Hothotレビュー
高機能アクティブスタイラス付きのASUS「ZenPad S 8.0」
~1,024段階筆圧対応ペンが利用でき性能も十分なAndroid 5.0タブレット
(2015/8/21 13:01)
ASUSは、Intel製CPUを搭載するAndroid 5.0タブレット「ZenPad」シリーズを発表した。ディスプレイサイズや通信機能などの違いにより、3機種4モデルをラインナップするが、今回はその中から、7.9型液晶を搭載し、1,024段階の筆圧検知に対応したアクティブスタイラスペンを備える「ZenPad S 8.0」を取り上げる。発売時期は8月下旬を予定しており、税別店頭予想価格は、Atom Z3580/メモリ4GB/eMMC 32GB搭載モデルが39,800円前後、Atom Z3560/メモリ2GB/eMMC 16GB搭載モデルが33,800円前後。
”Zen”シリーズらしくデザイン性の追求が特徴
「ZenPad S 8.0」は、2,048×1,536ドット表示対応の7.9型液晶を搭載するAndroid 5.0タブレットだ。ASUSのAndroidタブレットとしては、7型液晶や8型液晶を搭載し、比較的安価な価格で販売されている「MeMO Pad」シリーズがあるが、ZenPadシリーズはMeMO Padよりも上位に位置付けられた製品だ。
ASUSの”Zen”シリーズ製品は、性能だけでなくデザイン性にもこだわっているが、ZenPad S 8.0もそのコンセプトがしっかり受け継がれている。MeMO Padシリーズは、安価な価格の反面、デザイン性はシンプルで、やや安っぽいという印象もあった。
それに対しZenPad S 8.0は、「クラッチバッグデザイン」と呼ばれる、手にした時にバッグを閉じたように見えるデザインを採用。背面には交差状のヘアライン処理や、エッジ部分のダイヤモンドカット加工が施され、安っぽい印象は全くない。また、一部は樹脂が使われているが、その部分は皮のようなシボ加工が施され、しっとりとした感触で本体を手に持つ時の滑り止めの役目も果たしてくれる。
液晶面側のデザインは、特別特徴のあるものではないが、液晶左右側面部分はベゼル幅が比較的狭くなっており、液晶サイズほど大きいという印象は受けない。
本体サイズは、約134.5×203.2×6.6mm(幅×奥行き×高さ)。液晶のアスペクト比が4:3となっていることもあって、一般的な8型クラスの液晶を搭載するタブレットと比較すると、幅がやや広いのに対し、奥行きはやや短くなっている。面積的には一般的な8型クラスのタブレットとほぼ同等だ。厚みは6.6mmと、このクラスのAndroidタブレットとしては十分な薄さとなっており、カバンの中などへの収納性も優れる。
重量は、公称で約298gとなっており、実測では283.8gだった。十分に軽く、本体サイズや薄さと合わせ、携帯性は申し分ない。
アスペクト比4:3でフルHD超の7.9型液晶を搭載
液晶には、7.9型のIPS液晶を採用している。この液晶は、アスペクト比が4:3となっており、一般的なタブレットと比べて横の表示領域が広く、特に電子書籍はほぼ全画面にページが表示され、非常に読みやすい点が嬉しい。Webブラウザでは、アスペクト比16:9の液晶と比べた場合、縦画面で利用する場合には縦の情報量がやや減るものの、文字が大きく表示されるため見やすさは上と感じる。また、横画面表示時には逆に縦の情報量が増えることになる。
液晶の表示解像度は、2,048×1,536ドットと、フルHDを上回る高解像度となっている。そのため、細かな文字もクッキリ表示されるだけでなく、写真や動画も高品質な表示が可能となっている。実際にデジカメ写真を表示させてみても、細かな部分までクッキリと表示され、写真が持つ本来の質感ほぼそのままに閲覧が可能だった。パネルの種類がIPS方式で、広視野角な点も高品質な表示に繋がっている。液晶表面は光沢仕様のため、外光の映り込みはやや気になるが、発色は十分に鮮やかだ。
そして、もう1つの特徴となるのがASUS独自の「VisualMaster」テクノロジによる、表示映像の高品質化だ。ソフトウェアで表示映像を解析し、コントラストやシャープネスを自動調整したり、動画再生時には動画のブレを軽減するといった効果が得られるという。また、設定メニューでは表示カラーモードの変更や色温度の設定、色相や彩度の手動設定なども行なえるようになっている。ここまで液晶表示品質にこだわったタブレットはかなり珍しく、写真や動画を表示させる場合に大きな利点となるはずだ。
1,024段階の筆圧検知対応スタイラスペンが付属
ZenPadシリーズには、SIMロックフリーLTE機能を搭載する「ZenPad 8.0」が存在するが、ZenPad S 8.0ではモバイル通信機能は非搭載。その代わりに、オプションとして販売されている専用のスタイラスペン「Z Stylus」に対応している。
Z Stylusは、単6形乾電池を利用するアクティブ方式のスタイラスペンだ。1,024段階の筆圧検知に対応しており、なめらかなペン入力が可能となっている。実際に付属の手書きアプリを利用してペン入力を行なってみたが、ペンへの追従性は申し分なく、筆圧検知も合わせて非常に軽快なペン入力が可能だった。また、ペン入力だけでなく、通常のタッチ操作代わりとしても利用可能だ。
なお、Z Stylusは本体に収納はできない。ただ、ZenPad S 8.0専用ケース「Zen Clutch」はZ Stylusを収納できるようになっているので、ペンも一緒に持ち歩きたい場合には、Zen Clutchも同時に用意した方がいいだろう。
Zen Clutchは、クラッチバッグスタイルのZenPad S 8.0専用ケースだ、本体を装着し、2つ折りで液晶面をカバーし持ち歩ける。カバーは磁石を利用して背面スタンドとしても活用できる構造となっており、2段階の角度で本体を保持できる。映像を鑑賞する場合や、ペン入力時など、用途に応じて角度を付けて活用できる点は便利だ。また、ケース内部にはカードホルダが用意されている点も特徴の1つ。本体をスマートに持ち歩くグッズとして、Zen Clutchはお勧めだ。
スペックはZenFone 2に近い
ZenPad S 8.0のスペックは、搭載CPUや内蔵メモリ、内蔵ストレージ容量の異なる2モデルがラインナップされている。
上位モデルは、CPUにAtom Z3580(4コア4スレッド、2.33GHz)を搭載し、内蔵メモリは4GB、内蔵ストレージは32GBのeMMCとなるのに対し、下位モデルはCPUがAtom Z3560(4コア4スレッド、1.83GHz)、内蔵メモリが2GB、内蔵ストレージが16GBのeMMCとなる。OSはどちらもAndroid 5.0を採用。
ASUS製スマートフォン「ZenFone 2」でも、同様にCPUやメモリ容量、内蔵ストレージ容量の異なるモデルがラインナップされているが、ZenPad S 8.0もほぼ同等となっている。搭載液晶やモバイル通信機能の有無などもあり、全く同じというわけではないが、基本スペックはZenPad S 8.0とZenFone 2はかなり近いと言って良さそうだ。
上位モデルと下位モデルで、CPUやメモリ容量などに違いはあるが、そのほかの仕様は同等だ。搭載液晶は先ほど紹介したものと同じで、タッチパネルは10点マルチタッチ対応の静電容量タッチパネルを採用。もちろん、スタイラスペンのZ Stylusは上位/下位モデルとも対応。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANとBluetooth 4.1を標準搭載。センサー類は、GPS(GLONASS対応)、加速度センサー、光センサー、電子コンパス、磁気センサーを搭載する。
カメラ機能は、800万画素の背面カメラと、500万画素の前面カメラを搭載する。背面カメラにはf値2.0の明るいレンズを採用するとともに、ASUS独自の「Pixel Master」テクノロジにより、高感度かつ鮮やかな撮影を可能としている。
ZenPad S 8.0は、タブレットとして世界初となる、「DTS-HD Premium Sound」に対応している。Blu-rayビデオなどで採用されているサウンドコーデックDTS-HDを扱え、5.1チャンネルのバーチャルサラウンド再生が可能となっている。それに伴い、液晶面にステレオスピーカーが搭載され、本体のみでバーチャルサラウンド再生が可能。スピーカーの音質は、タブレットとしては十分に高音質で、包み込まれるようなサラウンドサウンドはかなり迫力がある。もちろん、ヘッドフォン装着時には、さらに迫力のあるサウンドが楽しめる。
外部接続ポートは、microSDカードスロットとヘッドフォン/マイク共用ジャック、USBポートを備える。このうちUSBポートはUSB 2.0対応ではあるが、USB Type-Cコネクタを採用している点が特徴。付属のUSBケーブルもType-C対応となっている。従来のMicro USB接続のケーブルや周辺機器は利用できないため、それらを使いたい場合には別途変換ケーブルが必要となる。なお、充電もこのUSB Type-Cコネクタから行なうが、付属のUSBケーブルを利用することで、付属のACアダプタだけでなく、汎用のUSB ACアダプタやモバイルバッテリも利用可能だ。
UIにはASUS独自の「ZenUI」を採用。ZenFoneシリーズで広く採用されているオリジナルUIで、基本的な使い勝手はZenFoneシリーズのZenUIと全く同じ。また、Android標準のUIと大きく変わるものではなく、戸惑う事なく利用可能だ。
動作は軽快で不満を感じる場面はない
今回検証に使用した機材は、CPUがAtom Z3580、メモリ容量が4GBとなっていたものの、内蔵ストレージが容量64GBのeMMCと、日本発売モデルとは異なる仕様だった。本体に技適マークは付いていたため、日本国内での利用自体に問題はないが、実際に販売されるモデルとは仕様が異なるため、ベンチマークテストは単体の結果のみを掲載する。利用したベンチマークソフトは、「AnTuTu Benchmark 5.7.1」と「PCMark for Android Benchmark 1.3.3083」、「3DMark 1.5.3263」の3種類だ。
AnTuTu Benchmark 5.7.1 | |
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総合 | 44644 |
UX Multitask | 5885 |
UX Dalvik | 4134 |
CPU (Multi thread) integer | 4172 |
CPU (Multi thread) float-point | 4216 |
CPU (Single thread) integer | 2111 |
CPU (Single thread) float-point | 2389 |
RAM Operation | 2615 |
RAM Speed | 3232 |
GPU 2D graphics | 1650 |
GPU 3D graphics(2048×1536) | 10959 |
IO Storage I/O | 2545 |
IO Database I/O | 730 |
PCMark for Android Benchmark 1.3.3083 | |
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Work performance score | 5877 |
Web browsing score | 5343 |
Video playback score | 4690 |
Writing score | 5364.7 |
Photo Editing score | 8877 |
3DMark 1.5.3263 | |
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Ice Storm Extreme | |
Ice Storm score | 8103 |
Graphics score | 8175 |
Physics score | 7858 |
Graphics test 1(FPS) | 52.1 |
Graphics test 2(FPS) | 27 |
Physics test(FPS) | 24.9 |
ベンチマークテストの結果はともかく、実際にZenPad S 8.0を使ってみた感覚は、操作中に動作が引っかかったり、アプリの起動が遅いといった印象は全くなく、十分に快適だった。Webアクセスや手書きアプリ、電子書籍アプリ、動画再生アプリなど、さまざまなアプリを使ってみたが、それらも動作の重さを感じる場面はなかった。そのため、基本的に性能面で不満を感じる場面はほぼないと考えていいだろう。
次に、バッテリ駆動時間を検証してみた。公称の駆動時間は約8時間(輝度100cd/平方m)で、720P動画を連続再生した場合)とされている。それに対し、輝度を50%に設定した状態でフルHDのMPEG-4動画を連続再生させた場合、約7時間38分の駆動を確認した。公称の駆動時間にはわずかに届いていないものの、実測でこれだけの駆動時間なら十分に満足できるはずだ。
性能と価格双方に妥協しないタブレットとしてお勧め
ZenPad S 8.0は、ASUSのAndroidタブレットの中で上位に位置付けられる製品だ。”Zen”は、性能だけでなくデザイン性にもこだわった製品のブランドとして、ノートPCからスマートフォンまで広く採用されている。もちろんこのZenPad S 8.0も、デザイン性が十分に優れるだけでなく、性能面も申し分なく、Zenシリーズの製品として納得できる完成度となっている。
税抜き予想販売価格は、内蔵ストレージ容量32GB搭載も上位モデルが39,800円前後、内蔵ストレージ容量16GB搭載の下位モデルが33,800円前後と、価格的にも十分に手頃。また、スタイラスペンのZ Stylusによる軽快なペン入力も、利便性を高める大きな魅力となるだろう。性能と価格双方に妥協せずに済むAndroidタブレットを探している人に、広くお勧めしたい製品だ。