西川和久の不定期コラム
ECS「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」
~Apollo Lakeを搭載した小型ファンレスデスクトップPC
2017年1月24日 00:00
ECSは2016年12月1日、“Apollo Lake”を搭載した小型デスクトップPC「LIVAZ-4」を国内投入すると発表した。プロセッサの違いとOSの有無により4モデルある中、編集部からCeleron N3350/Windows 10 Home搭載機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
自作するより安く用途と予算に応じて4モデル選択可能!
今回国内投入されるモデルは、「LIVAZ-4/32(N3350)」、「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」、「LIVAZ-4/32(N4200)」、「LIVAZ-4/32-W10(N4200)」の4種類。
ネーミングから分かるように、順にCeleron N3350搭載ベアボーン(価格は23,800円)、Celeron N3350/Windows 10 Home搭載機(同26,800円)、Pentium N4200搭載ベアボーン(同29,800円)、Pentium N4200/Windows 10 Home搭載機(同32,800円)となる。全モデルとも4GBメモリ、eMMC 32GB搭載だ。
今回手元に届いたのはLIVAZ-4/32-W10(N3350)。主な仕様は以下の通り。
ECS「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」 | |
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プロセッサ | Celeron N3350(2コア/2スレッド、1.10GHz/最大2.40GHz、cache 2MB、TDP/SDP 6W/4W) |
メモリ | 4GB SO-DIMM DDR3L (2スロット/最大16GB) |
ストレージ | eMMC 32GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 500、Mini DisplayPort、HDMI出力 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet×2、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB 3.0×4(内1つはType-C)、M.2×1、音声入出力 |
サイズ/重量 | 117×128×33mm(幅×奥行き×高さ)/約365g |
価格 | 26,800円 |
プロセッサは、先に書いたようにApollo Lake世代のCeleron N3350。2コア2スレッドで、クロックは1.1GHzから最大2.4GHz。キャッシュは2MBで、TDPとSDPはそれぞれ6W/4Wと非常に低く、本製品もファンレス仕様となっている。
メモリは、SO-DIMM DDR3Lの4GBが1枚。メモリスロット自体は2つあり、最大16GBまで対応可能だ。後から4GB×2の計8GBにすれば、動作に余裕が出るのはもちろんだが、デュアルチャネル作動となるため、グラフィックスも含め少し速くなる。ストレージはeMMCで32GB。OSは64bit版のWindows 10 Home/RD1がインストール済だ。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 500。出力にHDMIとMini DisplayPortを備えている。なお、HDMIは最大4K/30Hz、Mini DisplayPortは最大4K/60Hzの対応で、同時出力も可能。また、Intel HD Graphics 500には、HEVC(H.265)10bitとVP9のハードウェア再生支援も含まれている。
ネットワークは、Gigabit Ethernet×2、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0。ノートPCはもちろん、デスクトップも含め、Gigabit Ethernetを2基備えるのは珍しい。Windows以外の対応OSとして、Ubuntu 16.04 LTSがあるので、ベアボーンモデルを購入してサーバー的に使うのも面白そうだ。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×4、M.2×1、音声入出力。USBの内1つはType-Cとなっている。先のネットワークも含め、コンパクトな筐体に、これだけのポートがあれば文句なしだ。
サイズは117×128×33mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約365g。VESAマウント(75mm/100mm)にも対応し、アダプタが付属する。電源はACアダプタ式で、出力は19V/2.1A。
以上の構成で、価格は26,800円。このクラスを自作(プロセッサ付きマザーボード、ケース、電源、ストレージ、メモリ、OSを別途購入)するより安価となる。
また、上位モデルに搭載しているPentium N4200は、4コア4スレッド、クロックが1.1GHzから最大2.5GHzで、2コア増え、最大クロックが0.1GHzアップするので、6千円差ならば個人的にはこちらを選びたい(ただし、執筆時にはまだ流通していない)。
筐体はトップの写真からも分かるように、手のひらサイズで非常にコンパクトだ。前面にオンで白く光る電源ボタン、USB 3.0×3、USB 3.0 Type-C、音声入出力。背面にMini DisplayPort、HDMI、Gigabit Ethernet×2、電源入力を配置。左右側面はスリットのみ。
ACアダプタは、サイズ約80×40×25mm(同、プラグ部含まず)、重量140g。プラグの部分が着脱式で、3種類のプラグが付属する。また、本体が約365gなので、アダプタも一緒に持ち歩くとしても、たった500gほどだ。
天板カバーはLIVAのロゴ、底面カバーには4隅にネジと、真ん中付近にVESAマウントアダプタ用のネジ穴が2つある。内部にアクセスするには、この4隅のネジを外す必要があるが、底面カバーがきっちり閉まっている関係で、それだけでは簡単に外れず、VESAマウント用のネジを少しねじ込み、それを手で引っ張ってやっと外れる感じだった。
内部はメモリスロットが2つ。1つは4GB SODIMMが装着済。PCI ExpressにはWi-Fi/Bluetoothモジュールがある。M.2は空きで1つ。プロセッサなどは基板の逆側にあるのか、この状態では見ることができない。
なお底面カバーを閉める時は、USBポートの上と、カバーにある銀色のシールドの位置を合わせる必要がある(開け方も含め、付属の簡易マニュアルに書かれている)。少しコツがあるものの、メンテナンスは容易だ。
ファンレスで振動する部分もないので、振動やノイズは皆無。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけても(季節柄もあるだろうが)少し暖かい程度に収まっている。これなら24時間/365日、例えばサーバー用途で使っても大丈夫だろう(スリットから埃が入るのでここだけ注意)。
製品に発表時から少し気になっていたものの、現物を試用すると「欲しいな!」と思わせる逸品に仕上がっている。
Google Octane 2.0のスコアが1万越えと普通に使える性能
OSは64bit版のWindows 10 Home RD1。Apollo Lake世代のCeleron、メモリ4GBと、ベンチマークテストからも分かるように、少しアクセスが速めのeMMCの組み合わせで、Bay Trail世代のAtom搭載機より動作は軽い。一般的な用途なら、さほど不満無く使えそうだ。
初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は標準のまま。特にグループなどは追加されていない。デスクトップは壁紙そのまま、左側に後述するUpdate系のアプリへのショートカットが2つ追加されている程度。コントロールパネルの「プログラムと機能」を見ても、かなり素に近い状態なのが分かる。
eMMCは32GBの「SanDisk DF4032」。Cドライブのみの1パーティションで、約27.9GBが割り当てられ、空きは16.9GBと結構少ない。メディアカードリーダが無いので、必要に応じてUSB 3.0で外部ドライブを接続するか、M.2にSSDを搭載することになるだろう。また、このサイズだと回復パーティションに1GB割り当てられているのが結構痛い。
Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 3165」で、BluetoothもIntel製だ。そしてGigabit Ethernetは、Realtek製のコントローラが2つ。これは昨今、ノートPCでもデスクトップPCでもほとんど見ない構成で珍しい。
インストール済みのソフトウェアは、Windowsストアアプリは特になし。デスクトップアプリは、eBLU(BIOS Live Update)とeDLU(Driver Live Update)、Intelなどのシステム系だ。ほとんど素のWindowsなので、玄人好みの構成となっている。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、「PCMark 8 バージョン2/Home accelerated」。また「CrystalMark」(2コア2スレッドと条件的に問題ない)と「Google Octane 2.0」の結果も掲載した。
winsat formalの結果は、総合 2.1。プロセッサ 5.9、メモリ 5.9、グラフィックス 2.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 7。メモリのバンド幅は9,207.89080MB/s。PCMark 8 バージョ2/Home acceleratedは1,301。CrystalMarkは、ALU 19,442、FPU 16,342、MEM 17,559、HDD 25,918、GDI 4,399、D2D 1,164、OGL 3,467。Google Octane 2.0(Edge)は11,595。
グラフィックスが遅いので、総合的なスコアは伸びないものの、ほかの部分はそれなりの結果だ。またEdgeでのGoogle Octane 2.0が1万を超え、(個人差もあるだろうが)これなら普通にWebブラウジングができる。少なくともBay Trail世代、Braswell世代より好印象だ。
前半にも書いたが、メモリを増設してデュアルチャネル作動させれば、メモリのバンド幅とグラフィックスのスコアは向上するだろう。
以上のようにECS「LIVAZ-4/32-W10(N3350)」は、コンパクトなファンレスの筐体に、必要なインターフェイス全部入りのWindows 10マシンだ。各ベンチマークテストはそれなりの結果だが、Google Octane 2.0のスコアが1万を超えているため、ストレスなくネットを利用できる。またGigabit Ethernetが2ポートあるので、Linuxを入れ、小型サーバー的に使うのも面白そうだ。
試用した範囲で特に問題や不満もなく、価格も安いので、手軽に色々な用途に利用できるPCを探しているユーザーにお勧めの逸品と言えよう。