西川和久の不定期コラム

4コアのCeleron N3450搭載で税別3万円を切る「ドスパラ Altair VH-AD3S」を試す

Altair VH-AD3S

 ドスパラは7月11日、2月から販売開始している「Altair VH-AD3S」のプロセッサをパワーアップし価格据え置きの同モデルを発表した。税別3万円を切る14.1型ノートPCでどこまで動くか興味のあるところ。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

Celeron N3350@2コアからCeleron N3450@4コアへパワーアップ

 今回ご紹介するドスパラ「Altair VH-AD3S」は、今年(2019年)2月14日に発表された同モデルのプロセッサを変更したパワーアップ版だ。もともとCeleron N3350(2コア2スレッド/1.1~2.4GHz)を搭載していたのだが、Celeron N3450(4コア4スレッド/1.1GHz~2.2GHz)へとアップグレードしたかたちとなる。ほかはハードウェア的には同じ。にも関わらず税別価格は据え置きの29,800円とよりお買い得になった。

 ハードウェア的にはとわざわざ書いたのは、じつはOSが64bit版の「Windows 10 Home」から、「Windows 10 Home(Sモード)」に変更されているためだ。Sモードはストアアプリしか動かないためセキュアとは言えいろいろ不便だが、解除することも可能だ。ただし不可逆なので、今回はベンチマークテストも含めそのままの状態で試用している。予めご了承いただきたい。おもな仕様は以下のとおり。

ドスパラ「Altair VH-AD3S」の仕様
プロセッサCeleron N3450(4コア4スレッド/1.1GHz~2.2GHz/キャッシュ 2MB/TDP 6W)
メモリ4GB(2GB×2)/LPDDR4
ストレージeMMC 64GB
OSWindows 10 Home Sモード(64bit)
ディスプレイ14.1型フルHD(1,920×1,080ドット)、光沢なし、タッチ非対応
グラフィックスIntel HD Graphics 500/Micro HDMI
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2
インターフェイスUSB 3.0×2、Webカメラ、指紋認証センサー、microSDカードスロット、音声入出力
バッテリ駆動時間約8.4時間
サイズ/重量333×222×16.9~18.1mm(幅×奥行き×高さ)/約1.36kg
税別価格29,800円

 プロセッサはApollo LakeのIntel Celeron N3450。4コア4スレッドでクロックは1.1GHzから最大2.2GHz。キャッシュは2MBでTDP/SDPは6W/4W。冒頭に書いたとおりもともと2コア2スレッドのCeleron N3350だったのでパワーアップしている。ただし最大クロック数はN3350のほうが2.4GHzと若干高い。

 メモリはLPDDR4 2GB×2で計4GB(BIOSで確認)、ストレージはeMMC 64GB。ストレージの容量および性能的に弱いが、裏にM.2 SSDを追加できるスペースがあり(写真参照)、増設してシステムなどを移せばこの欠点を補うことができる。

 OSは64bit版の64bit版のWindows 10 HomeからWindows 10 Home(Sモード)へと変更となった。ストアアプリしか動かずなにかと扱いにくいものの、必要に応じて解除できるためとくに問題ないだろう(参考:Windows 10 の S モードを解除する)。

 ディスプレイは14.1型非光沢のフルHD。タッチには非対応だ。外部出力用としてMicro HDMIを備えている。

 ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2で有線LANがない。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、Webカメラ、指紋認証センサー、microSDカードスロット、音声入出力。有線LANに関してはUSB 3.0があるので、別途USBアダプタを用意すればなんとかなる。

 サイズ333×222×16.9~18.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.36kg。バッテリ駆動約8.4時間で税別価格は29,800円と3万円を切る。単独で同クラスのデスクトップPCを組むより安い感じだ(OSを含む)。

パネルは非光沢のフルHD。上部中央にWebカメラ
斜め後ろから。ロゴなどいっさいなくシンプル。バッテリは内蔵式で着脱できない
左側面。Power/充電LED、Micro HDMI、USB 3.0。パネルの角度はこれが最大
右側面。電源入力、音声入出力、USB 3.0、microSDカードスロット
キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプ。タッチパッドの左上に指紋センサー。左上に各種ステータスLED
キーピッチは実測で19mm。キーピッチやストローク、たわみなどは問題ないものの、[¥ろ]が右下にあったり、[PgUp]、[PgDn]、[Home]、[End]が[Enter]キーの外側にあったり少し特殊
底面。M.2 SSDの増設が可能
横から。価格のわりにスリム
付属のACアダプタ。サイズ約113×50×32mm(幅×奥行き×高さ)、重量226g、出力12V/3.5A。搭載しているプロセッサのわりに大き目
重量は実測で1,377gとほぼスペックどおり

 筐体はアルミ製のオールシルバー。メタリックな感じで写真からもわかるようにある程度スリム。閉じた状態だととても3万円程度のマシンには見えない雰囲気がある。14型で重量が実測1,377gだと軽量級ではないものの、クラス相当(より気持ち重い)だろか。

 前面は上部中央にWebカメラ、前面側面は鋭角でなにもない。左側面はPower/充電LED、Micro HDMI、USB 3.0。右側面は電源入力、音声入出力、USB 3.0、microSDカードスロットを配置。パネルは写真の角度が最大となる。天板にロゴがないのも潔い。付属のACアダプタは、サイズ約113×50×32mm(同)、重量226g、出力12V/3.5A。プロセッサのわりにサイズが大き目だ。

 裏は四隅にゴム足と、小さいパネルがあり外すとM.2スロットが見える。ここに追加でM.2 SSDを挿入可能だ。昨今、あとからメモリやストレージを追加できないノートPCが殆どで、この点はちょっとグッとくる(笑)。もともとeMMCで速くないため、SSDにシステムを乗せ換えれば体感速度は確実に向上する。BIOSは、起動時[Delete]キーで表示できる。ここでブートドライブを切り替えれば、追加したSSDから起動可能となる。

 14.4型フルHDのディスプレイは非光沢で目が疲れにくく、価格を考えると明るさ、発色、コントラスト、視野角も結構良い。バッテリ駆動テストで動画を何本か表示していたが、それなりに見栄えするものだった。

 キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプ。主要キーのキーピッチは約19mm。ストロークも少しあり、たわむこともなく入力しやすい。ただし、[¥ろ]が右下にあったり、[PgUp]、[PgDn]、[Home]、[End]が[Enter]キーの外側にあったりと、少し特殊な並びとなる。この点が許容できるかどうかで本機の評価は分かれそうだ。

 タッチパッドは物理的なボタンのない1枚プレート型。フットプリントに余裕があるためパームレストも含め面積が広く扱いやすい。またタッチパッド左上にWindows Hello対応の指紋センサーがある。この価格帯としてはうれしい機能と言える。

 ファンレスなので振動やノイズは皆無。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると本体左上の部分が熱くなる。ただ下に熱が降りてくる様子もないため、とくに問題にはならないだろう。

 スピーカーはキーボード上部の本体側面にあり、パネル下部に音が反射し前に出る仕掛けになっている。音のバランスが妙だったので調べたところ(モノラルかと思った)、音が出るスリットらしいものがLチャンネルは本体中央、Rチャンネルは右ヒンジの手前にある。つまり本体の幅で音が広がらず、右半分で鳴っているのだ。パワーもなくオマケ程度の鳴り方なので目くじら立てるほどでもないが、パネルが価格のわりに綺麗なので映像を楽しむには残念といったところ。

2019年現行モデルとしては実質最小構成のノートPC

 OSは64bit版のWindows 10 Home(Sモード)。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。とくに追加されたグループなどはない。デスクトップはWindows 10標準そのものだ。Celeron/4GB/eMMC 64GBということもあり爆速は期待できないものの、ライトに使うのなら問題ないレベルで作動する。ある意味、2019年現行モデルとしては実質最小構成のノートPCと言えよう。

 ストレージはeMMC 64GBの「SanDisk DF4064」。C:ドライブのみの1パーティションで約57.16GBが割り当てられ空き42.3GB。Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。

 システムツール/コントロールパネル/プログラムと機能で確認したところ、インストールされているプログラムは「OneDrive」1本だった。これはストレージの容量と、Win32アプリが使えないSモードも影響していると思われる。

スタート画面(タブレットモード)の1画面。とくに追加されたグループなどはない
起動時のデスクトップ。Windows 10標準そのもの
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはeMMC 64GBの「SanDisk DF4064」。Wi-FiとBluetoothはIntel製
ストレージのパーティションはC:ドライブのみの1パーティションで約57.16GBが割り当てられている。

 ベンチマークテストは、Sモードということもあり、いつものPCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、BBenchは動かず、ストアアプリになっている、Google Octane 2.0@Edge、CrystalDiskMark、CINEBENCH R20、GFXBench DX benchmark、BBenchの替わりにバッテリ駆動でフルHD動画連続再生@Wi-Fi経由(輝度/音量50%)とした。結果は以下のとおり。

Google Octane 2.0@Edgeで8,422
CrystalDiskMark
CINEBENCH R20
GFXBench DX benchmark
Wi-Fi経由でフルHD動画を連続再生(明るさ/音量50%)。約4時間経過して残24%

 一番わかりやすいのがGoogle Octane 2.0@Edgeの8,422だろうか。普段はChromeで測定するためレンダリングエンジンが異なり単純比較はできないものの、筆者の合格ライン1万を切っている。あと一歩パワーが欲しいところだ。

 次にわかりやすいのがCrystalDiskMark 6.0.2。これは言うまでもなくeMMCなのでSSDと比較するとかなり劣り、少し速いHDD程度だ。他2種類のベンチマークテスト/プログラムに関してはストアにあるので、気になる人は手持ちのPCで試してほしい。

 バッテリ駆動テストは約4時間作動で残24%。最終的に約5時間で電源が落ちた。公称約8.4時間と比較するとかなり短いが、作動条件を考えるとこのあたりになるのだろう。

 昔この連載でふれたことがあるが、一時期省エネ目的でCeleron N3150@Braswell(4コア4スレッド/1.6GHz~最大2.08GHz)/4GB/SSDをメインとして使っていた時があった。テキスト中心+Photoshopも含め少し画像処理程度であれば(爆速ではないものの)普通に使える環境だった。

 価格もマザーボードwithプロセッサ、メモリ、SSD、ケース、電源、OS……と考えるとなにか手持ちがなければ3万円を軽くオーバーする。そう考えればフルHDパネルとバッテリがプラス、eMMCがマイナス……なのだが、本機のコストパフォーマンスは決して悪くない。それこそM.2 SSDを乗せればそこそこ使えそうだ。


 以上のようにドスパラ「Altair VH-AD3S」は、4コアのCeleron N3450、メモリ4GB、ストレージeMMC 64GB、14.1型フルHDパネルを搭載し、税別で3万円を切るノートPCだ。ルックスもアルミ製のメタリック&スリムでチープな感じは皆無。全体的に悪くない仕上がりぶりだ。

 ただし、OSがWindows 10 Home(Sモード)、一部変則的な配列のキーボード、右半分で鳴るステレオスピーカーと言った突っ込みどころもあるにはある。このあたりが気にならず、低予算でライトに使えるノートPCが欲しいユーザーに試して欲しい1台だ。