笠原一輝のユビキタス情報局
第11世代Coreに進化。性能とバッテリ駆動時間が向上した「Surface Laptop 4」レビュー
2021年4月19日 10:08
Microsoftが4月15日から販売を開始した新しいクラムシェル型ノートが「Surface Laptop 4」だ。
2in1型デバイスがほとんどのSurfaceシリーズの中にあって、タッチとペンには対応しているものの、Surface Laptopシリーズはクラムシェル型の形状になっており、通常のノートPCと同じような感覚で利用することが最大の特徴。キーボードが分離する分離型ではなく、普通のノートPCのかたちでSurfaceが欲しいというユーザーにとってはうれしい選択肢となっている。ディスプレイは13.5型と15型の2つがあり、目的に応じて選択できる。
今回のSurface Laptop 4の最大の特徴は採用されているCPUが強化されたことだ。選択肢は2つあり、1つは第11世代Coreプロセッサ、もう1つがRyzen 4000だ。
今回は13.5型ディスプレイで、CPUにCore i7-1185G7、メモリ16GB、ストレージ512GB、本体色はサンズストーンという「5EB-00064」モデルを試用する機会を得たので、製品レビューをお届けしていきたい。
従来のSurface Laptop 3の骨格はそのままにIntel、AMDの最新のCPUに強化されたSurface Laptop 4
今回発表されたSurface Laptop 4は、2019年10月にMicrosoftがニューヨークで発表したSurface Laptop 3の後継となる製品だ。Surface Laptop 3は、13.5型(2,256×1,504ドット)ないしは15型(2,256×1,504ドット)というアスペクト比3:2のディスプレイを採用しており、両製品とも同じポート(USB Type-C、USB Type-A、ヘッドフォン、Surface Connect)を搭載しており、キーボードやタッチパッドは同サイズで、両製品の違いはディスプレイサイズのみとなっていた。
今回のSurface Laptop 4でもそうした製品の骨格は変わっていない。13.5型と15型という2つのディスプレイから選択することが可能な点は同じで、両製品ともキーボードやタッチパッド、さらにポート類などは同じになっている。従来製品との違いは、基本スペックに関する部分で、CPU、メモリ、そしてストレージなどの選択肢が増えたこと、そして従来モデルに比べてバッテリ駆動時間が延びていることだ。
最大の強化ポイントは、CPUが1世代新しくなっていることだ。従来製品となるSurface Laptop 3ではIntelの第10世代CoreプロセッサとAMDのRyzen 3000だったのが、両メーカーとも1世代分だけ進んで第11世代CoreとRyzen 4000へと強化されている。Intel側は2020年9月発表の最新製品、AMD側は2020年1月発表の1世代前の製品(すでにRyzen 5000が発表されているため)となる。
今回レビューした「5EB-00064」という型番が付けられているモデルは、CPUにCore i7-1185G7、メモリ16GB、ストレージ512GB(NVM Express)という仕様になっており、本体色はサンズストーンで、パームレストはメタル(つまりアルカンターラ素材ではない)になっている。一般消費者向け製品となり、OSはWindows 10 Home(20H2)で、「Microsoft Office Home & Business 2019」のPIPC(Pre Install PC)ライセンスが付属している。
なお、4月15日に販売開始されたSurface Laptop 4(13.5型)は、現状ではCore i5とRyzen 5のモデルのみとなり、今回レビューした製品はまだ市場で販売されていないが、今後順次発売されることになる予定だ。
基本的な骨格はSurface Laptop 3を踏襲
Surface Laptop 4(13.5型)と従来モデルになるSurface Laptop 3(13.5型)をスペックで比較すると以下のようになる。
製品名 | Surface Laptop 4(13.5型) | Surface Laptop 3(13.5型) |
---|---|---|
CPU | ★Intel 第11世代Core/AMD Ryzen 4000シリーズ | Intel 第10世代Core |
GPU | ★Intel Iris Xe/AMD Radeon Graphics | Intel Iris Plus Graphics |
メモリ | ★8/16/32GB(LPDDR4X-4266) | 8/16GB(LPDDR4X-3733) |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB | 128GB/256GB/512GB/1TB |
ディスプレイ | 13.5型 PixelSense(2,256×1,504ドット、3:2) | 13.5型 PixelSense(2,256×1,504ドット、3:2) |
タッチ/ペン | 10点マルチタッチ/Surface Pen | 10点マルチタッチ/Surface Pen |
カメラ(Windows Hello対応有無) | 720p HD(Hello対応) | 720p HD(Hello対応) |
USB-A | 1 | 1 |
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2) | 1 | 1 |
オーディオ | 3.5mmジャック | 3.5mmジャック |
マイク | デュアル 遠方界スタジオマイク | デュアルマイク |
その他ポート | Surface Connectポート | Surface Connectポート |
Wi-Fi | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5 |
キーボード | フルサイズ(バックライト/1.3mmストローク) | フルサイズ(バックライト/1.3mmストローク) |
ポインティングデバイス | 高精度タッチパッド(115×76.66mm) | 高精度タッチパッド(115×76.66mm) |
ACアダプタ | 60W+5W(Surface Connect) | 60W+5W(Surface Connect) |
バッテリ駆動時間(公称) | ★17時間(Coreモデル)/19時間(Ryzenモデル) | 11.5時間 |
バッテリ容量 | 45.8Wh | 45.8Wh |
本体色 | プラチナ/アイスブルー(アルカンターラのみ)/マットブラック/サンズストーン(メタルのみ) | プラチナ、コバルトブルー(アルカンターラのみ)、マットブラック/サンズストーン(メタルのみ) |
サイズ(横x縦x高さ) | 308×223×14.5mm | 308×223×14.51mm |
重量 | 1.265kg(プラチナム/アイスブルー)/1.288kg(マットブラック/サンズストン) | 1.31kg(メタル、マットブラック/サンズストン)/1.25kg(コバルトブルー/プラチナ) |
OS | Windows 10 Home(一般消費者向け)/Windows 10 Pro(企業向け) | Windows 10 Home(一般消費者向け)/Windows 10 Pro(企業向け) |
Surface Laptop 4(13.5型)のディスプレイは、基本的にはSurface Laptop 3(13.5型)と同じサイズ、解像度になっている。ディスプレイはシャープのSHP14B3(LQ135P1JX51)というパネルが採用されている。このパネルはSurface Laptop 3(13.5型)で採用されていたものと同じ型番になるので、Surface Laptop 3と表示品質などは変わっていないだろう。
解像度は2,256×1,504ドットで、アスペクト比は3:2となっている。アスペクト比3:2のディスプレイは、一般的なノートPCに採用されている16:9のディスプレイ(例えば1,920×1,080ドット)などに比べると、縦方向が伸びており(仮に横を2,256ドットに合わせて16:9のディスプレイを作ると縦は1,269ドットとなる)、Webブラウザのような縦方向の表示を必要とするようなアプリケーションで利便性が高いと言える。
また、Surfaceの特徴と言える、10点マルチタッチとMPP(Microsoft Pen Protocol)ペンとなるSurface Penに対応している。クラムシェル型であってもタッチに対応していることで、書類にサインをしたり、Power Pointの資料に書き込んだりという使い方も可能になる。なお、Surface Penは従来と同じくオプションとして別売だ。
Surface Laptop 3がユーザーに支持されていたのは、使いやすいキーボードと大型のタッチパッドだったのだが、今回もその仕様は維持されており、キーピッチが19mmのフルサイズキーボードと、115×77mmというこのクラスとしてはかなり大きめなサイズの高精度タッチパッドという組み合わせは健在だ。
なお、Surface Laptop Goで導入された「無変換」、「変換」を「A」、「あ」というIMEの新しいトリガーキーにする変更は今回のSurface Laptop 4では導入されていない。この点でも従来のSurface Laptop 3シリーズと同じキーボードやタッチパッドであると考えることが可能だ。
なお、従来どおり指紋認証センサーは搭載されておらず、Windows Helloの認証はディスプレイ上部に用意されているカメラによる顔認証となる。
現在外出時の屋内ではマスクの装着が求められてるのが一般的で、外出時にカフェなどでマスクをしたままPCを使うというシーンもめずらしい話ではない。そうしたときに指紋認証にも対応していればマスクをしたまま生体認証できるので使い勝手は優れている。それに対して自宅などではマスクをしていないので顔認証が便利だ。そう考えれば、やはり両方に対応していて欲しいというのは正直なところだ。ぜひ次機種ではここは要改善を臨みたい。
もっとも、後述するどおり本体左側にUSB Type-A端子があるので、どうしても指紋認証が必要だと考えるなら、市販されているUSBの指紋認証センサーで代替することは可能だ。
ポート類も同様だ。本体の左側面にUSB 3.1、USB 3.1 Type-C、3.5mmヘッドフォンジャックが用意されており、本体右側にはSurface Connect+(付属のACアダプタないしは、オプションで販売されているSurface Dock 2を接続するための端子)が用意されている。位置も場所も変化はない。
無線は、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)とBluetooth 5.0に対応している。無線モジュールは「Intel Wi-Fi 6 AX201」が採用されている。なお、従来モデル同様LTEや5GなどのワイヤレスWANには未対応となる。
第11世代Coreの最上位SKUとなるCore i7-1185G7を選択可能に、メモリ32GBのモデルも追加
このように、基本的な製品の骨格はSurface Laptop 3と同じであり、外見からはSurface Laptop 4だと確認するためには難しいぐらいだ。ではなにが違うのかと言えば、すでに述べたとおりCPU、メモリ、ストレージなどになる。
CPUは従来製品が第10世代Core(Ice Lake)だったのに対して、今回は第11世代Core(Tiger Lake)になっている。かつ、従来製品ではCore i7のSKUは上から2番目に相当するCore i7-1065G7になっていたが、今回はUP3の第11世代Coreの最上位SKUとなるCore i7-1185G7になっている。せっかくCore i7を選ぶのに2番目のSKUしか選択肢がなかったことに比べると、トップSKUが採用されていることは性能重視のユーザーにとっては歓迎していいだろう。
第11世代Coreは、第10世代Coreに比べてCPUやGPUが大幅に強化されており、とくに内蔵GPU(Intel Iris Xe Graphics)の強化は大きく、いわゆるAAAタイトルのゲームを30fpsで十分にプレイできる性能を持っている。もちろん、Surface Laptopのようなクラムシェル型ノートPCを選ぶユーザーにとってゲームをそんなにするかには議論があるとは思うが、それでもできることが1つ増えたことは見逃せない。
また、そうしたGPUの高い性能は、ゲームだけでなくPhotoshop、Lightroom、Premiere Proといったクリエイター系ツール、またZoomやTeamsなどのビデオ会議ツールでもアクセラレータとして利用することが可能で、CPUの負荷を引き下げてシステム全体の性能を引き上げることができる。
メモリも、もう1つの大きな強化点となる。従来製品では最大で16GBまでとなっていたが、新製品では32GBと大容量メモリが選べるようになっている。
最近ではさまざまなアプリケーション必要とするメモリが増えており、Windows OSを起動して、Officeアプリケーションやチャットツール(FB MessengerやSlackなど)を起動すると、すでに8GBを超えているというのが普通になりつつある。そこに、メモリを多く必要とするようなAdobeのクリエイター系ツールを起動すると16GBを超えるということもめずらしいことではなくなっている。このため、メモリ32GBあると、より快適に利用できると言える。そうしたハイエンドユーザーのニーズに応えて32GBメモリのモデルを選択することができるのはうれしいことだ。
ストレージはSamsung ElectronicsのMZ9LQ512HALU-0000という型番のSSDが採用されている。この型番はSamsungのPM991というOEMメーカー向けのNVMe対応SSDで、容量は512GB。対応するPCI ExpressはGen 3で、M.2フォームファクタでサイズは2230(22×30mm)の片面実装版(シングルサイド)になる。
なお、Microsoftのスペックによれば、このSSDはリムーバブルという表記がされているが、たしかにM.2でリムーバブルだが、そのためには背面のゴム足の下に隠されているネジを外して、キーボードを外すなどしてシステムボードにアクセス必要がある(このためMicrosoftもオンサイトで技術者が交換できるかたちのリムーバブルと説明している)。
Surface Pro 7+やSurface Pro Xのように、ドライバ1本でふたを外してアクセスできるというものではないので、本体の保証が切れた後、本体を壊さずに分解ができる専門家レベルであれば交換できるという仕様だと理解しておいた方がいいだろう。
なお、本製品の特徴として、公称のバッテリ駆動時間が従来モデルよりも伸びていることがあげられる。なぜバッテリ駆動時間が延びているのか、Microsoftから詳しい説明はないのだが、Microsoftが公開している以下のビデオによれば、プラットフォーム側の最適化を進めたことによりバッテリ駆動時間が延びたという。なお、バッテリの容量は従来モデルと同じ45.7Whとなり物理的なバッテリ容量は増えていない。
Surface Pro 7と比較してCPU、GPUの性能向上を確認。バッテリも
それでは実際にベンチマークプログラムを利用してSurface Laptop 4(13.5型)の性能に迫っていこう。本来であれば比較対象として前モデルが用意できれば良かったのだが、今回は手元にあったSurface Pro 7(Core i7-1065G7、16GB、512GB)を利用した。
両製品の大きな違いはディスプレイで、Surface Laptop 4(13.5型)が13.5型2,256×1,504ドットであるのに対して、Surface Pro 7は12.3型2,736×1,824ドットと画面サイズは小さいが解像度は高くなっていることだ。したがって、バッテリ駆動時間の観点では解像度が高い分やや不利になると考えられる。その点を考慮に入れつつ、性能比較を行なっていきたい。
表2 テスト環境 | ||
---|---|---|
Surface Laptop 4 | Surface Pro 7 | |
CPU | Core i7-1185G7 | Core i7-1065G7 |
GPU | Iris Xe Graphics | Iris Plus Graphics |
メモリ | 16GB | 16GB |
ストレージ | 512GB | 512GB |
バッテリ容量 | 45.7Wh | 43.2Wh |
テストに利用したのはCPUの性能を比較するのに適した「Cinebench R23」、PC全体の性能をチェックする「PCMark 10」、GPUの性能を計測する「GFXBench 5.0.0」、日本を代表するAAAタイトルのゲームを利用したベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」、そしてPCMark 10のバッテリベンチマークテスト「Modern Office」となる。
いずれも設定はバッテリベンチマーク以外は、AC電源に接続した状態でテストを行なっており、Windowsのパワースライダーを「最も高いパフォーマンス」に設定している。逆にバッテリテストの時は「バッテリー節約機能」を有効にしており、バッテリ駆動時間が最も長くなるようにしてテストしている。なお、公平になるようにSurface Pro 7には別売りのキーボードを接続した状態でテストしている。
結論から言えば、(当たり前だが)CPUが第11世代Coreプロセッサに進化していることもあり、Surface Laptop 4が大幅に性能が向上していることが確認できた。グラフ1のCinebench R23ではシングルスレッドで約28%、マルチスレッドで約32%CPU性能が向上していることが確認できる。グラフ4のGPUの性能では1.58~2.06倍程度性能が向上しており、こちらも大幅に向上していることがわかる。
オフィスアプリを利用してバッテリ駆動時間を計測するテストになるPCMark 10 Battery Modern Officeでは、Surface Pro 7は8時間ちょっとだったのに対して、Surface Laptop 4は12時間を超えるバッテリ駆動が可能だった。明らかに第10世代Coreプロセッサを搭載した製品に比べてバッテリ駆動時間が延びていることが確認できた。
なお、バッテリ容量はSurface Pro 7が43.2Wh、Surface Laptop 4が45.7Whとなるので、バッテリ容量的にはSurface Laptop 4の方が約5.7%多くなっているが、Surface Laptopの方がバッテリ駆動時間は50%増しになっている。もちろん、Surface Pro 7の方が高解像度なディスプレイを採用している影響は補正しないといけないが、それを考慮に入れても確かにMicrosoftの言うとおり、内部のアーキテクチャなどの見直しによりバッテリ駆動時間が延びていると考えることができる。
従来から順当な進化を遂げたSurface Laptop 4
このように、Surface Laptop 4(13.5型)は普通のノートPCらしいSurfaceが欲しいというユーザーに人気を集めていたSurface Laptop 3(13.5型)のディスプレイ、外形などはそのままに、内部のコンポーネントは最新世代となる第11世代Coreプロセッサに進化したことで、性能やバッテリ駆動時間が向上している。
そうしたことから考えて、Surface Laptop 4(13.5型)は正当なSurface Laptop 3(13.5型)の後継と言える。価格は据え置きながら、性能やバッテリ駆動時間は伸びているのだから、ユーザーにとってはメリットしかない。従来のSurface Laptopからの買い換え、ペンが使えるクラムシェル型ノートPCが欲しいユーザー、あるいは新入学や新社会人などであれば、選択肢の1つに入れて損はないだろう。