Hothotレビュー

パナソニック「TOUGHPAD 4K UT-MB5」

~20型4K対応IPSα液晶のWindowsタブレット

パナソニック「TOUGHPAD 4K UT-MB5」の外観。タブレットとしてはかなり大きい
2月 発売

価格:オープンプライス

 パナソニックのPCといえば、軽くて頑丈でバッテリが長持ちする「Let'snote」シリーズが真っ先に思い浮かぶが、防水防塵仕様でより堅牢な法人向け製品「TOUGHBOOK」シリーズも、過酷な環境でのフィールド業務などで高い支持を得ている。そのTOUGHBOOKの流れを汲む、強靱なタブレットが「TOUGHPAD」シリーズである。

 TOUGHPADは、Windows 8または8.1搭載モデルのほか、Android搭載モデルも用意されているが、今回は、2014年2月発売予定の最新モデル「TOUGHPAD 4K UT-MB5」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部の仕上げや仕様、パフォーマンスなどが異なる可能性がある。

20型タブレットとして世界最薄最軽量を実現

 TOUGHPAD 4K UT-MB5(以下、TOUGHPAD 4K)は、その名が示すように、4K表示(実際は3,840×2,560ドットだが、一般に4K解像度と呼ばれることが多い)に対応した液晶パネルを採用した、Windowsタブレットだ。液晶サイズは20型であり、タブレットとしてはかなり大型である。本体の厚さは12.5mmと薄く、20型タブレットとして世界最薄となる。重量は約2.35kg(標準モデルの場合)で、こちらも20型タブレットとして世界最軽量である。10型前後の一般的なタブレットのように、気軽に持ち運べる大きさと重量ではないが、重量はA4スタンダードノートPC程度なので、スーツケースや大きめの鞄に入れて持ち歩くことは十分に可能だ。対面での営業や打ち合わせなどに持って行き、大画面を見せながらプレゼンするといった用途も考えられる。

 ボディカラーはシルバーだが、斜めに縞模様のテクスチャが入っており、表面は光沢のある透明層で覆われているので、質感はちょっと変わっている。背面の右側には、セキュリティケーブルフックが用意されており、ワイヤーケーブルなどを通して机などに固定しておけば、本体の盗難を防げる。フックは折りたたみ式になっており、使わないときは本体に収納できるので邪魔にならない。

 一般に液晶サイズが大きくなるほど、筐体も重くなるので、耐落下性能などは低下しやすいが、TOUGHPAD 4Kは、その名に恥じず、76cm落下試験(動作時/底面方向)と30cm落下試験(非動作時/26方向)をクリアしている。もちろん、落下に対して壊れないことを保証しているわけではないのだが、より安心して持ち歩ける。

TOUGHPAD 4Kの背面。斜めの縞模様テクスチャが目立つ
背面の右側には、盗難防止のためのセキュリティケーブルフックが用意されている。フックは折りたたみ式になっており、使わないときは収納できる
試用機の重量は、実測で2,323gであった

単体GPUのGeForce 745Mを搭載

 TOUGHPAD 4Kは、標準モデルとスマートカードリーダ対応モデルの2モデルが用意されている。両モデルは、スマートカードリーダの有無だけでなく、搭載メモリやSSDの容量が異なっており、スマートカードリーダ対応モデルが上位モデルとしての位置付けとなる。

 CPUは、Core i5-3437U(1.9GHz)であり、世代はIvy Bridge世代である。メモリは、標準モデルが4GB、スマートカードリーダ対応モデルが8GBで、ともに消費電力の低いDDR3Lを搭載している。単体GPUのGeForce 745M(ビデオメモリ2GB)を搭載していることも特筆できる。GPU非搭載のUltrabookやAtom搭載タブレットなどに比べて、描画能力が高く、4Kディスプレイも余裕で駆動できる。ストレージはmSATA対応のSSDを搭載しており、容量は標準モデルが128GB、スマートカードリーダ対応モデルが256GBである。OSは、Windows 8.1 Pro 64bit版が搭載されている。

 この冬は、8型Windowsタブレットが人気を集めているが、それらのタブレットと比べて、TOUGHPAD 4GのPCとしての基本性能は格段に高いといえる。

視野角の広い自社開発のIPSα液晶を採用

 TOUGHPAD 4Gの最大のウリは、4K表示対応の20型液晶を搭載していることだ。解像度は3,840×2,560ドットで、一度に表示可能な情報量はフルHD液晶(1,920×1,080ドット)の約4.7倍にもなる。精細度は230ppiで、iPad Retinaディスプレイの264ppiに迫る精細度である。この液晶は、自社開発(パナソニック液晶ディスプレイ)のIPSαと呼ばれるパネルで、表示色域がsRGBをフルカバーしており、発色が鮮やかなことも魅力だ。IPS液晶は、視野角が広いことも利点で、本体を机の上に置き、複数の方向から覗き込んでも見やすい。液晶上部には、720p対応Webカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

 搭載インターフェイスは、USB 3.0とSDカードスロット、ヘッドフォン出力と、必要最小限だが、Windows 8.1 Proに対応したUSB周辺機器なら基本的に利用可能である。

液晶は20型で、視野角の広いIPSα液晶を採用。解像度は3,840×2,560ドットである。sRGBをフルカバーしており、発色も鮮やかだ
液晶上部には、720p対応Webカメラが搭載されている
液晶下部にはWindowsボタンが用意されている
右側面には、USB 3.0とSDカードスロット、ヘッドフォン出力、ローテーションロックボタン、ボリュームダウンボタン、ボリュームアップボタン、電源ボタンが用意されている
右側面のボタン部分のアップ
右側面のインターフェイス部分のアップ
左側面には、アクセスインジケータなどが用意されている

オプションで高精度な電子タッチペンを利用できる

 TOUGHPAD 4Kは、液晶パネルを指でタッチして操作するだけでなく、オプションの電子タッチペンを利用することで、ペン操作にも対応する。

 この電子タッチペンは、「Anoto Live Pen」と呼ばれるアノトの技術を採用したもので、ペン自体にカメラとLED、CPUが搭載されていることが特徴だ。液晶表面に目に見えない微細なドットパターンを敷き詰め、それをペン内蔵カメラで読み取る仕組みなので、キャリブレーションが不要で、0.1mmという非常に高い精度を実現する。筆圧も2,048段階と、非常に細かく検出が可能だ。このペンは、中にリチウムイオン電池が入っており、USB経由で充電される。本体との通信はBluetooth経由で行なわれる仕組みだ。

 書き味は素晴らしく、素早く書いてもきちんと追従される。ペンはやや太いが、持ちにくくはない。ペン先は細く、細かな文字も書きやすい。サイドボタンも用意されており、消しゴム機能などに割り当てることが可能だ。

オプションの電子タッチペン。USB経由で内蔵リチウムイオン電池を充電できる
電子タッチペンのペン先部分。握る部分はやや太めだが、ペン先は細くなっているので、細かな文字も書きやすい
ペン尻に充電用のMicro USBポートが用意されている
ペンの中央部にELディスプレイがあり、充電状況や接続状況が表示される
【動画】電子タッチペンを利用しているところ。書き味は滑らかで快適だ。サイドボタンを押しながらタッチすることで、1ストロークずつ消していくこともできる

バッテリ駆動時間は約2時間と短い

 TOUGHPAD 4Kの公称バッテリ駆動時間は約2時間とかなり短めだが、サイズや重量的にも移動中に使うための製品ではないので、そう問題はないだろう。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、1時間55分という結果で、ほぼ公称通りの駆動時間であった。ACアダプタも、一般的なUltrabookに付属するものに比べると大きくて重いが、本体と合わせても3kgを切るので、部屋から部屋への移動などはそう苦にならない。

付属のACアダプタ。Ultrabookのもの比べるとやや大きい
ACアダプタの出力は、15.6V/7.05Aで110W仕様だ
ACアダプタの重量はケーブル込みの実測で554gであった

Core i7搭載Ultrabookよりも3D描画性能は高い

 TOUGHPAD 4Kは、単体GPUを搭載した4K対応20型タブレットであり、パフォーマンスが気になるところだ。そこで参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、レノボ・ジャパン「Miix 2 8」、ソニー「VAIO Tap 11」、「VAIO Pro 11」、パナソニック「Let'snote LX3」の値も掲載した。

 TOUAGHPAD 4KMiix 2 8VAIO Tap 11VAIO Pro 11Let'snote LX3
CPUCore i5-3437U (1.9GHz)Atom Z3740 (1.33GHz)Pentium 3560Y (1.2GHz)Core i5-4200U (1.6GHz)Core i7-4500U (1.8GHz)
ビデオチップGeForce 745MIntel HD GraphicsIntel HD GraphicsIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/AN/A
CPU Score88613730370978649379
Memory Score85362890376299788599
Graphics ScoreN/AN/A183421443302
HDD Score5601510202475325512256040
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score14651N/A56871288115540
Memories Score9312N/A481471068493
TV and Movie ScoreFailedN/AFailedFailedFailed
Gaming Score13007N/A5483702511030
Music Score16506N/A70921574418077
Communications Score15320N/A65461493417972
Productivity Score17557N/A85631620921503
HDD Score49944N/A482285078447907
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score13770456453711194414111
Memories Score92222816458169948104
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailedFailed
Gaming Score113813951458875549699
Music Score16189539468171496216543
Communications Score13996520259951350816043
Productivity Score16118379083361532519719
HDD Score5029210123491865115748117
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score41742476300640165310
Lightweight score29871402210248925789
Productivity score19891010150638354724
Entertainment score31631692193426453816
Creativity score66184460432383129986
Computation score702956284513997016901
System storage score54493792518353175491
Raw system storage score56841319488656796121
3DMark
Ice Storm3734116167155272731244155
Cloud Gate55091240170734614900
Fire Strike1232計測不可237469721
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1280×720ドット 最高品質3498448695未計測1580
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC)3593440716未計測1598
1280×720ドット 高品質(ノートPC)46007921031未計測1894
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)701511581445未計測3350
1280×720ドット 標準品質(ノートPC)699910671448未計測3279
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP10059.5399.999.97100
HP99.97100100100100
SP/LP99.9710010099.97100
LLP99.9799.97100100100
DP(CPU負荷)1531531242
HP(CPU負荷)82424634
SP/LP(CPU負荷)82616428
LLP(CPU負荷)2206327
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード515.0MB/s91.91MB/s487.2MB/s481.2MB/s513.8MB/s
シーケンシャルライト475.6MB/s36.76MB/s156.4MB/s139.3MB/s455.1MB/s
512Kランダムリード423.3MB/s86.19MB/s366.9MB/s419.4MB/s454.6MB/s
512Kランダムライト448.4MB/s32.79MB/s142.3MB/s140.7MB/s444.9MB/s
4Kランダムリード15.17MB/s12.57MB/s20.53MB/s33.36MB/s24.57MB/s
4Kランダムライト32.42MB/s5.095MB/s54.06MB/s99.30MB/s56.09MB/s
BBench
標準バッテリ1時間55分9時間43分6時間13分8時間5分19時間16分

 結果は上の表に示した通り、開発コードネームBay Trail-Tこと最新のAtom Z3740を搭載したMiix 2 8やCore iベースのYプロセッサを搭載したVAIO Tap 11に比べて、PCMark05のCPU Scoreは約2.4倍と高く、Haswell世代のCore i5を搭載したVAIO Pro 11をも上回っている。PCMark VantageやPCMark 7のスコアも高い。また、3D描画性能を計測する3DMarkでは、最も負荷の軽いIce Storm以外は、TOUGHPAD 4Kが最も高いスコアを記録している。FINAL FANTASY XIVベンチマークも、TOUGHPAD 4KがCore i7搭載のLet'snote LX3の2倍以上、Miix 2 8やVAIO Tap 11の6倍以上という優秀な結果となった。単体GPUを搭載していることが効いているのであろう。ストレージ性能も十分に高く、Windows 8.1の動作も非常に快適であった。

高精細液晶搭載PCを持ち歩ける唯一無二の製品

 TOUGHPAD 4Kは、20型Windowsタブレットとして世界最薄最軽量を実現しながら、フルHD解像度を遙かに超える4K表示に対応したことが魅力である。基本的に法人向けの製品であり、予想価格も45万円前後と決して安くはないが、高精細かつ大型液晶を活かして、動画などを使ったインタラクティブな電子カタログによるプレゼンや、CADの図面データを客先で見せたい場合などに威力を発揮する。電子カルテなどの医療分野や化粧シミュレーションなどの美容分野でも活躍するだろう。また、液晶ペンタブレットを使って絵を描いているという人にも、魅力的な製品であろう。本製品のコンセプトをそのまま、より小型軽量化した製品が出てくれば、欲しいという人は多そうだ。

(石井 英男)