に改善されてきた。
もっともたかだか6~7型程度のスマホ画面で見るには無理がある。だが、PCでの視認性は高い。レスポンシブウェブデザインで、ウィンドウのサイズや向きに応じてレイアウト、画像サイズ、そのほかの要素が自動的に調整され、表示が最適化されるように設計されている。
こういう時代なのだから、スマホでの視認性ももう少し向上させられるように努めてほしいものだ。デジタル庁のサイトのレスポンシブウェブデザインは、かなり秀逸なのだから、工夫次第でもっとよくなるはずだ。
一般の市民が自分のスマホで自分の住む街、そして自分の住む国のデータを見られることはとても重要だ。だからこそ、がんばってほしい。モバイルファーストが当たり前の今、『市民の手元』で確認できてこそ真のオープンデータだ。レスポンシブ対応のさらなる洗練に期待したい。
データはうそをつかない
意図的にねじまげられていない限り、データがうそをつくことはない。だが、縦軸の目盛りがないグラフなど、印象操作は可能だ。ダッシュボードによる見える化では、そうした意図を効果的に排除することができる。
人口動態や高齢化率の右肩下がりや、物価や賃金の推移、特定地域の成功事例などを冷徹な数字として知ることができれば、明日の行動につながるアイディアが浮かんでくるはずだ。
もちろん、現時点のダッシュボードはゴールじゃない。ここでの見える化が、政策になって暮らしを作っていく。
今後の我々のスマートライフは、この国で暮らす一人ひとりが、自分ごととして将来を考えることで充実に向かうに違いない。










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