デルの30型ワイドハイエンド液晶「3008WFP」 |
2009年初めに、デルの30型ワイド液晶「3008WFP」を冬のボーナスで購入した。購入価格は、送料込みで144,144円だった。製品が発売されてから1年半経ってるだけでなく、購入してからも約半年経ったわけだが、遅ればせながらレポートをしたい。
直販製品はよく価格が変動するが、最近はセール時期だと送料別で12万円台まで下がっていることがある。30型液晶ディスプレイとしては破格の安さだ。
●WQXGAと30型への欲求まずは、3008WFPを買った動機から。
エイサーのAL2416wd |
筆者がPC用として液晶ディスプレイを購入したのは実は結構遅く、2006年11月に買ったエイサーの「AL2416wd」が最初だった。それ以前は三菱のCRTを使っていたが、長年の使用で画面右上に色ずれが生じ、交換するために購入した。
さてこのAL2416wdは、1,920×1,200ドット(WUXGA)の表示解像度を持っており、VAパネルの採用で画質も綺麗だったが、欠点が2つほどあった。
1つ目は、著作権保護技術のHDCPに対応していない点。せっかくのWUXGAの解像度も、地デジやBlu-ray Discなど、最新のデジタルコンテンツを(DVI接続で)鑑賞できず、その解像度をフルに活かせるとは言い難い。WUXGA登場してから間もない製品であるため仕方がないとはいえ、8万円も出して買った高い買い物なのでちょっと悔しい。
2つ目はXbox 360のミニD-Sub15ピンの出力で、フルHD解像度にならない点。Xbox 360のミニD-Sub15ピンのフルHD信号はやや特殊で、当時はSXGAとして認識するディスプレイが多く、正常に表示できない。AL2416wdもそのうちの1つで、フルHDだと正常に出力されず、720p(1,280×720ドット)までの表示となる。
また、欠点とは言えないが、AL2416wdは入力がDVI-DとミニD-Sub15ピンの2系統しかないため、液晶ディスプレイ1台だけで、TV視聴やゲームコンソールからの出力などをすべてを賄いたい、という一人暮らしのニーズには応えられなかった。
そして最後、30型を購入する決め手となったのは、デジタルカメラにハマったためだ。
筆者は24型ディスプレイを購入してから、ニコンの一眼レフカメラ「D40」を購入した。そして立て続けに富士フイルムの「FinePix F31fd」、リコーの「GX100」、シグマの「SD14」、同「DP1」、「DP2」を購入。写真を扱う機会が大幅に増えた。
写真を扱っていると、カメラの画素数とディスプレイの画素数の格差を感じることが多い。例えば、WUXGAの画素数は合計で約230万ピクセル(1,920×1,200ドット)しかない。デジカメは1,000万クラス以上の高画素化が進んでいるにもかかわらず、ディスプレイの画素数はそれの1/5以下しかないわけだ。
これは、等倍表示をしたときに長いスクロールを必要とすることを意味する。一例として600万画素の「D40」の場合、Fineモードで3,008×2,000ドットの画像が吐き出される。WUXGAと比較すると横解像度は約1.57倍、縦は約1.67倍も広い。1,000万画素クラスのGX100となると、3,648×2,736ドットの画像が吐き出されるので、もはやWUXGAの比ではない。
ただし、D40やGX100のような、RGBの画素をベイヤー状に配列し、相互の画素補間で最終画像を得るデジカメの解像感はそれほど高くない。筆者は、ディスプレイで見たときにエッジが立った解像感のある写真が好きであり、GX100などでRAWで撮った写真を現像する際に(縦と横を2分の1ずつ)4分の1のサイズに縮小する。これだと縦解像度はややはみ出すが、横解像度はなんとかWUXGAに収まる。
しかし、結局ベイヤー式センサーのカメラの画質に満足できず、RGB画素を縦一列に配することで画素補間を行なわないFoveon X3センサーを搭載するSD14やDP1を購入することになった。
SD14やDP1が吐き出す写真の解像度は、2,640×1,760ドットで、WUXGAを上回る。せっかく解像感の高い写真が撮れたのに、我慢して縮小して鑑賞するか、マウスでずるずるスクロールしなければならないというのは、なんともつらい話だ。というわけで、写真を満足に閲覧したいという観点からも、2,560×1,600ドット(WQXGA)の解像度を持つ30型が欲しかった。
話が長くなってしまったが、以上が3008WFPを購入しようと思った動機だ。これ以外にも、「ハイエンドビデオカードの性能を活かしたいから」とか、「色再現性の高い液晶が欲しかったから」とか、「親戚に24型が小さすぎると言われたから」とか、書くとキリがないぐらいに理由があるのだが、結局なかなか予算の目処が立たず、発売から1年の冬のボーナスで、ようやく購入にたどり着いた。
●意外に設置場所にも困らず。入力系統の数は圧倒的
AL1923とデュアルディスプレイ構成で設置 |
到着してから、筆者が家で利用しているエレコムのPCデスク「LPG-90H」の上に載せてみた。24型からのリプレースで、二回りほど大きさがアップするわけだが、デスクの幅が900mmあるので、すんなり置けた。
使い始めた当初は大型化による威圧感も少々あったが、慣れてみるとそれほどではなく、逆に22~24型がオモチャのように見えてしまう。
周りの人に勧めると、「30型は大きくて置けない」と躊躇する人が多いが、実はそんなことはない。24型を置けるスペース+α程度あれば30型が置ける。また、結構画面から引かないと全体内容がつかめないのではないかという人も多いが、個人的にはそのように感じることはなかった。
スタンドはガラス製でかなり高級感がある。ただしホコリが付きやすい |
デザインもかなりおしゃれで、前面のベゼルはヘアライン仕上げ、スタンドはガラス製のしっかりしたものだ。ベゼル色はガンメタリックで、ブラック/ホワイト/シルバーベゼルの液晶に慣れた筆者には新鮮的だった。
設置時に注意したいのは、重心がかなりスタンド部に偏っているということだ。30型というと24型よりも一回り大きいため、どうしても「パネル部が重いだろうなぁ」というイメージを持ちがちで、持ち上げるときについパネルを持ってしまうが、本体の重みの大半はスタンドに集中しているので、パネルのヒンジだけが動いてしまい、すっぽぬけてしまう印象だ。
しかしスタンドだけを持とうとしても、30型のパネルが邪魔していい位置に手が置けない。筆者は苦労の末、1人でなんとか設置できたが、やはり30型はTVに近い大きさということもあり、できれば2人がかりで設置に望みたい。
さて、設置が終わり早速24型からケーブルをそのままにつなぎ替えたが、画像が潰れて表示されてしまった。ここでWQXGAの解像度を出力するにはDual-Link DVIのケーブルが必須であることを思い出し、付属のDual-Link DVIケーブルにつなぎ替えたところ、今度はうまく動作した。
インターフェイス部 | 当初はこのSingle-Linkにしか対応していないケーブルで接続したが画像が潰れて表示された | Dual-Link対応のケーブルはこのようにピン数が多い |
当然のことながら、WQXGA解像度の出力は、ビデオカード側にもDual-Link対応が必須だ。GeForceなら7世代以降、RadeonならX1300シリーズ以降、大抵はサポートしているはずだが、購入する前に再度自分が使っているビデオカードを確認されたい。筆者は3008WFP購入時にGeForce 8800 GTX、そして5月にGeForce GTX 295に乗り換えたので、特に問題はなかった。
一方Xbox 360との接続は、筆者が所持しているのがHDMI非対応の旧モデルだったため、既に別途購入したミニD-Sub15ピンケーブルで接続するか、新たにコンポーネント出力端子ケーブルを購入して接続するか迷ったが、ミニD-Sub15ピンにノートPCを繋ぐあてがあったので、コンポーネントを選んだ。
しかし、購入済みのミニD-Sub15ピンケーブルも、付属のD端子ケーブルも使わずに、新たにコンポーネント出力端子ケーブルを購入するのも、いささか無駄が生じるし、このケーブルも3,000円と安い買い物ではないので、D端子メス→コンポーネントオスの変換コネクタを探すことにした。
量販店などでは、D端子オス→コンポーネントオスのケーブルなら豊富に用意されているが、出力端子が特殊なXbox 360ではこの手のものが通用しない。そこで秋葉原に足を運んで、ケーブル製品が豊富な千石電商に行ってみると、案の定短い変換ケーブルが980円で販売されていたので、これを利用した。接続してみたところ、問題無く1080p(D5)の信号を受け付け、フルHDでゲームできるようになった。
これらを接続してもなお、DVI-D 1系統と、DisplayPort、HDMI、コンポジット端子が空いている。そこでもう1系統のDVI-Dには検証用に使っているマシン、そしてコンポジットにはプレイステーション2を購入して接続した。これでもまだDisplayPortとHDMI端子が余っているわけだが、将来的にビデオカードを買い換えたときや、Xbox 360をHDMI対応版に買い換えたときなどに備えておくとしよう。
千石電商で購入したD端子メス→コンポーネントオス変換ケーブル | これだけ接続してもまだDisplayPortとHDMIに空きがある |
メニューから入力端子を選択できる |
これだけある入力端子が多いと、切り替えが大変だ。入力切り替えは本体前面に備え付けの切り替えボタンを押すか、メニューから辿って選択するかのどちらかなので、切り替えボタンを使う方が圧倒的に多いのだが、このボタンはミニD-Sub15ピン→DVI-D 1→DVI-D 2→DisplayPort→HDMI→コンポーネント→Sビデオ→コンポジットの順番にしか切り替えられないので、DVI-D 2からDVI-D 1に戻るときなど、最大で8回(1回目は確認のみ)も押さなければならず、やや不便だ。
これだけ多いのなら、逆順切り替えボタンを装備するか、直接選択できるボタンを装備したリモコンを用意すべきだろう。切り替えの際のレスポンスもそれほどよくなく、特にDual-Link接続だと表示されるまでに1秒強ほど待たされるため、次機では改善を望みたい。
なお、HDMIで入力した音声を、5.1chのアナログ出力することも可能で、本体背面にはその出力端子もついているが、残念ながらHDMI出力対応機器を持ち合わせていなかったので試すことができなかった。対応機器を購入した際には是非試してみたい。
●高い解像度と高いポテンシャルを持つ色再現性
WQXGAの解像度もやはり圧倒的だ。先述のようにSD14やDP1などの画像は2,640×1,760ドットなわけだが、ちょっとスクロールする程度で全体が見渡せる。原寸表示でいきなり左上から表示しても、写真の中央部分をしっかりカバーするので、ピントやブレの確認はほぼそのまま終わる。
WQXGAの画素数は4,096,000ピクセルで、SD14やDP1の出力画素数は4,646,400ピクセル。ギャップがだいぶ詰まっている。WQXGAはWUXGAと比較して約2倍の画素数なので、快適なのは当然だろう。
一方、Webブラウズや文書作成など、テキスト中心の用途には、充分すぎる解像度だ。例えばPC Watchを閲覧するときにウィンドウを最大化すると、大抵の段落は1行に収まってしまうので、目の横移動量が多くて疲れる。複数のアプリケーションを表示しながら使うべき広さだし、2つ3つウィンドウが並んでも全く苦にならない。さらにメリットを挙げるとすれば、下のウィンドウとの重なりが少なくでき、見えてなくても内容が把握しやすい、といったところだろうか。
圧倒的な解像度。左のデスクトップが3008WFPの解像度、右のデスクトップはAL1923の90度ピボット後の解像度 | 写真を現像する際、原寸表示においても中央部分が表示されるためピントやブレを見極めやすい | Webブラウザを最大化してPC Watchの記事を表示させたところ。大抵の段落が1行で表示される |
発色は非常に鮮やかだ。セカンドマシンのディスプレイに余った24型を導入したため、それまで使っていたエイサーの19型ディスプレイ「AL1923wd」をデュアルディスプレイとして横に並べてみたが、発色の違いは一目瞭然。特に赤系の表現力は圧倒的に綺麗で、桜やバラのような花の写真が美しく映る。
カラーの設定。筆者はデスクトップではAdobeRGBに設定している |
色のモードは入力系統ごとに設定でき、DVI-Dの初期設定である「デスクトップ」はやや青みが強いが、「AdobeRGB」モードにすると緑っぽい発色になる。コンポーネントなどではブライトネスが強めでメリハリがある「ムービー」や、やや暗めで落ち着いた雰囲気の「ゲーム」などが用意されている。
筆者は写真を取り扱うことが多いため、PC接続時は常時AdobeRGBに設定している。しかし先述のように緑が強いため、キャリブレーションツールの「Spyder3Elite」で調整をした。
このキャリブレーションツールは奥が深いため、今回は設定を切り詰めたりしなかった。軽く試したところ、ほかのディスプレイだと結構ホワイトバランスの微調整に苦労するが、3008WFPではほぼ一発で理想通りの発色となり、写真のハイライトの飛びと色飽和が抑えられた印象だ。さすがにIPSパネルのポテンシャルは高い、といったところだろう。
筆者は写真のみならず、PCゲームなどもよくプレイする。他社の製品では「ゲームモード」といった、画質を補正せずに出力することでレイテンシを抑える機能があり、本製品ではそれがないので、購入当初少し心配だった。しかし実際に「UnrealTournament3」や「ストリートファイターIV」などをプレイしてみたところ、特に遅延が感じられず、快適にプレイできた。ゲームでもダイナミックレンジの広さは健在で、細かい色合いのオブジェクトでも認識しやすい。
なお、WQXGAの解像度で最新のゲームを快適にプレイするためには、それなりに高解像度に耐えうるハイエンドビデオカードが必須である。筆者は当初GeForce 8800 GTXを使っていたが、アサシンクリードなどのDirectX 10ゲームでは、満足いくフレームレートを得られなかったため、GeForce GTX 295に買い換えてしまった。最新ゲームをプレイするならビデオカードへの投資も覚悟したほうがよいだろう。
コンポーネントに接続しているXbox 360や、コンポジットに接続したプレイステーション2なども同様に、対戦アクションゲームから格闘ゲーム、シューティング、RPGまで一通りプレイしてみたが、特に問題はなくプレイできた。また、残像などが気になることもなく、大画面とあいまって、過去に使っていた24型にはない迫力を感じた。
Xbox 360のホーム画面を表示させたところ。D5(フルHD)で問題なく表示され、不自然な感じもない | デュアルディスプレイ構成にしておけば、攻略サイトの参照やチャットをしながらプレイできる | ピクチャ・バイ・ピクチャ表示でも表示できる |
先述のように、AL1923を90度に回転してデュアルディスプレイ構成で使っているので、3008WFPでXbox 360などをプレイしている間も、メッセンジャーのウィンドウをAL1923のほうに出しておけば、プレイをしながらのチャットもできるので便利だ。
ちょっと攻略サイトを参照したいと思ったときは、ピクチャ・バイ・ピクチャ(PbP)のボタンを押して、PCと接続しているDVI-Dと並べて表示させる。さすがにWQXGAをPbP表示すると文字が潰れて判別不能だが、Webブラウザを起動する程度ならできるので、ブラウザが起動したらウィンドウをAL1923のほうに持ってきて、もう一回PbPボタンを押してゲームの全画面表示に戻す、といった使い方をしている。こうすれば入力系統の切り替えを行なわずに済む。
一方、地デジやBlu-ray Discの視聴だが、もちろんHDCPは対応しているものの、最大解像度はWUXGAに制限される。NVIDIAのコントロールパネルから見ると、WQXGA表示時でもHDCPは有効だと表示されるため、試しにこの状態でBDを再生してみたが、最初の「おことわり」の表示が終わった時点でエラーが出て終了してしまった。そこで解像度をWUXGAに落としたところ、今度は問題無く再生された。
WQUXGAの解像度でも、ドライバ上ではHDCP対応として認識される | しかし再生しようとするとエラーが表示される。エラーはキャプチャ不可だったため、Q&Aページをキャプチャした |
なお、解像度を落とした時、アスペクト比固定拡大か、ドットバイドット表示か、アスペクト比にかかわらずフル画面に引き延ばすか、のいずれかを選べるが、BDの鑑賞やゲームに関して言えば、アスペクト比固定拡大がもっとも好ましく感じた。もちろん精細さではドットバイドット表示が上回るが、画面中央にしか表示されないため、迫力に欠け、せっかくの30型の大きさが活かされない。3008WFPは引き延ばし表示にしても画質はそれほど遜色はないので、テキストがメインでないのならば、引き延ばし表示をオススメする。
●カードリーダやUSB Hubなど、ほかの付加価値も3008WFPの素晴らしさは画質や解像度、入力系統の豊富さだけに留まらない。付加機能として4ポートのUSB Hubを搭載していることや、9in1カードリーダなども見逃せない。
いまさらUSB Hubと言われるかもしれないが、筆者が検証用マシンに使っているマザーボードはVIAのVB8001で、バックパネルのI/Oが2基しかない。キーボードとマウスを繋げると埋まってしまい、USBスピーカーを繋げるポートがなくなってしまった。そもそもUSBスピーカーのケーブルは60cmしかないので、床からの高さでは届かない。
その点3008WFPには4ポートのUSB Hubがあるので、キーボードとマウス、スピーカーをここから引き出せばよい。PCからのUSBケーブル配線も1本とスマートになり、ありがたいことこの上ない。
同様にカードリーダも写真を多く取り扱う筆者にとって嬉しい装備だ。試したところ転送速度は約10MB/sec前後とそれほど高速ではないが、CF、SDカード(SDHC対応)/MMC/xD-Picture Cardなど、デジカメで一通り必要なメモリカードはサポートしているので、1枚や2枚の写真をJPEG写真を転送するだけなら、こちらを使っている。
写真右側に見えるのが2ポートのUSB Hub。WebカメラやUSBスピーカーの接続に便利 | 本体左側に装備されているカードリーダ。一通り必要なものは対応している |
●すべてのニーズを満たせ、長い間使える製品
この半年、一通り3008WFPを使ってきたが、ディスプレイとして搭載できる機能はすべて搭載し、筆者のあらゆるニーズに応える、まさに「オールインワン」と呼ぶにふさわしい製品だと感じた。広色域のサポートや高い解像度があいまって、死角がない製品だ。
機能面でも、「30型はプロフェショナル用途向け」という趣旨のものではなく、HDMIやコンポーネント入力、ゲームモードの搭載など、コンシューマ向けのものを充実させている点でも、個人でも手が出しやすい製品だ。
フルHDの液晶ディスプレイが2万円台まで下がり、10万円を超える本製品は高く見えるかもしれないが、実際に試してみると価格以上の性能と機能性を備えており、コストパフォーマンスは非常に高い。永く第一線で活躍し、PCの良いパートナーとなってくれるだろう。
(2009年 7月 14日)
[Text by 劉 尭]