西川和久の不定期コラム
エプソンダイレクト「Endeavor TN10E」
~AMD Temashを搭載したファンレス11.6型タブレット
(2014/1/31 06:00)
エプソンダイレクトは1月28日、AMD Temashを搭載したファンレス11.6型タブレットを発表した。一足早く編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。筆者としてもTemashは初めてなので、Atomとの違いが気になるところだ。
AMD Temashを搭載した11.6型タブレット
2013年の5月23日にAMD KabiniおよびTemashの発表記事が掲載されている。詳細については、この記事をご覧頂きたいが、ザックリ書くと、KabiniはIntelの第4世代Coreプロセッサ(Haswell)、TemashはAtom Z2760(Clover Trail)に対抗する製品となる。
ただ、2013年12月末一斉に出揃った8型タブレットで、Atomは既により高性能なBay Trail-Tに移行済み。Clover TrailとBay Trail-Tを比較するとかなりの差があるため、今回ご紹介するエプソンダイレクト「Endeavor TN10E」は、Temashを搭載しClover Trail対抗となると、現時点ではパフォーマンス的に劣る可能性がある。
APUはAMD A4-1200 APU。2コアでクロック1.0GHz。L2キャッシュは1MB。Clover Trail/Bay Trail-TのようなHyper-Threadingの機能は無い。TDPは3.9Wでファンレス設計が可能だ。
メモリは4GBを搭載し、OSは64bit版Windows 8.1。Clover Trail/Bay Trail-T搭載機は全て32bit版なので、この点は大きく異なる。InstantGoには残念ながら非対応だ(電源オプションに“休止状態”がある)。ストレージは128GBのSSDを搭載。
エプソンダイレクト「Endeavor TN10E」の仕様 | |
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APU | AMD A4-1200 APU(2コア、クロック 1.0GHz、キャッシュ1MB、TDP 3.9W) |
メモリ | 4GB(4GB×1/PCL3-8500 DDR3L SDRAM) |
SSD | 128GB |
OS | Windows 8.1 (64bit) |
グラフィックス | APU内蔵Radeon HD 8180、Micro HDMI出力 |
ディスプレイ | IPS式11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)あざやかグレア液晶、10点タッチ対応、デジタイザ(オプション) |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | Micro USB 3.0×1、microSDカードスロット、音声入出力、前面200万画素/背面500万画素カメラ |
センサー | ジャイロ、地磁気、加速度、照度 |
サイズ/重量 | 297×192×11mm(幅×奥行き×高さ)/約780g(本体のみ) |
バッテリ駆動時間 | 7.7時間 |
価格 | 73,500円 |
グラフィックスはAPU内蔵Radeon HD 8180。DirectX 11.1に対応し、Intel HD Graphics系より上を行く。この点はAMD APUのいつものパターンだ。ディスプレイはIPS式11.6型フルHD(1,920×1,080ドット)あざやかグレア液晶。10点タッチ対応で、オプションのデジタイザーペンも利用できる。
ネットワークは有線LANは無く、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0を搭載している。そのほかのインターフェイスは、Micro USB 3.0×1、Micro SDカードスロット、音声入出力、前面200万画素/背面500万画素カメラ、Micro HDMI出力。
Micro HDMI出力を持っているので、マルチディスプレイ化やプロジェクターへ映すのも容易だ。またビジネス用途にTPMも内蔵している。
サイズは297×192×11mm(幅×奥行き×高さ)、重量約780g。バッテリ駆動時間は最大7.7時間。価格は73,500円となる。なおBTOはOSをWindows 8.1 Proへの変更のみの対応だ。
オプションは、Bluetoothキーボード(3,150円)、デジタイザペン(2,625円)、スタンドになる液晶カバー(4,725円)、ノングレア保護フィルム(1,050円)など。この4つをセットにした「ビジネス支援パック」は9,450円で、バラバラに買うより2,100円安い。
筐体は、背面はマットな素材でブラックと無難な感じにまとめられている。Surface 2と比較するパネルサイズ分大きいものの、厚みは同程度。実測で799gと、持った感じは約100gの差で見た目の印象とあまり変わらない。
上側面右側に電源ボタンと回転ロックボタン、左側面にMicro HDMI、音声入出力、microSDカードスロット、右側面に音量±ボタン、Micro USB 3.0×1、電源入力を配置。また左右の同じ位置にある凹みは、オプションの液晶カバーを止めるものだ。正面は上中央にリアカメラ、下にWindowsボタン。リアは左右にスピーカーとカメラがある。
11.6型の液晶パネルは、明るくコントラストも高く非常に良好だ。最大輝度は350cd/平方m、最小でも結構明るい。10点タッチもスムーズに機能し、IPS式なので視野角も広く特に不満点は無い。
ノイズや振動はファンレスなので皆無。熱に関してはリア中央を中心に若干温かくなる程度。サウンドは最大出力も十分あり、Cirrus Loginc Audioでイコライザも含めいろいろ触れるので、好みの音色にすることが可能だ。
カメラは前面/背面ともに試したところ、画質は今時のスマートフォンの方が良く、写真用と言うより動画用で作例は掲載しなかった。
気になる動作速度は、Bay Trail-T搭載機やSurface 2と比較すると、若干もっさり気味なのは残念なところか。この点については、後半のベンチマークテストで検証したい。
オプションのBluetoothキーボードは、サイズ約260×115×15mm(最厚部)、重量 282g。単4乾電池2本を使用する。本体の幅よりやや狭く、キーピッチは18mmとなる。特にこれといった特徴も無く標準的だ。インターフェイスがBluetoothなので、好みのものを使えばいいだろう。
逆にオプションの液晶カバーは、カバーとしてはもちろん、使いやすいスタンドにもなるため必需品だ。気になる点があるとすれば、スタンド状態で使った場合、USB、Micro HDMI、そして電源入力も中央より上側にあり、ケーブルを接続すると見栄えが悪く、また不安定となる。できれば下側になるよう配置して欲しいところか。
パフォーマンスはOpenGL以外Bay Trail-T搭載機に及ばず
OSは64bit版Windows 8.1。システムのプロパティを見ると3.44GB使用可能となっており、Clover Trail/Bay Trail-T搭載機より、メモリに関しては余裕がある。初期起動時のデスクトップやスタート画面は、ほとんど追加が無く、素のWindows 8.1に近い状態だ。
SSDは128GBの東芝「THNSN128GMCP」を搭載し、C:ドライブのみの1パーティション。約94GBが割当てられ空きは76.3GB。用途によっては、データをmicroSDカードへ逃がして運用した方がいいだろう。Wi-Fiは「Qualcomm Atheros AR5BWB222 Wireless Network Adapter」が使われていた。
今回は試作機なので、製品版ではソフトウェア・ハードウェア共に構成が変わる可能性があることを予めご了承頂きたい。
プリインストールソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「NAVITIME」のみ。デスクトップアプリは、「Cirrus Logic Audio」、「AMD Catalyst Control Center」、「AMD Quick Stream」、「お役立ちナビ」と、こちらも少ない。ストレージの空き容量に余裕がないための配慮だと思われる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(2コアで条件的には問題ない)。なお、PCMark 8バージョン2については、登場して間もないため、比較対象では検証ができていないことをお断わりしておく。
winsat formalの結果は、総合 3.9。プロセッサ 4.1、メモリ 4.7、グラフィックス 3.9、ゲーム用グラフィックス 4、プライマリハードディスク 7.5。PCMark 8 バージョン2は1058。CrystalMarkは、ALU 8164、FPU 7120、MEM 7784、HDD 26949、GDI 2665、D2D n/a(実行できず)、OGL 5624。
参考までにBay Trail-Tを搭載したASUS「TransBook T100TA」は、winsat formalコマンドの実行結果は総合 4.1。プロセッサ 6.3、メモリ 5.5、グラフィックス 4.3、ゲーム用グラフィックス 4.1、プライマリハードディスク 6.1。CrystalMarkは、ALU 24470、FPU 20815、MEM 20519、HDD 12923、GDI 4303、D2D 3119、OGL 3045。
ストレージとOGLのみEndeavor TN10Eの方が高いスコアとなった。また、参考までにGoogle Octance 2.0は、Surface 2が3237に対して1857と、こちらもあまり振るわない。
この結果から、パフォーマンス的にはBay Trail-T > Temash(グラフィックスが速い) > Clover Trailとなるだろうか。
BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で27,183秒/7.6時間で、ほぼ公称値の通りになった。一方、Bay Trail-T搭載機は軽く10時間を越えるものが多く、この点についても今一歩と言った感じだ。
以上のようにエプソンダイレクト「Endeavor TN10E」は、OGLとストレージ以外、多くの部分で1世代前のClover Trailと同等だ。従ってBay Trail-T搭載機と比較した場合、パフォーマンスの面では残念ながら不利となる。
ただし、Core i未満でAtomクラスの11.6型フルHDタブレットは意外と機種が少なく、TPM内蔵、メモリ4GB、Windows 8.1 Proが選べるなどの優位点もあり、選択肢として十分考えられる1台と言えよう。