西川和久の不定期コラム

Core i9-12900Hを搭載したコンパクトPC!MINISFORUM「NAD9」

MINISFORUM NAD9

 去年(2022年)11月24日、MINISFORUMはCore i9-12900H搭載「NAD9」の予約受付を開始。2023年1月中旬を目処に出荷する予定となっている。一足早く実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

同社としては大きめの筐体にCore i9-12900Hを搭載!

 これまで同社のミニPCはIntelプロセッサ搭載機だと、Core i7-11800H搭載でMac miniっぽい「TH80」、NUCライクでCore i5-11320H搭載「EliteMini TH50」などをご紹介してきた。どれもコンパクトでコストパフォーマンスもよく、なかなか良くできたマシンたちだ。

 そして今回、Core i5でもi7でもなく、第12世代Core i9搭載のミニPC登場となる。もちろん、サイズ的にデスクトップ用ではなく、モバイル用のCore i9-12900H搭載モデルだ。ベアボーンから64GB/1TBまでを選べる中、手元に届いたのは16GB/512GBモデル。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM「NAD9」の仕様
プロセッサCore i9-12900H(6P+8E/14コア/20スレッド/クロック2.5〜5.0GHz/キャッシュ 24MB/TDP 45W)
メモリ16GB(8GB/DDR4-3400 SO-DIMM×2)/最大64GB
ストレージM.2 2280 512GB PCIe SSD/2.5型SATAマウンタ×2(空)
OSWindows 11 Pro(21H2)
グラフィックスIntel Iris Xe Graphics/HDMI×2(4K@60Hz)、USB Type-C(4K@60Hz)
ネットワーク2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 2.0×2、USB 3.1(前面)、USB 3.0×2、USB 3.1 Type-C(データのみ、前面)、USB 3.1 Type-C(DP Altモード対応)、USB 3.1 Type-CDP Altモード対応)、音声入出力
サイズ67×180×208mm(幅×奥行き×高さ/ACアダプタ含まず)
価格9万7,440円(ベアボーンは8万1,440円)

 プロセッサは第12世代Alder LakeのCore i9-12900H。6P+8Eの14コアで20スレッド、クロックは2.5から最大5.0GHz。キャッシュ24MB、TDP 45W。モバイル用SKUとしてはCore i9-12900HX次ぐ強力なものだ。

 メモリは8GB/DDR4-3400 SO-DIMM×2の16GB。最大64GBまで対応する。Core i9-12900Hは、DDR5にも対応するが、本機はDDR4。従ってiGPUなどを含めDDR5よりは若干遅くなる。ストレージはM.2 2280 512GB PCIe SSD。

 また2.5型SATAマウンタが2つあり、増設可能だ。OSはWindows 11 Pro。21H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し、評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel Iris Xe Graphics。外部出力用にHDMI×2(4K@60Hz)とType-C(4K@60Hz)を備えている。4画面同時出力可能。

 ネットワークは、2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。インターフェイスは、USB 2.0×2、USB 3.2(Gen2、前面)、USB 3.0×2、USB 3.1 Type-C(前面)、USB 3.1 Type-C(DP Altモード)、USB 3.1 Type-C(DP Altモードとデータ)、音声入出力。

 USBType-CがデータのみとDP+データと混じっており、若干分かりにくい。またUSB4がないのは残念なところか。

 サイズは67×180×208mm(幅×奥行き×高さ/ACアダプタ含まず)、重量は実測で約1kg。今回の構成で9万7,440円だが、ベアボーンだと8万1,440円。このクラスとしてはコストパフォーマンスは高いと言えよう。

前面。USB 3.1、USB 3.1 Type-C(データのみ)、音声入出力、電源ボタン
背面は2.5Gigabit Ethernet、USB 3.1 Type-C(DP Altモード対応)、HDMI、USB 3.1 Type-C(DP Altモード対応)、HDMI、USB 3.0×2、USB 2.0×2、電源入力
内部(左側面)。右下にメモリスロット、右上、基板の下にM.2 2280スロットがある。モバイル用SKUとしてはファンや銅製ヒートパイプなどが大きい
内部(右側面)。左右のパネルは底のネジ4本(2本1組)を外し、パネルを少し下へずらすと簡単に外れる。2.5型SSDのマウンタとケーブル。2基装着可能
底面(スタンド)。スタンド(保護シール付き)の取付は付属のネジ4本を使用
付属品はスタンド(153g)、電源ケーブル、HDMI/HDMIケーブル、ACアダプタ(サイズ約138×60×35mm、重量456g、出力19V/6.3A)、ネジ
BIOS / Main。起動時[Del]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で1,019g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。背面のUSB 3.1 Type-Cを使うと1本で接続できる
MINISFORUM UM690/iPhone 13 Proとの比較。12月にご紹介したRyzen 9 6900HX搭載「UM690」と比較するとかなり大きいことが分かる

 筐体はまず驚いたのがそのサイズ。MINISFORUMなのでいつものNUCっぽい小さい筐体だと思いこんでいたがパッケージをあけてビックリ! UM690やiPhone 13 Proの比較写真からも分かるようにかなり大きい。その一方で質感は周囲の深いシルバー部分とスタンドがアルミ製。安っぽさは微塵もなく好印象だ。

 重量は本体が実測1,019g。スタンド(153g)とACアダプタ(456g)も合わすと結構かさばる上にそれなりの重さになるため、ほかのモデルのようにカバンに入れて……と言うのは(できなくはないが)あまり現実的ではない。

 前面にUSB 3.1、USB 3.1 Type-C(データのみ)、音声入出力、電源ボタン。リア
に2.5GbE、USB 3.1 Type-C(DP Altモード対応)、HDMI、USB 3.1 Type-C(DP Altモード対応)、HDMI、USB 3.0×2、USB 2.0×2、電源入力を配置。USB Type-CはDP Altモード対応と非対応の2種類あり少しややこしいが、アイコンを見れば分かるようになっているのでその点は安心だ。ボトムにはスタンドを取り付けるネジ穴4つと、左右パネルを固定するネジ4つ(2つ1組)がある。

 付属品は、スタンド(153g)、電源ケーブル、HDMI/HDMIケーブル、ACアダプタ(サイズ約138×60×35mm、重量456g、出力19V/6.3A)、ネジ。

 内部へのアクセスはボトムのネジを外し、パネルを少し下へずらせばOK。簡単だ。この時、メモリへのアクセスは左パネル、2.5型SATAへのアクセスは右パネルを外す。筐体が大きい分、内部はかなり余裕があるため、交換/装着作業も楽々できる。

内部(左側面アップ)

 発熱やノイズは、試用している範囲では、スペックを考えるとないに等しい。ファンの音は耳を近づけても「ゴー」と低く鳴り、発熱も少し暖かくなる程度。モバイル用プロセッサにしては大きなファンや銅製ヒートパイプなどが効いているようだ。

 ただ注意点として、上下左右のメッシュは空調用で意味があり、スタンドなしで、横置き、縦置きはできず、スタンドを必ず使い縦置きにしなければならない。この時、幅はそれほどないものの、高さはスタンド込みだと約25cmにもなる。同社のミニPCはコンパクトで、VESAマウンタでモニターの裏や、ちょっとしたスペースがあれば設置できたが、本機はこれらとは性格が異なる。逆に目立つ分、強うそうでGood……と言う見かたもできる(笑)。

ハイパフォーマンスだがRyzen 9 6900HXの方が速い!?

 初期起動時、プリインストールなどのアプリはなし。作動速度自体はさすがこのクラスと言ったところ。キビキビ動いてストレスをまったく感じない。

 ストレージはM.2 2280 512GB PCIe SSDの「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」。ネット上で仕様などは見当たらなかったが、CrystalDiskMarkでシーケンシャルリード約4,700MB/s、シーケンシャルライト約3,500MB/sとそこそこ速い。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割当てられている。

 2.5GbEは「Intel Ethernet Controller I225-V」、Wi-Fiは「Intel Wi-Fi 6E AX210」、BluetoothもIntel製だ。なお、デバイスマネージャーに見えている「Dell AC511 USB SoundBar」は、モニター側のものであり、本機とは無関係となる。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11標準
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 2280 512GB PCIe SSDの「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」。2.5GbEは「Intel Ethernet Controller I225-V」、Wi-Fiは「Intel Wi-Fi 6E AX210」、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割当てられている
Intel Graphicsコマンドセンター

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、Geekbench 5を使用した。電源モードはバランスで測定したが、パフォーマンスにしても大きな違いはなかった。またライバルになるであろうRyzen 9 6900HX搭載「UM690」(DDR5)のスコアを眺めながらテストを行なった。

 PCMark 8/10、CINEBENCH R23に関しては本機が勝ったのは2項目のみ。ほかは(誤差の範囲もあるが)全面的に負けている。Geekbench 5はシングルが勝っておりマルチは負け。この辺りは6Pコア/20スレッド vs 8コア/16スレッドの違いだろうか。ここは上を行くであろうCore i9-12900HX搭載モデルに期待と言ったところ。参考までに筆者所有のCore i9-12900だとデスクトップ用で8Pコア/24スレッドの差が出ており、圧倒的に高スコアとなっている。

 3DMarkに関してはIntel Iris Xe GraphicsとRadeon 680M差そしてiGPUなのでDDR4かDDR5かの差もあるだろうが、それなりの違いで後者の勝ち。

 これらの結果を見ると、筐体の大きさなどを考慮した場合、個人的にはRyzen 9 6900HX搭載「UM690」の方がいいかな……と言うのが正直なところ。逆にメインマシンのCore i9-12900とあまり差がないと困るなと思っていたが、それなりの差が出て一安心だった(笑)。

PCMark 10 v2.1.2574
PCMark 8 v2.8.704
3DMark v2.25.8056
CINEBENCH R23
CrystalDiskMark 6.0.0
Geekbench 5

 以上のようにMINISFORUM「NAD9」は、Core i9-12900H搭載のミニPCだ。用途や予算に応じて、ベアボーンから1TB/64GBまで選べるのはポイントが高い。

 メモリがDDR4だったり、同社としては大きめの筐体、そしてRyzen 9 6900HXの方が総合的に速かったりするのが気になるものの、「やっぱりIntelプロセッサ!」というユーザーに使って欲しい1台と言えよう。