西川和久の不定期コラム
Mac miniっぽい筐体にCore i7-11800H搭載。MINISFORUM「TH80」
2022年9月15日 06:32
本連載ではMINISFORUMの小型PCを数多くご紹介してきたが、その多くはNUCタイプだった。今回はちょっとその路線とは違うMac miniのような外観の「MINISFORUM TH80」を紹介する。搭載するプロセッサがCore i5かCore i7かで、TH60またはTH80とモデル名が異なり、編集部から送られて来たのは後者だ。試用レポートをお届けしたい。
Mac miniっぽい薄型筐体採用
今回ご紹介するTH80は、扉の写真からも分かるようにAppleのMac miniそっくり。筆者はMac mini(2011)、そしてM1搭載Mac mini(2020)と、長年Mac miniを使っているので、同製品のリリースを見たとき、「おっ!」っと思った1人だ。
最初に結論を書いておくと、プロセッサのアーキテクチャや性能、そして価格はともかくとして、電源が内蔵(Mac mini)か、外付け(本製品)かで取り回しが結構変わるのと、質感は残念ながらMac miniの方が圧倒的によく、USB周りも結構異なる。この辺りをどう思うかで意見が分かれそうだ。
TH60はCore i5-11400H(6コア/12スレッド、4.5GHz)、TH80はCore i7-11800H(8コア/16スレッド、4.6GHz)をCPUとして搭載。メモリ/ストレージ構成はどちらも同じで、ベアボーン、8GB/256GB、16GB/512GB、32GB/512GBと、4タイプあり、用途や予算に応じて選ぶことができる。手元に届いたのはTH80の16GB/512GBモデル。主な仕様は以下の通り。
MINISFORUM TH80の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i7-11800H(8コア/16スレッド、1.9(TDP-down)~4.6GHz。キャッシュ 24MB、TDP-down 35W/TDP-up 45W) |
メモリ | 8GB×2 DDR4 SO-DIMM |
ストレージ | M.2 2280 NVMe PCIe 512GB |
OS | Windows 11 Pro |
グラフィックス | UHD Graphics(出力はHDMI 2.0、DisplayPort、USB Type-C) |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3 |
インターフェイス | USB 3.1×4、USB 3.0、USB Type-C、音声入出力 |
その他 | VESAマウンタ(100×100mm)、HDMIケーブル |
サイズ | 177.8×182×36mm(幅×奥行き×高さ) |
価格 | 5万9,590円(ベアボーン、予約価格)から 本構成は7万7,590円(予約価格)/9万6,800円(通常価格) |
プロセッサは第11世代(Tiger Lake)のCore i7-11800H。8コア/16スレッドで、クロックは1.9(TDP-down)~4.6GHz。キャッシュは24MB、TDP-down 35W/TDP-up 45W。SKUの末尾がHなので、ノートPCなどで一般的なUタイプより高性能だ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のUHD Graphics。Iris Xe Graphicsではないので要注意な点となる。映像出力としてHDMI 2.0、DisplayPort、USB Type-Cを装備。どれも4K/60Hzに対応している。
メモリはDDR4 8GB×2の計16GBで、SO-DIMMスロットが2つ。ストレージはM.2 2280タイプの512GB SSD。OSはWindows 11 Proを搭載。バージョン21H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適用後、評価した。
ネットワークは2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1×4、USB 3.0、USB Type-C、音声入出力。
サイズは177.8×182×36mm(幅×奥行き×高さ)。ACアダプタ、VESAマウンタ(100×100mm)とHDMIケーブルが付属する。冒頭で触れたがMac miniはこのサイズで電源を内蔵しており、この点が大きな違いとなる。
価格は今回の構成で予約だと7万7,590円。通常価格だと9万6,800円。出荷は10月中旬を予定しているらしいので、現時点で欲しい人は予約するとお買い得だ。
筐体はシルバー。扉の写真からも分かるように、パッと見、Mac miniとそっくりだ。ただ実際は、本家よりかなりコンパクトで軽い。特に重さは倍近く違い、持つと一方は軽く、一方はズッシリ重い。また質感はプラスチックか金属かで異なり、残念ながらMac miniほどの高級感は本機にはない。
前面にUSB Type-C、USB、3.5mmジャック、Power LED。背面に電源ボタン、電源入力、HDMI、DisplayPort、USB×4、2.5Gigabit Ethernet、音声入出力、ロックポートを配置。裏面はVESAマウンタ用のネジ穴がある。一見、パネルを開くためのネジのようなものはなかったので、今回は開けていない。はめ込み式なのだろうか。BIOSは起動時にDelキーを押すと表示される。
なおUSB Type-Cは映像出力に対応しているが、いつものキーボード付きモバイルモニターで試したところUSB Type-C to Type-Cケーブル1本では映像しか出ず、キーボード/タッチパッドは機能しなかった。
電源はACアダプタ式で、サイズ約140×60×33mm、重量367g、出力19V/4.73A。Mac miniは電源内蔵なので、ここが大きく違う点だ。本体と合わせて約1kg。筐体を金属に変えれば、おおよそMac miniの重量に近くなる。
ノイズや発熱は、ベンチマークテストなど負荷をかける処理を行なうと、それなりにファンが回り、筐体も熱を持つ。ここはMac mini(2011)によく似ている。M1搭載Mac miniは、少々何をしても、音もせず冷たいままだ。
このように、単独の写真だとMac miniそっくりだが、比較するとサイズ、重量、質感、電源内蔵か外付けかなど、随分いろいろなところが違う。単にNUCタイプよりこっちの方が好みと言う人向けの製品かと思われる。
おおむね高性能だが、GPU性能は控えめ
初期起動時、デスクトップやアプリケーションはWindows 11標準のまま。特にカスタマイズはされていない。第11世代Core i7、メモリ16GB、M.2 NVMe PCIe SSDなので遅いはずもなく、キビキビと動作する。
ストレージはM.2 2280 NVMe PCIeのSSD 512GB「ESO512GYLCT-EP3-2L」。検索しても見当たらなかったが、CrystalDiskMarkではシーケンシャルリード約2,500MB/s、シーケンシャルライト約2,000MB/s程度は出るようだ。Cドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられ、空き容量は442GB。
2.5Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I225-V、Wi-FiはIntrel Wi-Fi 6E AX210、そしてBluetoothもIntel製だ。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。
以前ご紹介したMINISFORUM「EliteMini TH50」(Core i5-11320H)と比較すると、PCMark 10、PCMark 8、Cinebench R23、CrystalDiskMarkのスコアはそれなりに出ているが、3DMarkのスコアだけ最大半分近く落ち込んでいる。これは本機のGPUがUHD Graphics、TH50がIris Xe Graphicsであることからくる違いだ。ほかのベンチマークテストもGPUが大きく影響する項目は少し落ち込む。
TH60に搭載しているCore i5-11400Hも同じくGPUはIntel UHD Graphicsなので、この傾向は変わらないと思われる。よってTH60およびTH80はどちらかと言えば、筆者のようにGPUは映れば何でもOKで、CPUパワー優先のユーザーに向いているだろう。
PCMark 10 v2.1.2563 | |
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PCMark 10 Score | 4,991 |
Essentials | 10,310 |
App Start-up Score | 14,558 |
Video Conferencing Score | 8,000 |
Web Browsing Score | 9,411 |
Productivity | 6,542 |
Spreadsheets Score | 6,055 |
Writing Score | 7,070 |
Digital Content Creation | 5,004 |
Photo Editing Score | 6,213 |
Rendering and Visualization Score | 3,828 |
Video Editing Score | 5,269 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 4,389 |
Creative Accelarated 3.0 | 4,761 |
Work Accelarated 2.0 | 3,237 |
Storage | 5,077 |
3DMark v2.22.7359 | |
Time Spy | 756 |
Fire Strike Ultra | 523 |
Fire Strike Extreme | 1,066 |
Fire Strike | 2,280 |
Sky Diver | 8,136 |
Cloud Gate | 15,332 |
Ice Storm Extreme | 57,171 |
Ice Storm | 76,920 |
Cinebench R23 | |
CPU | 8,483 |
CPU(Single Core) | 1,494 |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 2472.501MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1968.345MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 853.839MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 1696.926MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 752.146MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 567.285MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 59.163MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 242.194MB/s |
以上のようにMINISFORUM TH80は、パッと見Mac miniそっくりな筐体へ第11世代Core i7-11800H、メモリ16GB、512GB SSD、そしてWindows 11 Proを搭載したコンパクトなPCだ。出荷は10月中旬を予定しており、今予約すると結構安くなるのでお買い得だろう。
GPUがUHD Graphics、Mac miniと違って電源は外付け、筐体の質感はおよばずと残念な部分もあるにはあるが、NUCタイプの筐体よりこちらのデザインが好きで、CPUパワー優先なユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。