西川和久の不定期コラム

日本HP「Mini 210-2000」
~デュアルコアAtom N550を搭載したネットブック!



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、HP Directplus直販専用モデルとして、デュアルコアAtom N550プロセッサを搭載したネットブック「Mini 210-2000」を発売した。デザインも新しくなり、バッテリ駆動最大約10時間となかなか魅力的。出荷版が届いたので使用レポートをお届けする。


●デュアルコアAtomと1,366×768ドットの液晶パネルが魅力

 もともと「Mini 210」は、2010年3月17日に発表・発売開始となっている。チップセットはIntel NM10 Express、そしてCPUはシングルコアのAtom N450(1コア/1.66GHz/キャッシュ512KB)プロセッサで、当時グラフィックスコアを統合したPine Trailプラットフォームを採用の新型ネットブックだった。液晶ディスプレイは10.1型1,024×600ドットと一般的なネットブック仕様であり、メモリはDDR2 SDRAM 1GB。バッテリは標準で3セルだ。重量は約1.18kg。

 そして今回発表された「Mini 210-2000」は、CPUにデュアルコアのAtom N550プロセッサ、2コア/1.5GHz/キャッシュ512MB×2を搭載、メモリがDDR3-667、そして液晶パネルサイズは10.1型と変わらないものの、1,366×768ドットと解像度がアップ。CPUがデュアルコアなので余裕のある動作、メモリはDDR2からDDR3になったのでアクセスの高速化、そして一回り広い解像度と、トータル的にワンランク上の環境が期待できる。主な仕様は以下の通りだ。

【表】Mini 210-2000仕様
CPUIntel Atom N550(2コア/1.5GHz/キャッシュ512MB×2)
チップセットIntel NM10 Express
メモリ1GB/DDR3-667(PC3-10600)、1スロット空き0、最大2GB
HDD250GB(7,200rpm)
OSWindows 7 Starter
ディスプレイ10.1型ワイド液晶ディスプレイ、1,366×768ドット
GPU内蔵Intel GMA 3150、ミニD-Sub15ピン
ネットワークEthernet(10BASE-T/100BASE-TX)、IEEE802.11b/g/n、Bluetooth2.1+EDR
その他USB 2.0×3、4in1メディアスロット、Webカメラ、内蔵マイク、音声入出力
サイズ/重量269×193×22~32mm(幅×奥行き×高さ)/約1.38kg
バッテリ駆動時間最長約10時間(6セル標準)
価格49,980円(税込/HP Directplus)

 グラフィックスは内蔵のGMA 3150。デジタル出力は無く、ミニD-Sub15ピンのアナログ出力のみの対応だ。HDDは7,200rpmの250GB。多くのネットブックは5,400rpmタイプを搭載しているのでちょっと珍しい存在となる。ネットワークは、有線LANは10BASE-T/100BASE-TX、無線LANはIEEE 802.11b/g/n、そしてBluetooth 2.1+EDRを搭載している。その他のインターフェイスとしては、USB 2.0×3、4in1メディアスロット、Webカメラ、内蔵マイク、音声入出力。ほとんど「Mini 210」と同じだが、Bluetoothが搭載されたのはうれしい。

 またバッテリは6セルが標準となった。この関係で重量は200gほど重くなっているものの、バッテリ駆動時間が約4.25時間から約10時間と大幅に伸びている。200g差でこれだけ長時間バッテリ駆動ができるならプラスと思う人も多いだろう。

 なお「Mini 210-2000」は、冒頭に書いた通り同社のHP Directplusだけでの販売となり、価格は49,980円と、デュアルコア、1,366×768ドット、6セルバッテリ搭載のネットブックとしては、お買い得感が高い。

無地でチャコールのマットな天板。落ち着いた感じだ。指紋あともあまり目立たない正面。斜め下にステレオスピーカー。「Dolby Advanced Audio」のロゴが見える本体底面。バッテリを外し、オレンジ色のレバーを押すと、裏パネルが簡単に外れる。HDDは黒いフィルムの下にある
左側面。電源入力、充電LED、ミニD-Sub15ピン、HDD LED、USB 2.0×1、音声入出力。この位置まで液晶パネルが倒れるキーボードはアイソレーションタイプ。ファンクションキーは[Fn]キーとのコンビネーションになる右側面。Ethernet、ロックポート、USB 2.0×2、電源スイッチ、4in1メディアスロット。Ethernetのコネクタにはカバーがある
キーピッチは実測で約18mmバッテリは6セルタイプが標準。ACアダプタは小型だ重量は実測で1,368g

 第一印象は、無地でチャコールのマットな天板と角がラウンドになっているなど、全体的にシンプルかつ優しい雰囲気で筆者的には好み。指紋跡もあまり気にならない。液晶パネルのフチはブラック、その他の部分はシルバー。裏もチャコールとなっている。またこの裏フタは、バッテリを外すとオレンジ色のレバーがあるのでそれを引くと簡単に外れメモリなどにアクセスできる。

 サイズは269×193×22~32mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.38kg。ルックスはどちらかと言えばスリムではなく、割と普通な感じだ。これは6セルのバッテリのある後ろ側が少し高くなっている関係もあるだろう。もちろん「Mini 210」と比較すればであり、このサイズ、この重量であれば問題なくカバンへ入れて持ち歩ける範囲だ。

 キーボードはアイソレーションタイプだ。キーピッチは約17.6×17.6mm。たわむ事も無く、しっかりした作りで入力しやすい。ただキートップも含め、キーボード全体の質感がプラスチッキーなのが少し残念な部分か。ファンクションキーは[Fn]キーとのコンビネーションとなり、音量、液晶パネルの明るさなど機能キーがファンクションキーのみで設定できる。

 タッチパッドはパームレストと段差があり、マルチタッチジェスチャーに対応。機械的なボタンは無く、1枚の板が微妙に傾きボタンのかわりになっている。またパッド左上の丸い部分をタップするとON/OFFの切り替えができる。パームレスト自体はもともとボディが小さいのであまりスペースは無いが、実際操作してみると特別狭い感じはしない。

 10.1型1,366×768ドットの液晶ディスプレイはグレア(光沢)タイプだ。明るさを最大にすると結構明るく、このクラスとしてはハイコントラストで色も鮮やか。価格を考えれば十分なクオリティと言える。

 今回ちょっと驚いたのが音だった。よくある正面斜め下に付いているタイプなのだが、サイズの割には出力は大きく、音質もなかなか頑張っている。「Dolby Advanced Audio」に対応。これなら音楽を聴いても動画を観ても欲求不満になることは無いだろう。振動やノイズについては使用した範囲では気にならなかった。

●6時間を越えるバッテリ駆動

 OSはWindows 7 Starterだ。内蔵グラフィックスのGMA 3150自体はAeroに対応しているものの、Starterの制限上ONにはできない。また壁紙の変更もNG。1,366×768ドットの解像度は、ネットブックで一般的な1,024×600ドットと比較して、何をするにしても狭さを感じず、快適に操作できる。ただグラフィックスがあまり速くないので、アニメーション系の効果はOFFにした方がよい。

 起動時、すでにメモリは565MBとなっており、タスクマネージャーのパフォーマンスを見ても、空きメモリに余裕が無いことがわかる。この関係もあって、IEと何か他の大きめのアプリケーションを同時に動かすともう一杯一杯の感じだ。せっかくのデュアルコアがスポイルされてしまう。できれば2GBにメモリを増設して使いたいところ。

 搭載しているHDDは、容量250GBで7,200rpmの高速回転タイプ、WD2500BEKTを搭載している。パーティションは4つ。その内、Windowsシステムとユーザーが使えるのはC:ドライブ約222GBとなっている。無線LANはBroadcom 4313、BluetoothはBroadcom 2070。その他の部分に関しては、Pine Trailプラットフォームとしては標準的な構成だ。

起動時のデスクトップ。StarterなのでAeroはOFF、壁紙も変更できない。デュアルコアAtom N550なので4スレッドだHDDはWD2500BEKT(250GB/7,200rpm/キャッシュ16MB)、BluetoothはBroadcom 2070、無線LANはBroadcom 4313が使われているHDDのパーテーション。ユーザーが使えるパーティションとしては1つ。約222GBが割当てられている

 プリインストールアプリケーションは、「ノートン・インターネットセキュリティ2011(60日間試用版)」、「CyberLink DVD Suite」、「Evernote」など。この手のマシンでEvernoteが入っているのは初めて見るが、PC、iPhone、iPad、Androidなどでメモを共有できる便利な個人用ドキュメント管理クラウドサービスで、Webからでもアクセスできるが、専用アプリケーションの方が何かと便利に操作できる。

 同社のツール系は、「HP MediaSuite」、「HP CloudDrive」、「HP Power Manager」、「HP Quick Lunch」、「HP QuickSync」などとなる。HP MediaSuiteは、その名の通り、写真や動画、音楽ファイルを1つのツールで扱える統合ソフトウェア。また、Windowsを起動せず、ネットやメール、音楽などにアクセスできるLinuxベースの「HP QuickWeb」も搭載している。

HP MediaSuiteノートン・インターネットセキュリティ2011HP QuickSync

 ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。

 まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は2.9。内訳は、プロセッサ3.1、メモリ4.5、グラフィックス2.9、ゲーム用グラフィックス3.0、プライマリハードディスク5.9。一番スコアが低いのはグラフィックスの2.9。ネットブックは多くの場合でCPUのスコアに引っ張られるものの、その点はさすがデュアルコアと言えよう。

 CrystalMarkは、総合 38,042、ALU 9,068、FPU 7,448、MEM 6,584、HDD 11,766、GDI 1,765、D2D 979、OGL 432。Windows エクスペリエンス インデックスと同様に、デュアルコアの効果がALUとFPUに現れている。FPUはシングルコアと比較してほぼ倍だ。また、7,200rpmのHDDを搭載しているため1万オーバー。いずれにしてもトータル的にネットブックとしては高性能なのが分かる。

 BBenchは、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残4%で24,027秒(6.6時間)だった。最長約10時間には届かなかったものの6時間を越えた。「Mini 210」の時は同じテストで2.5時間だったこともあり、6セルバッテリで大幅に伸びている。

Windows エクスペリエンス インデックスの総合は2.5。プロセッサ2.5、メモリ4.8、グラフィックス3.0、ゲーム用グラフィックス3.0、プライマリハードディスク5.6CrystalMarkは総合 38,042。ALU 9,068、FPU 7,448、MEM 6,584、HDD 11,766、GDI 1,765、D2D 979、OGL 432BBench。バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残4%で24,027秒(6.6時間)

 以上のように「Mini 210-2000」は、デュアルコアAtom N550プロセッサ搭載、1,366×768ドットの液晶パネル、シンプルでクールなデザイン、そしてバッテリ駆動時間6時間超えと、なかなか魅力的なネットブックに仕上がっている。

 ただ標準搭載メモリが1GBと、Windows 7 Starterとは言えこの点がウィークポイントになっている。裏パネルが簡単に外れ、メモリへのアクセスも容易なので、2GBにして使用することをお勧めしたい。