西川和久の不定期コラム

5万円台からでiPhone 13/13 Proと同パフォーマンスを叩き出す第3世代!「iPhone SE」

iPhone SE

 Appleは3月8日(現地時間)、第3世代「iPhone SE」を発表した。第2世代が2020年4月15日なので、約2年ぶりの更新となる。iPhone 13とともに実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

最新A15 Bionicを搭載し5万7,800円からのiPhone!

 第2世代iPhone SEのSoCはA13 Bionic。このSoCは2019年秋に出た「iPhone 11」シリーズと同じものだ。当時も筆者がレビューしているが、半年遅れとは言え最新鋭のSoCを搭載し、コンパクトで使い勝手も良かった記憶がある。またTouch IDでサクッと認証できるのもこのご時世便利と言えよう。

 そして今回ご紹介する第3世代iPhone SEはSoCにA15 Bionicを搭載。第2世代同様、最新iPhone 13シリーズから半年遅れの登場となる。ホームボタン、コンパクトで軽い筐体、背面シングルカメラ、FeliCa対応などの特徴はそのまま引き継がれ、新たに5G対応となった。主な仕様は以下の通り。

Apple「iPhone SE」の仕様
SoCA15 Bionic(高性能×2+高効率×4)、4コアGPU、16コアNeural Engine
メモリ4GB(非公開)
ストレージ64/128/256GB
OSiOS 15
ディスプレイ4.7型液晶パネル(1,334×750ドット)、Display P3、輝度625cd/平方m、コントラスト比1,400:1
ネットワークWi-Fi 6対応、Bluetooth 5.0、NFC(FeliCa対応)
SIMNano SIMカードスロット×1、eSIM×2(1つNano SIMと排他) / 5G対応
対応バンド5G NR n1/2/3/5/7/8/12/20/25/28/29/
30/38/40/41/48/66/71/77/78/79
FDD-LTE B1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/17/18/19/
20/25/26/28/29/30/32/66/71
TD-LTE B34/38/39/40/41/42/46/48
インターフェイスLightningコネクタ、ステレオスピーカー
センサーGPS/GLONASS/Galileo/QZSS/BeiDou、
Touch ID指紋認証センサー/気圧計/3軸ジャイロ/加速度センサー/近接センサー/環境光センサー
カメラ前面:700万画素、f/2.2
背面:1,200万画素、f/1.8、光学式手ブレ補正/4K動画撮影
サイズ/重量67.3×138.4×7.3mm(幅×奥行き×高さ)/144g
バッテリビデオ再生時最大15時間、ビデオストリーミング時最大10時間、オーディオ再生時に最大50時間、ワイヤレス充電機能Qi対応、30分で最大50%充電(20W以上のアダプタ)
防塵防水IP67等級
カラーバリエーションミッドナイト、スターライト、(PRODUCT)RED
価格5万7,800円/6万3,800円/7万6,800円

 SoCはiPhone 13シリーズ同様A15 Bionic。高性能コア×2+高効率コア×4、4コアGPU、16コアNeural Engineといった特徴を持つ(ただし13 Pro系のみ5コアGPU)。メモリは非公開だが4GB。これは第2世代の3GBから1GB増えている。ストレージは64/128/256GBの3種類。価格の違いはこの容量の違いだけだ。OSはiOS 15。

 ディスプレイは、4.7型液晶パネル(1,334×750ドット)、Display P3、輝度625cd/平方m、コントラスト比1,400:1。ここは変わっていない。iPhone 13シリーズは全てOLEDなので、唯一iPhoneの液晶パネル搭載機となる。

 ネットワークは、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.0、NFC(FeliCa対応)。インターフェイスはLightningコネクタ、ステレオスピーカー。センサーはGPS/GLONASS/Galileo/QZSS/BeiDou、Touch ID指紋認証センサー/気圧計/3軸ジャイロ/加速度センサー/近接センサー/環境光センサーを装備。

 カメラは画素数やf値は変わらず、前面700万画素、f/2.2。背面1,200万画素、f/1.8、光学式手ブレ補正。昨今背面カメラが1つというのはミドルレンジ以上では珍しくなってしまった。深度カメラがないためポートレートモード(背景ぼかし)は顔認識した時のみとなる。

 SIMはNano SIMカードスロット×1とeSIM×2。ただしeSIMの1つはNano SIMとの排他だ。対応バンドは表の通り。5Gが加わっているもののミリ波には未対応だ。

 バッテリは、ビデオ再生時最大15時間、ビデオストリーミング時最大10時間、オーディオ再生時に最大50時間。仕様上の駆動時間は結構伸びている。この辺りは後半のベンチマークテストで検証したい。Qiや急速充電(20W以上のアダプタで30分最大50%)にも対応している。

 サイズ67.3×138.4×7.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量144g。IP67等級の防塵防水に対応。カラーバリエーションはミッドナイト、スターライト、(PRODUCT)REDの3種類。価格は5万7,800円/6万3,800円/7万6,800円。第2世代が4万4,800円/4万9,800円/6万800円だったので、(為替の関係もあるが)1万円以上高くなっているのは残念なところ。

前面。画面中央上に前面カメラ、下にTouch ID兼ホームボタン。13シリーズと違い上下の縁が広い
背面。左上に背面カメラ
左/下。左側面にミュートスイッチ、音量±ボタン。下側面にLightningコネクタ
右/上。右側面に電源ボタンとSIMスロット
Nano SIMスロット付近。着脱にはジェクトピンを使用する
重量。実測で145g
付属品。Lightning/Type-Cケーブル、イジェクトピン
順にiPhone SE、iPhone 13、iPhone 13 Pro。iPhone SEは上下の縁が広く、その分、画面が狭いことがわかる。正面からだと13と13 Proの見分けはつかない。True ToneはOFF/ON/OFF

 筐体は扉の写真からもわかるようにコンパクトだ。昨今Android搭載スマホを含めてもこのサイズは小さい方だろう。そして重量は200g前後が多い中、実測で145g圧倒的に軽い。持った時、「えっ」と思うほどだ。加えてTouch ID兼のホームボタンが本機最大の魅力となる。

 前面は画面中央上に前面カメラ、下にTouch ID兼ホームボタン。13シリーズと違い上下の縁がかなり広い。背面は左上に背面カメラ。左側面にミュートスイッチ、音量±ボタン。下側面にLightningコネクタ。右側面に電源ボタンとSIMスロットを配置。付属品はLightning/Type-Cケーブルとイジェクトピン。ACアダプタやイヤホンは付属しない。

 4.7型液晶パネルは、OLEDに慣れてしまうと、やはり黒の締まりがイマイチで高輝度時のギラギラ感もあるが、このクラスの液晶パネルとしては、発色、明るさ、コントラスト、視野角全て申し分ない。ただ日頃13 Proを使っていて改めてSEを触ると、スクロールがあまりスムーズではない。「あ、これが最大120HzのProMotionか!」と思った次第だ。

 発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると少し暖かくなるが、気になるほどではないだろう。サウンドはLightning/3.5mmジャックケーブルかBluetoothなどでイヤフォンに接続する必要があり、接続方法やイヤフォンのクラスで音質がかなり変わるため、今回は評価していない。

 スピーカー出力は横位置時ステレオとなる。このサイズでステレオと言うのは驚きの上、加えてサウンドもパワーがあり、ボーカルが前に出て、抜けも良く、これがこんなサイズのスマホから出るのかと2度驚いた次第。この辺りは同社のこだわりを感じる。

ナイトモードとシネマティックが未対応だが、シングルレンズでもiPhone的な写り!

 搭載しているカメラは、前面は35mmフィルム換算32mm、700万画素でF2.2。背面は35mmフィルム換算28mm、1,200万画素でF1.8。出力解像度は前面2,320×3,088ピクセル。背面3,024×4,032ピクセル。写真からわかるようにシングルレンズで光学系が小さいので背面はシンプルだ。SoCが13/13 Proと同じA15 Bionicでも光学系がこれだけ違うと当然写りにも影響が出る。

カメラ。左から順にiPhone 13、iPhone SE、iPhone 13 Pro。レンズの数もだが、光学系が随分違うのがわかる

 モードは、タイムラプス、スロー、ビデオ、写真、ポートレート、パノラマ。パノラマは前面カメラでは使えない。設定はフラッシュ、Live Photos、フォトグラフスタイル、縦横比、露出、タイマー、フィルタ。13/13 Proで使えるナイトモードとシネマティックは未対応、またポートレートは顔認識する必要がある。

 とは言え、筆者も作例的なのを撮る時以外でナイトモードとシネマティック(動画のピント自動/手動切り替え)は使ったことが無く、ポートレートも人以外だと前後や境界線がうまく行かないこともあり、結果人以外には滅多に使用しない。それよりフォトグラフスタイル対応の方が良いように思う。

背面/カメラ/写真
背面/カメラ/ポートレート。13/13 Proとは違い顔認識が必要
設定 > カメラ
前面/カメラ/写真。前面もフォトグラフスタイルに対応する

 以下作例を日中、夜景、人物(前面/背面)と計22枚掲載する。全てオート。HEICで撮影した関係でiMazing HEIC Converterを使いJPEGへ変換している。日中川の写真のみデジタルズーム使用。人物はどちらもポートレート。

 使用感は、起動、AF、書き込み、確認……すべて申し分なし。さすがiPhoneといったところ。発色は13 Proと比較して少し平面的な感じがしないでもないが(つまり細かい階調が出てない)、あえて言えば程度だ。

 ただし、何時もポートレートモードで撮っている夜景のバイクは顔認識しないため背景がボケず、神田川は望遠がないのでデジタルズームなど、ちょっと勝手が違う部分もある。ナイトモードがない件は、例えば夜景最後のピンク色のネオンのシーンも結構よく撮れているので通常困ることはあまりないと思われる(実際13 Proでも全く使っていない)。

 ポートレートモードは写りを見ると、顔認識した後、体も含めマスクし、それ以外を均一にボカす……という感じだ。従って作例には掲載していないが、例えば階段に座ったりした場合、体とほぼ同じ位置にある階段の部分が、他の周囲と同じレベルでボケ、不自然になる。これは深度カメラがなく、位置関係がわからないので仕方ない部分だ。

 ただFocosというアプリでは、写真から位置関係を割り出し適切にボカすことができるので、(外すこともあるが)頑張れば何とかなりそうな気がしないでもない。

 いずれにしてもiPhoneなので何を撮っても大きく外すことはなく、安心して撮れるのが最大の魅力だろう。

ホームボタン関連のみ異なる操作系

 初期起動時、ホーム画面は2画面。Dockに電話、Safari、メッセージ、ミュージック。1画面目の上部に天気とカレンダーのウィジェットを配置。この辺りは先の3台並べた写真からも分かる様に全く同じだ(13 Proは筆者所有なのでカスタマイズしている関係上除く)。搭載しているOSはiOS 15.4。初期起動後、15.4.1のUpdateが表示された。ストレージは256GBあり241.57GBが使用可能(若干の画面キャプチャを含む)。

 普段使っている13 Proと操作系での違いは、コントロールパネルが下から上へのスワイプ、画面キャプチャがホームボタン+電源ボタンと言ったところだろうか。もちろんFace IDかTouch IDかの違いもある。iOS 15.4でマスクありのFace IDにも対応したが、サングラスやブルーライトカットありの眼鏡(強めで色が濃い場合)だと認識しないので、やはりTouch IDの方が……と思う人も多いのではないだろうか。

ホーム(1/2)
ホーム(2/2)
ユーティリティフォルダ
コントロールパネル
情報
ストレージ

 SIMの設定は、手持ちの関係でOCN mobile ONE(4G)を使用した。SIMをセット後、OCN mobile ONEのProfileをダウンロードしインストールすれば即開通と非常に簡単。2つのeSIMの内1つはSIMとの排他となる。

設定/モバイル通信。OCN mobile ONEのProfileをダウンロードしインストールすると使用可能に
設定/一般/情報。eSIM×2に対応(一つはSIMと排他)

 アプリは、「App Store」、「Apple Store」、「Clips」、「FaceTime」、「GarageBand」、「iMovie」、「iTunes Store」、「Keynote」、「Numbers」、「Pages」、「Podcast」、「Safari」、「TV」、「Watch」、「ウォレット」、「拡大鏡」、「株価」、「カメラ」、「カレンダー」、「計算機」、「計測」、「コンパス」、「探す」、「写真」、「ショートカット」、「設定」、「天気」、「電話」、「時計」、「ヒント」、「ファイル」、「ブック」、「ヘルスケア」、「ボイスメモ」、「ホーム」、「翻訳」、「マップ」、「ミュージック」、「メール」、「メッセージ」、「メモ」、「リマインダー」、「連絡先」。この辺りは変わらないので説明の必要はないだろう。

第2世代超えはもちろん、13/13 Proと変わらないパフォーマンス!

 ベンチマークテストは簡易式でGeekBench 5とGoogle Octane 2.0の結果を掲載した。GeekBench 5はSingle-core 1,725(1,324)、Multi-core 4,584(2,587)、Metalは13,487(6,336)。Google Octane 62,985(48,154)。スコアを見ると、以前ご紹介したiPhone 13 Proとほぼ同じとハイエンドのパフォーマンスを叩き出している(MetalだけGPUコア数の違いから若干異なる)。またカッコ内は第2世代iPhone SEだが、ずいぶん違うことがわかる。

 バッテリ駆動時間は、明るさ、音量ともに50%。Wi-Fi接続でフルHD動画を連続再生したところ約8時間でバッテリが切れた。仕様上、ビデオ再生(ストリーミング)最大10時間なので比較すると短いものの、コンパクトな筐体の割に持つ方だろうか。なお第2世代iPhone SEで同テストは約6時間だったので2時間ほど向上している。この伸びは仕様通りだ。参考までに13 Proでは13時間だった。

GeekBench 5(Single-core / Multi-core)。1,725(1,324) / 4,584(2,587)
GeekBench 5(Metal)。13,487(6,336)
Google Octane 2.0。62,985(48,154)
7時間経過して残10%(第2世代は約6時間で電源が落ちた)

 以上のようにApple「iPhone SE」は、4.7型のコンパクトで軽量な筐体へA15 Bionicを搭載し、5G対応した第3世代となる。非公開だがメモリは+1GBの4GBへ、カメラはフォトグラフスタイル対応など、パフォーマンスはもちろん、いろいろな部分がパワーアップしている。

 筆者はiPhone 13 Proがメインだが、ほぼ広角のみで撮影、ポートレートモードは人のみ、動画やRAWは使わない、FeliCa常用……。コンパクトさや価格を考えると「もう次はSEでいいのでは!?」と思う反面、4.7型の見にくさより液晶パネルの見え方(OLEDではない)やProMotionでない方が気になった。またいつものバッテリベンチマークテストで13時間 vs 8時間と結構な差であり、13 Proでは普段朝フル充電で寝る前に60%前後。先の比率からするとほぼ空になる計算となるなど、いま一歩踏み切れない部分もある。

 とはいえ、スマホに対する要求は人それぞれ。ピッタリマッチすればハイコストパフォーマンスで最強のスマホになるのは間違いない。この記事を読んで「お!」っと思った方に使っていただきたい1台だ。