Hothotレビュー
日本HP「HP Pro Slate 8」
紙に書いた文字を取り込める機能を搭載したハイスペック8型タブレット
(2015/8/14 13:27)
「HP Pro Slate 8」は日本HPの法人向けAndroidタブレット。画面サイズによって2モデルが用意されており、HP Pro Slate 8は7.9型、HP Pro Slate 12は12.3型のディスプレイを搭載。ディスプレイの仕様やそれに伴う本体サイズ、重量といった以外の仕様はほぼ共通となる。同社の直販ストア価格はHP Pro Slate 8が69,800円、HP Pro Slate 12が79,800円(ともに税別)。
最大の特徴は、付属する「HPデュエットペン」。タブレットにスタイラスが同梱する製品はほかにもあるが、HPデュエットペンはタブレットの操作や入力だけでなく、Qualcommの技術を利用し、普通紙の上で書いた文字の筆跡をデジタル化してHP Pro Sateに取り込めるようになっている。
本体サイズは136.99×206.99×7.99mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約350gで、ディスプレイの解像度は4:3のQXGA(2,048×1,536ドット)。16:9比率のディスプレイが主流な中、4:3の本機はやや横幅が広い印象を受ける大きさで、両側を挟み込むようにして片手で持つのはぎりぎりのサイズ。350gという重量はややずっしりとした手応えを感じるものの、片手で持つ重さとしては許容範囲内といったところだ。
CPUはSnapdragon 800(2.3GHzクアッドコア)、メモリは2GB、ストレージは32GBのeMMC。本体底面に充電やデータ通信用のMicro USB、右側面上部に電源ボタンと音量ボタン、左側面にクレードル接続端子とmicroSDカードスロット、本体上部にイヤフォンジャックとインターフェイス周りはシンプルな作りだ。
カメラは前面にフルHD対応の200万画素、背面にオートフォーカスやHDR対応の800万画素を搭載。ワイヤレス面ではIEEE 802.11a/b/g/nの無線LAN、Bluetooth 4.0、GPSに加え、背面にはNFCを搭載するなど充実している。なお、WWANは非対応のためSIMカードスロットは備えていない。
ペンにもスタイラスにもなるHPデュエットペン。書き心地は快適
本製品最大の特徴であるHPデュエットペンは、タブレット操作用のスタイラスとしても、紙に書くためのボールペンとしても利用することが可能。ペンの先端は指で簡単に引き抜くことができ、両端を入れ替えることでスタイラスまたはボールペンとして利用できる。
ペンの側面には上下ボタンが搭載されており、スタイラスとして利用する際は下ボタンを押しながらタッチするとテキスト選択が、上ボタンを押しながらタッチすると画面の移動が可能。本体上部には充電用のMicro USBポートが搭載されている。
ペンの設定は本体設定アプリの「HP Duetペン」から可能。新しいペンのペアリングのほか、スタイラスで利用する際にペン先が画面に触れていなくても動きを認識するホバー機能、紙の上でのペンの動きを取り込む画面領域外での設定が可能だ。
紙で書いた文字やイラストなどをデータとして取り込みたいときは、専用アプリ「HP Notes」を起動し、新規ノートブック作成時に「ブックをキャプチャ」を選択。入力する際はタブレットと紙を同じ高さで水平に置く必要があるほか、タブレットの向きや位置も揃える必要がある。別売の「ペーパーフォリオ」は、HP Notesに最適化された位置で文字が入力できるため、紙からのデータ取り込みを活用する場合はこちらも購入しておくといいだろう。
実際に手で書いた文字やイラストはリアルタイムにアプリ上に反映され、精度も多少のずれは起きるものの実用上は問題ないレベル。スタイラスでのタッチ操作も十分に精度が高いのだが、やはりディスプレイの上に書くのと紙に書くのでは書き心地が違う。あくまで紙がメインで、データはバックアップという使い方であれば非常に便利に使えそうだ。
スタイラスでの入力も快適さは紙に劣るものの、精度に関しては紙で書いたデータを取り込むよりも上。画面上に直接入力していることもあって文字のズレなども小さく、入力内容の精度を求めるのであればスタイラス入力がお勧めだ。文字入力中に手をついて誤操作がないよう、画面下部から手を置くエリアも設置することができる。
手書き入力だけではなく、入力した文字をテキストに変換する機能も備えており、「書き込み」をタッチし、「タイプセット」をオンにした状態で文字を入力すると、入力直後にテキストへ自動で変換される。便利な機能ではあるものの、本機能は残念ながら日本語非対応で、かなや漢字は入力できない。アルファベットの認識精度は非常に高いだけに、日本語入力の対応も期待したいところだ。
ベンチマーク結果も優秀。バッテリは公称通りの14時間駆動
ベンチマークの測定は「Quadrant Professional Edition」、「AnTuTu Benchmark」、「MOBILE GPUMARK」の3アプリで実施。結果は良好で非常に高い成績を残した。実際の使用感もきびきびと動作しており、操作感で不満を持つことはないだろう。
【表】ベンチマーク結果 | |
---|---|
Quadrant Professional v2.1.1 | |
総合 | 23175 |
AnTuTu 5.7 | |
総合 | 39112 |
マルチタスク | 6399 |
Dalvik | 3822 |
整数演算 | 3138 |
浮動小数点演算 | 3117 |
Single-thread integer | 2590 |
Single-thread float-point | 2309 |
RAM演算能力 | 1626 |
RAM速度 | 1669 |
2Dグラフィックス | 1626 |
3Dグラフィックス | [2048x1536]10387 |
ストレージのI/O | 1744 |
データベースのI/O | 685 |
MOBILE GPUMARK Version 2 | |
総合 | 235604 |
搭載バッテリの容量は21Whrで、バッテリ駆動時間は動画再生時で約13時間45分を公称。無線LANをオン、Bluetoothをオフ、輝度を最低にした状態でフルHD動画を連続再生したところ、14時間20分でバッテリが空になった。バッテリ駆動時間はほぼ公称通りと考えてよさそうだ。
ケースやディスプレイ出力など周辺機器が充実
周辺機器が充実しているのもHP Pro Slate 8の魅力だ。同梱のHPデュエットペン、前述のペーパーフォリオのほか、落下や衝撃から本体を守るプロテクトケース、Micro USBポートからHDMIとVGAに変換する「HP Micro USB - HDMI/VGA アダプター」など多彩な周辺機器が用意されている。特にHDMIに加えてVGAでもディスプレイ出力できるアダプタは、ビジネス利用が多いユーザーにとって重宝する機能だろう。
プリインストールアプリはHP デュエットペン用のノートアプリ「HP Notes」のほか、VPNアプリ「KeyVPN」、リモートサポートアプリ「Rescue」、セキュリティアプリ「avast! Mobile Security」など、法人向け端末らしいアプリが用意されている。Office文書向けにもキングソフトの「WPS Office」が用意されているが、Office関連についてはマイクロソフトがWordやExcel、PowerPointなどのAndroidアプリを無料で提供しているため、そちらをインストールするのもいいだろう。
日本語についてはGoogle日本語入力がプリインストールされており、フリック入力を使いたい場合はGoogle日本語入力を選択するか、ATOKなどほかのIMEアプリをインストールすることもできる。
一方、エンターテインメント系アプリはほとんど入っておらず、カメラもAndroid標準のアプリで独自のカスタマイズなどはされていない。カメラは明るいところであれば綺麗に写るものの、室内だとかなり画像が荒れてしまう。とは言えメモ程度に使うのであればオートフォーカスが搭載されていることもあり十分に使えると感じた。
ペン入力の快適さが魅力なハイスペックAndroidタブレット
最大の特徴であるHPデュエットペンは、紙でメモを取りたい派も、タブレットに統一したい派も満足できる十分な性能。今までノートに書いたメモを写真で撮ってデータにしていた、なんて人であれば、HPデュエットペンで取るメモは非常に便利になるだろう。
スペックも非常に高く、キビキビと動作して使いやすい。機能面でもIEEE 802.11aのサポートやNFC搭載など充実しており、周辺機器も多彩だ。特にVGAアダプタは、オフィスのプロジェクタがHDMIに対応していないというケースにも対応できる柔軟性が嬉しい。
価格は法人向けということもあり7万近いと高額な部類には入るものの、それだけの価格に見合う性能と感じた。手書き機能に魅力を感じる、またはハイスペックなAndroidタブレットが必要というユーザーにはお勧めの1台だ。