HDDをベアで使う海外製3アイテムを試す |
動画データなど、大容量のファイルを保存するために、3.5インチHDDのベアドライブをカートリッジ代わりに使っている人は少なくない。Byte単価ではDVD-Rなどに劣る場合もあるが、大量のファイルをまとめて保存するのに、安価になった3.5インチのベアドライブはぴったりの選択肢だ。
こうした用途には、ラトックシステムやオウルテックが発売しているリムーバブルケース(俗に言うキャニスター)のほか、一昨年に登場し話題になったセンチュリー「裸族のお立ち台」のようなクレードルを使う方法がある。
前者は見た目がよく保存性にも優れるが導入コストはやや高く、後者は安価に導入できるものの抜き差し回数が増えるとSATAコネクタに負荷がかかるという欠点がある。いずれの製品も、内蔵/固定することを前提に設計されたベアドライブを外付けで利用するために、さまざまな工夫がなされている。
この3.5インチHDDのカートリッジ利用については、国内よりもむしろ海外のほうがメジャーな使い方として認知されているようで、海外の通販サイトに行くと国内ではまず見かけないユニークな製品が多数販売されている。今回、香港Brando Workshopが運営する「usb.brando.com」で3つの製品を購入して試用してみた。
●スピーカーを内蔵したグレードル「SATA HDD Dock Station Combo Stereo Speaker + Hub」製品パッケージ。メーカーはUNITEK、オリジナルの型番は「Y-1060S」となっている。販売元のサイトを見る限りではカードリーダやeSATA Hub搭載モデルなどの派生製品が存在する |
「SATA HDD Dock Station Combo Stereo Speaker + Hub」は、SATA接続のベアドライブを挿して利用するUSB接続のクレードルだ。3.5インチだけではなく、2.5インチのドライブにも対応。真上からベアドライブを立てる構造など、センチュリーの「裸族のお立ち台」と同様のコンセプトだろう。価格は59ドル、日本円でおよそ6,000円前後ということになる。
本製品がユニークなのは、本体にスピーカーおよびヘッドフォン/マイク端子を備えていることだ。本製品のようなクレードルはベアドライブの抜き差しを行なうため、ユーザーの手の届くところに置かれることが多いため、いわゆる「手元スピーカー」として活用できる。
本体前面にはボリュームの調整ボタンとミュートボタンを備えている。ミュートを押して音声出力をカットした場合は、通常緑のLEDが赤く点灯するため分かりやすい。イヤフォンやヘッドフォンを利用する場合も、端子が近くにあるため使い勝手が良い。また正面左右にはUSB Hubを装備しており、USB接続のストレージを利用する際に重宝する。
もともとクレードルという製品自体、そう頻繁に買い換えることは考えにくく、なるべくオールインワンの製品をチョイスすべきだ、と筆者は考える。本製品のスピーカーには派手さこそないものの、PCの騒音によって遮られがちなサウンドを、手元でクリアなまま聴けるメリットが気に入った。筐体もスマートで、国内での取り扱いを期待したい製品である。
□製品情報
http://usb.brando.com/sata-hdd-dock-station-combo-stereo-speaker-hub_p00871c032d015.html
●HDMI出力が付いたメディアプレーヤー一体型クレードル
「SATA HDD Multimedia Dock II」製品パッケージ。オリジナルの型番は「EN391TV-SLH」となっている |
2つ目に紹介するのは「SATA HDD Multimedia Dock II」だ。同じく、上部からベアドライブを差し込むクレードルタイプの製品だが、先の製品と異なるのは、背面にHDMIコネクタを搭載しており、TVと接続すればメディアプレーヤーとしても利用できることだ。価格は79ドル、日本円でおよそ8,000円前後ということになる。
HDMIもしくはコンポジット端子でTVと接続して電源をONすると、メニュー画面が表示される。メディアプレーヤーとしての機能は非常にベーシック。「MOVIE」「MUSIC」「PHOTO」「SLIDE」「FILE」の5モードを持ち、ストレージ内の動画や静止画、音楽の再生が行なえる。本体正面にはSDカードスロットを備えており、こちらに保存されたファイルも同様に再生が可能だ。
おもな対応フォーマットは、動画ではMPEG-1/2/4、AVI、VOB、DivX、XviDなどで、WMVやFLV、H.264は非対応であるなど、メディアプレーヤー黎明期の頃の製品と変わらない仕様である。また、言語を英語にした状態では日本語ファイル名が空白になったり(文字化けではない)、なんらかのエラーで再生できないファイルがあると自動スキップして意図しない別のファイルを再生するなど、首をひねるような挙動が見られる。
HDMIでフルHD出力できるため、画質のクオリティはそこそこ高い。すでに動画データ入りのベアドライブを何台も保有している人であれば、本機をリビングルームに常備しておいて、自室で録画した動画ファイルを持ち運んで鑑賞するという、iVDRのような用途に使えそうだ。リモコンが付属しており、離れた所からの操作に対応できるのも、リビングルーム向きだろう。
□製品情報
http://usb.brando.com/sata-hdd-multimedia-dock-ii-hdmi-_p00979c032d15.html
●手のひらサイズのアダプタ型メディアプレーヤー
最後に紹介するのは「SATA HDD Multi-Media Player Adapter」だ。いずれもクレードル型だったこれまでの2製品と異なり、この製品の見た目は強烈だ。というのも、USB Hub程度のコンパクトな筐体の中にメディアプレーヤーとしての機能を内蔵しており、ベアドライブにアダプタのように接続するだけで使えるからだ。価格は69ドル、日本円でおよそ7,000円前後ということになる。
先の「SATA HDD Multimedia Dock II」と同じメーカーの製品なので、メディアプレーヤーとしての機能や対応フォーマットはほぼ同一で、リモコンについても同一形状のものが同梱されている。TVへの出力にHDMIを用いる点も変わらない。
もっとも、アダプタ型のため、クレードル型の製品に比べると使い勝手は大きく異なる。そもそもSATAコネクタはIDEコネクタなどと比べると抜き差しが容易であり、それほど力を加えなくても引っ張ると簡単に抜けてしまう。そのため、ベアドライブに接続した状態で持ち上げようとすると、ケーブルに引っ張られてSATAコネクタが簡単に抜け落ちてしまうのだ。
SATAコネクタと電源コネクタが一体化しているため、SATAコネクタが抜け落ちると電源も強制切断されるという、なんとも心臓に悪い仕様になっている。少なくともデータの読み取り中に手を触れることは厳禁だ。小型軽量化もここまで来ると考えものだ。
また本機は、SDカードスロットを装備し、オリジナルの機能としてUSBデバイスポートを備えている。そのため、外付HDDに保存した動画などのデータを、本製品を介してTVに出力することができる。メディアプレーヤーとしての基本機能が貧弱なことが惜しまれるが、コンセプトそのものは面白い。
個人的には、小型軽量であることを生かし、いらなくなった液晶ディスプレイと組み合わせての、デジタルフォトフレーム的な用途で使うのが面白いと思う。ベアドライブ、SDカード、USBマスストレージのいずれも利用できるのがよい。あとは約7,000円前後という価格をどう見るかだろう。なお、今回試用した製品はベアドライブとの相性の問題か、そこからの映像再生が正常にできなかったことを付記しておく。
□製品情報
http://usb.brando.com/sata-hdd-multi-media-player-adapter_p00958c032d015.html
●国内製品にない「とんがった機能」を海外に求める
家電製品が進化する過程においては、「全ての機能が詰め込まれたオールインワン化」と「シンプルで使いやすい単機能化」という2つの方向性が複雑に絡み合うことが多い。特に前者においては、そこにメーカー間の競争が加わることにより、ひたすら機能を詰め込まれる形になりがちだ。
中でも国内市場におけるメディアプレーヤーはその傾向が顕著だ。DLNAやDHCP-IP対応はもちろん、アクトビラ対応など日本ならではの独自機能や、これまた日本ならではの地デジ録画機能が盛り込まれ、DVDやNASのマルチメディアデータを再生できるだけだった一昔前に比べるとずいぶんと複雑化してしまった。筆者も一昔前のメディアプレーヤーを所有しているが、最近の製品はややこしくてよく分からないというのが正直なところだ。
今回紹介した3製品のうち、メディアプレーヤー機能を搭載した2製品は、ネットワーク接続に対応しないため、こうした複雑な機能は持たず、ベアドライブ内のデータを再生できるのみのシンプルな仕様になっている。対応フォーマットなどは国内の最新製品に見劣りする部分も多々あるが、価格と合わせての取捨選択すべき所だ。最初に紹介したスピーカー搭載クレードルは、意外な使い勝手に気づかせてくれた製品であり、いまでは筆者の環境にすっかり溶け込んでしまっている。
もちろん海外製品には、説明書やメニューが日本語をサポートしないという問題や購入時における送料など、ハードルはそれなりに高いのは事実。また、不具合発生時の自己解決能力(もしくはすっぱりあきらめる思い切りの良さ)も求められる。とはいえ、国内製品にない「とんがった機能」を試せることは、物欲さかんなPCユーザーにとって、一度味わうと逃れ難い魅力を秘めている。ネットによる個人輸入が容易になった現在、国内製品だけなく海外製品に目を向けてみるのも、PCライフの楽しみ方の1つだろう。
(2009年 10月 20日)
[Text by 山口 真弘]