米国版MiFi導入で、滞在コストを大幅に下げる



品名Virgin Mobile MiFi 2200
購入価格149.99ドル
品名Broadband2Goプリペイドカード
購入価格60ドル

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

●ホテル代を節約するための米国版MiFi

 頻繁な米国出張のホテル代を節約する切り札として、米国版のMiFiを導入した。日本の同系の製品と同様に、3Gネットワークを通じてインターネットアクセスを可能にするモバイルWiFiルータだ。最大のポイントは、契約がいらないプリペイド方式で、旅行者でも使えること。

 なにが嬉しいかというと、これで宿のネット環境を気にしなくて済むようになったこと。だから、「バックパッカー向けホステル」とか「ウィークリーアパートメント」を安心して使えるようになった。たった1つデバイスを持つようになっただけで、米国滞在費が半分以下にできるのだから、悪くない。

 そんなの、日本からMiFiをレンタルして行けばいいと思うかも知れない。でも、その方法だと結構なコストがかかってしまうので、貧乏ライターとしては、あまり気がすすまない。SIMロックなしのMiFi型ルータを日本から持って行って、SIMだけ買う方法もあるけど、ものぐさには面倒だし、そもそもプリペイドSIMで良いプランを知らない。

 というわけで、8月にサンフランシスコベイエリアを訪れた時に、Virgin Mobileが6月に出した「MiFi 2200」を購入した。というと、計画的に聞こえるが、そうではなくて、偶然だ。米国の典型的な電気量販店Best Buyに行ったら、MiFiが並んでるのを見つけたので、買ってしまったというのが実情だ。もっとも、まる1日検討してから買ったから、衝動買いじゃあない。

 そもそも、これまでもVirgin MobileのUSBドングルタイプの3Gネットワークモデムを使っていたので、Virgin MobileのSprint 3Gネットワークで、ほぼ問題ないことがわかっていた。味をしめたので、友人のライターF氏にも薦めたら、買いに行くとというので、一緒にBest Buyに行ったらMiFiが発売されていたというわけだ。

 MiFiデバイスは149.99ドル、ドングルはその時点では店頭で99.99ドル(Webで買ってホテルなどに送ってもらうなら79.99ドル)。この金額差で、料金プランが同じなので、MiFiを選ばない手はない。

Virgin MobileのMiFi 2200のパッケージの中身。Micro USB B端子のケーブルと充電用ACなどが入っているこれまで使っていたVirgin MobileのUSBドングルとの比較

●簡単だが落とし穴もあるセットアップ

 これまで使ってきたVirgin MobileのUSBドングルは、ともかく設定もアクティベーションも簡単だった。ドングルをPCに挿してから5分くらいで、面倒なことは全て終わってインターネットにアクセスしていた。専用ソフトをインストールするのがちょっとウザいが、別に悪さはしないソフトなので、問題はなかった。

 MiFiはというと、これもセットアップの手順自体はごく簡単だった。まずMiFiを充電、次にMiFiの電源ボタン(これがあとで問題になる)を押して起動。次にPC側からMiFiのSSIDを探して接続。デフォルトのSSIDとセキュリティキーはご親切にデバイスの裏に書いてある。

 すると次にMiFiをアクティベートするかと聞いてくる。その時に、Virgin Mobileのアカウントをすでに持っているかどうかの選択画面があり、ここで新規を選ぶとVirgin Mobileのサイトに飛んで、そこでアカウント作成とアクティベイトのプロセスに入る……。はずなのだが、飛ばない。

セットアップでデバイスのアクティベートを選ぶVirgin Mobile USAのサイトでアカウント作成の画面に入る

 あれれと思って、何回か試してみる。ネットワーク側の問題かなと、MiFiの置き場所を変えてみたり、デバイスを再起動したり。何が功を奏したのか、10回程度トライしたらVirgin Mobileのアクティベーションページが開いた。同じ頃にUSBドングル買った友人は、ここで週末のまる2日止まってしまったので、サーバー側の問題だったようだ。ちなみに、Virgin Mobileのサイトでアクティベートする部分はMiFiもドングルも変わらない。

 アクティベートしたら、あとは簡単で、プリペイドカードを使ってアカウントにチャージするだけだ。Virgin Mobileのプリペイド「Broadband2Go」システムは、カードを使う一般的な方式。電器店やスーパーなどで、数種類の額面のプリペイドカードを売っている。カードの裏のシールをゴシゴシはがして、ナンバーをVirgin Mobileの自分のアカウントに登録すると、カードの額面金額が自分のアカウントのキャッシュバランスに加わる。次にプランを選んで支払う。

 最後はデバイス自体にログインして、SSIDやセキュリティキーを自分なりに変更すれば、それで終わりだ。

●40ドルで1カ月無制限に使える

 プランは、購入した時点では4種類だったが、米国に滞在中の8月中旬から2プランに変わった。現在は10ドルと40ドルの2プラン。10ドルプランは100MBまでで10日間有効。40ドルプランは無制限で1カ月有効。この40ドルのプランは、かなりお買い得感がある。

 ゴトウが購入した時点では、40ドル無制限プランがなく、20ドルの300MB 30日間プランを使っていた。他に、40ドルで1GB 30日と60ドルで5GB 30日のプランもあったが、今は、いずれも40ドル無制限に置き換わった。60ドルのカードを買って、20ドルのプランを選ぶと、デポジットに40ドルが残る。

 ちなみに、Verizonにも似たようなプリペイドのシステムがあり、電器店ではVirgin Mobileと並んでVerizonのUSBドングルも売られている。でも、ゴトウが購入した時点では、Verizonのプランは1週間で250MBが30ドル、1カ月で500MBが50ドルとやや割高だったので、選ばなかった。料金プランは、Best Buyなどの電器店に比較表があったりするので、簡単にチェックできる。

料金プランを選んでクリックするとデポジットしてある金額からプランの利用料が差し引かれる電器店には料金の比較表がある

 要注意事項は、今、40ドルで1カ月無制限に使えて便利でも、それがいつまでも続くと思ってはいけないこと。経験則で言うと、米国では、料金システムは流動的にどんどん変動するので、ある条件が長期にわたって同じとは限らない。信用できないので、お得だったらガシガシ使い、ダメになったら乗り換えるみたいな身軽な気分でいた方がいいと思ってる。

 というわけで、Virgin MobileのMiFiを使い始めた。結論から言うと、1週間使って、ほぼ問題なし。もともと、USBドングルで、自分が行動するエリア(サンフランシスコからサンノゼ近辺までとロサンゼルスなど)では使えることがわかっていた。MiFiも、その点では全く変わりがない。重量は49gで、日本の同種のデバイスと似たような軽さだ。

 通信速度は時間がなかったので厳密にテストしてはいないが、数カ所で測った限りだと下り0.4~0.8Mbps。日本的な感覚だと遅いと思うかも知れないが、米国だとホテルでもこの程度のスピードの場合が少なくないので、悪くはない。ちなみに、スペックでは下り最大3.1Mbps。バッテリ駆動は4時間とカタログではなっている。4時間連続は試していないが、断続的に使って4時間後にも、まだバッテリライトはグリーンのままだった。

 唯一の問題は、電源ボタン。文具入れに入れておくと、軽いタッチの電源ボタンが、何かの拍子にオンになってしまう。知らないうちに電源が入ってしまっていたケースが2回あった。

●週に400ドルの宿を安心して使うための武器

 MiFiを導入したモチベーションは4つ。(1)ホテルのコストを抑えること、(2)緊急時の代替データ回線を確保すること、(3)iPhoneなど増えつつある非PCのモバイルデバイスを米国で低コストに使えるようにすること、あとは、すでにドングルで実現していたが(4)米国でPCのモバイルデータ通信を可能にすることだ。

 ホテルは切実な問題だ。なぜかというとサンフランシスコのホテルが高騰しているからだ。Intel Developer Forum(IDF)やGame Developers Conference(GDC)といったカンファレンスは、もともとサンノゼの小さなコンベンションセンターでやっていたのが、今ではサンフランシスコの大きなセンターに移った。サンフランシスコの問題はホテルで、ダウンタウンは郊外と違って安いホテルがないこと。一時は景気後退でかなり値崩れしていたのが、今は再び高騰して1泊200ドル台中盤以上が当たり前。前は100ドル以下だった安ホテルでさえ150ドル台になってしまっている。

 宿泊が高いので、数年前から安いウィークリーのアパートメントとかホステルの個室を使うようになった。サンフランシスコで危ないと言われる地帯にやや近いあたりに、アパートメントやホステルが固まってるエリアがある。その近辺だと、週に400~600ドル台で宿がなんとかなる。安いうえに、冷蔵庫に電子レンジにコインランドリーがついているから生活も快適だ。

 だけど、安宿だから、ネットを始め色んなものがメタメタだ。例えば、去年は、部屋に入ったら、トイレに便座がなかったことがあった。この時はアパートのスタッフもさすがに驚いていた。ほかにも、色んなものが壊れていたり、初めからなかったりする。上の階からもくもく煙が出て火災警報が鳴り響き消防隊が突入して来たこともあった。

 もっとも、若い時は安ホテルばかり泊まり歩いてたので、ボロいのもそれほど驚かない。これまで一番ボロかったのは、ニューヨークのYMCA。部屋にカギがなく、虫がいるらしくて体が痒くなり、共同シャワールームでは水シャワーを浴びながらずっと歌い続けてる変な人がいた(笑)。ハリウッドでは、泊まっていたホテルで拳銃男が人質を取って立て籠もり、気がついたらホテルが警官隊に包囲されていたことがあった。ちなみに、ゴトウの奥さんに至っては米国でホームレス用のシェルター(無料宿泊所)に(間違って)泊まってしまったことさえある。

 話が横道にそれたけど、ハードボイルドな旅は若い時にさんざんやったので、それほどボロホテルは苦ではない。ベッドがボロくても問題がない。腰を痛めてからは寝袋を使うようになったので、ホテルのベッドは使わないからだ。寝ながらPCを使えるゴロ寝テーブル「Laidback Laptop Desk」を買ってからは机も必要なくなった。

 結局、ホテルのベッドや机には頼っていないので、そのあたりはボロくてもいい。しかし、問題はネット環境で、最近まで、この問題だけが解決できなかった。だから、重要なカンファレンスは比較的高い宿にしていたし、重要度が低い場合もコストを下げる限界があった。

ホテルではこうやって「巣」を設営する。真ん中のテーブルがLaidback Laptop Desk

●1回につき55ドルのコスト

 Virgin Mobile MiFiの導入は、この問題を最終的に解決してくれる。データ回線を気にしないで宿を選択できるからだ。週に400~600ドルの宿で、安心して過ごせるようになるはずだ。

 コスト計算をすると、減価償却をこれから2年、ミニマムで約10回の取材で行なうとすると、1回につき約15ドルの計算となる。これに40ドルの通信プランを加えると、1回55ドルのコスト。それで、1~2週間の滞在をまかなえることになる。

 だから、ホテル差額が合計で55ドル以上なら、充分意味があることになる。例えば、週500ドルなら合計で550ドル程度。高いホテルに5日間1,250ドルなんて払うのと比べると、半分以下となる。また、ホテルでネットが1日10ドルとか有料だった場合も、そのコストを節約できる点で意味がある。

 もちろん、これまでのUSBドングルでも同じことが言えたのだけど、MiFiには強味がある。まず、出張時のデフォルトはPCが3台なので、PCでネットをシェアするのにMiFiが便利だ。それから、室内の場合は3G電波が入りにくい場合がある。USBドングルでは自分が移動するしかなかったが、MiFiの場合はデバイスを電波の入りやすい場所に設置することができる。これは、8月の滞在時に、実際にそうした状況だった。ちなみに、暗いところが好きで、宿の部屋に納戸があると、納戸に仕事場を設置するのだけど、当然、納戸は電波状況が悪いので、これは重要だ。

 宿のコストを落とすことを考えなくても、フェイルセーフは重要だ。ホテルのネットが落ちることも、ありえるからだ。比較的高級なホテルでも、丸一晩ネットが落ちていたことがあった。確実なネット環境を得ようとすると、サブのネット回線が欲しくなる。

●iPhoneとiPadが使えるようになった

 しかし、MiFiにして一番利点が大きかったのは、PC以外のデバイスだ。スマートフォンは、日本のSIMで使う限り、データローミングしなければただの使いにくい電話になってしまう。でも、ローミングのコストは払いたくない。これまで、ドングルではこの問題は解決できなかった。

 ところが、MiFiにした途端に、iPhoneのデータ通信も、MiFi経由で使えるようになった。使い勝手としては、ほとんど日本と同じ環境が外でも得られるようになった。大きいのは、iPhoneをカーナビとして使えるようになったこと。日本でやっている通りのことが米国でもできるようになり、地図が不要になった。とりあえず、スタンフォードからサンタクララまでの、サンフランシスコ南のエリアでは、メインの通りをMiFiでほぼ途切れることなく繋げられることがわかった。

クルマでiPhoneのマップを使えるようになり格段に便利になった

 非PCデバイスをMiFiでつなぐことは、家族旅行の時にもかなり威力を発揮しそうだ。ウチでは、Wi-Fi版iPadをリビングルームコンピュータとして導入して以来、小学5年生の長女がすっかりiPadにはまり込んでしまった。小学6年生の次男も、PCよりiPadの方を使いたがる。夏休みの宿題は、2人で調べ物をするためにiPadのGoogle音声認識を使いたがり、iPadの取り合いになっていた。Google音声検索は優秀で、長女が「ガンマ線バースト」とか言うと、ちゃんと検索できた。ウチに関しては「iPad革命」と言ってもいいような状況で、小学生2人に関してはコンピュータ利用の形態が完全に変わってしまった。おそらく、次男や長女を海外に旅行に連れて行くような場合は、iPadをモバイルでも使えるネット環境が必要になると思う。

 結局、SIMフリーの端末を探し、海外でデータ通信に使えるプリペイドSIMを探しといった手間をかけるより、米国版MiFiを導入してしまった方がずっと話が早い。ワンデバイスで、PCからモバイル端末まで全てカバーできるので、面倒がない。

 最後に、モバイルでのPCデータ通信。IDFみたいな企業のカンファレンスはいいが、学会や手作り系のカンファレンスだと無線LANが会場にない。あっても、全然つながらない。3G USBドングルを導入するまでは、野良無線LAN(米国だとカフェの無線LANとか、それなりに見つかる)を探す以外に手がなかった。それが解決したのもうれしい。

 ネガティブな点は、自分のネット依存度がますます高まっているような気がしてしまうこと。もともと、ネットワークでいつでも繋がっていること自体が、そんなに好きではない。仕事だから仕方がないのだけど、ネット奴隷化が進んでるようで、ちょっとそこは嫌かもしれない。

(2010年 9月 6日)

[Text by 後藤 弘茂 (Hiroshige Goto)]