西川和久の不定期コラム

Core i9-12900HK搭載で8万円台の高コスパミニPC「MINISFORUM NAB9」

MINISFORUM NAB9

 MINISFORUMは現在、CPUにCore i7-12650H/i7-12700H/i9-12900HKを搭載した「NAB6」、「NAB7」、「NAB9」を販売中だ。今回、最新で最上位のNAB9が編集部から送られて来た。Core i9-12900HK搭載ということもあり、オーバークロックできるかどうかも含めて気になる。早速試用レポートをお届けしたい。

Core i9-12900HKを搭載したNABシリーズ最上位!

 頭に書いたようにNABシリーズは、搭載するCPUがCore i7-12650H、i7-12700H、i9-12900HKと3種類ある。筐体やほかの仕様は同じで、予算や用途に応じて選択でき、サイズも内容の割に127×127.5×54.7mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクト。

 特徴としては、天板2隅を押すだけで簡単に外れ、メモリやストレージにアクセスできてメンテナンスが楽、そして2.5Gigabit Ethernet(GbE)が2つあること、メインはM.2 2280 SSDだがもう1基2.5インチSSD/HDDを内部に搭載できることだろうか。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM「NAB9」の仕様
CPUCore i9-12900HK(6P+8E/14コア20スレッド/最大クロック5.0GHz/キャッシュ 24MB/最小保証電力:35W、最大ターボパワー:115W
メモリ32GB(DDR4-3200 16GB×2)/SO-DIMMスロット×2(最大64GB)
ストレージM.2 2280 1TB + 2.5インチSATA SSD/HDD(空き)
OSWindows 11 Home(22H2)
グラフィックスIntel Iris Xe Graphics eligible/HDMI×2(4K@60Hz)、Type-C×2(4K@60Hz)
ネットワーク2.5GbE×2、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB Type-C×3、USB 3.1、3.5mmジャック
サイズ/重量127×127.5×54.7mm(幅×奥行き×高さ)、(実測)614g
セール価格8万2,980円(通常価格10万2,980円/32GB/1TB)

 プロセッサはCore i9-12900HK。6P+8E/14コアで20スレッド、最大クロック5.0GHz。キャッシュは24MBで、最小保証電力:35W、最大ターボパワー:115W。末尾がHKなのでモバイル用SKUの中ではハイパワータイプとなる。

 Core i9-12900HKは、末尾がKとオーバークロック可能なタイプとなっている。そこでWindowsセキュリティでメモリ整合性がオフになっているのを確認した後、Intel Exterme Tuning Utilityを実行したが、画面キャプチャからも分かるようにOptimizeのボタンが有効にならない。メーカーに確認したところ、OC未対応とのこと。この辺り、電源や筐体の冷却など諸事情で……ということなのだろう。

Windowsセキュリティ→メモリ整合性がオフ
IntelのExterme Tuning Utility。Optimizeのボタンが有効にならず

 メモリはDDR4-3200 16GB×2の合計32GB。SO-DIMMスロット×2で最大64GBまで搭載可能だ。ストレージはM.2 2280 SSDの1TB。どちらも16GBと512GBを選択できる。OSはWindows 11 Home。バージョンは22H2だったので古いが、この範囲でWindows Updateを適応し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵、Intel Iris Xe Graphics eligible。外部出力用に、HDMI×2(4K@60Hz)、Type-C×2(4K@60Hz)と、合計4つ。なかなか強力だ。

 ネットワークは、2.5GbE×2、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB Type-C×3、USB 3.1×4、3.5mmジャック。Type-Cは対応内容がバラバラで、前面はUSB 3.0でデータ転送のみ、背面はデータ転送/PD出力/DisplayPort Alt Mode、DisplayPort Alt Modeのみの3タイプある。USB4がないのは残念なところか。

 サイズは127×127.5×54.7mm、重量は614g(実測)。価格は今回の構成(32GB/1TB)で10万2,980円だが、執筆時セール中で8万2,980円となかなかお買い得になっている。

 なお16GB/512GBで7万1,990円(8万9,980円)、32GB/512GBで7万8,590円(9万7,980円)。上下モデルで約1万円ほどしか差がない。であれば32GB/1TBがいいのではないだろうか!?

前面。USB 3.0 Type-C(データのみ)、USB 3.1×2、3.5mmジャック、電源ボタン
背面。電源入力、HDMI、USB Type-C(データ/PD出力/DisplayPort Alt Mode)、2.5GbE×2、HDMI、USB Type-C(DisplayPort Alt Mode)、USB 3.1×2、ロックポート
裏面とiPhone 13 Proの比較。かなりコンパクトなのが分かる
付属品。ACアダプタ(サイズ約80×80×30mm、重量278g、出力19V/6.32A/120.08W)、HDMIケーブル、VESAマウンタ、2.5インチSSD/HDD用SATAケーブル
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で614g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。背面のType-C(データ/PD出力/DisplayPort Alt Mode)からケーブル1本で接続可能

 筐体はシルバーのNUCタイプ。天板と底板がプラスチックだが、気になるほどでもない。このサイズで重量614g。ACアダプタが278gなので合わせても1kgを切り、カバンなどに入れ持ち運びも可能だ。

 前面にUSB 3.0 Type-C(データのみ)、USB 3.1×2、3.5mmジャック、電源ボタン。背面に電源入力、電源入力、HDMI、USB Type-C(データ/PD出力/DisplayPort Alt Mode)、2.5GbE×2、HDMI、USB Type-C(DisplayPort Alt Mode)、USB 3.1×2、ロックポートを配置。裏はVESAマウンタ用のネジ穴がある。

 付属品は、ACアダプタ(サイズ約80×80×30mm、重量278g、出力19V/6.32A/120.08W)、HDMIケーブル、VESAマウンタ、2.5インチSSD/HDD用SATAケーブル。BIOSは起動時に[DEL]キーと一般的だ。

 内部へのアクセスは非常に簡単。天板の手前2隅を押すと外れ、即メモリ、M.2 2280 SSDが現れる。加えて付属のSATAケーブルを使い、天板の裏に2.5インチSSD/HDDを1基搭載可能だ。本連載ではいろいろなミニPCをご紹介しているが、この簡単さは特筆に値する。

手前2隅を押すとカバーが外れる
左側にM.2 2280 SSD、右側にSO-DIMMスロット×2。2.5インチSSD/HDD用SATAケーブルとコネクタ

 ノイズと発熱は、試用した範囲でまったく気にならなかった。ベンチマークテストなど負荷をかけても、ファンのノイズはほぼなく、発熱もほんのり暖かくなる程度。本当にi9-12900HKが入っているのか疑うほどだ(笑)。冷却機構がうまく働いているのだろう。

昨今のRyzenには若干劣るがなかなかのパフォーマンス!

 初期起動直後は、壁紙の変更やアプリなどの追加もなくWindows 11 Home標準のまま。スペックがスペックなだけに、通常業務ならこれで十分(以上)では!? と思うほど、快適に作動する。筆者はCore i9-12900搭載のPCをメインで使っているものの、用途を考えると本機で問題ないと断言できる(笑)。

 ストレージは、M.2 2280 SSD 1TBの「KINGSTON OM8PGO41024Q-A0」。メーカーのデータは見つからなかったが、ここによると、Seq. Read 4,677 MBytes/Sec、Seq. Write 3,717 MBytes/Sec。CrystalDiskMarkのスコアもそのまま(以上に)出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約952GB割り当てられ空き915GB。

 2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V、Wi-FiとBluetoothはMediaTek製だ。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Home標準。壁紙の変更やアプリなどの追加はない
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは、M.2 2280 SSD 1TBの「KINGSTON OM8PGO41024Q-A0」。2.5GbEはIntel Ethernet Controller I226-V、Wi-FiとBluetoothはMediaTek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約952GB割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 少し前に掲載したRyzen 9 7940HSを搭載した「GEEKOM NUC A7」と比較するとiGPUの差だろうか? Cinebench R23はマルチがほぼ同じ、シングルは本機の方が速いにも関わらず、PCMark 10と3DMark、そしてPCMark 8のWork Accelaratedの差が開いている。

 特に3DMarkに関してはテスト内容によって2倍近くの開きが……。この辺りをどう思うかで本機の評価も変わるだろうか。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2662
PCMark 10 Score5,991
Essentials10,806
App Start-up Score14,915
Video Conferencing Score8,356
Web Browsing Score10,127
Productivity7,041
Spreadsheets Score7,038
Writing Score7,045
Digital Content Creation7,669
Photo Editing Score11,140
Rendering and Visualization Score5,667
Video Editting Score7,145
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.05,043
Creative Accelarated 3.0N/A
Work Accelarated 2.03,219
Storage5,031
3DMark v2.28.8217
Time Spy1,853
Fire Strike Ultra1,208
Fire Strike Extreme2,370
Fire Strike5,082
Sky Diver17,722
Cloud Gate22,780
Ice Storm Extreme148,045
Ice Storm199,821
Cinebench R23
CPU15,279
CPU(Single Core)1,717
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード4817.437 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト3914.181 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1706.833 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト2534.834 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード868.167 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト575.869 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード68.471 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト350.181 MB/s

 以上のようにMINISFORUM「NAB9」は、127×127.5×54.7mmのコンパクトな筐体にCore i9-12900HK/32GB/1TBを詰め込んだハイエンドミニPCだ。それにも関わらずノイズや発熱も大してなく、内部へのアクセスも天板を押すだけの簡単さなど、運用面においても優れている。

 USB4がなく、昨今のRyzenに対して、GPUを中心としたベンチマークスコアが少し劣るのは残念だが、特に「CPUはIntel派!」のユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。