西川和久の不定期コラム
レノボ・ジャパン「ThinkPad 8」
~WUXGA液晶とAtom Z3770を搭載した最強の8型級Windowsタブレット
(2014/2/5 06:00)
レノボ・ジャパンは1月28日、ThinkPadブランドの8型級Windows 8.1搭載タブレット「ThinkPad 8」を発表、同日より法人向け、1月31日より個人向けに発売した。編集部から実機とクイックショットカバーが届いたので、試用レポートをお届けする。個人的に8型級はまだ1台も長時間試していないこともあり、楽しみながらのレビューとなった。
8.3型WUXGA液晶とAtom Z3770を搭載
レノボ・ジャパンは2013年末に同じ8型級の「Miix 2 8」を出荷している。最大の違いは、8型HD IPS(800×1,280ドット)のパネルだ。加えてプロセッサはIntel Atom Z3740(4コア4スレッド、クロック 1.33GHz/1.86GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W)と、クロックが若干低く、またMicro HDMI出力も無い。ただ、重量約350g、価格はOffice込みで47,800円と値頃感があり人気が高く、品薄状態が続いている。
今回ご紹介するのは、そのレノボ・ジャパンがThinkPadブランドで投入した8型級のタブレット「ThinkPad 8」だ。「Miix 2 8」の後から発表されただけに、大小さまざまな部分でパワーアップしている。主な仕様は以下の通り。
レノボ・ジャパン「ThinkPad 8」の仕様 | |
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プロセッサ | Atom Z3770(4コア4スレッド、クロック 1.46GHz/2.39GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W) |
メモリ | 2GB(LPDDR3 1,066MHz) |
フラッシュメモリ | 128GB |
OS | Windows 8.1 Pro(32bit)、InstantGo対応 |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics、Micro HDMI |
ディスプレイ | 8.3型 WUXGA IPS 液晶(1,920×1,200ドット/273ppi)、10点タッチ対応、Dragontrailガラス |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n無線LAN、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | Micro USB 3.0×1、microSDカードリーダ、マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック、前面200万画素/背面カメラ800万画素カメラ |
センサー | ジャイロセンサー、近接センサー、デジタルコンパス、光センサー、加速度センサー |
サイズ/重量 | 約224.3×132×8.8mm(幅×奥行き×高さ)/約430g |
バッテリ駆動時間 | 8時間 |
直販価格 | 61,950円(Windows 8.1の場合57,750円)から、Eクーポン適応で5% OFF(58,852円/54,862円)から |
プロセッサはAtom Z3770。4コア4スレッドでキャッシュ2MB、SDPは2W。クロックは1.46GHzでTurbo Boost時は2.39GHzにまで上昇し、Bay Trail-Tの最上位SKUとなる。メモリは2GB、ストレージはフラッシュメモリ(eMMC)で64GBか128GB。
OSは32bit版のWindows 8.1 Proを搭載する。もともとBay Trail-Tは、64bit、そして2GBを超えるメモリにも対応しているが、現時点においてInstantGoが32bit版のみの対応なので、このような構成になっている。Windows 8.1も選択可能だ。
ディスプレイは、8.3型 WUXGA IPS 液晶(1,920×1,200ドット)で10点タッチ対応。また旭硝子の「Dragontrail」ガラスを採用し強度を増している。8型級のパネルとしては最高解像度であり、本機の最大の魅力と言えよう。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics。外部出力としてMicro HDMIを搭載している。2013年12月頃から一斉に出荷された8型タブレットの多くは外部出力が無く、手軽にマルチディスプレイ化やプロジェクタに接続できるのはポイントが高い。
ネットワークはIEEE 802.11a/b/g/nとBluetooth 4.0。インターフェイスはMicro USB 3.0×1、microSDカードリーダ、マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック、前面200万画素/背面カメラ800万画素カメラとなる。センサーは、ジャイロセンサー、近接センサー、デジタルコンパス、光センサー、加速度センサーを搭載している。GPSが無いのが残念なところ。
サイズは約224.3×132×8.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量約430g。Miix 2 8は約350gなので、若干重くなっているものの、パネルの違いなどを考えると許容範囲だろうか。
直販価格は、Windows 8.1/64GBモデルがOffice Home and Business 2013付きで57,750円。Eクーポン適応で54,862円となる。今回の構成(Windows 8.1 Pro/128GB)では72,450円だ。なお今回の試用構成はMicrosoft Officeを搭載していない。
筐体は液晶パネルのフチは光沢のある黒、背面はマットな黒。そしてアクセントに赤が使われ、いかにもThinkPadと言った感じでなかなかカッコいい。また重量も実測で405gとスペック上より若干軽く片手で楽々持ち上がる。
本体付属のUSB出力ACアダプタは、5.2V/2Aでサイズは約45×42×27mm(同)、重量53gとコンパクトだ。
右側面は電源ボタン、音量±、Micro USB 3.0。左側面は、左上にmicroSDカードリーダ(カバーの内側)、Micro HDMI。下側面にマイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャックを配置している。USB 3.0 MicroBなので多くのタブレットとコネクタが違う。なおUSB 3.0 MicroBは、スマートフォンなどで使われているUSB 2.0 MicroBと下位互換性があり、充電、そしてUSBホストケーブルも使用可能だ。ただし、一般的なUSBホストケーブルを使った場合は、USB 2.0となる。現在のところThinkPad 8用のドッキングステーションも無く、USB 3.0で高速な外部ストレージを接続するのもレアケースだと思われる。USB 3.0に対応したUSBホストケーブルを用意するまでもないだろう。
8.3型の液晶パネルは、輝度・発色・コントラスト全てにおいて良好だ。またIPS式なので視野角も広い。このパネルサイズで1,920×1,200ドットは273ppiとなり、ドットやジャギーもほぼ見えなくなり、滑らかな表示となる。
ノイズや振動は皆無で、熱は長時間使うと背面がほんのり温かくなる。サウンドは背面の下側にステレオスピーカーを配置。サイズの割には出力もあり、そのままでも音楽や動画を楽しめる。ただし、動画に関しては横にして観るため、音が右に(もしくは左)に偏ってしまうのは仕方ないところか。
なおオプションとして、保護フィルム(3,675円)、プライバシーフィルタ(9,450円)、ACアダプタ(2,625円)、クイックショットカバー(4,725円)が発売されている。今回は「クイックショットカバー」が同時に送られて来た。重量は実測で121g。
写真からも分かるように、マット調のレッドとブラックが使われ、本体左側面に磁石で固定する仕掛けだ。また、カバーを裏に回した場合、800万画素の背面カメラの部分だけ折り曲がる。そこにも磁石があり、自動的にカメラアプリが起動する仕掛けが入っている。簡単な作例を2点掲載したので参考にして頂きたい。
以降、あくまでも個人的な感想なのだが、8.3型1,920×1,200ドット/273ppiで期待しながら試用したThinkPad 8。速度的には全く問題なく非常に快適だ。しかし7型のNexus 7(2013)である程度分かっていたことがあり、仕事で使うには近視+眼鏡&老眼にとっては少々厳しい環境かも知れない。
と言うのも、眼鏡をかけたままでは結構離して見る必要があり、その場合は文字が小さ過ぎて読みにくい。Bluetoothなどを使って外部にキーボードやマウスを付けても同様だ。逆に眼鏡を外すと至近距離(スマートフォンなどと同距離)になるため、サイト(簡単な入力も含む)や写真、動画を観たり……と、用途が限られる。
Nexus 7の場合は、仕事が終わってからの余暇専用(つまり後者)なので、問題なかったものの、ThinkPad 8だとWindowsが動くだけにデスクトップ環境で仕事もしたい。しかし、それが難しい状況なのだ。自分にとって仕事で使えるサイズはSurface 2の10.6型フルHDがギリギリのようだ。残念……。
Bay Trail-Tとしては最高速の性能
OSは32bit版Windows 8 Pro。メモリが2GBなのでIntel HD Graphicsと共有すると厳しそうな感じもするが、プリインストールのアプリを使っている限り重いという印象は無く、逆に驚くほどスムーズに、そしてキビキビ作動する。
初期起動時のスタート画面は2画面。Lenovoアプリ以降がプリインストールされたアプリとなる。なお、Windowsボタンが縦位置で下にあるため、画面キャプチャの多くは縦位置の状態で撮影した。デスクトップはタスクバーに若干のピン止めがあるものの、壁紙の変更と、ごみ箱のみでシンプルだ。この状態でスケーリングは最大に設定されている。指で扱うのはギリギリといったところか。
ストレージは128GBの「SanDisk SEM128」が使われ、C:ドライブのみの1パーティション、約108GBが割り当てられ、空き95.2GBと、それなりに余裕がある。64GBモデルの場合は、microSDカードにデータを逃がす必要があるかも知れない。
Wi-Fiモジュールは「Broadcom 802.11abgn Wireless SDIO Adapter」が使われている。この辺りは、他のBay Trail-T搭載機と同じ構成だ。
プリインストール済のソフトウェアは、Windowsストアアプリが、「AccuWeather」、「Evernote Touch」、「Hightail」、「Kindle」、「Lenovo Companion」、「Lenovo QuickCast」、「Lenovo Settings」、「Lenovo Support」、「Norton Studio」、「Skitch Touch」、「Zinio Reader」。同社のユーティリティ系が多くを占める。「Lenovo Quick Cast」は、縦位置で起動しても自動的に横位置になってしまう関係上、画面キャプチャも横になっている。
デスクトップアプリは、「Lenovo Desktop Toasts For Critical Updates」、「Lenovo System Update」、「Lenovo ThinkVantage Tools」、「Maxthon Cloud Browser」など。64GBモデルもあるので、プリインストールは控えめな感じだ。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。またBay Trail-Tのグラフィックス性能の基準を得るため3DMarkも計測した。
winsat formalの結果は、総合 4.1。プロセッサ 6.8、メモリ 5.5、グラフィックス 4.3、ゲーム用グラフィックス 4.1、プライマリハードディスク 6.2。PCMark 8 バージョン2は1233。CrystalMarkは、ALU 26480、FPU 24345、MEM 24124、HDD 14319、GDI 5888、D2D 3164、OGL 3595。参考までにGoogle Octanceは4482となった。
参考までにZ3740を搭載したASUS「TransBook T100TA」は、winsat formalコマンドの実行結果は総合 4.1。プロセッサ 6.3、メモリ 5.5、グラフィックス 4.3、ゲーム用グラフィックス 4.1、プライマリハードディスク 6.1。CrystalMarkは、ALU 24470、FPU 20815、MEM 20519、HDD 12923、GDI 4303、D2D 3119、OGL 3045。
全てにおいてThinkPad 8の方が若干速くなっている。ただ劇的に違うわけではなく、Z3770とZ3740の差はそれほど気にする必要は無いかも知れない。
3DMarkは、Fire Strikeが完走せず/Cloud Gate 1224/Ice Storm 13721。Ice Stormはそれなりに動いていたが、他の2つに関してはかなりフレームレートが遅く、ガクガクしている状態だった。
BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残4%で30,794秒/8.6時間。いつもの残5%で30,654秒/8.5時間。スペックより約30分ほど長く動作した。ただ実際はバックライトの輝度を少し上げる必要があるため、この点は割り引いて見なければならないだろう。
以上のようにレノボ・ジャパン「ThinkPad 8」は、Bay Trail-Tとしては最速のAtom Z3770、そして1,920×1,200ドットと8型級としては最高解像度を誇る液晶パネルを搭載したWindows 8.1タブレットだ。ThinkPadブランドなだけに全体的なクオリティーも高い。
他の同クラスと比較して価格が高めなのは残念だが、それだけのアドバンテージを持っている。ThinkPadファン、個人・法人に限らず、8型級のWindows 8.1タブレットを検討しているユーザーにお勧めしたい逸品だ。