笠原一輝のユビキタス情報局

Surface Laptopのキーボードがモバイル化。ボタン電池で3年使える「Designer Compact Keyboard」を買ってみた

iPad Pro(11型)とMicrosoft Designer Compact Keyboard

 Microsoftは、Surface Laptop GoとSurface Pro XのSQ2版の発表と同時に、「Microsoft Designer Compact Keyboard」(以下Designer Compact Keyboard)および「Microsoft Number Pad」というBluetooth接続のキーボードおよびテンキーを発表した。年末にはその日本語配列版の投入が開始されたが、筆者もそれらの製品を入手したので、その使い勝手などを紹介していきたい。

 いずれもBluetooth LE 5.0(Low Energy)に対応したワイヤレスキーボードで、フルサイズのキーを採用しながら比較的コンパクトにまとまっている。SurfaceシリーズのようなモバイルPCと組み合わせたり、iOSやAndroidベースのスマートフォン/タブレットと組み合わせて利用できるのが特徴だ。

ボタン電池4つで3年間使えるというDesigner Compact Keyboard

Microsoft Designer Compact Keyboard

 Microsoftのモバイル向けキーボードと言えば、2012年7月に日本で発表されたWedge Mobile Keyboardがよく知られている。Bluetooth接続のキーボードで、キーピッチこそフルサイズではなかったものの、ゴム製のふた(および特定キーの組み合わせ入力)がスイッチの代わりになっており、かつタブレットやスマートフォンのスタンドとしても利用できるという、なかなか考えられた構造になっていた。

 今回発売された「Designer Compact Keyboard」も、コンセプトとしては同じくモバイル向けとなっているが、Wedge Mobile Keyboardで採用されていたスタンドにもなるゴム製のふたは廃止されている。

 このため、Wedge Mobile Keyboardには用意されていなかったハードウェアの電源スイッチが用意されており、かばんの中で電源が入ってしまうという“悲劇”を防げる。

上がDesigner Compact Keyboard、下がWedge Mobile Keyboard
Designer Compact Keyboardの外箱
ふたを開けるとキーボードが入っている
付属品はマニュアル

 もう1つの大きな違いはバッテリだ。Wedge Mobile Keyboardは単4型電池2本で駆動する形になっていたが、今回のDesigner Compact Keyboardはボタン電池(CR2032)を4つ利用する仕組みになっている。気になるバッテリの持ちだが、前者が通常の利用方法で6カ月だったのに対して、後者は最大36カ月、つまり3年が公称値になっている。

 なぜ、ボタン電池4つと容量がなさそうなバッテリでそんなに持つのかと言えば、無線がBluetooth LE 5.0になっているからだろう。

 Bluetooth LEは、その名前の通りBluetoothの無線を利用して低消費電力でデータのやり取りができる仕組みで、ソース(送信側)とシンク(受信側)の両方が対応していれば、非常に少ない電力でデータのやり取りが可能だ。具体的にはセンサーのような低消費電力な機器に実装し、ボタン電池で1年間デバイスを動かし続ける、といった用途に使われたりしている。

 キーボードも人間がどのキーを押したのかという情報だけを送れればいいので、送信しているデータ量はさほど多くない。従って、Bluetooth LEで十分対応できる機器になるのだ。このため、ボタン電池4つで3年間使えるという驚きのバッテリ駆動時間が実現できる訳だ。

裏面。電源スイッチを用意。SIMピンを利用して電池ぶたを開ける
ボタン電池4つで3年間使えるという公式スペック

 なお、CR2032はボタン電池としては非常にありふれており、日本でも様々な機器で利用されている。ゆえに、コンビニエンスストアや100円均一ショップなどで購入可能で、入手性は非常によい。

 例えば、出先でバッテリがなくなったとしてもすぐに入手できるので、バッテリ切れとなっても心配する必要がないのはうれしいところだ(そもそもボタン電池4つで3年持つというスペックで、製品の寿命が尽きる前にバッテリ切れを何度経験できるのか分からないが……)。

3つのデバイスで切り替えて使用可能。ただしFnロック状態での機器切り替えには要注意

キーボードユーティリティのMicrosoftマウスキーボードセンターでFnロックの設定が可能になっている

 Designer Compact Keyboardを利用するには、PCやタブレット、スマートフォンとBluetoothのペアリングをしておく必要がある。

 ペアリングするには、電源スイッチを入れ、Bluetoothのマークが書かれているF1を長押しすることでペアリングモードになる。なお、F1キーには「1」、「2」、「3」と3つの数字が書かれており、F1キーを押すとランプが切り替わっていく。

 この数字は、ペアリングしているデバイスの番号を示しており、それぞれの数字に別のデバイスをペアリングしておいて素早く切り替えられる。例えば、「1」にはSurface Proを、「2」にはiPad Proを、「3」にはAndroidスマートフォンを登録しておけば、シーンに応じて切り替えて使える。

 今回は手持ちのSurface Pro 7、iPad Pro、Galaxy Note 20 Ultra 5Gの3つにそれぞれペアリングしてみたが、特に難しいことを考えなくてもペアリングできて、切り替えて使えた。

F1キーでペアリングしておいてデバイスを切り替えられる。F1キーのインジケータでどのデバイスに接続しているかを判別可能
Microsoftマウスキーボードセンターから、接続されているデバイスのうち使っていないものをオフにしたりもできる

 ただ、ペアリングで1つだけ気を付けたいのは、PCに接続してMicrosoftのキーボードユーティリティ「Microsoftマウスキーボードセンター」をインストールして、Fnキーの設定を「ロック」した後だ。

 Designer Compact Keyboardは標準状態で、Fnキー上に書かれている特定機能が有効になっている。F1なら前述の通りBluetoothのペアリングキーだし、F2はミュート、F3はボリュームダウン、F4はボリュームアップなどと割り当てられており、Windows標準の割り当てであるF1(ヘルプ表示)、F2(編集)などを利用するには、Fn+F1、Fn+F2という2つのキーを組み合わせて利用する必要がある。

 こうしたFnキーの特定機能への割り当てをWindows標準設定にロックすることを「Fnロック設定」と呼んでいるのだが、これをオンにするには、前述のMicrosoftのユーティリティソフトウェアをインストールして、Fnロック設定をオンにする必要があるのだ。特に、日本語入力ではF7、F8、F9を多用している人も少なくないと思うので、そうしたユーザーにとってはFnロック設定ができることは重要なポイントだ。

 注意したいのは、このFnロックは一度オンにすると、ずっとオンになったままになる。すなわち、FnロックをオンにしたPCとのペアリングを切断しても、ずっとオンのままだ。このため、Bluetoothの接続デバイスを切り替えたり、ペアリングする時には、それぞれFn+F1、Fn+F1長押しが必要になる。

 逆にオフにしたい場合には、一度Windows PCに接続してMicrosoftマウスキーボードセンターで設定を変えなければならない。

 これが分かっていないと、ペアリングできなくなるので注意したい(要するに筆者がそれにはまったということだ)。最近の製品でのFnロックはキーボードだけで切り替えられるものが少なくないので、できれば将来の製品ではそうしてもらえるとありがたいと感じた。

 Microsoftマウスキーボードセンターでは他に、右側Altキーの右にある「表現キー」をOfficeキーにしたり、F5(再生/一時停止)、F6(メディアプレーヤーの起動)、F7(検索)、F8(画面の切り取り)に別の機能を割り当てたりすることも可能になっている。なお、左CtrlとFnキーの入れ替えはこのツールでは行なえない。

F5からF8までのキーとFnロック、表現キーの設定が可能になっている
アプリケーションごとに設定することも可能

キーボードのサイズはSurface Laptop 3/4の13.5型とほぼ同サイズ

上のキーボードがSurface Laptop 4 13.5型、下がDesigner Compact Keyboard。「無変換」「変換」が「A」「あ」になっていることを除くとほぼ同じキー配列や大きさになっている

 このDesigner Compact Keyboardの日本語キーボード配列は、2020年の10月に発表されたSurface Laptop Goとほぼ同じで、Surface Laptopでは電源と指紋センサーになっているDelキーの左のキーが、ロックキーになっているのが唯一の違いと言ってもいい。特徴的な「無変換」がIMEオフの「A」に、「変換」がIMEオンの「あ」になっているのも同じだ。

 一方で、サイズはSurface Laptop Goよりもやや大きめとなっている。例えば、「半角/全角」キーなどはDesigner Compact KeyboardのほうがSurface Laptop Goよりも大きく、サイズ的には1つ上のクラスになるSurface Laptop 3ないしはSurface Laptop 4の13.5型サイズと考えると分かりやすいだろう。

 つまり、Designer Compact KeyboardはSurface Laptop 3/4の13.5型のキーボードをベースにして、「無変換」を「A」に、「変換」を「あ」にしたキーボードだと考えると理解しやすい。

 以前紹介したThinkPadのキーボードをそのまま外付けにした「ThinkPadトラックポイント キーボードII」と同じように、Surfaceのキーボードを外付けにしたキーボードがこのDesigner Compact Keyboardだと言ってよい。

Surface Laptop Goと同じ「A」と「あ」になっている
キー配列
キーピッチ
縦は約11cm(スペック上は110.77mm)
横は約28cm(スペック上は284.07mm)
前後の傾斜はそんなに大きくない。傾斜が大きいほうがいい人には物足りないかもしれない

 実際、キータッチもSurface Laptopにかなり近いタッチになっている。最近のノートPCでは当たり前となった薄型のキートップになっているため、ストロークが深いわけではないが、打鍵感には不満はなく、薄型キーに慣れ親しんでいるユーザーなら快適に入力できるだろう。

 また、従来製品と言えるWedge Mobile Keyboardと比較すると、横幅が大きくなったことで、キーボードのピッチがフルサイズになり、入力しやすさが増している点は注目に値するだろう。

 ただ、人によってはやや傾斜が足りないと感じるかもしれない。後ろの電池の部分があるため、Fnキー側が一番高く、スペースキー側が一番低くなっているが、付いている角度はわずかだ。傾斜が足りないと感じるユーザーは、使う時に奥側底面に何かを置いて使うなどの工夫でしのぎたいところだ。

 新しいキーの「A」と「あ」だが、Windows標準のMS-IMEであれば、「A」を押すとIMEがオフ、「あ」を押すとIMEがオンという形で利用できる。

 ただし、現状ではサードパーティのIMEは未対応で、1月末にTech Ver.32にバージョンアップされたATOKでも使えなかった。もちろんその場合やMS-IMEでも、Fn+半角/全角の組み合わせでIMEを切り替えられるので、従来通りの使い方は可能だ。

Microsoft Number Pad
背面
Designer Compact Keyboardと共通デザイン
Microsoft Number Padの外箱

 なお、Designer Compact Keyboardと同じデザインテイストで提供される「Microsoft Number Pad」も基本的には同じ構造で、こちらもボタン電池だけで動作する。

 一方で、ペアリングの方法は異なっており、こちらは裏面にペアリング用のボタンが用意されており、そのボタンを長押しするとペアリング、1回押すとデバイスの切り替えという仕組みになっている。

 こうして見てきたように、Designer Compact Keyboard(およびMicrosoft Number Pad)はBluetooth LEに対応することにより、ボタン電池で動くという低消費電力さが特徴の1つで、どこでも買えるボタン電池4つで3年間も動作するというのは見逃せないメリットと言える。

 さらにキー配列やキータッチは、普段のノートPCとしてSurface Laptopを使っているユーザーであれば、何の違和感もなく使いこなすことができるだろう。また、ThinkPadトラックポイント キーボードIIもそうだが、ノートPCの薄型のキーボードに慣れてしまったため、デスクトップでもそうしたキーボードを使いたいというニーズも最近では増えている。そうしたニーズにもDesigner Compact Keyboardは最適だろう。

 このように、デスクトップPCと組み合わせて使ってもよし、出先でタブレットPCやスマートフォンと組み合わせて使ってもよしと様々な使い方ができる他、直販価格が8,690円と高級感のある外付けキーボードとしては安価で比較的購入しやすいこともポイントだ。

 在宅勤務(テレワーク)環境下で自宅で使えて、外にも持っていけるモバイルキーボードを探しているのであれば、本製品は十分検討に値する製品と言えるだろう。