西川和久の不定期コラム

マウス「m-Stick PS01F」

~ファン搭載でバーストモード対応のスティックタイプPC!

 マウスコンピューターは4月2日、ファンを搭載したスティックタイプの「m-Stick PS01F」を発表、4月30日から販売開始した。既に販売している「MS-NH1」との大きな違いはファンの有無だ。ちょうど少し前にファンレスのスティックタイプPCを試用したばかりなので、その差が気になるところ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

Atom Z3735Fにファン搭載でバーストモード対応

 冒頭で少し触れたが、同社はこれまでファンレスのスティックタイプ「MS-NH1」を扱っていた(現在も併売)。32GBモデルと64GBモデルの2種類あり、ファンが無い分少し軽くなっているものの、基本的に仕様は今回ご紹介する「m-Stick PS01F」と同じだ。

 少し前にファンレスのドスパラ「Diginnos Stick DG-STK1」をご紹介した時、バーストモードがオフになっており、定格の1.33GHz(もしくは以下)で動作、そしてプロセッサの温度が結構上がることを確認しているが、ファンありの場合、この辺りがどうなるか気になるところだ。主な仕様は以下の通り。

マウス「m-Stick PS01F」の仕様
SoCAtom Z3735F(4コア4スレッド、クロック1.33GHz/1.83GHz、キャッシュ2MB、SDP 2.2W)
メモリ2GB(PC3-10600 DDR3L)
ストレージ32GB/eMMC
OSWindows 8.1 with Bing(32bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、HDMI(音声出力はHDMI経由のみ)
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0+LE
インターフェイスUSB 2.0、Micro USB(電源用)、microSDカードスロット(SDXC)
サイズ/重量125×37.6×14mm(幅×奥行き×高さ)/約61g
その他冷却用マイクロファンあり
価格20,800円(送料税込み)

 プロセッサはAtom Z3735F。4コア4スレッドで、クロックは1.33GHzから最大1.83GHz。キャッシュは2MBでSDPは2.2W。冷却用マイクロファンあり。末尾がFのタイプは最大メモリが2GBの制限がかかっている代わりに、コストが抑えられているSKUだ。このスティックタイプに限らず、8型など多くのWindowsデバイスで採用している代表的なAtomプロセッサと言えよう。

 メモリは最大の2GB、ストレージはeMMCで32GB。OSは32bit版のWindows 8.1 with Bingを搭載。グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics。外部出力用として、HDMI(オス)を装備しているのがスティックタイプの特徴となる。

 インターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0+LE、USB 2.0、Micro USB(電源用)、microSDカードスロット(SDXC)。

 ドスパラ「Diginnos Stick DG-STK1」に関しては、充電用以外にもMicro USBポートが1つあったが、これがない本機でも特に問題ないだろう。音声出力はなく、HDMIから取り出すことになる。またTVなどへ直差しが難しいケースに対応できるよう、HDMI(メス)/HDMI(オス)の延長ケーブルも付属する。

 サイズは125×37.6×14mm(幅×奥行き×高さ)、重量約61g。ファンレスの「MS-NH1」は、100×38×9.8mmで約44gなので、若干大きくそして重くなっている。価格は20,800円(送料税込み)。

表/右/上。表にPower LEDと空調用のスリット、側面にUSB 2.0と電源用のMicro USB、電源ボタン。HDMI(オス)
裏/左/下。裏はスリットは無い。側面にmicroSDカードスロット
ACアダプタなど付属品。USB電源アダプタ、電源用USBケーブル、HDMI(メス)/HDMI(オス)ケーブル
さすがにChromecastと比較すると大きいが、それでも十分小型だ。HDMI(オス)にはキャップが付く
重量は実測で61g
自宅のTVへ取り付けたところ。筆者自宅のケースだと、TV右側のHDMIコネクタへ接続すると、TVのフチからはみ出てしまうので、やはり裏側のHDMIコネクタへ接続する方がよさそうだ

 筐体はプラスティック製で、持つとこれで本当にWindowsが動くのか!? と思うほど。HDMI(オス)を下にした場合、右側面にmicroSDカードスロット、左側面にUSB 2.0と電源用のMicro USB、電源ボタンを配置。表にはPower LEDと空調用のスリットがある。上と裏は特に何も無し。HDMI(オス)コネクタにはキャップが付くようになっている。

 付属品は、USB電源アダプタ、電源用USBケーブル、HDMI(メス)/HDMI(オス)ケーブル。電源アダプタは100~240V、5V/2Aのものが使われている。

 HDMI出力が音声出力を兼ねており、HDMI→DVIやHDMI→VGA変換アダプタなどを使うときは音声信号が取り出せないため、別途、BluetoothかUSBのオーディオデバイスを接続する必要がある。

 今回も試用はフルHDのディスプレイを使い、USBポートへUSB Hubを接続、そのHubへ無線式のマウスとキーボード、そしてベンチマークテストなどが入ったUSBメモリを差している。マウスとキーボードに関してはBluetoothを搭載しているので、運用時はそれを使う方がスマートかも知れないが、ペアリングするまでは、USBタイプのデバイスで操作しなければならないのがネックだ。

 側面にある電源ボタンを押すとあっと言うまに起動し、ブラウザや動画もスムーズ。ライトな用途であれば十分なレベル。この点に付いては、平均的な8型タブレットと同じと思っていいだろう。

 ファンありなのでノイズや振動がどうなのか気になったものの、筐体へ耳を近づけても音が聞こえず、振動も無く、取り越し苦労だった。

 また発熱に関しては、後半のベンチマークテストを参考にして欲しいが、プロセッサの温度が55~60℃程度、筐体まではほとんど上がって来ず、フルに動いている最中でも暖かいと感じる範囲だった。

 TVの裏など割とホコリが溜まりやすいため、この点に関しては注意したいところだが、TVに接続するもよし、ディスプレイの裏へ付けるのもよし、机の隅にコロッと転がすのもよし……いろいろ楽しめる超小型PCと言えよう。

1.83GHzまで上昇し安定作動

 OSは32bit版のWindows 8.1 with Bing。初期起動時のスタート画面はWindowsの標準そのまま。デスクトップ画面は、お馴染み同社の壁紙、Adobe Readerと操作マニュアル(PDF)へのショートカットと、いたってシンプルだ。起動/終了も非常にスムーズ。またファンありでバーストモードがオンになっている関係からか、気持ちファンレスの同タイプより動きが良いように思える。

 ストレージは32GB/eMMCの「Kingston S10032」。C:ドライブのみの1パーティションで、約24.37GBが割り当てられ、空きは22.2GB。回復パーティションは3.91GBだ。

 そのほか、主なデバイスは、Wi-FiとBluetoothがRealtek製。サウンドはIntel SST Audioと、このクラスとしては標準的な構成となっている。

スタート画面はWindowsの標準そのまま
起動時のデスクトップ。お馴染み同社の壁紙と、Adobe Readerと操作マニュアル(PDF)へのショートカット
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは32GB/eMMCの「Kingston S10032」。Wi-FiとBluetoothがRealtek製。サウンドはIntel SST Audio
SSDはC:ドライブのみの1パーティションで、約24.37GBが割り当てられている
アプリ画面。ほとんど素のWindowsのまま

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリ、デスクトップアプリ共に無く、素のWindowsそのままの状態だ。SSDの容量が32GB(実質22.2GB)なので、それを考慮した形になっている。写真や動画は、microSDカードか、LAN上のNASなどへ逃がすのが実用的な運用方法だろうか。

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 3.6。プロセッサ 5.9、メモリ 5.5、グラフィックス 3.6、ゲーム用グラフィックス 3.8、プライマリハードディスク 6。PCMark 8 バージョン2のHomeは1077、CrystalMarkは、ALU 18892、FPU 16904、MEM 18414、HDD 18704、GDI 4068、D2D 2665、OGL 2607。参考までにGoogle Octane(デスクトップ版IE)は3501。

 一方、ファンレスでバーストモードオフのドスパラ「Diginnos Stick DG-STK1」は、総合 4.1。プロセッサ 4.9、メモリ 5.5、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス 4.1、プライマリハードディスク 7.1。PCMark 8 バージョン2のHomeは1034。Google Octane(デスクトップ版IE)は2611だった。

 つまり、バーストモードONによりプロセッサの性能がアップしているのは明らかだ。特にGoogle Octaneは1,000近く違い分かりやすい。JavaScriptのベンチマークテストなので、その差がはっきりと表れている。

 ただグラフィックス系は逆に下がっている。この記事を見ると「ブーストが有効でGPUクロックが313~646MHzの可変となる」関係からだろう。CPUよりもグラフィックス性能を重視するのであれば、DG-STK1の方がオススメということになる。

 PCMark 8 バージョン2のHome/詳細を見ると、定格の1.33GHzから最大の1.83GHzまでクロックが変動しているのが見て取れる。また、ファンレスのドスパラ「Diginnos Stick DG-STK1」は、プロセッサ温度が70度程度まで上昇していたのに対して、55~60度辺りで収まっている。やはりファンの効果がかなりあるのはこのグラフからも分かる。

 いずれにしても、Atom Z3735Fプロセッサをこの小さな筐体へ押し込むには、さまざまなチューニングの組合せが必須のようだ。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 3.6。プロセッサ 5.9、メモリ 5.5、グラフィックス 3.6、ゲーム用グラフィックス 3.8、プライマリハードディスク 6
PCMark 8 バージョン2のHome。1077
PCMark 8 バージョン2のHome/詳細。クロックは1.33GHzから最大の1.83GHz。プロセッサの温度は、55~60度辺りで収まっているのが分かる
CrystalMark。ALU 18892、FPU 16904、MEM 18414、HDD 18704、GDI 4068、D2D 2665、OGL 2607

 余談になるが、先日発表のあったMicrosoftの「Surface 3」は、Cherry Trailと呼ばれるBay Trailの次の世代のAtomプロセッサ、Atom x7-Z8700(1.6GHz/2.4GHz)を搭載している。まだ使ったことがなく、手元にデータがないのだが、笠原一輝氏の記事によると、PCMark 8 バージョン2のHomeのスコアが1487。メモリ4GBでストレージも違うので、単純比較はできないが、それでも性能が向上しているのが分かる。CPU的にはクロック差、GPU的にはIntel GMA Gen7からGen8へ変わっており、この辺りが性能差として現れたと言えるだろう。

 今後、このCherry Trailを搭載した、スティックタイプや8型タブレットも出てくると思われるので、今から楽しみにしている筆者である。

 以上のようにマウス「m-Stick PS01F」は、ファン搭載のスティックタイプPCだ。Atom Z3735Fなど、主な仕様は8型タブレットも含め同じであるが、やはりファンありの方がプロセッサ自体の性能を活かせるることが今回はっきり分かった。またファンの作動音は全く気にならないレベルに抑えられているため、運用上、工夫などをする必要もないのもポイントだ。

 物理的な駆動部があるので故障率はファンレス機に劣るかも知れないが、それは多くのPCも同じ話。スティックタイプでAtomのCPU性能をフルに使いたいユーザーにお勧めしたい逸品だ。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/