西川和久の不定期コラム

ZOTAC「ZBOX IQ01」

~Core i7-4770Tを搭載した小型ベアボーン

 株式会社アスクは1月17日、プロセッサにCore i7-4770Tを搭載したZOTAC製小型ベアボーンキット「ZBOX IQ01」シリーズを1月下旬に出荷することを発表した。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けする。

188mmのスクエアな筐体に4コア8スレッドCore i7-4770Tを搭載

 ZBOXには、プロセッサにCeleronから、今回ご紹介するCore i7-4770Tまで、さまざまなプロセッサを搭載したモデルが用意され、サイト上で確認すると21機種も掲載されている。

 筐体は(前面や背面のインターフェイスなどが異なるが)ほぼ同じものが使われ、小型でスリムなデスクトップPCとなっているのが特徴的だ。一部完成モデルもあるが、ベアボーンキットが多く、ストレージとメモリは別途用意する必要がある。今回届いたZOTAC「ZBOX IQ01」の仕様は以下の通り。

ZOTAC「ZBOX IQ01」の仕様
プロセッサCore i7-4770T(4コア/8スレッド、クロック2.5GHz/Turbo Boost:3.7GHz、キャッシュ8MB、TDP 45W)
メモリDDR3-1600 SO-DIMM/2スロット(最大16GB)
チップセットIntel H87 Express
拡張スロット2.5インチベイ、mSATAスロット
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4600、DisplayPort×2、DVI-I
ネットワークGigabit Ethernet×2、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0×4(前面×1/上面×1/背面×2)、SDカードリーダ、音声入出力、S/PDIF
サイズ/重量188×188×51mm(幅×奥行き×高さ)
その他VESAマウント、縦置きスタンド、Wi-Fiアンテナ、DVI-VGA変換アダプタ、DVI-HDMI変換アダプタ、ACアダプタ、電源ケーブル
店頭予想価格9万円台前半

 プロセッサはCore i7-4770T。4コア8スレッドで、クロックは2.5GHz。Turbo Boost時に3.7GHzまで上昇する。チップセットはIntel H87 Express。メモリはDDR3-1600 SO-DIMM用に2スロットあり、最大16GBとなる。ストレージは2.5インチとmSATAを搭載可能だ。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4600。出力としてDisplayPort×2とDVI-Iを備えている。3画面出力や、Intel Collage Displayテクノロジーで4K出力にも対応する。

 ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet×2、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0も搭載。Gigabit Ethernetが2つあったり、IEEE 802.11acに対応しているなど、小型の割りにネットワーク関連は充実していると言えよう。

 その他のインターフェイスは、USB 3.0×4(前面×1/上面×1/背面×2)、SDカードリーダ、音声入出力、S/PDIF。計4ポートのUSB 3.0があるのはポイントが高い。

 本体サイズは188×188×51mm(幅×奥行き×高さ)。Mac miniと良く似た感じだ。付属品は、VESAマウント、縦置きスタンド、Wi-Fiアンテナ、DVI-VGA変換アダプタ、DVI-HDMI変換アダプタ、ACアダプタ、電源ケーブル。VESAマウントがあるので、対応液晶ディスプレイの背面に取り付けることが可能だ。

 店頭予想価格は9万円台前半。最小のメモリとHDD、DSP版のWindows 8.1を組合わせて計11万円を少し越えると言ったところだろうか。参考までに、本製品に4GBメモリと500GB HDDを搭載した「IQ01 PLUS」も同時に発売され、店頭予想価格は11万円前後の見込みとなっている。

 構成が違うので直接比較はできないものの、ITX仕様でマザーボード(例えばASRock H87M-ITX)と、プロセッサを揃えた場合約4万円。加えてケースと電源が必要なため、これを2万円と見た場合、約3万円がこの小型でスリムな筐体(+IEEE 802.11acなど)の差額相当となる。

前面。電源ボタン、IrDA、ステータスLED、USB 3.0、SDカードスロット、音声入出力。また上面側面にもう1つUSB 3.0がある
背面。アンテナ端子、S/PDIF、Gigabit Ethernet×2、USB 3.0×2、DVI-I、DisplayPort×2
上面カバー。電源オン時にリングがブルーに光る
裏面(iPhone 5sとの比較)。iPhone 5sの高さが約3分の2と言ったところか。横置き用のゴム足もある
裏を開けたところ(HDD付き)。コネクタとネジ1本で止まっている
裏を開けたところ(HDD無し)。SO-DIMM用が2スロットある
HDDのマウンタ。ネジは使っていないので簡単にマウンタを着脱可能
HDD用のコネクタの下にmSATAスロットがある。ちょうどDisplayPort×2の後ろのスペースにmSATAユニットが入る
付属品。VESAマウント、縦置きスタンド、Wi-Fiアンテナ、DVI-VGA変換アダプタ、DVI-HDMI変換アダプタ、ACアダプタ、電源ケーブル。ACアダプタは約124×48×28mm(同)/334g。19V/4.74A出力

 今回用意したのは、DDR3-1600 SO-DIMM/2GBを2枚と、東芝「MQ01ABD075H」(750GB/5,400rpm/8GBフラッシュメモリ)。ストレージが少し特殊であるが、ほぼ最小構成だろう。

 組み立て方法は非常に簡単で、本体下の部分にネジが2つあり、それを外して、裏のカバーをスライドさせればパネルが外れる。プロセッサは装着済みだ。写真からも分かるように、ファンに関係する部分の割合が結構大きい。

 ストレージが2.5インチの場合は先にメモリを取り付け、マウンタを装着したHDDを上からネジ止めする。mSATAの場合は、HDD用のコネクタの下にmSATAのコネクタがメモリとは反対の向きに付いているので、それに入れればOK。ケーブルの配線などが無い分、一般的なデスクトップPCより扱いが楽だ。

 後はパネルを元に戻し、ACアダプタを接続、USBメモリやUSB DVDドライブなどにOSを入れてインストールすれば作業完了となる。

 前面には電源ボタン、IrDA、ステータスLED、USB 3.0、SDカードスロット、音声入出力。また上面側面にもう1つUSB 3.0がある。背面にはアンテナ端子、S/PDIF、Gigabit Ethernet×2、USB 3.0×2、DVI-I、DisplayPort×2。横置きはもちろん、縦置きスタンドを使って縦置きもできる(扉の写真参照)。

 付属のACアダプタは19V/4.74A出力。サイズ約124×48×28mm(同)、重量334gとやや大き目か。

 気になるファンの音はするにはするが許容範囲。ただ長時間起動していると筐体はそれなりに熱を持つ。プロセッサの末尾にTが付く省電力仕様とは言え、この容積に押し込んでいるので仕方ないところだろう。

プロセッサ性能は流石に高い

 OSは64bit版Windows 8.1を使用した。普段の評価であれば、初期起動時のスタート画面、デスクトップ画面、アプリ画面を掲載しているものの、今回はリテール版のWindows 8.1をそのままインストールしているので、これらの画面キャプチャは掲載していない。

 Wi-FiはIEEE 802.11ac対応の「Intel Dual Band Wireless-AC 3160」、Gigabit EthernetはRealtek製が使われていた。OSが起動した後、先に書いた付属のドライバCD(もしくはUSBメモリ)を使って、チップセット、サウンド、グラフィックス、Gigabit Ethernet、Wi-Fiドライバなどをインストールする必要がある。

 何度か再起動するものの、順にインストールするだけで手順は簡単。メモリやストレージも容易に取り付けられるので初心者でもハードルは高くない。

デバイスマネージャ/主要なデバイス。Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 3160」。Gigabit EthernetはRealtek製
付属しているUSBメモリの中身。Audio/CardReader/Graphics/Chipset/WIFIなどのフォルダがある
ドライバセットアップ。付属のUSBメモリかドライバCDを認識するとドライバセットアップが起動する

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2の結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア8スレッドなので条件的に問題があり、参考まで)。

 また、今後GPUに特徴のあるプロセッサやPCなどで3DMarkの値を掲載する予定なので、その基準となりそうなIntel HD Graphics 4600の値も同時に計測した。

 winsat formalの結果は、総合 5.8。プロセッサ 8、メモリ 5.9、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 5.8、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 8 バージョン2は2863。CrystalMarkは、ALU 69257、FPU 58606、MEM 73509、HDD 26162、GDI 19903、D2D 7625、OGL 15928。3DMarkはFire Strike 770/Cloud Gate 6661/Ice Storm 60726となった。

 プロセッサ性能はさすがと言ったところ。ただグラフィックスがIntel HD Graphics 4600なので、ハイエンドゲームには向かない。

 CPU性能をあまり必要としない用途が中心であれば、Core i3-4130T(2コア4スレッド/2.9GHz)の「ZBOX ID91シリーズ」やi5-4570T(2コア4スレッド/2.9GHz:3.6GHz)の「ZBOX ID92シリーズ」などランクを下げると、コストパフォーマンスも含め全体的なバランスは良くなりそうだ。どちらもTDP 35WとCore i7-4770Tと比較して10W低いので発熱も若干低減されると思われる。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 5.8。プロセッサ 8、メモリ 5.9、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 5.8、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 8 バージョン2。2863
CrystalMark。ALU 69257、FPU 58606、MEM 73509、HDD 26162、GDI 19903、D2D 7625、OGL 15928
3DMark。Fire Strike 770/Cloud Gate 6661/Ice Storm 60726

 以上のようにZOTAC「ZBOX IQ01」は、188×188×51mmの小型でスリムな筐体に4コア8スレッドのCore i7-4770Tを搭載したパワフルなデスクトップPCだ。加えてGigabit EthernetやDisplayPortが2つあるなど、小型の割りにインターフェイスも豊富。ストレージは、2.5インチとmSATAドライブを内蔵でき、メモリも含め予算や用途に応じて構成を変更できるのが嬉しいポイントとなる。

 文中で書いたように、標準的なサイズで同クラスのPCを組むと数万円安上がりとなるが、このフットプリントでこれだけの性能を持つPCは、それだけで十分魅力的と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/