西川和久の不定期コラム

Core i5-430M搭載ノートPC「デル Inspiron 15」



Inspiron 15

 今月発表された新型Core iプロセッサと、新しいデザインを採用した「Inspiron 15」の量産試作機がレビュー用に送られてきた。Core i3-330M(2.13GHz)及びCore i5-430M(2.26GHz)は、CPUにメモリコントローラーとGPUを内蔵したプロセッサだ。このCPUを搭載したマシンは初めて触るので、その実力はどうなのか、興味津々でのレポートをお届けしたい。


●新型Core iプロセッサ搭載

 Intel今年のトレンドは、CPU内にメモリコントローラとGPUを内蔵するパターンのようだ。少し前に記事にした、新型Atomプロセッサもこの両者を内蔵している。そして今回、「Inspiron 15」に採用された32nmプロセスルールによる新型Core iプロセッサ、Core i3-330M(2.13GHz/cache 3MB)及びCore i5-430M(2.26GHz/cache 3MB)も同様だ。チップセットの簡素化によるコストダウン、そしてメモリへのレイテンシが改善されパフォーマンスアップが期待できる。

 これらに対応したモバイル用チップセットはQM57 Express、QS57 Express、HM57 Express、HM55 Expressだ。PCI Express 2.0、DDR3、SATA(3Gbps)などをサポート。各チップセットの違いは、QM57/QS57 Expressは「Active Management Technology 6.0/Remote PC Assist Technology for Business」、「Rapid Storage Technology 9.5」対応、HM57 Expressは、その後者のみ対応、HM55 Expressは全て無しとなっている。一般的なノートPCならHM55 Expressで十分だと思われる。

 グラフィックスはメインメモリ共有型の「Intel HDグラフィックス」。720p/1080i/1080pといった全てのHDフォーマット、HDMI、そしてDisplayPortにも対応している。加えてCPUのTurbo Boostに似た「オーバークロック」機能を持ち、通常500MHz最大667MHzと変化する。GMA X4500HDとの違いは、SP 10基か12基か、OpenGL 2.0か2.1か、デュアルビデオデコード、HDMI 2系統出力、音声2系統出力、HDMI/DisplayPortの12bitカラー出力、Dolby TrueHD/DTS-HD Master Audioなどの有無、HDCPデジタル出力が1系統か2系統かなど、結構違いは大きい。

 Core i3とi5は、どちらもデュアルコア/マルチスレッドで4CPU相当となるが、前者はTurbo Boost未対応となる。後者は通常2.26GHz、Turbo Boost時最大2.53GHzだ。今回手元に届いた「Inspiron 15」の仕様は以下の通り。

【表】Inspiron 15仕様

CPUCore i5-430M(2.26GHz/cache 3MB/Turbo Boost有り)
チップセットIntel HM55 Express
メモリ4GB/DDR3-SDRAM(1066MHz)/2スロット空き0、最大8GB
HDD320GB
オプティカルドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ15.6型 TFT TrueLife WXGA 光沢液晶ディスプレイ (WLED) 、1,366×768ドット
GPUAMD Mobility Radeon HD 4330/512MB、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン出力
ネットワークEthernet(10BASE-T/100BASE-TX)、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth(V2.1+EDR)
その他USB 2.0×3、130万画素Webカメラ、7in1メディアスロット、オーディオIN/OUT、テンキーあり
サイズ/重量380×248×20~32.8mm(幅×奥行き×高さ)/約2.47kg(6セルバッテリ時)
バッテリ/駆動時間6セルバッテリ/約4時間

 まずCPUは上位Core i5-430M。先に書いたように「Turbo Boost」に対応している。チップセットは「Intel HM55 Express」。グラフィックスは、チップセット内蔵の「Intel HDグラフィックス」ではなく、更に高性能の「ATI Mobility Radeon HD 4330/512MB」搭載だ。DirectX 10.1、OpenGL 2.0、Shader Model 4.1などをサポートするノートPC向けGPUで、GDDR3/DDR3/DDR2対応、SP 80基搭載している。BTOで内蔵グラフィックスとの価格差は9,450円だ。

 また、今回送られて来たのは量産試作機と言うこともあり、同社のダイレクトショップで扱っている構成とは若干違っている。一番近いパターン(Core i5-430M、HDD500GB、Bluetooth無し)だと104,430円となるだろうか。Wi-Fiは、「Dell Wireless 1520 内蔵ワイヤレスLAN Half-Miniカード (802.11a/b/g/n)」が標準、ただし有線LANは100BASE-TXまでの対応だ。

 Inspiron 15の最小構成は、Core i3-330M、HDD 320GB、内蔵GPUで79,980円。この時、OSはWinodws 7 Home Premium 64bit、メモリ2GB×2、DVDスーパードライブ(i5-430Mのみ「Blu-ray Discコンボドライブ」を選択可)、Wi-Fiなどは全モデル共通仕様となる。

 カラーバリエーションは、「オブシディアン・ブラック」、「チェリー・レッド」、「アイス・ブルー」、「パッション・パープル」、「プリティ・ピンク」の計5種類。どの色を選んでも価格は同じだ。

 気になる点としては(最近毎回書いているような気がするが)、Core iプロセッサを搭載するこのクラスでも有線LANが100BASE-TXなこと。ネットワークへの接続はWi-Fiが一般的で、Gigabit Ethernet+NASなどの用途は少数派なのだろうか。

本体天板。チェリー・レッドが非常に鮮やかだ正面。左端に、電源、HDD、バッテリのLEDがあるだけ本体底面。中央のパネルを外すと、簡単にメモリやHDDにアクセスできるものの、この構成なら入れ替える必要も無さそうだ
左側面。ミニD-Sub15ピン、Eterhnet、HDMI、USB 2.0と各ポートが並ぶキーボード。テンキー付。たわみも無くしっかりとした作りになっている右側面。DVDスーパーマルチドライブ、USB 2.0×2、その下に7in1メディアスロット、音声入出力がある
主要なキーのキーピッチは約19mmと十分に確保されているテンキーのキーピッチは約15mm。基本的に数字だけなので十分だ届いたのは3セルバッテリ。それでも実測540gと結構重い。ACアダプタは面積はあるものの薄いタイプだ

 今回届いたInspiron 15のボディカラーは「チェリー・レッド」。鮮やかなメタリックな赤で、なかなか綺麗だ。ボディ全体で見ると、天板の色、パームレスト周りの濃い目のメタリックシルバー、液晶パネル周りの“つや有り”ブラック、そしてその他の部分は“つや無し”ブラックと、4つの色に分かれている。トータル的な色や質感は割りと良い。

 大きさは380×248×20~32.8mm(幅×奥行き×高さ)、重さは約2.47kg(6セルバッテリ時)。外へ持ち歩くタイプではなく、室内でちょっと移動する程度の用途で、基本的には据置型だと思われる。ただ実際持ち上げると、見た目ほど重さを感じない。これなら例えば個室からリビングへなどの移動も楽だろう。ただし、今回は3セルバッテリなので、6セルバッテリ搭載時にはもう少し重たいだろう。また、机の上などに置いたとき、調度良い角度に傾いているのは、写真からも分かるように、実はバッテリのはみ出した部分が足になっているからだ。

 15.6型TFT TrueLife WXGA光沢液晶ディスプレイは光沢タイプで、映り込みはあるものの、写真や動画も見栄えする。サイズも大きいので迫力がある。試しにDVDビデオを再生したところ、思った以上に彩度・コントラスト共良好で画質が良かった。

 キーボードは右側にテンキー付きだ。主要なキーのピッチは19mm、テンキーは15mmと、異なったピッチとし、メインのキーボードの余裕を持たせている。またこのサイズのキーボードは、割と大きくたわむものが多いのだが、Inspiron 15のキーボードは若干たわむ程度で、全体的には良好だ。

 パームレストは“つるつる”したメタリック、タッチパッドは“ザラザラ”した質感と、明確に違いを付けている。面積も十分だ。ボタンはクリック感がある割りに、軽くてストロークも浅く、指に負担がかからない。ただ振動がパームレスト全体に少し感じられる。熱やノイズに関しては、ボディが大きく余裕があるため、十分な対策ができているのだろう。ほとんど無視できる範囲だ。

 SRS Premium Soundテクノロジーを搭載している音に関しては、少し低音が不足している感じだが、音量は結構大きい。これならコンテンツプレーヤーとしても、十分楽しめる。

●Core i5とATI Mobility Radeon HD 4330で快適

 今回、量産試作機と言うことでBTOで構成できるものと若干仕様が異なっている。違う点は2つ。HDDが320GBの7,200rpmなっている点(BTOでは320GB、500GB共5,400rpm)と、Bluetoothがありになっている。特にHDDはベンチマークテストにも影響するので割り引いて読んで欲しい。なお、Bluetoothは「Dell Wireless 365 Bluetooth Module」(V2.1+EDR)が使われていた。いずれにしてもあれば魅力的なオプションなので、BTOで選べるようにして欲しいと思う。

 Windows 7 Home Premiumは64bit版だ。従って4GBのメモリをフルに使え、CPUがCore i5-430M、グラフィックスがATI Mobility Radeon HD 4330なので、ベンチマークテストをするまでもなく十分快適に使える。さすがにこのクラスになると、ネットブックはもちろん、CULVノートPCと比較しても別次元だ。ただ今回はじめて使うチップセットだったので、内蔵GPU「Intel HDグラフィックス」の性能も知りたかったのだが、GPUを切り替えることができないので、そのパフォーマンスが分からなかったのはちょっと残念なところか。

起動時のデスクトップ。画面中央上部に「ドック」と呼ばれるランチャーが常駐している。CPUはデュアルコア/マルチスレッドなので4CPU相当HDDはWDC WD3200BEKT。7,200rpm/16MB cacheで一般的な5,400rpmより速いHDDのパーテーション。Cドライブは約58GB、Dドライブは約230GB。Dドライブには何も入ってない

 プリインストールされているアプリケーションは、「Dell Dock」、「Power DVD DX」、「Roxio Burn」、「Cyberlink Remote Media」など、マルチメディア系が中心となっている。やはりホビーでのコンテンツプレーヤー的な位置付けなのだろう。Dell Dockはアプリケーションランチャーで、日頃よく使うアプリケーションを追加したり、表示位置を変更するなどカスタマイズ可能となっている。不要な時は常駐解除もできる。

 Cyberlink Remote Mediaは、DLNAプレーヤー/サーバーで、「Inspiron 15」内にある写真、動画、音楽を公開し、他のAV機器からアクセスしたり、ネットワーク上の他のAV機器のコンテンツを再生することも可能だ。

Dell DockPower DVD DXRoxio Burn
Cyberlink Remote MediaMcAfee SecurityCenterCatalyst Control Center

 ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMarkの結果を見たい。まずWindows エクスペリエンス インデックスは総合4.5。内訳は、プロセッサ6.7、メモリ5.9、グラフィックス4.5、ゲーム用グラフィックス5.9、プライマリハードディスク5.9と、プロセッサのスコアが6台後半と、他を大きく引き離している。

 逆にMobility Radeon HD 4330は、ノートPC用として決して遅くないのだが、グラフィックスが4.5と、一番低い結果となってしまった。とは言え、これだけのCPUパワーとGPU、そして4GBのメモリを搭載したマシンなので、何をするにしても非常に快適。我慢などする必要もなく操作できる。CrystalMarkの結果も、全体的にかなりの高スコアだ。これを見る限り全体的なバランス、そしてパフォーマンスは流石といった感じだ。ホビーで使うにしても、仕事で使うにしてもパワー不足は無いだろう。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合4.5。プロセッサ6.7、メモリ5.9、グラフィックス4.5、ゲーム用グラフィックス5.9、プライマリハードディスク5.9。プロセッサがかなり速いCrystalMark。Core i5-430MとATI Mobility Radeon HD 4330の組み合わせはかなり強力だ。最近計ったCrystalMarkの中ではピカイチ

 CPUやHDDの容量、GPUの種類など、BTOの構成で価格が約8万円から10万円越えと、少し幅はあるものの、新しいCore iプロセッサとチップセットによるパフォーマンスの向上でコストパフォーマンスは高く、お洒落になった新デザインも魅力的。自宅や事務所でデスクトップPCの代わりとして十分楽しめる1台と言えよう。