西川和久の不定期コラム

Google「Android 4.0」
~Android 4.0 SDKから垣間見る次世代デバイス



 日本時間の10月19日、Samsungのスマートフォン「GALAXY Nexus」と共にGoogleは、「Icecream Sandwich」のコードネームで呼ばれていたAndroid 4.0を発表。同時にAndroid DevelopersでSDKも公開した。3.0に続き、今回もSDKに含まれるエミュレータを使って、画面キャプチャを中心に従来との違いや新機能などを追って見たい。
●仮想デバイスを使うための準備

 Android 3.0(Honeycomb)の時、SDKを使って画面を中心にその内容についての記事を掲載した。今回も同様の手法で実機がなくてもわかる範囲で画面キャプチャをまとめてみたい。

 SDKをインストールするのは非常に簡単。Android DevelopersのサイトからWindows版もしくはMac OS X(Intelのみ)版をダウンロードし展開。「android-sdk-mac_x86」フォルダにあるtools/androidコマンドを起動すると「Android SDK and AVD Manager」が表示される。この時、JDKも必要だ。Androidのいろいろなバージョン用のパッケージから「Android 4.0 - API Level 14」を選択すると、関連するモジュールのダウンロードが開始される。

Android SDK and AVD Manager

 エミュレータの起動は、全てダウンロードした後、メニューから「Tools/Manage AVDs...」を選択して、Virtual devicesで適当に環境を設定し(デフォルトで問題ない)、Startさせると前掲のスマートフォン用仮想端末が現れる。SDカードに適当な容量をセットしないと、カメラアプリが「SDカードが無い」と言ってうまく動かないが、必要に応じて追加すれば良い。

 ここでちょっと気になったのは、他の発表記事などを見ていると、Android 2.x系では、[Home]や[Back]ボタンが実機にハードウェアとして備わっていたが、4.0からはHoneycomb同様、基本的にソフトウェアキーボードに変わった点だ。Virtual devicesの設定でも「Hardware Back/Home key no」となっているのだが、実際エミュレータの画面上には該当するボタンが表示されず、右側のハードウェアキーを利用する設定になったままだ。従って実際とは画面下部のイメージが異なる可能性がある。

 筆者はここのところAndroidアプリの開発から遠のいていたので、この件は、エミュレータのバグなのか仕様なのかわからないが、この点は留意して画面キャプチャを見て欲しい。もちろんこれは初めからAndroid 4.0対応機として出荷されたデバイスが対象であり、従来機種からのアップデートはこの限りでは無い。

 今回はCore i5搭載のMac miniを使ってエミュレータを動かしているが、作動はかなり重く「ちょっとインストールして雰囲気だけでも味わうか」といったレベルではない。そのためエミュレータ目当てでSDKをインストールするのはあまりお勧めしない。エミュレータでも普通に操作できるiOSやWindows PhoneのSDKと比較した場合、大きく遅れている部分だ。

●洗練されたUIとパワーアップした機能満載

 まずロック画面に注目して欲しいのは、左側にカメラアプリ起動用のショートカットが追加されていることだ。iOS 5.0でも同様の機能を追加したが、iOS 5.0では[Home]ボタンをダブルクリックする必要がある分、Android 4.0の方がワンタップ早く起動できる。

 ホーム画面は5面あり、起動直後のホーム画面は真ん中の3画面目。これは従来と変わらず。下にPhone、People、アプリ一覧へのショートカット、Message、Browserのアイコンが並んでいる。ホーム画面2画面目には「Power control Widget」を配置。このウィジェットでWi-FiやBluetoothのON/OFFなどをワンタッチで行なえる。4画面目には「Settings」がある。この辺りは機種によっていろいろカスタマイズされるのだろう。

 Settingsに関しての大きな変化は1カ所で、「Data usage」が追加されている。これは3G回線を使ってデータ転送するリミットを決めたり、指定した期間の情報を見ることができる便利な機能だ。数字ではなくグラフ化してビジュアルに見れるのもありがたい。エミュレータなので実際のグラフを操作できなくて残念だが、契約するキャリアによっては3Gの定額通信転送量の上限が決められている場合もあるため、これはかなり有効だ。

 ホーム画面下中央にある円でアプリを囲んだようなアイコンをタップすると現れるのが、この「Apps / Widgets」画面。Appsの部分は後述するとして、ウィジェットは、Honeycomb同様、対応していれば縦/横のサイズを変更することができる。

 標準で用意されているのは「Analog clock」、「Bookmarks」、「Calendar」、「Contact」、[Direct dial/message]、「Drirection & Navigation」、「Email」、「Home screen tips」、「Latitude」、「Music」、「Music playlist」、「Picture frame」、「Power Control」、「Search」、「Settings」など。横に書かれている○×○は、ホーム画面に置いた時使用するグリッド数となっている。ウィジェット同士は重ねることが出来ないので、もしスペースが無い場合は、他のページに置かなければならない。

 先に書いたように、エミュレータでは[Home]や[Back]のソフトウェアボタンが並ぶ「システムバー」が表示されないが、後述するタブレット仕様の、一番右端の板が重なっているようなボタンが「Recent Apps」で、最近使ったアプリの履歴を表示することができる。あくまでも履歴で、起動中のアプリ一覧で無い事に注意して欲しい。Honeycombでも同様の機能があったが、4.0では該当するアプリを横にスワイプすると、この一覧から削除も可能だ。エミュレータ上では該当するソフトウェアキーが無く、ハードウェアキーの[Home]ボタンを長押しすると表示された。従来機種のアップデートの場合も同様だと思われる。

 もう1つ便利な機能としては、ホーム画面でアイコンをフォルダ管理できるようになったこと。これはiOSでは随分前から対応していたので、待ち望んでた人も多いだろう。操作は簡単。まとめたいアプリへ他のアプリを重ねるだけ。フォルダをタップするとウィンドウが開く形になっている。

 これまでSDKを使ったり、メーカー独自でカスタマイズしていた画面キャプチャ機能も、4.0でようやく搭載された。[Power]+[音量-]ボタンで撮影できる。ただこのボタンのコンビネーションは、「GALAXY Nexus」固有なのか、Android 4.0搭載機全てなのかは現時点では不明だ。

ロック画面。左側にカメラアプリへのショートカットが追加された起動直後のホーム画面。この画面キャプチャには無いが、[Back]、[Home]、[Recent Apps]もHoneycomb同様、ソフトウェアキーになるPower control Widget。Wi-FiやBluetoothなどのコントロールができる
Settings(1/2)。Data usageが追加されているSettings(2/2)Data usage。どれだけデータ転送したか。細かく調べることが可能だ
Google各種サービスへのSign in画面Backup and restore。Googleアカウントを使って端末のアプリや設定をバックアップ、そして復元できるAccount & sync。これを見ると複数のアカウントを管理できるようだ
Apps(1/2)。ホーム画面下中央にある円でアプリを囲んだようなアイコンをタップすると現れるApps(2/2)。ここに並ぶアプリは実機ではかなりカスタマイズされるので参考程度にして欲しいWidgets(1/4)。Honeycomb同様、ホーム画面で使うグリッド数が○×○として書かれている
Widgets(2/4)Widgets(3/4)Widgets(4/4)
HoneycombにもあるRecent Apps(起動履歴)。少し機能が追加され、横にスワイプするとリストから削除できるウィジェットが対応していれば縦/横の大きさを変更することが可能だアプリをフォルダでまとめる機能が追加された

 標準アプリに関して、ザッと見た限り大きく変わったのは、「Contacts」が無くなり「People」になったこと。Android 4.0発表会のビデオを見ていた時、この部分の説明があり、Windows PhoneのPeople Hub同様、TwitterやGoogle+などソーシャルネットと統合されHubの機能(Connection)を持っている。ただし、エミュレータ上のPeopleでは該当項目が見つからず、残念ながら試せなかった。

 カメラはパノラマ撮影が可能に、BrowserはGoogle Chromeとのブックマーク同期やPCとスマートフォン用のビュー切り替えと言った機能拡張に加え、パフォーマンスが向上。Calendarは使いやくなったなど、各標準アプリの機能も強化されている。

 さらにAndroid 4.0ではNFC(近距離無線通信)を使った「Android Beam」を搭載。対応したデバイス同士であれば、音楽や動画、アプリ、連絡先など、多くの情報を即座に転送可能となる。もちろんエミュレータなので試すことはできないが、API Demoの中にNFCの項目が追加されている。

 その他ネットワークに関しては、「Wi-Fi Direct」機能で、デバイス同士をWi-Fiで接続しコンテンツの共有、Bluetoothの対応プロファイルの強化なども新機能として挙げられる。

 エミュレータで機能しない部分は、YouTubeにある「Introducing Galaxy Nexus. Simple, beautiful, beyond smart」を是非ご覧頂きたい。「Notifications」、「Recent apps & multi-tasking」、「Face Unlock」、「Google+ with Hangouts & Messenger」、「Live effects」、「Single-motion panoramic camera」、「Data usage」、「Android beam」と、非常にわかりやすく解説している。また、その動きをみても、これまでのAndroid 2.xとは随分雰囲気が変わるのがおわかり頂けると思う。


Notification Center。iOSは5.0で対応したが、Androidの方が先に実装しているCamera。パノラマモードが追加されているBrowser。タブの操作方法が若干変更に、パフォーマンスも向上している
Calendar。今回再現できなかったが、複雑な表示も可能になっているEmail。Honeycomb版をそのまま1ペインにした感じだPeople。エミュレータには無かったが、ソーシャルネットと統合したHub機能を持つ
Maps。通常表示に加え「Transit Lines」がオンの状態Gallery。発表会の動画では編集機能があったものの、このエミュレータには無かったNFCに対応している。「Android Beam」を使ってコンテンツやデータなどを転送出来る

●スマートフォンとタブレット両サポート

 さてここまではAndroid 4.0をスマートフォンとしてエミュレータを動かした部分であるが、冒頭に書いたように、本OSはタブレットにも対応している。Virtual devicesの設定をタブレット仕様に変更して起動した画面キャプチャは以下の通り。ロック画面はHoneycomb、Android 3.xと差が無い。ホーム画面やポップアップするパネルも変化無し。ただし、右上のApps一覧表示部分が変わった。

 Honeycombでは“[Apps Icon]アプリ | +”と呼ばれる表示で、前者がApps表示、後者がWidgets表示とわかれていたが、Android 4.0では、スマートフォンビューの真ん中にあったAppsアイコンと同じ動作になるように変更された。

 またホーム画面に配置したショートカットなどの削除方法も若干変わり、3.0では右上にドラッグするとゴミ箱のアイコンが表示されたが、4.0では画面の上の方のどこへドラッグしてもゴミ箱のアイコンが表示される。

 もう1点、起動しているアプリの設定項目は、Honeycombの場合、[Recent Apps]ボタンの右側に4つ目のボタンとして、必要に応じて表示していた。しかし4.0では、アプリの右上に設定アイコンを表示するルールになったようだ。これはスマートフォンの時、4つ目のボタンを配置するスペースが無いため、操作方法を統一する上で、こうなったものと思われる。

 そのほか、エミュレータで触れる範囲をいろいろ試したものの、UIの変化した部分は、タブレットに関してはHoneycombにより近く、スマートフォンの方がHoneycomb化している印象が強い。

 当初Android 2.xユーザーがHoneycomb搭載機を使った時、UIが違い過ぎて分かりにくいと言う意見がかなりあった。同様にAndroid 2.xから4.0にいきなり変わると落ち着くまでは混乱する可能性はあるかもしれない。

タブレットビュー/ロック画面。Honeycombと同じタブレットビュー/ホーム画面。アプリをフォルダで管理できる以外は同じタブレットビュー/Apps。アプリが一部入れ替わっている
タブレットビュー/Widgets。Analog clockのデザインが変わっているタブレットビュー/Settings。売りのData usageが見やすそうだタブレットビュー/Remove。Honeycombから削除方法が変わった


 以上のようにAndroid 4.0は、これまでスマートフォン用の2.x系とタブレット用3.x系が統合されたバージョンだ。開発者は別けて開発する必要が無くなり、今後両対応のアプリが一気に増えると思われる。

 ユーザー側もより洗練された画面や、[Back]、[Home]、[Recent Apps]のソフトウェアボタンなどUIの改良、ブラウザ、カメラ、People、Android Beam、Wi-Fi Directなど、新しく追加された機能により、使い勝手が向上しますます便利に。「GALAXY Nexus」以外の対応機種や従来デバイスへのアップデートは、少し先になるかも知れないが、今から楽しみである。