買い物山脈
プライベートから原稿執筆まで幅広く使えるASUSの8.9型「TransBook T90Chi」
~アクティブペンを使えば手書き入力も快適
(2015/12/29 00:00)
ASUSのWindowsタブレット「TransBook T90Chi」(以下、T90Chi)は、8.9型ディスプレイを搭載した薄型軽量マシンで、キーボードも付属して3万円台という激安マシンだ。今回、さらにAmazon.co.jpで期間限定3,000円引きの2万円台で販売されていたことから思わず購入してしまった。
もともと、8型クラスのタブレットはずっと探していた。普段は通常のノートPCを持ち歩いているが、いかんせん1㎏以上あり、加えて普段はBluetoothキーボードとACアダプタも持ち歩いているため、とにかく重いしかさばる。これは仕事用なので仕方ないと諦められるのだが、問題はプライベートだ。
最近持ち歩いている小さなバッグは、8型程度のタブレットが入るようになっている。これに入れて持ち歩けるものとしてiPad miniのほか、Nexus 7やGalaxy Tab S 8.4といったAndroidタブレットも持ち歩いてみたが、コンテンツビューワとして以上の活躍はできなかった。プライベートとは言え、フリーランスライターなので不意に仕事が舞い込んでくることもある。だが、こうしたタブレットを持ち歩いて、ソフトウェアキーボードで仕事をしようとすると、「できなくはないが面倒くさい」というのが正直なところだ。
ではWindows PCならどうかと言うと、これまでのWindowsマシンは、タブレットとしては使いづらく、ちょっと前まで個人的に好みの8型クラスの端末が以前より減ってきており、あったとしても高かった。それがWindows 10の到来と、Microsoftのライセンス変更によって、再び8型Windowsタブレット市場が盛り上がってきており、筆者としてもうれしい限りだ。
本命マシンまでの繋ぎとして購入
そして今回購入したT90Chiはというと、Windows 8.1搭載モデルのマイナーバージョンアップながら、搭載するOfficeを無償のOffice Mobileに変更することでさらに価格を下げ、3万円台前半という低価格を実現している。
今回の購入には、もう1つ事情があった。普段仕事で使っているVAIO Duo 11は、バッテリがへたってきており、通常利用で1時間半ぐらいしか持たなくなってきた。特に無線LANを利用していると、1時間ちょっとぐらいだ。普段、記者会見などではPCでメモを取っているのだが、これだと1回の会見が精いっぱい。そのあと原稿を書こうと思ったら、どこかで電源を取りながら充電するしかない。
もちろん、バッテリ交換というのも1つの手段ではあったのだが、そろそろPCを新調すべき時期に来たと考えた。かといって新しいメインPCを買うには、ちょっと時期が悪い、というのが個人的な見立て。というのも、IntelのSkyplakeに合わせていろんなモバイルノートPCが出ると期待していたのだが、今のところいまいちベストな1台が見つからない。Surface Bookの登場で、OEMからもっと意欲的なマシンが出ることを期待して、もう少し待とうと思った。ということでもうしばらくメインはVAIOを使い、繋ぎ的にサブとして安いものを……と探していたところ、まさにベストなタイミングで現れたのがこのT90Chiだったわけだ。
というわけで、購入して試してみると、8.9型だが8型用のプライベートバッグにすっぽり収まった。T90Chiはキーボードが付属し、磁石で本体に装着できて、クラムシェルノートPCそのままの使い方ができる。ということで、プライベートでもキーボード付きWindows PCを持ち歩けるようになったのだ。
しかもタブレットなので、キーボードから取り外せば軽量。8型なのでそれほど苦にならない重さだし、閲覧用途であればキーボードなしでもほとんど問題にならない。まあ、タブレットとしてiPadやAndroidタブレットに比べて使いやすいかと言われると悩ましいところではあるが、特別使いにくいわけでもないので、及第点と言ったところだろう。
キーボードは、本体と同じサイズで、キーボードとしては小さめだ。特に両端のキーが小さくなっている。ただし、キートップは薄いものの、キーストロークは十分にあり、入力にそれほど苦労はなく、長文の入力も問題なく行なえる。もともと、BluetoothキーボードとしてThinkPadキーボードを使用しているが、必要ならばこれと組み合わせれば、さらに快適に入力できる。
というわけで、取材のメモ取りから記事執筆、プライベートで空いた時間に調べ物をする、原稿を書く、といった用途には全く問題がなく使えることが分かった。もちろん、SNSやブラウザを使った調べ物にももってこいだ。
用途・使い方によっては運用での工夫が必要
ただ、もともと期待はしていなかったものの、やはり残念なのが画像処理関係の性能。普段使っているPhotoshop CC、Lightroom CCは起動からして時間がかかる。特にOSが32bitであり、Lightroomはバージョン5までしかインストールできないため、バージョン6以降に搭載されたタッチ用インターフェイスが利用できないのだ。Adobe系のソフトは現実的ではなさそうだ。画像の閲覧は、標準のWindowsアプリやUWP(Universal Windows Platform)のPhotoshop Expressも快適に動作する。
問題点としては、Bluetoothが安定しないのか、たまにBluetoothマウスが瞬断する点と、まれにスリープから復帰しないことがあり電源長押しでの再起動が必要になるといった点。また、キーボードにトラックパッドなどがなく、画面タッチでしか操作できないため、タッチインターフェイスに最適化されていないデスクトップアプリで操作しづらい点、あるいは逆にキーボード操作を考慮されていないUWPアプリ、といった、T90Chiのせいばかりではない不満点もあると言えばある。
仕事で使う場合だと、インターフェイスがMicro USBとマイクロSDしかないのも気にはかかるところで、撮影した画像を取り込むのが難しい。デジカメの記録メディアをマイクロSD+SDカードアダプタにするのも手ではあるが、各社が無線LANデジカメ対応のUWP版アプリも出してくれないかと願っている。現時点では、Eyefiカードを使って無線LAN経由での転送でしのいでいる。
USBがMicroのみのため、一般的なUSB製品を使うには変換アダプタが必要になる。その反面、スマートフォンと同じケーブルでモバイルバッテリ経由での充電ができるというメリットがある。5V/2A出力対応のバッテリであれば問題なく充電できるようだ。今後主流になるUSB Type-Cだったら面白かったが、まあ、無理は言えない。
使ってみて分かったのは、キーボードに装着すると、一定以上向こう側にディスプレイが倒れないため、角度が付けづらい点や、画面下部にタッチしづらい。そこで、タスクバーを画面上部に移動させる工夫をしている。
と、そこそこ不満点もあるのだが、キーボードで快適に入力しつつ、WebサイトやTwitter、画像閲覧、動画再生などを手軽に切り替えて利用できる点は、Windowsのメリットだ。それでいて、軽量タブレットとしても使えるので、個人的にはiPadやAndroidタブレットを持ち歩く理由がなくなってしまった。
メモ取りや調べ物をしつつ、ずっと無線LANで通信を行なっていたところ、約9時間でバッテリ残量6%になった。おおむね10時間程度は利用できそうなので、バッテリ駆動時間は満足だ。いざとなればモバイルバッテリで充電できるというのも心強い。
一応、念のためにベンチマークテストも行なってみたが、特筆すべきところはないようだ。基本的に速度を求めるマシンではなく、iPad Proのように動画編集も快適にできる、というわけにはいかないようだ。
アクティブペンを使えば、手書きも快適に
iPad Proと言えばペン入力が大きな特徴の1つだが、このT90Chiも、やろうと思えばペン入力ができる。追加投資が必要となるが、いわゆるアクティブペンと呼ばれる市販のペンを使えばいい。一般的なスタイラスペンとは異なり、ペン先も細く、精度も高いので使い勝手がいい。今回は、デルが自社タブレット用に提供している「Venue Active Stylus」を購入してみた。
使ってみると、想像以上にいい。一部アプリでは筆圧感知も行なえ、細かい字も滑らかに書ける。PDFに手書き文字を書き込んだり、OneNoteに素早く手書きメモを取るといった用途にも問題なく使える。ボタンを押して右クリック、消しゴムツールとして利用するといった操作にも対応する。
ただし、マンガや絵を描くといった用途にはちょっと難しい印象で、プロの漫画家にも軽く触ってもらったが、慣れたソフトで、なおかつラフスケッチ程度なら一応は使えそうとのことだ。きちんと検証したわけではないが、パームリジェクションがもう少しいい具合に機能すればお絵かきにもそこそこ使えそうと感じている。とはいえ、やはりこの辺りはiPad Pro+Apple PencilやSurface Pro 4には適わないだろう。
T90Chiは、テキスト入力から画像閲覧、動画視聴、手書きメモまで、幅広い用途で使えることが分かった。それぞれの能力が際立っているわけではないが、我慢を要するほどでもなく、「なんにでも使えて、いつでも持ち歩ける」という目的にちゃんと応えてくれて、コストパフォーマンスの高さは抜群だと感じている。