西川和久の不定期コラム

Mac miniっぽい筐体にCore i7-11800H搭載。MINISFORUM「TH80」

製品写真

 本連載ではMINISFORUMの小型PCを数多くご紹介してきたが、その多くはNUCタイプだった。今回はちょっとその路線とは違うMac miniのような外観の「MINISFORUM TH80」を紹介する。搭載するプロセッサがCore i5かCore i7かで、TH60またはTH80とモデル名が異なり、編集部から送られて来たのは後者だ。試用レポートをお届けしたい。

Mac miniっぽい薄型筐体採用

 今回ご紹介するTH80は、扉の写真からも分かるようにAppleのMac miniそっくり。筆者はMac mini(2011)、そしてM1搭載Mac mini(2020)と、長年Mac miniを使っているので、同製品のリリースを見たとき、「おっ!」っと思った1人だ。

 最初に結論を書いておくと、プロセッサのアーキテクチャや性能、そして価格はともかくとして、電源が内蔵(Mac mini)か、外付け(本製品)かで取り回しが結構変わるのと、質感は残念ながらMac miniの方が圧倒的によく、USB周りも結構異なる。この辺りをどう思うかで意見が分かれそうだ。

 TH60はCore i5-11400H(6コア/12スレッド、4.5GHz)、TH80はCore i7-11800H(8コア/16スレッド、4.6GHz)をCPUとして搭載。メモリ/ストレージ構成はどちらも同じで、ベアボーン、8GB/256GB、16GB/512GB、32GB/512GBと、4タイプあり、用途や予算に応じて選ぶことができる。手元に届いたのはTH80の16GB/512GBモデル。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM TH80の仕様
プロセッサCore i7-11800H(8コア/16スレッド、1.9(TDP-down)~4.6GHz。キャッシュ 24MB、TDP-down 35W/TDP-up 45W)
メモリ8GB×2 DDR4 SO-DIMM
ストレージM.2 2280 NVMe PCIe 512GB
OSWindows 11 Pro
グラフィックスUHD Graphics(出力はHDMI 2.0、DisplayPort、USB Type-C)
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3
インターフェイスUSB 3.1×4、USB 3.0、USB Type-C、音声入出力
その他VESAマウンタ(100×100mm)、HDMIケーブル
サイズ177.8×182×36mm(幅×奥行き×高さ)
価格5万9,590円(ベアボーン、予約価格)から
本構成は7万7,590円(予約価格)/9万6,800円(通常価格)

 プロセッサは第11世代(Tiger Lake)のCore i7-11800H。8コア/16スレッドで、クロックは1.9(TDP-down)~4.6GHz。キャッシュは24MB、TDP-down 35W/TDP-up 45W。SKUの末尾がHなので、ノートPCなどで一般的なUタイプより高性能だ。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のUHD Graphics。Iris Xe Graphicsではないので要注意な点となる。映像出力としてHDMI 2.0、DisplayPort、USB Type-Cを装備。どれも4K/60Hzに対応している。

 メモリはDDR4 8GB×2の計16GBで、SO-DIMMスロットが2つ。ストレージはM.2 2280タイプの512GB SSD。OSはWindows 11 Proを搭載。バージョン21H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適用後、評価した。

 ネットワークは2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1×4、USB 3.0、USB Type-C、音声入出力。

 サイズは177.8×182×36mm(幅×奥行き×高さ)。ACアダプタ、VESAマウンタ(100×100mm)とHDMIケーブルが付属する。冒頭で触れたがMac miniはこのサイズで電源を内蔵しており、この点が大きな違いとなる。

 価格は今回の構成で予約だと7万7,590円。通常価格だと9万6,800円。出荷は10月中旬を予定しているらしいので、現時点で欲しい人は予約するとお買い得だ。

前面。USB Type-C、USB、3.5mmジャック、Power LED
背面。電源ボタン、電源入力、HDMI、DisplayPort、USB×4、2.5Gigabit Ethernet、音声入出力、ロックポート
右側面。このスリットはエアーフロー入口。左側面が出口
裏面。中央の丸い部分にVESAマウンタのネジ穴。パネルを外すネジが見当たらなかったので、今回は開けていない
ACアダプタ。サイズ約140×60×33mm、重量367g、出力19V/4.73A
付属品。ACケーブル、HDMIケーブル、VESAマウンタ
重量。実測で665g。M1搭載Mac miniは1.2kg。筐体の材質や電源の有無で倍近く異なる
Mac mini(2011)との比較。同程度かと思っていたら、実際は高さも含めMac miniより結構コンパクト
BIOS/Main。起動時にDelキーで表示
BIOS/Advanced

 筐体はシルバー。扉の写真からも分かるように、パッと見、Mac miniとそっくりだ。ただ実際は、本家よりかなりコンパクトで軽い。特に重さは倍近く違い、持つと一方は軽く、一方はズッシリ重い。また質感はプラスチックか金属かで異なり、残念ながらMac miniほどの高級感は本機にはない。

 前面にUSB Type-C、USB、3.5mmジャック、Power LED。背面に電源ボタン、電源入力、HDMI、DisplayPort、USB×4、2.5Gigabit Ethernet、音声入出力、ロックポートを配置。裏面はVESAマウンタ用のネジ穴がある。一見、パネルを開くためのネジのようなものはなかったので、今回は開けていない。はめ込み式なのだろうか。BIOSは起動時にDelキーを押すと表示される。

 なおUSB Type-Cは映像出力に対応しているが、いつものキーボード付きモバイルモニターで試したところUSB Type-C to Type-Cケーブル1本では映像しか出ず、キーボード/タッチパッドは機能しなかった。

 電源はACアダプタ式で、サイズ約140×60×33mm、重量367g、出力19V/4.73A。Mac miniは電源内蔵なので、ここが大きく違う点だ。本体と合わせて約1kg。筐体を金属に変えれば、おおよそMac miniの重量に近くなる。

 ノイズや発熱は、ベンチマークテストなど負荷をかける処理を行なうと、それなりにファンが回り、筐体も熱を持つ。ここはMac mini(2011)によく似ている。M1搭載Mac miniは、少々何をしても、音もせず冷たいままだ。

 このように、単独の写真だとMac miniそっくりだが、比較するとサイズ、重量、質感、電源内蔵か外付けかなど、随分いろいろなところが違う。単にNUCタイプよりこっちの方が好みと言う人向けの製品かと思われる。

おおむね高性能だが、GPU性能は控えめ

 初期起動時、デスクトップやアプリケーションはWindows 11標準のまま。特にカスタマイズはされていない。第11世代Core i7、メモリ16GB、M.2 NVMe PCIe SSDなので遅いはずもなく、キビキビと動作する。

 ストレージはM.2 2280 NVMe PCIeのSSD 512GB「ESO512GYLCT-EP3-2L」。検索しても見当たらなかったが、CrystalDiskMarkではシーケンシャルリード約2,500MB/s、シーケンシャルライト約2,000MB/s程度は出るようだ。Cドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられ、空き容量は442GB。

 2.5Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I225-V、Wi-FiはIntrel Wi-Fi 6E AX210、そしてBluetoothもIntel製だ。

起動時のデスクトップ。壁紙、アプリケーションもWindows 11標準のまま
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 2280 NVMe PCIeのSSD 512GB「ESO512GYLCT-EP3-2L」。2.5G Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I225-V、Wi-FiはIntrel Wi-Fi 6E AX210、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 以前ご紹介したMINISFORUM「EliteMini TH50」(Core i5-11320H)と比較すると、PCMark 10、PCMark 8、Cinebench R23、CrystalDiskMarkのスコアはそれなりに出ているが、3DMarkのスコアだけ最大半分近く落ち込んでいる。これは本機のGPUがUHD Graphics、TH50がIris Xe Graphicsであることからくる違いだ。ほかのベンチマークテストもGPUが大きく影響する項目は少し落ち込む。

 TH60に搭載しているCore i5-11400Hも同じくGPUはIntel UHD Graphicsなので、この傾向は変わらないと思われる。よってTH60およびTH80はどちらかと言えば、筆者のようにGPUは映れば何でもOKで、CPUパワー優先のユーザーに向いているだろう。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2563
PCMark 10 Score4,991
Essentials10,310
App Start-up Score14,558
Video Conferencing Score8,000
Web Browsing Score9,411
Productivity6,542
Spreadsheets Score6,055
Writing Score7,070
Digital Content Creation5,004
Photo Editing Score6,213
Rendering and Visualization Score3,828
Video Editing Score5,269
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,389
Creative Accelarated 3.04,761
Work Accelarated 2.03,237
Storage5,077
3DMark v2.22.7359
Time Spy756
Fire Strike Ultra523
Fire Strike Extreme1,066
Fire Strike2,280
Sky Diver8,136
Cloud Gate15,332
Ice Storm Extreme57,171
Ice Storm76,920
Cinebench R23
CPU8,483
CPU(Single Core)1,494
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2472.501MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1968.345MB/s
4K Q8T8 ランダムリード853.839MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1696.926MB/s
4K Q32T1 ランダムリード752.146MB/s
4K Q32T1 ランダムライト567.285MB/s
4K Q1T1 ランダムリード59.163MB/s
4K Q1T1 ランダムライト242.194MB/s

 以上のようにMINISFORUM TH80は、パッと見Mac miniそっくりな筐体へ第11世代Core i7-11800H、メモリ16GB、512GB SSD、そしてWindows 11 Proを搭載したコンパクトなPCだ。出荷は10月中旬を予定しており、今予約すると結構安くなるのでお買い得だろう。

 GPUがUHD Graphics、Mac miniと違って電源は外付け、筐体の質感はおよばずと残念な部分もあるにはあるが、NUCタイプの筐体よりこちらのデザインが好きで、CPUパワー優先なユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。