西川和久の不定期コラム
Core i9-12900HK搭載で8万円台の高コスパミニPC「MINISFORUM NAB9」
2024年4月16日 06:14
MINISFORUMは現在、CPUにCore i7-12650H/i7-12700H/i9-12900HKを搭載した「NAB6」、「NAB7」、「NAB9」を販売中だ。今回、最新で最上位のNAB9が編集部から送られて来た。Core i9-12900HK搭載ということもあり、オーバークロックできるかどうかも含めて気になる。早速試用レポートをお届けしたい。
Core i9-12900HKを搭載したNABシリーズ最上位!
頭に書いたようにNABシリーズは、搭載するCPUがCore i7-12650H、i7-12700H、i9-12900HKと3種類ある。筐体やほかの仕様は同じで、予算や用途に応じて選択でき、サイズも内容の割に127×127.5×54.7mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクト。
特徴としては、天板2隅を押すだけで簡単に外れ、メモリやストレージにアクセスできてメンテナンスが楽、そして2.5Gigabit Ethernet(GbE)が2つあること、メインはM.2 2280 SSDだがもう1基2.5インチSSD/HDDを内部に搭載できることだろうか。主な仕様は以下の通り。
MINISFORUM「NAB9」の仕様 | |
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CPU | Core i9-12900HK(6P+8E/14コア20スレッド/最大クロック5.0GHz/キャッシュ 24MB/最小保証電力:35W、最大ターボパワー:115W |
メモリ | 32GB(DDR4-3200 16GB×2)/SO-DIMMスロット×2(最大64GB) |
ストレージ | M.2 2280 1TB + 2.5インチSATA SSD/HDD(空き) |
OS | Windows 11 Home(22H2) |
グラフィックス | Intel Iris Xe Graphics eligible/HDMI×2(4K@60Hz)、Type-C×2(4K@60Hz) |
ネットワーク | 2.5GbE×2、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
インターフェイス | USB Type-C×3、USB 3.1、3.5mmジャック |
サイズ/重量 | 127×127.5×54.7mm(幅×奥行き×高さ)、(実測)614g |
セール価格 | 8万2,980円(通常価格10万2,980円/32GB/1TB) |
プロセッサはCore i9-12900HK。6P+8E/14コアで20スレッド、最大クロック5.0GHz。キャッシュは24MBで、最小保証電力:35W、最大ターボパワー:115W。末尾がHKなのでモバイル用SKUの中ではハイパワータイプとなる。
Core i9-12900HKは、末尾がKとオーバークロック可能なタイプとなっている。そこでWindowsセキュリティでメモリ整合性がオフになっているのを確認した後、Intel Exterme Tuning Utilityを実行したが、画面キャプチャからも分かるようにOptimizeのボタンが有効にならない。メーカーに確認したところ、OC未対応とのこと。この辺り、電源や筐体の冷却など諸事情で……ということなのだろう。
メモリはDDR4-3200 16GB×2の合計32GB。SO-DIMMスロット×2で最大64GBまで搭載可能だ。ストレージはM.2 2280 SSDの1TB。どちらも16GBと512GBを選択できる。OSはWindows 11 Home。バージョンは22H2だったので古いが、この範囲でWindows Updateを適応し評価した。
グラフィックスはプロセッサ内蔵、Intel Iris Xe Graphics eligible。外部出力用に、HDMI×2(4K@60Hz)、Type-C×2(4K@60Hz)と、合計4つ。なかなか強力だ。
ネットワークは、2.5GbE×2、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB Type-C×3、USB 3.1×4、3.5mmジャック。Type-Cは対応内容がバラバラで、前面はUSB 3.0でデータ転送のみ、背面はデータ転送/PD出力/DisplayPort Alt Mode、DisplayPort Alt Modeのみの3タイプある。USB4がないのは残念なところか。
サイズは127×127.5×54.7mm、重量は614g(実測)。価格は今回の構成(32GB/1TB)で10万2,980円だが、執筆時セール中で8万2,980円となかなかお買い得になっている。
なお16GB/512GBで7万1,990円(8万9,980円)、32GB/512GBで7万8,590円(9万7,980円)。上下モデルで約1万円ほどしか差がない。であれば32GB/1TBがいいのではないだろうか!?
筐体はシルバーのNUCタイプ。天板と底板がプラスチックだが、気になるほどでもない。このサイズで重量614g。ACアダプタが278gなので合わせても1kgを切り、カバンなどに入れ持ち運びも可能だ。
前面にUSB 3.0 Type-C(データのみ)、USB 3.1×2、3.5mmジャック、電源ボタン。背面に電源入力、電源入力、HDMI、USB Type-C(データ/PD出力/DisplayPort Alt Mode)、2.5GbE×2、HDMI、USB Type-C(DisplayPort Alt Mode)、USB 3.1×2、ロックポートを配置。裏はVESAマウンタ用のネジ穴がある。
付属品は、ACアダプタ(サイズ約80×80×30mm、重量278g、出力19V/6.32A/120.08W)、HDMIケーブル、VESAマウンタ、2.5インチSSD/HDD用SATAケーブル。BIOSは起動時に[DEL]キーと一般的だ。
内部へのアクセスは非常に簡単。天板の手前2隅を押すと外れ、即メモリ、M.2 2280 SSDが現れる。加えて付属のSATAケーブルを使い、天板の裏に2.5インチSSD/HDDを1基搭載可能だ。本連載ではいろいろなミニPCをご紹介しているが、この簡単さは特筆に値する。
ノイズと発熱は、試用した範囲でまったく気にならなかった。ベンチマークテストなど負荷をかけても、ファンのノイズはほぼなく、発熱もほんのり暖かくなる程度。本当にi9-12900HKが入っているのか疑うほどだ(笑)。冷却機構がうまく働いているのだろう。
昨今のRyzenには若干劣るがなかなかのパフォーマンス!
初期起動直後は、壁紙の変更やアプリなどの追加もなくWindows 11 Home標準のまま。スペックがスペックなだけに、通常業務ならこれで十分(以上)では!? と思うほど、快適に作動する。筆者はCore i9-12900搭載のPCをメインで使っているものの、用途を考えると本機で問題ないと断言できる(笑)。
ストレージは、M.2 2280 SSD 1TBの「KINGSTON OM8PGO41024Q-A0」。メーカーのデータは見つからなかったが、ここによると、Seq. Read 4,677 MBytes/Sec、Seq. Write 3,717 MBytes/Sec。CrystalDiskMarkのスコアもそのまま(以上に)出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約952GB割り当てられ空き915GB。
2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V、Wi-FiとBluetoothはMediaTek製だ。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。
少し前に掲載したRyzen 9 7940HSを搭載した「GEEKOM NUC A7」と比較するとiGPUの差だろうか? Cinebench R23はマルチがほぼ同じ、シングルは本機の方が速いにも関わらず、PCMark 10と3DMark、そしてPCMark 8のWork Accelaratedの差が開いている。
特に3DMarkに関してはテスト内容によって2倍近くの開きが……。この辺りをどう思うかで本機の評価も変わるだろうか。
【表】ベンチマーク結果 | |
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PCMark 10 v2.1.2662 | |
PCMark 10 Score | 5,991 |
Essentials | 10,806 |
App Start-up Score | 14,915 |
Video Conferencing Score | 8,356 |
Web Browsing Score | 10,127 |
Productivity | 7,041 |
Spreadsheets Score | 7,038 |
Writing Score | 7,045 |
Digital Content Creation | 7,669 |
Photo Editing Score | 11,140 |
Rendering and Visualization Score | 5,667 |
Video Editting Score | 7,145 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 5,043 |
Creative Accelarated 3.0 | N/A |
Work Accelarated 2.0 | 3,219 |
Storage | 5,031 |
3DMark v2.28.8217 | |
Time Spy | 1,853 |
Fire Strike Ultra | 1,208 |
Fire Strike Extreme | 2,370 |
Fire Strike | 5,082 |
Sky Diver | 17,722 |
Cloud Gate | 22,780 |
Ice Storm Extreme | 148,045 |
Ice Storm | 199,821 |
Cinebench R23 | |
CPU | 15,279 |
CPU(Single Core) | 1,717 |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 4817.437 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 3914.181 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1706.833 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 2534.834 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 868.167 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 575.869 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 68.471 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 350.181 MB/s |
以上のようにMINISFORUM「NAB9」は、127×127.5×54.7mmのコンパクトな筐体にCore i9-12900HK/32GB/1TBを詰め込んだハイエンドミニPCだ。それにも関わらずノイズや発熱も大してなく、内部へのアクセスも天板を押すだけの簡単さなど、運用面においても優れている。
USB4がなく、昨今のRyzenに対して、GPUを中心としたベンチマークスコアが少し劣るのは残念だが、特に「CPUはIntel派!」のユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。