Windows 10カウントダウン
黒背景の刷新で黒歴史を払拭?
(2014/12/17 06:00)
Technical Previewは、いわゆるスタート画面をスキップするという選択肢を用意し、スタートメニューの復活という変化を見せたが、年明けに予定されているコンシューマ向け機能の紹介で、「タッチ」指向な部分がどのような変貌を見せるかが注目どころだ。タッチファーストを全面的に押し出してきたWindows 8.x のアイデンティティに関わる部分だけに目が離せない。場合によっては、Windows MEのような黒歴史にもなりかねないからだ。
年明けに紹介されることになったコンシューマ向け機能
Microsoftが2015年1月21日に、米レドモンドの本社で、Windows 10に関するイベントを開催することを発表した。このイベントで、Windows 10における一般コンシューマ向けの要素について説明するという。きっと、そのプレビューも同時に公開されるのだろう。
10月に発表されたTechnical Previewが次期Windowsの第1章であるとすれば、ここで第2章という次のステージに突入することになるのだろう。サティア・ナデラ同社CEOも登壇するというこのイベント、ぜひ参加して、この目で何が起こるかを確かめたかったが、残念ながら、日本人プレス枠はないとのことで断念せざるを得ない。
いずれにしても、こうして年明けに第2章としてのコンシューマ向け機能が紹介されることになった。その次、おそらく3月2日からのMobile World Congress 2015あたりのタイミングで第3章としてPC以外のデバイスについての対応が紹介され、4月29日からの開発者向けイベントBuild 2015で開発者向けプレビュー、あるいはベータに進むのではないだろうか。
このロードマップで開発が進むとすれば、2015年夏頃にはRTMし、来秋の各社新PC製品にプリインストール搭載されて出荷が始まるとみてよさそうだ。
MS-DOSの名残
さて、Technical Previewで、なんで今さらというくらいの手が入ったのは、意外にもコマンドプロンプトだった。暗黒の画面にテキストのみという味も素っ気もないウインドウだが、使いようによっては大いに役に立つ。
MicrosoftがWindows 3.0を世に出す前は、PC用のオペレーティングシステムといえば、普通はMS-DOSだった。日本においては、NECのPC-9800シリーズが事実上の標準だった1980年台当時、PCを購入すればDISK BASICがついてきたし、それがなくても電源を入れればROM BASICが起動した。PCはプログラミングして使うものだったわけだ。
MS-DOSの時代になり、その状況に少し変化が起こった。プログラムを開発するだけではなく、プログラムの実行環境としてオペレーティングシステムが普及し始めたのだ。PC-9800にはDISK BASICも付かなくなった。
大ベストセラーアプリケーションで、日本語ワープロの事実上の標準でもあった一太郎は、2015年の8月に30歳になるそうだが、MS-DOS時代は、パッケージ内のフロッピーディスク(FD)にはMS-DOSが格納されていた。つまり、アプリケーションにOSが付属していたのだ。
この状況は、後に、WindowsプリインストールPCのビジネスモデルの浸透によって変わってしまう。だが、プログラムを作るためのPCから、プログラムを使うためのPCへの変遷の中で、MS-DOSは重要な役割を果たしてきた。そして、その名残が、今も残るコマンドプロンプトだと言える。
command.comからcmd.exeへ
MS-DOSのカーネルは、msdos.sysとio.sysという2つのシステムモジュールで構成されていた。そして、ユーザーとOSが対話をするためのシェルとして、command.comが用意されていた。今のWindowsには、すでにcommand.comはない。その代わりに同等の役割を果たすキャラクタベースのUIを提供するプログラムとして、cmd.exeが提供されている。これがコマンドプロンプトの実体だ。このプログラムファイルは、通常、c:\windows\system32に格納されている。
Technical Previewでは、スタートボタンの右クリックによるショートカットメニューにあるし、Win+R などでコマンドとして「cmd」を入力してもいい。
実行すると、本当に味も素っ気も無い黒背景のウインドウが開く。プロンプトは「促す」という意味がある。カレントフォルダのあとに「>」のマークがあり、その右側でカーソルが点滅し、呪文、もとい命令の入力を待っている。
プロンプトに対して入力できる命令は、内部コマンドと呼ばれるcmd.exeがあらかじめ知っているものと、外部コマンドと呼ばれる別ファイルになったものの2種類がある。
例えば、ファイルの一覧を表示する命令は「dir」だが、これは内部コマンドだ。一方、c:\windows\system32を覗くと、ファイルの種類として「MS-DOSアプリケーション」というのが見つかる。これらが外部コマンドだ。Windows 8.1では7つあったが、Technical Previewでは5つに減っている。FDの内容を比較するdiskcompと、FDをコピーするdiskcopyがなくなっているのだ。これで、ついにFD時代は終わったということなのだろうか。
現代の外部コマンドは、これらMS-DOSアプリケーション以外にもたくさんある。例えば、notepadはメモ帳でGUIでウインドウを表示する。だが、同様にWindows用のアプリケーションでもipconfigのようにcmd.exeの中で実行されて、その結果もテキストベースのみというものもある。これらをひっくるめて、Windows OSの外部コマンドと言っていいだろう。コマンドは、今ではアプリケーションと呼ばれることが多くなっている。ちなみに、notepad.exeもcmd.exeにとっては外部コマンドであり、プロンプトに対してnotepadと入力するとメモ帳のウインドウが開く。それとは別に、cmd.exeには、startという内部コマンドがあって、start notepadとすれば同様にメモ帳が開くし、start c:\windowsとすれば、ファイルエクスプローラがc:\windowsをGUIで開くといった具合だ。
コマンドプロンプトに種々のお試し機能が出現
さて、そのコマンドプロンプトだが、プロパティで各種設定を変更することができる。ウインドウ左上のコントロールを右クリックして、プロパティを開くと、8.xではタブが4つだったものが5つに増えている。
オプションタブではカーソルのサイズ、コマンドの履歴、編集オプションなどを指定することができる。また、フォントタブではフォントのサイズ等、レイアウトタブではウインドウのサイズや位置、画面の色タブでは文字や背景の色を指定する。ここまでは8.xとTechnical Previewは同様だ。
Technical Previewでは、Experimentalというタブが追加されている。実験用のという意味だが、「お試し」くらいの意味にとっていいだろう。
このタブでは、まず、お試し機能を有効にするかどうかをチェックすることで、各種の機能を有効にできるようになる。
用意されているオプションとして、
・行単位での選択を可能にするかどうか
・クリップボードからの貼り付け時にタブなどを除去するかどうか
・ウインドウサイズにテキストをあわせるかどうか
・コントロールキーショートカットを有効にするかどうか
・拡張エディットキーを有効にするかどうか
・選択時に先頭のゼロを取り除くかどうか
を設定できる。また、ウインドウの透明度を指定することができるようになり、背後のウインドウの上に重ねてウインドウを表示させることができるようになっている。なお、ここでの設定は、いったんウインドウを閉じて、もう一度開かなければ有効にならないものもある。
GUIでCUIを操作する
早い話が、今回の、コマンドプロンプトの機能拡張は、GUIの操作しか知らないユーザーに、それらと同じ感覚でコマンドプロンプトを使えるようにするものだ。
コマンドプロンプトも1つのGUIウインドウとして、他のアプリケーションとの間でのデータのやりとりが、マウスによる範囲選択や、Ctrl+C/Vといったクリップボードとのデータのやりとりでお馴染みのショートカットで簡単に行なえるようになる。
Microsoftが、なぜ今さら、コマンドプロンプトの機能を拡張したのか、その理由は定かではない。でも、コマンドの実行結果のコピー&ペーストが面倒なばかりに、clipコマンドを使って、コマンドの標準出力をクリップボードにコピーして、エディタなどに貼り付けてから、それを吟味してきたようなユーザーにはうれしい拡張かもしれない。
やはり、わざわざメニューからExcelを探して、それを開くよりも、Win+Rで「excel」とタイプする方が手っ取り早いと考えるユーザーもいるということだ。