買い物山脈
ChromebookでLTEと指紋認証対応が魅力!「HP Chromebook x2 11」を購入してみた
2022年1月24日 06:22
- 製品名 HP Chromebook x2 11 + USIペン(購入金額11万3,080円)
- 購入時期 2021年11月
- 使用期間 2カ月
低価格ながら充実した性能で人気のChromebook。筆者は以前にレビューした「Chromebook Detachable CM3」(以下CM3)を自分でも購入して愛用しているのだが、このたび新たに日本HPの「HP Chromebook x2 11」(以下x2)を導入することにした。
CM3は10型サイズで持ち運びやすく、Chromebookならではの高速起動に加えてフルブラウザが動作するため、筆者の業務の多くをこれ1台でこなすことができる。そのため外出時のサブマシンとしては十分に満足していたのだが、それでも新たにx2を購入した理由は、x2の「指紋認証」と「LTE対応」が魅力的だったからだ。
Chromebookのロック解除は、Googleアカウントのパスワードか、6桁のパスコードの入力が必要。机の上でキーボードから入力するのならそこまで不満はないのだが、移動中などタブレット的に操作したいときに文字入力でロックを解除するのは地味に面倒だ。
LTEについては、スマートフォンと連携することでChromebookからスマートフォンのテザリングをオンにする機能が用意されているのだが、接続までにやや時間がかかり、接続そのものに失敗することも少なくない。結局うまく接続できず手動でテザリングをオンにする……という手間がかかっていたのだが、LTE対応モデルならその手間も不要になる。
スペック的にもx2がSoCにSnapdragon 7cを採用しており、CM3のMT8183に比べてパフォーマンスの向上が期待できるほか、USB Type-Cポートも2ポート搭載するなど拡張性も高い。そのぶん価格も倍以上になるのだが、CM3の利用頻度を考えるとChromebookをより使いやすくなる投資対効果は大きいだろう、と判断してx2のLTE対応モデルを購入することにした。
海外での発表時から日本版が出たら購入しようと考えていたため、日本発売が発表された10月7日に予約フォームから申し込みを行ない、11月15日に販売開始の案内を受け取って即日に購入。本体のみの価格は9万9,000円だったが、利便性を考えてペン付属モデルを選択、送料を含む最終的な価格は11万3,080円だった。
購入翌日に正式受注の連絡が来るも、さらに翌日には製品欠品の案内が届き、さらにその翌日には納期確定のメールが来るというめまぐるしい日々が続き、11月25日にはようやく製品が手元に到着した。
なお、余談ながら購入時点で10万円近かった本製品だが、手元に届くとほぼ同じタイミングで本体価格が7万円台まで下がるキャンペーンが始まったのは精神的にこたえるものがあった。正式発売日が決まる前から事前予約を入れるほど熱意のあるユーザーが金額的に損をするというのはブランディング的にマイナスな施策ではないだろうか。少なくとも今後筆者は、HP製品を発売日に購入することはもうありえないだろう。
CM3とスペック比較。ディスプレイやメモリ、ストレージなど基本的にはx2が上
まずは10型クラスのキーボード着脱式2in1として人気の高いCM3と比較しながら、x2の使用感をレビューしたい。
ディスプレイはx2が11型で解像度は2,160×1.440ドット、CMが10.5型で解像度はWUXGA(1,920×1,200ドット)と、x2の方が大きさ、解像度ともに上。一方、本体サイズはx2が約252.5×176.6×7.55mm(幅×奥行き×高さ)、CM3が255.44×167.2×7.9mm(同)と、幅や厚みはx2の方が小型なものの、奥行きはx2の方が長いため、手にしたときの印象はx2の方が大きい。
重量はx2の本体が約560g、キーボードとキックスタンド装着時が約1.03kgとわずかながら1kgを超える。CM3は本体重量が約506g、キーボードとキックスタンド装着時が915gと、すべて装着すると100g弱の違いがある。
実際に手にしてみると、CM3は軽くて持ち運びやすい重量だったが、x2は手に取った時にずっしりとした手応えがある。本体サイズはほとんど変わらないため、鞄への収納しやすさはほとんど変わらないのだが、外出時に持ち歩く気軽な端末、としては数字以上に重さを感じる。
性能については前述の通り、x2のSoCがSnapdragon 7c、CM3がMediaTek MT8183で、スペックではx2が上。メモリはx2のLTEモデルが8GB、CM3が4GBとx2の方が大きく、ストレージはどちらも128GB。通信面では無線LANがともにWi-Fi 5だが、Bluetoothaはx2が5.0、CM3は4.2という違いがある。
アウトカメラはどちらも約800万画素だが、インカメラはCM3が約192万画素に対してx2は約500万画素と、Web会議などインカメラを活用する場合はx2が便利。
また、USB Type-CポートもCM3は1ポートに対してx2は2ポートのため、充電中ももう1つのUSB Type-Cポートが使える。外部ストレージ非対応のCM3に対し、x2はmicroSDカードスロットに対応している点も大きな違いだ。
CM3がスペック面で上回る点も。価格は倍以上の違い
基本的にはCM3の上位的存在と言えるx2だが、細かな面ではCM3が勝っている点もある。その1つがオーディオジャックで、CM3が搭載するヘッドフォン/マイクコンボジャックは、x2は搭載していない。
ワイヤレスイヤフォンやUSB Type-C変換アダプタなどを使う手はあるが、ワイヤレスイヤフォンはバッテリ切れの心配があるし、アダプタは取り回しが煩わしいため、個人的にはオーディオジャックがないのは地味に不便だ。
消費電力はどちらも最大45Wだが、30W出力のモバイルバッテリでも充電は可能。バッテリ駆動時間はx2が最大11時間、CM3が公称約12時間となっているが、詳細は後述するものの、x2の実利用時間はCM3よりも短めだ。
CM3とx2のどちらもペンに対応するが、CM3はペンが付属かつ本体に収納できるのに対し、x2はペンが別売かつマグネットで側面に装着する仕様になっている。マグネットは強力で軽く触った程度で取れることはないが、外出時に携行する際の保管方法は注意が必要だ。
最大の違いは価格で、発売時は5万円近かったCM3も最近では3万円を切る価格で売られていることも多い。一方、x2は新製品でありプロセッサや指紋認証、LTEなど付加要素も多いため、発売時は9万9,000円とほぼ10万円。冒頭で説明したキャンペーンにより、現在は7万7,700円まで値下げされたが、それでも2倍以上の価格差だ。
スペック面ではプロセッサ性能と指紋認証、LTE対応に加えて、USB Type-Cが2ポート、インカメラが高性能というのがx2のメリット。一方で本体重量はCM3よりも重く、ペンを内蔵できない、ヘッドフォン/マイクコンボジャックの有無という違いもあるため、必ずしもx2がすべての面で上回るわけではない。
HP Chromebook x2 11(セルラーモデル) | ASUS Chromebook Detachable CM3 | |
---|---|---|
プロセッサ | Qualcomm Snapdragon 7c | MediaTek MT8183(2GHzオクタコア) |
メモリ | 8GB | 4GB |
ストレージ | 128GB | 64GB/128GB |
ディスプレイ | 11型IPS液晶 | 10.5型液晶 |
解像度 | 2,160×1,440ドット | 1,920×1,200ドット |
無線LAN | Wi-Fi 5 | Wi-Fi 5 |
Bluetooth | 5.0 | 4.2 |
LTE | Snapdragon X15 4G LTE モデム | × |
背面カメラ | 約800万画素 | 800万画素(オートフォーカス) |
前面カメラ | 約500万画素 | 192万画素 |
USB | 3.0 Type-C (充電&ディスプレイ出力)×2 | 2.0 Type-C (充電&ディスプレイ出力) |
指紋認証 | ○ | × |
外部ストレージ | microSDカードスロット | × |
オーディオジャック | × | ヘッドフォン/マイクコンボジャック |
バッテリ | 最大11時間 | 約12時間 |
電源 | 45W | 45W |
ペン | 別売(4,096筆圧検知) | 内蔵(4,096筆圧検知) |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 約252.5×176.6×7.55mm | 255.44×167.2×7.9mm |
本体重量 | 約560g | 約506g |
キーボード装着時重量 | 約1,030g | 915g |
指紋認証は期待通りの使いやすさ。キーボードも大きく打ちやすい
ここからはx2の使い勝手を中心にレビューする。
一番の魅力だった指紋認証は期待通りの快適さ。パスコードを6文字入力して決定するという動作に比べて、本体上部のセンサーに触れるだけでロックを解除できる手軽さは一度慣れてしまうと離れられない。
セキュリティのため数日に1回くらいの頻度でGoogleアカウントでのログインが求められるものの、一度でもロック解除すればその日に再度求められることはない。また、この動作は指紋認証対応のAndroidスマートフォンでも変わらないので、さほど不便には思っていない。
キーボードはMicrosoftのSurfaceシリーズと似たデザインで、ディスプレイ側から見た時は、一見してSurface Goと見分けがつかないほどだ。キックスタンドも160度近くまで倒せて自由度が高く、ペンのマグネット装着も含めて「Surface GoのChromebook版」という雰囲気がある。
キーボードの打鍵感はやや固めでパチパチと音がするため、静かな環境ではタイプ音が目立つ。キーピッチ自体は十分に広く、10型クラスの端末に慣れている筆者としては十分快適に文字入力が可能だった。
配列はCM3と似ているが、大きな違いは最上段のショートカットキーで、CM3では「戻る」「進む」が配されていたのに対してx2では「進む」がなくなり、代わりに画面キャプチャボタンが搭載された。筆者は業務上Webサイトのスクリーンショットを撮って送ることが多いため、このボタン変更は個人的にはとてもありがたい仕様変更だ。
なお、最上段のショートカットキーは検索キーと組み合わせることでファンクションキーとして利用できるのがChromebookの基本的な仕様なのだが、x2はなぜか検索キーではなくShiftキーを同時に押すことでファンクションキーとして動作するようになっている。ファンクションキーを多用するユーザーは気をつけておきたいポイントだ。
スペック向上は期待以上に快適。LTEは便利ながら接続にやや手間
ベンチマークはGoogle Octane 2.0とGeekBench 5で測定。搭載しているSoC性能が違うので当然ではあるものの、x2の方が圧倒的に高い測定結果となった。
HP Chromebook x2 11(セルラーモデル) | ASUS Chromebook Detachable CM3 | |
---|---|---|
Google Octane 2.0 | 23,073 | 8,931 |
GeekBench 5 Single-Core | 597 | 289 |
GeekBench 5 Multi-Core | 1,683 | 1,367 |
実際の操作感もCM3よりはワンランク上。CM3はモバイル用途と割り切っていたので動作が多少重くても気にしなかったのだが、CM3よりも圧倒的にキビキビと動作し、Webサイトの読み込み速度も普段使っているCore i 7のWindowsとほぼ遜色ない。むしろ起動スピードの速さを考えるとx2の方がPCよりも効率が良いと感じるほどだ。
LTEの対応バンドはWebサイトに記載がないものの、手持ちのahamo(ドコモ)、povo 2.0(au)、ソフトバンクの3回線は問題なく動作した。ただし、接続については先にWi-Fiから接続を試し、接続できるWi-Fiが見つからないときにLTEへ接続するという動作のため、ロック解除してからLTEに接続するまで数十秒近く待たされることもある。そのため周囲に接続できるWi-Fiがないと分かっているときは手動でLTEに接続した方が速い。
常にLTEに接続しているスマートフォンやタブレットに比べるとやや手間ではあるものの、必要なときだけ開くChromebookでは常時接続しているメリットはそこまで大きくなく、LTE接続時はバッテリを消費することを考えると動作としては十分だ。
残念なのはChromebookがまだテザリング機能を搭載していないこと。SIMは月額990円で、時間制で容量が無制限になるオプションが利用できるソフトバンクの「データ通信専用3GBプラン」を設定しているのだが、無制限のオプションをオンにしても、x2がテザリング機能を持たないためにスマートフォンなどほかの端末で活用することができない。x2というよりChromebookそのものの仕様でもあるのだが、Chromebookをさらに活用するためにもテザリングの対応にも期待したい。
スリープ時でもバッテリの減りが速いx2
バッテリに関しては公称で最大11時間となっており、Wi-Fiに接続した状態でディスプレイの輝度を半分にしてYouTubeを連続再生したところ、10時間程度でバッテリが空になった。連続駆動時間ではほぼ公称通りの数値だ。
ただ、実際に使っている感覚からするとバッテリの減りは想像以上に速い。スリープしておけばほとんどバッテリが減らない感覚だったCM3に比べ、x2は満充電の状態で放置しておいた状態からスリープを解除するとバッテリがかなり減っている、ということが多々あった。
スリープ状態のバッテリ状態を比較するため、満充電のCM3とx2をスリープ状態で放置したところ、4日ほど放置した時点での残バッテリ量はCM3が79%だったのに対し、x2は50%と半減。さらに2日ほど置くと、CM3の67%に対してx2は19%と大きな差がついた。あまり充電しなくてもすぐに使える手軽さがChromebookの魅力だっただけに、x2のバッテリ持ちは少々残念だ。
別売ながら使いやすいペン。カメラはメモリ用程度には十分
ペン操作は別売のワイヤレスリチャージャブルUSIペンに対応。本体に収容することはできないが、側面にマグネットで装着することで充電することが可能だ。マグネットはかなり強力で、鞄の中でぶつからないようペンを上に向けて鞄に入れておけばほとんど外れることなく持ち運べている。
4,096筆圧感知に対応しており書き心地は十分で、文字やイラストもなめらかに書ける。また、ドラッグなど指で難しい細かな作業もペンなら操作しやすいのもうれしい。欲を言えば本体ボタンでアプリを呼び出せる機能などがあればよかったが、画面下にはペン関連の機能をまとめて呼び出せるショートカットが用意されているので、さほど不満は感じていない。
カメラはインカメラの方が高画質ということもあってか、アプリを立ち上げると必ずインカメラが起動する。500万画素は高画質というほどではないが、Web会議に使う分には十分な画質だ。Chrome拡張でZoomも動作するので、外出先でのWeb会議も問題なく利用できた。
アウトカメラは最新スマートフォンの画質にはおよぶべくもないが、スナップ撮影であれば十分。ただ、本体がかなり重いのでカメラとして持ち上げるのも負担がかかる。この製品をカメラ目的で買う人は少ないとは思うが、仕事などのメモ程度なら十分という品質だ。
バッテリ消費や重さは課題ながら指紋認証とLTE対応が魅力
指紋認証とLTE対応でChromebookとしての利便性は非常に高まり、SoCの性能向上も予想以上に作業の効率化に役立った。一方でCM3と比較した際の重量化やスリープ時のバッテリ消費は想定以上で、ちょっとした外出でも気軽に持っていく、という感覚はCM3ほどではなかった。
CM3と比較して倍以上の価格に見合うだけのパフォーマンスか、と言われると悩ましいところだが、Chromebookの利用率が高い筆者にとっては、重さやバッテリの減り以上に、指紋認証とLTE、SoC性能向上の方がメリットが大きいと感じている。
Chromebookをある程度使いこなした上で、筆者のように指紋認証やLTEに大きな魅力を感じるかどうかが、本製品の購入するかどうかの決め手になるだろう。