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速報! macOS Montereyパブリックベータ版を試してみた
2021年7月6日 06:55
Appleが今秋に正式公開を予定している次期macOS「macOS Monterey(モントレー)」のパブリックベータ版が、日本時間の7月2日にリリースされました。本記事では取材に基づく特別な許可を得たうえで、開発中バージョンのファーストインプレッションをお届けします。また、画面はパブリックベータ版で撮影したり、公式サイトから引用したもののため、正式版では異なる可能性があります。
誰でも試せるパブリックベータ版だが要注意
2021年6月8日(日本時間)に開催されたAppleの世界開発者会議「WWDC21」の基調講演で、次期「macOS Monterey」(以下、Monterey)が発表されました。バージョンとしては「12」となり、正式リリース日は未定ですが、今秋に無料のソフトウェア・アップデートで提供される予定です。
それに先立ち、7月2日よりパブリックベータ版が公開されました。開発者でなくとも、「Apple Beta Software Program」にアクセスして有効なApple IDを登録すれば、誰でもMontereyをいち早く試すことができます。
ただし、パブリックベータ版の目的は正式公開前における問題の修正や品質向上のためのフィードバック収集にあります。開発中のバージョンのため、重大な不具合が生じる可能性もありますので、普段使っているメインマシンへのインストールは控えたほうがいいでしょう。
パブリックベータの導入手順
パブリックベータ版のインストールは非常に簡単です。Apple Beta Software ProgramのページからApple IDでサインインしたら、Time Machineを使ってMacのバックアップを作成。次に「macOS Public Betaアクセスユーティリティ」をダウンロードしてインストーラを実行します。
すると、そのMacがApple Beta Software Programに登録されるので、あとは「システム環境設定」の[ソフトウェア・アップデート]から「macOS Monterey beta」をダウンロードします。その後は自動的にインストーラが起動しますので、画面の指示に従って指定したボリュームにインストールすれば完了です。
なお、筆者はM1チップを搭載したMac(以下、M1 Mac)へインストールしましたが、Intel製CPUを搭載した従来のMac(以下、Intel Mac)では、対象モデルであってもチップの仕様上の違いからMontereyの一部機能が利用できないことがAppleのサイトで注記されています。Intel Macでのテストではこの点に留意しておきましょう。
なお、現時点で判明しているIntel Macで利用できないMontereyの新機能は以下のものです。M1チップに搭載されたニューラルエンジンを利用する機能であるため、今後のアップデートでもIntel Macでは対応しない可能性が高いです。
- 「FaceTime」のポートレートモード(背景をぼかす)
- 画像からの「テキスト認識表示」機能
- 3Dスキャンからの「オブジェクトキャプチャ」(メモリ16GB以上)
- 「マップ」アプリでの標高・詳細地図表示
- 60秒の時間制限のない音声入力機能
- 「Siri」のニューラルテキスト読み上げ音声
デスクトップの主な変更点をチェック
Montereyのデスクトップのインターフェイスは、デフォルトのデスクトップピクチャが変更された以外、現行のmacOS Big Sur(以下、Big Sur)から大きく変わっていません。メニューの透過度やアイコンの変更が最小限に抑えられているため、違和感なく使い始めることができます。
Finderウィンドウを見てみると、サイドバーに[共有]という項目が新たに追加されているのが最初に目に留まります。これは、iCloudで共有中のファイルをまとめて表示するもので、参加依頼の状況やファイルを最後に変更した人の名前などが表示されます。共同作業するユーザーにとって、かなり便利な機能です。
細かいところでは、パス名を入力して指定したフォルダに移動する「フォルダへ移動」が使いやすくなっていました。フルパスを入力しなくても、移動先のフォルダ候補が表示されるので、効率的に階層を移動できます。
「おやすみモード」から「集中モード」へ
コントロールセンターを開いてみると、これまでの「おやすみモード」の項目が新機能の「集中モード(Focus)」へと変わっています。おやすみモードを有効にしている間はすべての通知がオフになりましたが、集中モードはこれを進化させて、ユーザーの行動に合わせて通知の制限を自動的に提案してくれます。
さらに、「システム環境設定」の[通知]パネルから、自分だけの集中モードを作ることも可能です。たとえば「原稿執筆」などと名称を設定し、その際に通知を許可する人やアプリなどを設定することで、それ以外の通知をブロックすることができます。仕事や遊び、睡眠といった複数のモードをあらかじめ設定しておけば、集中したいことに合わせてコントロールセンターやメニューバーからクリック1つで切り替えられ、気が散るのを防いでくれます。
また、集中モードを有効にすると、同じApple IDに紐付いた自分のiPhoneやiPadでも自動的にその集中モードへ変更されます。特に最近は在宅ワークをする機会が増えたことでプライベートと仕事のオン/オフがつけにくくなっていたりします。そうしたユーザーの状況を的確に捉えた、非常に有意義な機能だと思います。
システム環境設定の変更点をチェック
Montereyのシステム環境設定には、ほかにも新機能がいくつか追加されています。中でも、注目したいのは、iOSやiPadOSでお馴染みの[すべてのコンテンツと設定を消去]がMacにも採用されたことです。これにより、起動オプションの「復旧アシスタント」から初期化しなくても、Mac内のアプリやユーザーデータ、設定などを消去して工場出荷時に戻せます。
ただし、モバイルデバイス感覚で手軽にリセットできる半面、iPhoneやiPadのようにiCloudバックアップから復元できるようになるのかは現時点ではわかりません。現状はリセット後は「セットアップアシスタント」が起動して、Time Machineバックアップなどから復元できます。
また、新たに[パスワード]パネルがシステム環境設定に追加されています。これは、Safariの環境設定にある[パスワード]の項目と同様のインターフェイスを備えていて、問題のあるパスワードの変更を促すなどユーザーのセキュリティ意識を高めてくれます。
「ショートカット」がMacにやってきた!
Montereyでは標準搭載されているアプリも大きく変わっています。まず、驚いたのは「ショートカット」アプリが新しく追加されていること。これはiPadOSのショートカットアプリをMac向けに移植したもので、「ギャラリー」にはMacで動作するショートカットが多数登録されています。ここから毎日頻繁に行なう作業を選択して、タスクを自動化することが可能です。
また、以前にiPadなどで作成したショートカットがiCloud経由で自動的に同期されます。試しにいくつか実行したところ、画面の遷移は多少異なるものの問題なく動作しました。Intel MacではCatalystアプリで移植されたMacアプリのショートカットも問題なく動作します。
なお、さまざまなタスクを自動化するためのアプリ「Automator」も引き続き残されていますので、Mac固有の機能に特化したスクリプトを実行したい場合は、これまでどおりAutomatorを使うのが便利ではないかと思います。
「Safari」と「メモ」の進化がすごい!
MontereyのSafariはツールバーやタブに関するインターフェイスが洗練され、これまで以上にブラウジングに集中しやすくなっている印象を受けました。たとえば、Webサイトのヘッダ部分に合わせてツールバーの色が自動で切り替わるようになっているので、コンテンツがウィンドウから浮き上がることがなくなります。この機能自体は珍しいものではありませんが、Safariではよりシンプルに感じられます。
また、多くのタブが並んでしまいがちなタブバーも廃止され、ツールバーと一体化しています。さらに複数のタブをまとめる「タブグループ」も待望の機能です。これにより、目的に合わせて複数のタブをすぐに開けます。
さらに、Big Surの新機能だった「ページ翻訳機能」がついに日本語への対応を果たしました。現状はベータ版と思われますが、英語などの対応する言語のWebページを開いてメニューから[日本語に翻訳]を選ぶだけで日本語へ翻訳されます。これで、Google翻訳のページに移動したり、Safari機能拡張を追加したりしなくても手軽に海外のページを快適に閲覧できます。
一方、「メモ」アプリでは新機能の「クイックメモ」に注目です。これは「メモ」アプリを起動しなくても、即座にメモを追加できるというもの。たとえばSafariを開いていて、内容をメモしたい場合は範囲を選択して副ボタン+クリックして表示されるメニューからクイックメモを作成できます。
「クイックメモ」が優れているのは、メモを取ったアプリを記録していることです。たとえば、次にSafariでそのWebページを開くと以前のクイックメモがデスクトップ右下に表示され、内容をすぐチェックできます。特に、Webで調べ物をしているときに重宝する機能です。
Windowsユーザーも参加できる「FaceTime」
Montereyで大幅に機能強化されたのがビデオ通話アプリの「FaceTime」です。リモートワークやステイホームなど新しい生活様式の普及とともにビデオ通話をする機会が増えていますが、今回のアップデートはその期待に十分応えるものです。
Montereyを搭載したM1 Mac同士でビデオ通話してみたところ、新機能の「声を分離」と背景をぼかす「ポートレートモード」は特に使い勝手が抜群でした。ビデオ通話中にコントロールセンターを開くと[マイクモード]の項目が追加されていますので、ここをクリックして[声を分離]または[広範囲]を選択します。声を分離の効果はてきめんで、通話相手にオンにしてもらったところ、周囲の騒音がピタリを止み相手の声だけが鮮明に聞こえました。
また、自分以外の背景をぼかすポートレートモードは、通話中の自分のサムネイル画像にあるアイコンからオン/オフを切り替えられます。こちらもコントロールセンターに[ビデオエフェクト]という項目が追加で表示されますので、こちらをクリックして切り替えてもよいでしょう。人物の輪郭の切り抜き精度はグリーンバックを利用した場合と遜色ない自然なもので、M1チップのニューラルエンジンの性能の高さを感じられました。
さらに、FaceTimeでビデオ通話中のウィンドウ内に見慣れないボタンが追加されていました。これは画面共有の機能で、以前は「メッセージ」アプリに搭載されていたものです。このボタンをクリックし、メニューバーにあるFaceTimeアイコンから[ウインドウ]または[画面]を選択します。
[画面]ではデスクトップ全体の共有が開始され、[ウインドウ]では開かれているアプリのウィンドウを選択して共有開始できます。また、そこからさらに別のアプリのウィンドウに共有元を切り替えることができます。オンライン会議でKeynoteによるプレゼンをしたり、画像や動画、アプリの操作などを相手に見せたりする際に便利です。
ほかにも、グループFaceTimeでのグリッド表示や、WindowsやAndroidユーザーも通話に参加できる「FaceTimeリンク」、さらには映画や音楽などを友人や離れた家族と一緒に楽しめる「SharePlay」、相手の声を定位できる「空間オーディオ」の対応など、新しいFaceTimeには仕事もプライベートも充実させるアップデートが盛りだくさん。今秋の正式公開を大いに期待したいところです。
今後に期待のユニバーサルコントロール
最後に、現在のパブリックベータ版には未実装ですが、「ユニバーサルコントロール」も目玉機能の1つです。これはMacとiPadの連係をさらに強化する機能で、特別な設定をしなくても1つのマウス、キーボード、トラックパッドを最大3台までのiPadおよびMacで共有できるほか、デバイス間で画像などをドラッグ&ドロップで移動したり、Macで入力した文字をiPadに表示させたりできます。MacとiPadの画面がまるで続いているかのようにシームレスに扱えるため、作業効率が大幅にアップすること間違いなしです。
このほかの新機能
さて、ここまでMontereyの主要機能を中心にそのファーストインプレッションをお届けしてきましたが、Montereyにはこのほかにもさまざまな新機能が搭載されています。「メッセージ」アプリではメッセージで共有されたリンクや画像などのコンテンツが対応アプリの「あなたと共有」にわかりやすく表示されたり、メッセージ内の複数の写真をコラージュのように表示したりできます。
また、「MacにAirPlay」機能も便利な機能です。これまでiPhoneからHomePodやApple TVなどにAirPlayで音楽を飛ばして再生することはありましたが、Montereyからは、この出力先にMacも選べるようになります。Macに内蔵されているスピーカは高音質なので、サッと音楽を楽しみたいときに最適です。
このようにMontereyにはたくさんの新機能が追加されており、挙げればキリがありません。今秋の正式公開までにはまだ時間がありますので、いち早くmacOSの最新環境を試してみたい方はパブリックベータ版をインストールして、いち早くMontereyの新世界をゆっくり堪能してください。