西川和久の不定期コラム
ドスパラ「Diginnos Stick DG-STK1」
~Atom Z3735F搭載のスティック式ファンレス超小型PC!
(2015/5/8 06:00)
Atom Z3735Fを搭載した約109×37.6×14mm、約54gの超小型PC
以前、ECS「LIVA」を試用したとき(約1年前の2014年3月末)、「このサイズでPCができるなら、スティックタイプも時間の問題か……。」と、思っていたが(当時Android搭載のスティックタイプは既にあった)、それが現実のものとなって登場した。
今回ご紹介する「Diginnos Stick DG-STK1」が正にそのもの。HDMI(オス)のコネクタが筐体にあり、TVなどへそのまま直差し可能な超小型PCだ。プロセッサは8型タブレットで定評のあるAtom Z3735Fを採用。メモリ2GB、ストレージ32GBで、ライトな用途であれば、問題なく使える環境だ。
8型タブレットでも容易に持ち運べるものの、ポケットサイズかどうかの差は大きく、別途、ディスプレイ、キーボード・マウス、そして電源が必要とは言え、例えば、自宅、実家、会社など、よく行く先々にこれらの周辺機器が置いてあれば、この小さい筐体1つ持ち歩くだけで済む。普段の環境がポケットサイズで持ち歩けるとなると、ちょっとしたPC革命ではないだろうか。このサイズならIoT用途も考えられる。
同社は少し前にIntel製のベアボーンを使った同種のモデル(Diginnos Compute Stick/20,780円/税別)を発売していたが、現在在庫切れになっており、このモデルが登場した。主な仕様は以下の通り。
ドスパラ「Diginnos Stick DG-STK1」の仕様 | |
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SoC | Atom Z3735F(4コア4スレッド、クロック 1.33GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2.2W) |
メモリ | 2GB(DDR3L) |
ストレージ | 32GB/eMMC |
OS | Windows 8.1 with Bing(32bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics、HDMI(音声出力はHDMI経由のみ) |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB 2.0、Micro USB 2.0、Micro USB(電源用)、microSDカードスロット(SDXC) |
サイズ/重量 | 約109×37.6×14mm(幅×奥行き×高さ)/54g(実測) |
価格 | 17,980円 |
SoCはAtom Z3735F。4コア4スレッドでクロックは1.33GHz。キャッシュは2MB、SDPは2.2W。メモリは2GB、ストレージはeMMCで32GB。グラフィックスは、SoC内蔵Intel HD Graphics。OSは32bit版Windows 8.1 Bingを搭載している。
これからも分かるように、多くの8型タブレットと同じ構成だ。バッテリと液晶パネル、カメラを省きロジックボードだけ超小型のケースに入れた感じだろうか。
インターフェイスは、HDMI出力、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0、USB 2.0、Micro USB 2.0、Micro USB(電源用)、microSDカードスロット(SDXC)。また付属品として、電源用のUSBケーブル、Micro USB/USBケーブル、HDMI延長ケーブルが含まれている。
音声出力はなく、HDMIから取り出す形だ。HDMI→DVI変換ケーブルなどを使うと、音声信号が取り出せないものの、USBまたはBluetoothのオーディオ系機器でも扱えるため特に問題ではないだろう。
多くの8型タブレットと比較して、ちょっと便利なのが、電源供給用のUSBポートとは別に、USBとMicro USBの2ポートを備えていること。8型タブレットの場合、電源供給用と通常ポートを兼ねているものがほとんどで、充電しながらUSBを使うことができず、何かの時に不便だが、本機では2ポートあるため利便性が高い。
サイズ約109×37.6×14mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測で54gということもあり、ディスプレイのHDMI(メス)へ直接差せるようになっている。スペースの問題など、物理的に直差しができない場合は、付属のHDMI延長ケーブルを使う。
スティックタイプは、最近他社からもいろいろ出てきたが、SoCなど構成は同じで、一番の違いはファンの有無となるだろうか。今回ご紹介している「Diginnos Stick DG-STK1」は、ファンレスで筐体が金属製になっており放熱を考慮した設計だ。
ただし、構成が同じでも主に熱対策でチューニングが異なり、システムの動作速度に若干差が出る。Atom Z3735Fをこのサイズに押し込むには、少し工夫が必要。何にポイントを置くかで、そのチューニングどころが変わると言った感じだ。逆にほとんど同じの8型タブレットと違い、一見同じでも実は違う的な面白さ(悩みどころ?)がある。
筐体は先に書いたように金属製。このサイズ、この重量なので、ポケットへ入れたり、カバンで持ち運ぶのも容易だ。何時もの環境をそのまま持ち運べる意味は大きい。ただその分、紛失するとショックも大きそうだが……。
表面には空調用のスリットが2カ所。上面にはHDMIコネクタ(オス)、右側面には、電源ボタン、電源用Micro USB、USB。裏面は表面同様に空調用のスリットが2カ所。またPower LEDがある。下面は特になし、左側面にはmicroSDカードスロットとMicro USBを配置している。両側面にネジがあり、外せばロジックボードを取り出せそうだったが、編集部から分解禁止令が出ているので、今回は見送った。
付属のUSB式ACアダプタは、サイズ約3.5×4×3.5cm(同)、重量52g。入力100-240V、出力5V/2A。プラグの部分が折り畳める。重量だけだと本体とほとんど同じだ。ACアダプタの仕様から同程度のモバイルバッテリでも駆動可能だと思われる。
セッティングの組合せとしては、TVにBluetoothか無線式のキーボードとマウスを接続するパターンが音声出力もそのまま得られるので好都合だ。この場合は、動画や写真などコンテンツ系が主な用途になるだろうか。ミーティングなどでダイレクトにプロジェクタへ差し込む手もありだろう。
PC用のディスプレイに接続する場合は、HDMI入力があるならそのまま、ない場合は、HDMI→DVIやHDMI→VGA(D-Sub15ピン)変換アダプタを使うことになるが、アダプタ側のHDMIもオスだとメス/メスの延長アダプタも必要となる。また音声出力が得られないので、必要であればUSBやBluetoothのサウンド系デバイスを接続しなければならない。
OSがProエディションであれば、Remote Desktopが使えるものの、プリインストールされているOSはノーマル版なので、無償で配布されているサードパーティ製のものを利用する必要がある。
早速自宅のTVで試そうとしたところ、2つ並んでいるHDMIコネクタの隙間が狭い上に、少し凹んだ場所にあるため、その壁が邪魔となり、差すことができなかった。このようなケースでは付属のHDMI延長ケーブルを使うことになる(Chromecastも同じだった)。
ベンチマークテスト含めた試用はTVでは何かとしづらいので、フルHDでHDMI入力のあるディスプレイで行なった。ただ前述の理由でHDMI延長ケーブルが必要だ。
キーボードとマウスは手持ちのUSBアダプタタイプの無線式。またベンチマークテストなど、テスト用の素材はUSBメモリに一式入っている関係で、結局、本体のUSBポートへUSBハブを接続し、これらのデバイスを繋いでいる。加えて電源用のUSBケーブルと、この小さい筐体に3つもケーブルが繋がると結構おかしな絵となる(笑)。
使用感は、振動やノイズは皆無だが、発熱はベンチマークテストなどで負荷をかけると、暖かいといったレベルではなく、熱いと思う程度まで温度が上がる(後半参照)。TVに直差しする場合などは、割とホコリが貯まりやすく、また設置場所によっては熱がこもるので注意した方がいいかもしれない。これ以外は気になる部分もなく、コンパクトな筐体にうまくまとまっている1台だ。
Intel Atom Z3735Fの定格1.33GHz(もしくは以下)で動作
OSは32bit版Windows 8.1 with Bing。スタート画面は「Yahoo!天気・災害」のみ追加。デスクトップ画面は、「Diginnosかんたんリカバリーマニュアル」へのショートカット1つで、それ以外はWindows 8.1標準といたってシンプル。起動/終了も8型タブレットと同じ程度の速度で動作する。
ストレージはeMMC/32GBの「東芝032GE4」を搭載し、C:ドライブのみの1パーティション。約25GBが割り当てられ空きは20.9GBだった。回復パーティションは3.8GB。あまり余裕がないので、データなどはmicroSDカードとの併用が望ましい。Wi-FiとBluetoothはRealtek製だ。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは「Yahoo!天気・災害」。デスクトップアプリは「マカフィーインターネットセキュリティ」のみ。容量を考慮した内容となっている。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。
winsat formalの結果は、総合 4.1。プロセッサ 4.9、メモリ 5.5、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス 4.1、プライマリハードディスク 7.1。PCMark 8 バージョン2のHomeは1034、CrystalMarkは、ALU 16405、FPU 14419、MEM 18019、HDD 23195、GDI 3578、D2D 2676、OGL 2196。参考までにGoogle Octane(デスクトップ版IE)は2611。これまで扱ってきたIntel Atom Z3735F搭載機と比較すると少し遅い。気になって調べたところ、PCMark 8 バージョン2での、プロセッサの温度と、クロックの動きがずいぶん違う。
2つのグラフを並べた図をご覧いただきたい。8型タブレット(右)は、温度40度程度なのに対して、DG-STK1は70度程度とかなり高く、またクロックは前者が平均的に1.33GHzより高めで、場合によっては最大の1.83GHzまで上昇するのに対して、本製品はバースト機能が無効になっており、規定値の1.33GHzもしくはそれ以下で動作している。8型タブレットの手持ちデータ全てを見比べても傾向は同じで、DG-STK1だけ異なった動きだった。
最大幅でクロックが500MHzも差があるため、ベンチマークテストだけでなく、当初、体感でも数多く扱った8型タブレットより若干動きが遅く感じたのは、気のせいではなかったようだ。
おそらくファンレス駆動のためにこのような仕様(ターボ機能/Intel Burst Technologyを無効)になっていると思うが、他社の(ファンの有無も含め)同タイプも気になるところ。この記事を読むと、同じAtomプロセッサを搭載しているスティックタイプでもチューニングがいろいろ違うことが分かる。ただし、サーマルスロットリングによる速度低下は、YouTubeで1時間ほどフルHD動画を連続再生したが、特に発生しなかった。
個人的な意見としては、この点は実機を触らない限り分からないので、できればターボ機能が有効か無効かを仕様に明記して欲しいのと、スティックタイプでHDMI(メス)へ直差しできるとは言え、コネクタへの負荷や、諸事情で延長ケーブルを使うケースもあり、であればいっそ、HDMIケーブルありきにし、Apple TVのようにもう少し余裕のある形状で、Atomの性能をフルに出せるモデルも別途あっていいように思う。
余談になるが、期間限定で「Windows 10 Preview」動作チェック用として、OSなしの安価なモデルがあれば楽しめるかもしれない。と言うのも、この連休中に古い「Eee PC 901-X」(Atom N270/2GB。ただしストレージは32GBへ変更済み)へWindows 10 Preview Build 10074を入れて遊んでいたが、実用性は低いものの、7年前のネットブックであるにも関わらず、それなりに動作する(winsat formalでCPU:2.6、MEM:4.4、GPU:2、HDD:6.05)。winsatのスコアを見れば分かるように、プロセッサとグラフィックスにもう1つパワーが欲しいところ。であれば、OSなしのスティックタイプがあれば……と思った次第だ。
以上のように、ドスパラ「Diginnos Stick DG-STK1」は、Intel Atom Z3735F/2GB/32GBを搭載したスティックタイプで、どこにでもいつもの環境を持ち運べる超小型PCだ。Wi-FiやBluetoothはもちろん、電源用のMicro USBに加え、Micro USBとUSBポートが別途あるのも嬉しいポイントと言えよう。
ファンレス仕様のためクロック数が定格に抑えられており、同クラスの平均的な8型タブレットと比較して動作が若干遅くなるものの、「ファンレス&このサイズこそ正義!」というユーザーにお勧めしたい1台だ。