西川和久の不定期コラム

Ryzen 9 3950X+GeForce RTX 2080 Ti搭載の爆速ゲーミングPC「ASUS ROG Strix GA35 (G35DX)」

 ASUSのROGは、同社のゲーミングブランドであることがご存知のとおり。今回国内発表前にその最高峰とも呼べる「ROG Strix GA35 (G35DX)」を試す機会を得られたので、試用レポートをお届けしたい。

16コア32スレッドのAMD Ryzen 9 3950XとGeForce RTX 2080 Tiを搭載した爆速マシン

 ROGは、スマートフォンからタワー型PC、マウスやキーボード、ビデオカードと言った周辺デバイスまで、幅広く展開しているゲーミングブランドだ。ライティングなどをトータルコントロールできるAURA Syncと呼ばれる独自の機能などを持つ。

 現在国内販売しているデスクトップPCは、「ROG HURACAN (G21)」、「ROG Strix GL12」、「ROG Strix GL10CS」、「ROG Strix GL10DH」、そして先日発表のあった「ROG HURACAN G21CN」の5モデル。ROG Strix GL10DHだけAMD Ryzen搭載機だ。

 そして今回ご紹介する「ROG Strix GA35 (G35DX)」は、これらのなかでも最高峰のモデルであり、16コア32スレッドのAMD Ryzen 9 3950XとGeForce RTX 2080 Ti 11GBを搭載したデスクトップPCとなる。おもな仕様は以下のとおり。

ASUS「ROG Strix GA35 (G35DX)」の仕様
プロセッサRyzen 9 3950X(16コア32スレッド/3.5GHz~4.7GHz/キャッシュ 64MB/TDP 105W)
チップセットAMD X570
メモリ64GB/16GB×4/DDR4 at 3200MHz
ストレージM.2 NVMe PCIe SSD 512GB、HDD 2TB
OSWindows 10 Pro(64bit)
グラフィックスGeForce RTX 2080 Ti 11GB
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.1
インターフェイス(前面)USB 3.0×2、USB 3.0 Type-C×2、音声入出力
インターフェイス(背面)USB 3.0×4、USB 3.1×3、USB 3.0 Type-C、DisplayPort×2、HDMI×2、USB Type-C(ビデオカード出力)、Gigabit Ethernet、音声入出力、S/PDIF
電源700W
サイズ/重量約279×434×501mm(幅×奥行き×高さ)/15kg

 プロセッサはRyzen 9 3950X。16コア32スレッド、クロックは3.5GHzから最大4.7GHz。L3キャッシュは計64MB、TDP 105W。2019年11月30日に国内発売開始となったSKUで、7nm「Zen 2」アーキテクチャを採用したプロセッサだ。下位SKUとしてはAMD Ryzen 9 3900X(12C/24T/3.8GHz~4.6GHz)もラインナップしている。

 チップセットはAMD X570。メモリはDDR4-3200の16GB×4の計64GB。ストレージはM.2 NVMe PCIe SSD 512GBとHDD 2TB。OSは64bit版Windows 10 Proを搭載。

 グラフィックスはTuringアーキテクチャのGeForce RTX 2080 Ti(GDDR6 11GB)。外部出力として、DisplayPort 1.4×2、HDMI 2.0b×2、そしてVirtualLink用にType-Cを備えている。最大解像度7,680×4,320ドット、4マルチディスプレイ対応だ。

 ネットワーク機能は有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.1も搭載。

 そのほかのインターフェイスは前面がUSB 3.0×2、USB 3.0 Type-C×2、音声入出力。背面がUSB 3.0×4、USB 3.1×3、USB 3.1 Type-C、音声入出力、S/PDIF。また前面右側にホットスワップに対応した2.5インチベイが2つある。

 700Wの電源を搭載し、サイズ約279×434×501mm(幅×奥行き×高さ)、重量15kgとヘビー級だ。

少しわかりにくいが、中央少し上に縦に光っている部分が電源ボタン。その下から斜め左下にある半透明のラインがLEDで光る
前面右下。ホットスワップ対応の2.5インチベイが2つ
背面。写真からもわかるように幅はタワー型の約2倍。右半分にマザーボードやビデオカード、左半分に電源、ストレージなどを内蔵
上からUSB 3.0×4、USB 3.1×2、USB 3.0 Type-C、USB 3.1、Ethernet、S/PDIF、音声入出力。GeForce RTX 2080 Tiの出力はDisplayPort×2、HDMI×2、Type-C
上部。奥から音声入出力、USB 3.0 Type-C×2、USB 3.0
ヘッドフォンがけ。上部を倒すと現れる
左サイド。透明のサイドパネル。各所にイルミネーションが仕込まれている。下半分にGeForce RTX 2080 Tiが陣取っているのがわかる
右サイド(パネルを開けたところ)。右下に700W電源、その上に3.5インチドライブベイ×2(内1つ2TB HDD)
内部1。プロセッサは水冷式。その上にメモリスロット4つで16GB×4が装着済み
内部2。ライザーカードを使いGeForce RTX 2080 Tiを装着し、拡張スロット上部を覆っているため、拡張スロットは使用できない

 編集部から本機が届くとの連絡をいただいたとき、製品ページを調べたところ、机の上に2つのディスプレイとともに本体が載っている写真があったので「少しコンパクトかな」と思っていたが(まぁなかのビデオカードのサイズ感で気づきそうな話だが)、実機が届いてそのサイズに驚いてしまった。

 コンパクトどころか、高さは通常のタワーケースと同じ。幅はご覧のように約2倍。おそらくこれまで連載で扱ったなかでも最大の筐体だ。重量は15kg。物撮りのため撮影台に上げ下げしたり、向きを変えるだけでも一苦労する(笑)サイズ感となる。

 前面中央少し上に電源ボタン。その下から斜め左下の半透明ラインがLEDで光る。また右側のパネルを開くとホットスワップ対応の2.5インチベイが2つ。上手前にも音声入出力、USB 3.0 Type-C×2、USB 3.0×2を配置。左上部を倒すとヘッドフォンスタンドとなる。一見頼りなさそうだが、20kgの負荷にも耐えられるとのことだ。

 背面は上からUSB 3.0×4、USB 3.1×2、USB 3.0 Type-C、USB 3.1、Ethernet、S/PDIF、音声入出力。GeForce RTX 2080 Tiの出力はDisplayPort×2、HDMI×2、Type-Cとなっている。

 GeForce RTX 2080 Tiは写真からもわかるようにライザーカードを使用(この関係で構造が少し複雑ということもあり、今回は外して単体の写真は撮影していない)。このためマザーボードには拡張スロットとして、PCIe 4.0 x16×2(x16またはx8×2)、PCIe 4.0 x16(接続はx4)、PCIe 4.0 x1×2、M.2ソケット×2があるものの、上を塞いでしまうので、背の低いM.2以外、実質使用することができない。

 左パネルはご覧のように透明で内部やライティングを楽しむ仕掛けになっている。右パネルは外すと、電源と3.5インチ×2のドライブベイにアクセスできる。ドライブベイは2TB HDD 1機が装着済みだ。

 内部を見るとプロセッサの冷却は水冷式、メモリスロットは4つあり、16GB×4が実装済み。電源は700Wを採用している。プロセッサだけでもTDP 105W、ビデオカードの消費電力が250W(650W電源を推奨)とあるので、700Wでもあまり余裕はない感じだろうか。

 もう1点ROG PCの特徴として「ROG Keystone」というのがある。梱包時はストラップについているので、これを外し、取っ手右部分のへこみに装着すると機能するチップのようなものだ。固定自体は磁石で行なっている。このROG KeystoneはPCごとにペアリングができ、後述するARMOURY CRATEの設定を保存/復元、シャドウドライブ(ROG Keystoneがないと見えないドライブ)などの機能を持つ。

付属するROG Keystoneと呼ばれるチップをここへセットすると(磁石で固定)……
ARMOURY CRATE > デバイス > Keystone。シャドウドライブとのペアリング、プラグイン時のライティング、プラグイン時の起動設定、設定の復元などができる

 実際の使用感だが、まず電源オン時はフルにファンが回り出すのでかなりうるさく、筐体から大量の風も出る。しばらく経って落ち着くとどちらも激減するものの、ほぼ無音に近くなる。しかし、昨今のPCと比較するとやはりうるさい。熱に関しては放熱が効いているのか、ベンチマークテストなど負荷をかけても風が生暖かい程度に収まっている。

 いずれにしても実際に設置/使用するときは消費電力も含め、それなりの覚悟が必要となるマシンだ。

異次元のパフォーマンス!

 初期起動時、フルHDでスタート画面(タブレットモード)は1画面。ASUSグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプルだ。使用感は、後述のベンチマークテストの結果をご覧いただきたいが、プロセッサもビデオカードもストレージも一般的なPCとは異次元。妙な笑いが出てしまうほど爆速だ。

 ストレージはドライブC:がM.2 NVMe PCIe SSD 512GBの「SAMSUNG MZVLB512HAJQ」。仕様によると、シーケンシャルリードは3,000MB/s、シーケンシャルライト1,800MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもそのまま出ている。ドライブD:が2TB SATA600 7,200rpm/64MBのHDD「TOSHIBA DT01ACA200」。

 C:ドライブは1パーティションで約476.03GBが割り当てられ空き411GB。D:ドライブは約1,864GBが割り当てられすべてフリーだ。

 Gigabit EthernetとBluetoothがIntel製、Wi-FiがRealtek製。NVIDIAコントロールパネルでGeForce RTX 2080 Tiは、CUDAコア4,352基、メモリ11,264MB/GDDR6なのがわかる。

スタート画面(タブレットモード)。フルHDで1画面。ASUSグループがプリインストール
起動時のデスクトップは壁紙のみの変更とシンプル
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージはドライブC:がM.2 NVMe PCIe SSD 512GBの「SAMSUNG MZVLB512HAJQ」、ドライブD:が2TB SATA600 7200rpm/64MBのHDD「TOSHIBA DT01ACA200」。Gigabit EthernetとBluetoothがIntel製、Wi-FiがRealtek製
ストレージのパーティション。C:ドライブは1パーティションで約476.03GB、D:ドライブは約1,864GBが割り当てられている
NVIDIAコントロールパネル。CUDAコア4,352、メモリ11,264MB/GDDR6

 おもなプリインストールのソフトウェアは、「ARMOURY CRATE」、「GameFirst V」、「i-フィルター 6.0」、「Sonic Studio 3」、「McAfee Personal Security」、「My ASUS」、「WPS Presentation/Spreadsheets/Writer」など。

 本機独自のアプリはシステムをコントロールできるARMOURY CRATEと、ゲーム中ネットワークの帯域幅などを調整できるGameFirst V。

 ARMOURY CRATEは、作動モード、ライティングの調整など、本機をさまざまな角度からコントロールするパネルだ。先にあげたROG Keystoneもこれにリンクしている。

ARMOURY CRATE > ホーム
ARMOURY CRATE > デバイス > GA35DX
ARMOURY CRATE > AURA Sync
ARMOURY CRATE > Game Library
ARMOURY CRATE > シナリオ プロファイル
ARMOURY CRATE > 推奨アプリ
ARMOURY CRATE > ニュース
ARMOURY CRATE > 設定
GameFirst V
Sonic Studio 3

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark。なお、先のARMOURY CRATEは、作動モードをWindows/パフォーマンス/Turbo/手動(CPU/GPU)に設定できる(画面キャプチャ参照)。とくに記述がないものはパフォーマンスモードで測定した。

ARMOURY CRATE > ホーム > Windows
ARMOURY CRATE > ホーム > パフォーマンス
ARMOURY CRATE > ホーム > Turbo
ARMOURY CRATE > ホーム > 手動 > CPU
ARMOURY CRATE > ホーム > 手動 > GPU
PCMark 10 v2.1.2177
PCMark 10 Score7,062
Essentials9,675
App Start-up Score11,504
Video Conferencing Score8,742
Web Browsing Score9,006
Productivity8,134
Spreadsheets Score9,534
Writing Score6,940
Digital Content Creation12,144
Photo Editing Score16,945
Rendering and Visualization Score16,867
Video Editting Score6,267
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,980
Creative Accelarated 3.06,781
Work Accelarated 2.05,831
Storage5,057
3DMark v2.11.6866
Time Spy13,624(パフォーマンス)13,681(Turbo)
Fire Strike Ultra8,290
Fire Strike Extreme15,867
Fire Strike28,856
Sky Diver73,095
Cloud Gate58,018
Ice Storm Extreme191,137
Ice Storm195,471
CINEBENCH R20
パフォーマンスTurbo
CPU8,530 pts(3位)8,704 pts(3位)
CPU(Single Core)493 pts(1位)496 pts(1位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3,484.371 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1,993.639 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1,028.896 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1,915.450 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード445.178 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト361.190 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード48.837 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト176.417 MB/s

 PCMark 10は先日掲載したdynabook(Core i5-10210U/8GB/SSD 256GB)と比較して(2020年一般的なPCのスペック的な意味で)、Digital Content Creation以外は倍前後。Digital Content Creationはビデオカードが効くため2~10倍の差が出ている。PCMark 8も倍前後。

 グラフィックスを使うとは言え、おもにビジネス系なので、マルチスレッド/ビデオカードがさほど効かず本機を活かしきれていない。ただしストレージはかなり速いので、これに関しては効果がある。

 対して3DMarkは、16コア/32スレッドとGeForce RTX 2080 Tiのパワーが炸裂。まさに桁違い。これまで見たこともないとんでもないスコアとなる。作動モードに関しては、3DMark Time SpyとCINEBENCH R20で、パフォーマンスとTurboを試したがほとんど差が出なかった。

 以上のようにASUS「ROG Strix GA35 (G35DX)」は、AMD Ryzen 9 3950X、GeForce RTX 2080 Ti、64GB、M.2 NVMe PCIe SSD 512GB+HDD 2TBを搭載した爆速ゲーミングPCだ。ベンチマークテストの内容によっては、普通のPCが何台分入っているのかと思うほどの性能を叩き出す。

 上記したとおり、本機の性能を引き出すにはマルチスレッド対応でビデオカードをフルに使うアプリケーションが必要だ。ゲーミング用途は当然として、動画編集/エンコードなどこれに相当するものを常時運用しているユーザーにも試してほしい1台と言えよう。