西川和久の不定期コラム

OCuLinkでミニPCにGeForceを後付け!?高速AI&ゲーム環境構築にチャレンジ

 これまでThunderbolt 3/USB 4接続のGPUボックスでGPUを接続するのは何度も試したものの、OCuLinkは今回初! ということでOCuLinkを搭載したMINISFORUMのミニPC「UM780 XTX」を使い、GeForce RTX 3090を動かしたので試用レポートをお届けしたい。

「UM780 XTX」のOCuLinkを使いGPUを接続その1 / GT 1030

 前回ご紹介した「MINISFORUM UM780 XTX」は、Ryzen 7 7840HSに加えて、USB 4×2、2.5Gigabit Ethernet×2、そしてOCuLinkを搭載し、ブラックフライデー期間中だったこともあり、32GB/1TBで10万円を切るという、なかなか魅力的なミニPCだった。

 そして今月に入り、PCI Express x16に変換するOCuLink外付け基板などが編集部から届いたので、お約束通り、外部に強力なGPUを接続してみたい。

 まず一点、抜けがあったのでお詫びを。「MINISFORUM UM780 XTX」自体はOCuLinkに対応しているものの、出荷時ではM.2/OCuLinkアダプタは本体に装着されておらず、パッケージに同梱している状態となる。おそらく一般的にM.2はSSDの増設で使うことが多いため、それを配慮した結果だろう。従ってトップカバーとLEDパネルを外し、M.2/OCuLinkアダプタを本体に付ける必要がある。なお、これを付けるとM.2 SSDの増設はできない。

 付属のM.2/OCuLinkアダプタは写真からも分かるように、M.2からOCuLinkコネクタへ配線しているようなパッシブ型の簡単なものとなる。ケーブルは付属しないため、OCuLink基板とともに別途用意する。ケーブルの長さは仕様上最大100cmだが、手元に届いたのは50cmだった。

 余談になるが、この仕掛けからも分かるように、M.2コネクタがあれば、ほかのPCでもアダプタさえ用意すればOCuLinkを利用できる。ただ大きい筐体のPCだと、内部のM.2から筐体の外へ引っ張り出すだけで数十cmは必要。GPUまでの距離に余裕がなくなる。従ってミニPCの方が向いてると思われる。もっとも、OCuLinkは本来内蔵向けの規格であり、外付けで使う方が想定外だ。

本体に内蔵するM.2/OCuLinkアダプタとケーブル(50cm)
OCuLinkをPCI Express x16に変換する基板(別売り)
LEDパネルを外してM.2へM.2/OCuLink基板を取り付ける

 OCuLinkアダプタは電源用の24ピンコネクタ、OCuLinkコネクタ、PCIe x16コネクタが乗る簡単なものだ。なお今回は別途500W(8ピン×2)の電源を用意、それを使用してる。ケースやGPUなどを固定するものは一切ない状態なので、下は紙など絶縁体的なものを敷くのが無難だろう。

 まず、いきなり高価なGPUで何かあると怖いので、古のGeForce GT 1030で作動を確認。OCuLinkアダプタ作動中は基板上にあるLEDが光るのでそれで分かる。

OCuLinkアダプタへ電源(24ピン)とOCuLinkケーブルを取り付ける
テストはまずGeForce GT 1030
システム作動中

 デバイスマネージャーを見ると、GeForce GT 1030の文字。問題なく作動している。この時、いきなりGeForce GT 1030側のHDMIにモニターを接続してOSを起動するのではなく、まずiGPU側に接続、デバイスマネージャーでドライバを確認、その後、一旦終了、HDMIケーブルを繋ぎ変え再起動するのが無難だ。

 試しに3DMark / Time Spyを測定すると……1,244。iGPUのRadeon 780Mが3,281だったのでそれよりかなり遅い。この手のアダプタの接続確認用としては使えるが、これだけ遅いともうほかでの用途はない(笑)。

デバイスマネージャ / GeForce GT 1030を認識
Time Spyは1,244。Radeon 780M(3,281)より遅い

「UM780 XTX」のOCuLinkを使いGPUを接続その2 / GeForce RTX 3090

 次は本命のGeForce RTX 3090の接続。やることはGeForce GT 1030と同じだが、とにかく大きいので、「これをバラックで使って大丈夫なのか? 」という不安はある。ただ逆にこの大きさなので、横に寝かせず縦のままでも安定するので、これはこれでありなのかも知れない。

 なお、用意した電源ユニットは500W。GPU用の8ピンは2つしかなく、GPUボックスで使用した8ピン→8ピン×2の変換ケーブルを使い、8ピン×3のGeForce RTX 3090へ接続した。デバイスマネージャーでの確認もOKだ。

GeForce RTX 3090を接続
Time Spyは17,720
AUTOMATIC1111の512×768:神里綾華ベンチマークは25秒

 さっそく3DMark / Time Spyを測定すると17,720という結果。iGPUのRadeon 780Mが3,281なので圧倒的な差だ。次にAUTOMATIC1111で、いつもの512×768:神里綾華ベンチマークを試したところ25秒。CPUなどPC自体が異なるためあくまでも参考値だが、

【表】接続別の速度
GPU接続方法速度
GeForce RTX 3090USB4接続8.77(it)/29秒(10枚)
GeForce RTX 3090OCuLink接続9.43(it)/25秒(10枚)*
GeForce RTX 3090PCIe接続11.19(it)/21秒(10枚)

 とこのようになった。ベンチマークのサイトではGeForce RTX 3090が23.7秒(Core i9-13900K)なので、ほぼ同レベル。USB4接続のGPUボックスよりOCuLink接続の方が速いと言う当たり前の結果だ。これなら、検討する価値は十分あるだろう。

 さてこのようにグッドな結果となったOCuLinkだが、実際使うと欠点が見える。まずOCuLinkコネクタのコネクタ部分が甘いこと。これは本機だとOCuLinkコネクタの直下にHDMIコネクタがあるのだが、HDMIを抜いて、GPUボード側のHDMIへ接続する時、少しでもOCuLinkコネクタ側に触れるとリンクが切れる(OCuLinkアダプタ上のLEDが消灯する)。

 USB 4とは違い、ホットプラグ非対応なので、こうなるともうそこで終わり。OSを再起動しなければならない。もっとガッチリ接続して欲しいところだ。もっとも、本来内蔵向け規格なので致し方ない部分もある。

できれば純正で、このeGPUキットのように、電源が装着できる一体化パネルと、少し重みがあり安定するアダプタベース付きのOCuLinkアダプタが欲しいところだ

 もう一点は仕様自体の欠点ではないものの、OCuLinkアダプタは調べた限り、基板の状態でしか売られていないこと。従って今回のように不安定なバラックで動かすことになる。

 できれば、購入したGPUボックスキットのように、電源ユニットを取り付けるパネルと一体化し、安定してGPUを取り付けられるOCuLinkアダプタキットが純正で欲しいところだ。特殊なものはなく、単に金物的に外回りをしっかりするだけなので、それほどコストもかからないだろう。

 この時、外側のケースや電源内蔵ケースなどは不要。GeForce RTX 4090など3レーンで1,000W近くの電源ユニットとなると、使えない場合があるからだ(市販のGPUボックスがこれに該当)。バラックはバラックでも、この状態なら安心して常用できる。是非検討をお願いしたい→MINISFORUM。

【12月12日(火)21時配信】基本性能も拡張性も高いMINISFORUM UM780 XTXをライブ配信で見せます!OCuLinkによる外部GPU接続も!

基本性能、拡張性共に優れるMINISFORUM UM780 XTXをライブ配信でも解説します。特徴や性能測定結果の解説に加えて、OCuLinkによる外部GPUの接続も試してみる予定です。解説はデスクの劉、MCはPADプロデューサー佐々木がつとめます。

メカニカルキーボード「MKB i83」

 ミニPCでお馴染みの同社がメカニカルキーボードを発表/販売しているので合わせてご紹介する。

 仕様的には、83キーメカニカルキーボード(USキー配列のみ)、2.4GHz無線/Bluetooth/USB Type-Cの3方式接続、Kailh製の赤軸(リニア)、ホットスワップ対応、ダブルショットPBTキーキャップで耐久性確保。

 筐体はアルマイト処理を施したアルミニウム製でノイズを減らし打鍵感を向上、フルNキーロールオーバー、RGB LEDバックライトパターン(18種類)、バッテリ3,000mAh……といったところだろうか。なかなか気合の入った内容だ。

前面(シアンブルー)。USキー配列。83キー
背面。裏もシアンブルー
斜めから。少し高さがあるのが分かる。手前実測で約2cm
作動切替スイッチ(左側面)。有線と無線系(2.4GHz無線/Bluetooth)の切替
USB 2.4GHz無線収納場所(右側面)。磁石で吸着する
付属品はType-C/Type-Aケーブル、キーシャフトプライヤー、キーキャップ・プライヤー
重量は実測で922g
キーボードバックライト。製品ページではキートップの刻印が見えているが実際は見えない

 実際使った感じだが、個人的には茶軸派なので、赤軸だとちょっと軽い。また高さがあるので、パームレストが欲しいところ。この辺りは個人差がかなりあるため好みが分かれる部分だ。

 接続で3方式あるのは便利。筆者は基本的にPCは有線。これはBluetoothだとOSが起動しないと使えないため、BIOSやOSの不都合などの時、キーボードが使えないと困るからだ。Bluetoothは主にMacやiOS/iPadOS/Androidで使用している。+2.4GHz無線があれば重宝しそう。

 機能的なコントロールは[FN]キーとのコンビネーションになる。たとえばバックライト系だと[FN]+[DEL]発光パターン、[FN]+[INS]色変更、[FN]+[↑]輝度Up(OFF+4段階)、[FN]+[→]効果のスピードup(↓/←はそれぞれDown)。

 その他としては、[FN]+[1]~[3]Bluetoothデバイスの切替(5秒長押しでペアリング)、[FN]+[4]2.4GHz無線、[FN]+[5]有線、[FN]+[TAB]5秒長押しでWindows/Mac切替、[FN]+[ESC]ファクトリリセット……など。

 これだけあると覚えるまで少しもたもたしそうだが、多機能な分、仕方ないところか。個人的に残念だったのはキーボードバックライト。刻印は光らないので、暗い場所だと見えない。これだとイルミネーションとして雰囲気を出すだけで、実質あまり意味がないように思うのだが……。

 カラーバリエーションは、シャンパンゴールド、オブシディアンブラック、シアンブルー、パッションオレンジの4色。価格は1万5,980円。国内でこの価格帯だと何もないメカニカルキーの有線のみなので、結構安いのではないだろうか。


 以上、「UM780 XTX」のOCuLinkを使いGeForce RTX 3090を接続、Thunderbolt 3/USB 4以上の帯域でGPU性能を十分活かせるのを確認した。キーボード「MKB i83」も赤軸でOKならコストパフォーマンスがいいと感じた。

 OCuLinkはコネクタの接続部分だったり、外側のアダプタ周りが気になるものの、実装自体は簡単なので、ミニPCやノートPCでもっと流行って欲しいところ。環境がある人は是非試していただきたい。