西川和久の不定期コラム
Raven Ridge搭載のドスパラ製デスクトップPC「Regulus AR5-Q」
2018年3月8日 11:00
株式会社サードウェーブは2月13日に、ドスパラブランドからRyzenのGPU内蔵版APUであるRaven Ridge搭載のデスクトップPC「Regulus AR5-Q」を発売した。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
GPUを内蔵したRyzen「Raven Ridge」
昨年(2017年)登場して一世を風靡したRyzen。その後Inteが対抗すべくドタバタしたのも記憶に新しい。基本的にハイエンド志向のプロセッサということもあり、GPUはプロセッサに内蔵していない。これはこれで戦略的には正解なのだが、一方、より安価にコア数/スレッド数の多いプロセッサがほしい層には、外部GPUを別途購入しなければならず、コストパフォーマンスはイマイチな状況だった。
それを改善すべく登場したのがRaven Ridgeこと「Ryzen Desktop Processors with Radeon Vega Graphics」だ。名前のとおり、VegaアーキテクチャのGPUを統合したAPUとなる。現時点では2つのSKUがあり、1つは4コア/8スレッド、クロック3.6~3.9GHz、内蔵GPUがRadeon Vega 11の「Ryzen 5 2400G」。もう1つは、4コア/4スレッド、3.5~3.7GHz、Radeon Vega 8の「Ryzen 3 2200G」だ。
どちらもキャッシュは4MB、TDPは65W、DDR4-2933(デュアルチャネル対応)、ソケットはSocket AM4となる。最近はCore i5でも4コア/8スレッドの製品があるので性能差は微妙だが、ざっく前者がCore i7対抗、後者がCore i5対抗といったところだろうか。
今回ご紹介するのは前者のRyzen 5 2400Gを搭載したデスクトップPCだ。おもな仕様は以下のとおり。
【表】Regulus AR5-Qのスペック | |
---|---|
プロセッサ | Ryzen 5 2400G with Radeon RX Vega Graphics(4コア/8スレッド、クロック3.6~3.9GHz、キャッシュ4MB、TDP 65W) |
チップセット | AMD B350 |
メモリ | 8GB(4GB×2)/DDR4-2666(2スロット/最大32GB) |
ストレージ | 1TB HDD |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 10 Home |
グラフィックス | Radeon RX Vega 11 |
インターフェイス | PS/2×1、USB 2.0×2(背面)、USB 3.0×6(前面×2、背面×4)、Gigabit Ethernet、DVI、HDMI、ミニD-Sub15ピン、音声入出力 |
拡張スロット | PCIe x16×1、PCIe x1×1 |
電源 | 400W(80PLUS Bronze) |
サイズ/重量 | 190×420×360mm(幅×奥行き×高さ)/約7.8kg |
税別直販価格 | 68,980円 |
プロセッサは先に書いたとおりRyzen 5 2400G。4コア8スレッドでクロックは3.6GHzから最大3.9GHz。キャッシュは4MB、TDPは65W。チップセットはAMD B350。メモリはDDR4-2666の4GB×2の計8GB。2スロットあり、最大32GBまで対応する。ストレージはHDD 1TB、光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブも搭載している。OSは64bit版のWindows 10 Home。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のRadeon RX Vega 11。下位のRyzen 3 2200GはRadeon RX Vega 8だが、おもな違いは、Compute Unit 11/8基、ストリームプロセッサ 704/512基、GPUクロック 1,250MHz/1,100MHzとなる。外部出力用にDVI、HDMI、ミニD-Sub15ピンの3ポートを装備。個人的にはDisplayPortがほしかった。
インターフェイスは、PS/2×1、USB 2.0×2(背面)、USB 3.0×6(前面×2、背面×4)、Gigabit Ethernet、音声入出力。拡張スロットはPCIe x16×1、PCIe x1×1。Wi-Fi、Bluetoothは非搭載。電源は400Wで静音タイプの80PLUS Bronzeが使われている。後付けで強力なGPUでも追加しないかぎり問題ないだろう。
サイズは190×420×360mm(幅×奥行き×高さ)、重量約7.8kg。カスタマイズでいろいろな構成にできるが、今回のパターンで税別直販価格68,980円。プロセッサだけでも2万円近いので、ケース、電源、マザーボード、ストレージ、メモリ、OSを加えこの価格はリーズナブルと言えよう。最近光学ドライブの出番がほぼなくなったこともあり、その分をストレージへ割り振り、SSDを搭載しても良かったかもしれない。
筐体はオールブラックのミニタワー型。サイズ190×420×360mmということもあり、机の下だけでなく上に置いてもさほどかさばらない。
前面にDVDスーパーマルチドライブ、USB 3.0×2、音声入出力、電源ボタン、HDDアクセスLED、リセットボタン。背面にPS/2×1、USB 2.0×2(写真は片方に無線キーボード用のドングルがついているが、これは筆者が撮影時にはずし忘れたためであり、本製品には付属しない)、DVI、ミニD-Sub15ピン、HDMI、USB 3.0×4、Gigabit Ethernet、音声入出力。ファンが1つ。筐体的には拡張スロット4本。
内部は上に80PLUS Bronzeの400W電源。マザーボードは、microATXの「ASRock AB350M-HDV」が使われていた。プロセッサ右側にメモリスロット2本。ドライブベイは、5インチベイが4つ、3.5インチベイは2つ。それぞれ内1つはDVDスーパーマルチドライブとHDDが使用している。
拡張スロットはPCIe x16×1、PCIe x1×1、M.2。すべて未使用だ。マザーボードの仕様によるとこのM.2は、PCIe 3.0 x4に対応しているので、高速なSSDを搭載可能になっている。できればHDDではなくこちらにシステムを入れたいところ。
ファンは電源、プロセッサ、背面と3つ。ベンチマーク中も含め、とくに気にならないレベルで静音性は高そうだ。また発熱も無視できるレベルだった。
4コア8スレッドに加え内蔵GPUとしては高いGPU性能
OSは64bit版のWindows 10 Home。初回起動時のスタート画面(タブレットモード@フルHD)は1画面。とくにプリインストールされているものはない。起動時のデスクトップも変更なしで素のままだ。システムのプロパティを見ると、メモリを8GB搭載しているのに、実質は6.93GB使用可能となっている。約1GB減っているのは内蔵GPUに割り当てられているためだ。
ストレージは1TB/7,200rpm/32MBのHDD「TOSHIBA DT01ACA100」。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられ空き905GB。DVDスーパーマルチドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GH24NSD1」。Gigabit EthernetはRealtek製だ(マザーボードの仕様によるとRealtek RTL8111GR)。
グラフィックスはプロセッサ内蔵の「AMD Radeon RX Vega 11」。DVI/HDMI/ミニD-Sub15ピンのトリプルディスプレイに対応し、それぞれの最大解像度は順に、1,920×1,080ドット@60Hz/1,920×1,200ドット@60Hz、4K(4,096×2,160ドット)@24Hz/(3,840×2,160ドット)@30Hz、2,048×1,536ドット@60Hzとなる。
プリインストールされているソフトウェアは、「マカフィーリブセーフ」と「PowerDVD」のみ。ほかはAMDなどのシステム系となる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、3DMarkと(HDDなのでスコアは期待できないが)CrystalDiskMark。参考までにCrystalMarkのスコア、CPU-ZとGPU-Zの画面キャプチャも合わせて掲載する。
winsat formalの結果は、総合 5.9。プロセッサ 9.1、メモリ 9.1、グラフィックス 8、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 5.9。メモリのバンド幅は25081.99424MB/s。
PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3942。3DMarkは、Ice Storm 89301、Cloud Gate 13073、Sky Diver 9940、Fire Strike 2643。
CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 180.1/Write 185.6、4K Q32T1 Read 0.892/Write 1.001、Seq Read 188.3/Write 186.9、4K Read 0.472/Write 0.824(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 82811、FPU 69104、MEM 53941、HDD 15870、GDI 14369、D2D 3963、OGL 42871。
ストレージがHDDなので足を引っ張られているものの、プロセッサ内蔵GPUとしては結構速く全体のバランスも悪くない。
PCMarkと3DMarkのこのスコア、どこかで見たような気がすると思っていたところ、少し前に掲載したThinkPad T480sと良く似ているのだ(GeForce搭載の堅実14型ノート「ThinkPad T480s」参照)。
比較して見ると以下のとおり。
Regulus AR5-Q | ThinkPad T480s | |
---|---|---|
PCMark | 3942 | 3423 |
Ice Storm | 89301 | 38345 |
Cloud Gate | 13073 | 13697 |
Sky Diver | 9940 | 8978 |
Fire Strike | 2643 | 2563 |
Ice StormはRaven Ridgeの圧勝。それ以外はHDDのハンデを負ってるわりにザックリほぼ同じ。試用したThinkPad T480sのおもな仕様は、Core i7-8650U(4コア8スレッド/1.9~4.2GHz/キャッシュ8MB/TDP 15W)、16GB DDR4-2400 SO-DIMM、SSD 256GB/PCIe M.2(OPAL対応)、GeForce MX150(2GB)。
細かく見れば違うのだろうが、アプリケーションレベルでは、Ryzen 5 2400GとCore i7-8650U+GeForce MX150は大差ないように思える。
以上のようにドスパラ「Regulus AR5-Q」は、Ryzen 5 2400G with Radeon RX Vega Graphicsを搭載したデスクトップPCだ。内蔵グラフィックスのわりに、その性能はベンチメーク結果のとおり。なかなかコストパフォーマンスが高い。標準構成では、メモリ8GB、ストレージ1TB HDDということもあり、できればカスタマイズでSSDにしたいところ。
内容を考えると価格もリーズナブル。GPUの性能はとくにこだわらないが、4コア8スレッドで安価なデスクトップPCを探しているユーザーにおすすめしたい1台だ。