西川和久の不定期コラム
ASUS「TransBook T90Chi」
~実売価格32,000円前後で8.9型2-in-1の決定版か!?
(2015/11/21 06:00)
ASUSは11月5日、キーボードが着脱できる8.9型2-in-1「TransBook T90Chi」を発表、7日から販売を開始した。ベースは今年(2015年)3月に発表した同モデルと変わらないが、OSをWindows 10 Homeに、OfficeをOffice Mobileに変更し、実売価格を32,000円前後と大幅にコストダウン。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。
HDMI出力が無いのは惜しいがBluetoothキーボード込みで3万円台前半
冒頭で触れたように、今回ご紹介する「TransBook T90Chi」は、今年の3月に発表されたモデルとハードウェア的には同じだ。違いはソフトウェア。元々OSはWindows 8.1 with Bing、OfficeはOffice Home and Business 2013。主にOfficeのコストが加わるため、価格は59,800円と、内容の割に割高であった。
余談になるが、これまで海外モデルも含め、国内販売する場合は、Officeのライセンス込みになるケースが多く、その分割高になっていた。しかしOffice 365や、10型までは無料のOffice Mobileなどの登場で、今では逆に入っていると、場合によっては二重のライセンスになる可能性もあり、個人的にはそろそろ外してもいいのではと思っている。
この「TransBook T90Chi」は、まさにその発想に則り、OSをWindows 10 Homeにした上で、Office Home and Business 2013を落とし、Office Mobileをプリインストール、大幅にコストダウンした魅力的なモデルだ。主な仕様は以下の通り。
【表】ASUS「TransBook T90Chi」の仕様 | |
---|---|
SoC | Atom Z3775(4コア4スレッド、クロック 1.46/2.39GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2W) |
メモリ | 2GB(LPDDR3-1066) |
ストレージ | eMMC 64GB |
OS | Windows 10 Home(32bit) |
グラフィックス | Intel HD Graphics |
ディスプレイ | 光沢タイプIPS式8.9型1,280×800ドット、10点タッチ対応 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | Micro USB、microSDカードスロット、音声入出力、カメラ(前面200万画素/背面500万画素)。キーボードドック側に充電用のMicro USB |
センサー | 加速度センサー、ジャイロスコープ、環境光センサー |
サイズ/重量(本体) | 241×137×7.5(幅×奥行き×高さ)/約400g |
サイズ/重量(ドッキング時) | 41×137×16.5mm(幅×奥行き×高さ)/約750g |
バッテリ駆動時間 | 約10.3時間(キーボードドックは約380時間) |
価格 | 32,000円前後 |
SoCは8型クラスのタブレットなどでお馴染みAtom Z3775。4コア4スレッドでクロックは1.46GHzから最大2.39GHz。キャッシュは2MBでSDPは2W。メモリはLPDDR3-1066の2GBを搭載。この関係からOSは32bit版のWindows 10 Homeとなっている。ストレージはeMMCの64GB。
グラフィックスはSoC内蔵のIntel HD Graphics。残念ながらHDMI出力が無く、本機唯一の弱点となる。ディスプレイは光沢ありの8.9型IPS式1,280×800ドット。10点タッチ対応だ。サイズ的にはフルHDが欲しいものの、コストとの兼ね合いだろう。ただそれでもデスクトップ環境の文字は標準だと結構小さい。
ネットワークはIEEE 802.11a/b/g/n。Bluetooth 4.0にも対応する。その他のインターフェイスは、Micro USB(充電用兼)、microSDカードスロット、音声入出力、カメラ(前面200万画素/背面500万画素)。また付属するBluetooth式のキーボードドック側にも充電用のMicro USBがある。センサーは、加速度センサー、ジャイロスコープ、環境光センサーを搭載している。
サイズは本体のみで241×137×7.5(幅×奥行き×高さ)、重量約400g。キーボードドック込みで241×137×16.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約750g。クラムシェル型のノートPCと考えても重量1kgを大幅に切り、ポータビリティは抜群だ。
バッテリ駆動は本体約10.3時間。Bluetooth式のキーボードドックは約380時間。どちらもそれなりの長時間運用に耐えられる。
そして価格は32,000円前後。正直この円安の中、このクオリティでこの価格は、儲けがあるのだろうかと心配するほどのハイコストパフォーマンスと言えよう。
筐体は、背面が少しブルーがかった非光沢のブラック。前面は左右が少しフチが広いものの綺麗にまとまっている。また厚みが7.5mmなので結構薄い。手持ちの機材で比較したところ、MADOSMAとほぼ同じ。実測で重量391gということもあり、持った時に軽くも重くも感じず、ちょうどいいバランスだ。
前面は、パネルの左上に200万画素カメラ。写真からも分かるように、少し珍しい8.9型なので片手で持つにはギリギリと言ったところ。またWindowsボタンは無い。背面は左上に500万画素カメラ。左側面にmicroSDカードスロット、下に音声入出力。その間のメッシュにスピーカー。右側面に充電用を兼ねたMicro USB。左側面同様スピーカー用のメッシュがある。上側面に音量±ボタンと電源ボタン、その横に電源LED。下側面には何も無い。付属のUSB式ACアダプタは、サイズ約40×40×25mm(幅×奥行き×高さ)、重量52gとコンパクト。出力は5V/2A。
ディスプレイは光沢ありの8.9型IPS式。視野角は十分広く、発色やコントラストもなかなか良い。明るさは、バックライト最小では暗いものの、25%なら低照度の室内であれば十分見ることができる。最大の100%は眩しいほどではないが、このクラスとしては明るい方だろう。また解像度1,280×800ドットは意外とこのサイズでも標準の状態では文字が小さい。もちろんタッチも問題無く反応する。
ノイズや振動は皆無。発熱は左側が若干暖かくなる程度だ。サウンドは、左右外向きにスピーカーがあるので、音が分散してしまうが、それでもこのクラスの割にパワーがある。またサイズ的に低音が出ないのは仕方ないものの、全体的に抜けの良い音質だ。
付属のBluetoothキーボードドックは、アイソレーションタイプで主要キーのキーピッチは約18mm。[Enter]キー周囲の一部ピッチが狭いものの、たわむこともなく、普通に入力ができる。筐体のクオリティもチープさが無く良好だ。ドッキング時の重量も実測で729gとかなり軽い。ドック部分に本体がカッチリ入り、少々振り回しても落ちてしまうことはない。
ただし接点が無く、ドッキングしたことを本体が認識できないので、Continuumは機能しない。逆にBluetooth接続なので、非ドッキング時でもキーボード入力ができるのが特徴だ。
唯一気になるのはデスクトップモード時にタスクバー上にあるアイコンをキーボードのフチが邪魔をし、かなり押しにくいこと。正直設計ミスでは? と思えるほどだ。キーボードショートカットを多用するユーザーであれば問題ないかも知れないが、一般的には結構辛く、マウスなどポインティングデバイスが別途必要となってしまう。
価格も安く、筐体などのクオリティもクラス以上、非常に満足度の高いマシンなだけに、この部分とHDMIが無い点が個人的には残念だ。
カメラは軽くテストしたものの、作例を掲載するほどの画質ではないため今回は省略した。後半に掲載したカメラアプリ「ASUS LifeCam」で、フレームを付けたり、フィルタをかけたりすることができる。デジタルズームは3倍まで対応。
Atom搭載タブレットとしては標準的な速度
OSは32bit版のWindows 10 Home。おそらく先日リリースされたTH2(Build 10586)に更新すれば、メモリ効率が上がり、更に動きは良くなると思われる。
初期起動時スタート画面(タブレットモード)は、標準に加え、Office Mobileの追加と、ASUS GIFXBOXやTripAdvisor、Flipboardなどがプリインストールされている。デスクトップは壁紙の変更のみと非常にシンプルだ。
ストレージは64GBのeMMC「Hynix HCG8e」が使われ、C:ドライブのみの1パーティションに約57.49GBが割り当てられ空きは45.7GB。Wi-FiはBroadcom製だ。また、付属のBluetoothキーボード「ASUS T90CHI DOKING」やセンサー類も見える。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリが「ASUS GIFTBOX」、「ゲームロフトのゲーム」、「ASUS LifeCam」、「TripAdvisor」、「Twitter」、「Excel Mobile」、「PowerPoint Mobile」、「Word Mobile」、「Flipboard」など。ASUS系以外は一般的なので特に説明の必要は無いだろう。ASUS系に関しては画面キャプチャを掲載したので参考にして欲しい。
デスクトップアプリは、ASUSフォルダに、お馴染みの「ASUS Camera Indicator」、「ASUS Install」、「ASUS Live Update」、「ASUS On-Screen Display」、「Chi Keyboard Power」、「Splendid Utility」、「WebStorage」、「WinFlash」。その他に「Evernote」、「i-フィルター6.0」、「マカフィーリブセーブ・インターネット」など。本機固有のアプリとしては「Chi Keyboard Power」となるだろうか。キーボードドックのバッテリ残量を確認できる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。
winsat formalの結果は、総合 3.8。プロセッサ 6.8、メモリ 5.5、グラフィックス 3.8、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.9。PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは1233。CrystalMarkは、ALU 29710、FPU 25124、MEM 17793、HDD 16623、GDI 5052、D2D 3331、OGL 3519。参考までにGoogle Octane 2.0は8,465(Edge)だった。Atom搭載機としては標準的(少し速め)と言ったところ。予想以上でも以下でもない。
BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果は、バッテリの残3%で43,048秒/12時間。何時もの5%で約11.7時間。いずれにしても仕様上の約10.3時間より長い。明るさ25%以上にすると少し落ちて、仕様の範囲に収まると思われる。
以上のようにASUS「TransBook T90Chi」は、Atomと8.9型IPS式1,280×800ドットのパネルを搭載したタブレットにBluetoothのキーボードドックが標準で付属する、ある意味2-in-1とも呼べるマシンだ。価格の割にチープな感じもまるでない。SoC的にパワーは期待できないものの、ライトな用途であれば十分使える環境だろう。バッテリ駆動時間も実測で10時間を超えた。
唯一HDMI出力がないのと、キーボードのフチが邪魔をしてタスクバー上のアイコンがかなり押しにくいのは気になる部分であるが、それでも3万円台前半の価格は、非常にコストパフォーマンスが高い。約8型のタブレットを2-in-1的に安価に揃えたいユーザーにお勧めできる逸品と言えよう。