~SSDでHDDを高速化するRapidDriveテクノロジー搭載 |
レノボ・ジャパンから登場した「IdeaPad Y570」は、15.6型ワイド液晶搭載ノートPCであり、2011年1月に発売されたIdeaPad Y560pの後継となる製品だ。現在発売中で、実売価格は11万円台半ばから14万円台前後となっている。
同社のノートPCは、「ThinkPad」、「IdeaPad」、「Lenovo G」の3シリーズに大別でき、IdeaPadシリーズは、エンターテイメント用途やAV機能を重視したコンシューマ向け製品である。IdeaPad Y570は、クアッドコアのCore i7-2630QMやGPUのGeForce GT 555Mを搭載するなど、充実した基本性能を誇りながら、実売14万円前後というコストパフォーマンスの高さが魅力だ。
●NVIDIA Optimusテクノロジーに対応IdeaPad Y570は、15.6型ワイド液晶を搭載しているため、本体のサイズは385×255×22~35.7mm(幅×奥行き×高さ)とやや大きめだ。重量は約2.7kgで、このクラスとしては標準的である。ボディカラーはダスクブラックと呼ばれるもので、漆黒ではなくやや茶色がかかっている。天板の表面に細かな凹みがあり、独特の模様が描いていることも特徴だ。ボディの作りや質感はよく、十分満足できる。
IdeaPad Y570は、コンシューマ向けノートPCとしては、基本性能が高いことがウリの1つだ。CPUとしてCore i7-2630QM(2GHz)を搭載し、メモリは4GB標準で実装している。Core i7-2630QMはクアッドコアで、Hyper-Threadingテクノロジーをサポートしているため、最大8スレッドの同時実行が可能だ。また、自動オーバークロック機能のTurbo Boostテクノロジーにより、最大2.90GHzまでクロックが向上する。HD映像のエンコードなど、CPUの負荷が高い作業も高速で処理できることが魅力だ。
なお、メモリは最大8GBまで増設可能だが、出荷時状態で、2基のSO-DIMMスロットが埋まっているので、メモリを増設する際には、標準で実装されている2GB SO-DIMMを外して、代わりに4GB SO-DIMMを装着する必要がある。
GPUとしてGeForce GT 555Mを搭載し、アプリケーションごとに単体GPUの有効/無効を自動的に切り替えるNVIDIA Optimusテクノロジーをサポートしていることも評価できる。
ストレージとして、750GBのHDDに加えて、64GBのSSDを搭載していることが特徴だ。SSDは、独立したドライブとして利用されるのではなく、HDDを高速化するための一種のキャッシュとして使われる。この技術をレノボは、「Lenovo RapidDrive SSD Technology」と呼んでおり、前モデルのIdeaPad Y560pにも搭載されていたが、IdeaPad Y560pでは、SSD容量は32GBであった。IdeaPad Y570では、容量が2倍になり、さらなる性能向上が期待できる。
光学ドライブとしては、Blu-ray Discドライブを搭載。市販のBlu-rayビデオタイトルの再生はもちろん、BD-R/REへの記録も可能だ。
右側面にトレイ式のBlu-ray Discドライブが搭載されている | デバイスマネージャのディスクドライブの項目には、東芝製SSD「TOSHIBA THNSNB064GMCJ」とWestern Digital製HDD「WDC WD7500BPVT-24HXZT1」と表示されている |
●音質に定評のあるJBL製スピーカーを搭載
液晶は15.6型ワイドで、解像度は1,366×768ドットという一般的な仕様だ。光沢(グレア)タイプなので、外光がやや映り込みやすいが、表示品位に不満はない。また、液晶上部には200万画素Webカメラとステレオマイクが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードは、テンキー付きの全106キーで、最近人気のアイソレーションタイプのキーを採用。「ほ」や「へ」など右側の一部のキーのピッチが多少狭くなっているが、もともと余裕のあるキー配置なので、違和感はほとんどない。キーストロークも十分あり、快適にタイピングが可能だ。
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載。マルチタッチ対応で、ジェスチャー操作も可能だ。パッドの表面には、細かな突起が設けられており、指との適度な摩擦を実現しており操作しやすい。ただし、左右クリックボタンが一体になっているのだが、個人的には左右のボタンが独立しているほうが、操作ミスが少ないので好みだ。
キーボード右上には、ミュートボタンや音量調整ボタン、One-Key Theatreボタン、サーマル・マネージメント・システム・ボタンなどが用意されているほか、キーボード左上には、One-Key Rescue Systemボタンが用意されている。One-Key Rescue Systemボタンを押すと、バックアップソフトの「OneKey Recovery 7.0」が起動し、バックアップやリカバリを行なえる。
サウンドにもこだわっており、キーボード上部に音質に定評のあるJBL製ステレオスピーカーを搭載するほか、臨場感のあるサウンドを実現する立体音響技術「SRS Premium Sound」を搭載している。
液晶は15.6型ワイドで、解像度は1,366×768ドットだ。光沢タイプの液晶なので、コントラストは高いが、外光がやや映り込みやすい | 液晶上部に200万画素Webカメラとステレオマイクを搭載 | キーボードは全106キーで、テンキーも装備している。アイソレーションタイプのキーを採用。配列は標準的だが、右側の「ほ」や「へ」などのキーのピッチが多少狭くなっている |
●USB 3.0やHDMI出力などインターフェイスも充実
インターフェイスも一通り備えており、USB 3.0×2、USB 2.0×2(1つはeSATA兼用)、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力、有線LAN(Gigabit Ethernet)などのほか、メモリカードスロットとして、SDメモリーカード/xD-ピクチャーカード/メモリースティック(PRO)対応の6in1メディア・カード・リーダーを搭載する。さらに、IEEE 802.11b/g/対応無線LAN機能とBluetooth v2.1+EDR、WiMAXを搭載するなど、ワイヤレス機能も充実している。
また、前面右に、ワイヤレス機能の有効/無効を切り替えるワイヤレススイッチと、単体GPU/CPU内蔵グラフィックスを切り替えるグラフィック切り替えスイッチが用意されているのも便利だ。
左側面には、アナログRGB出力、HDMI出力、有線LAN、USB 2.0/eSATA、USB 2.0、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている | 右側面には、Blu-ray DiscドライブとUSB 3.0×2が用意されている | 前面には、6in1メディア・カード・リーダーが用意されている |
6in1メディア・カード・リーダーのフタはダミーカード方式なので、フタを紛失する恐れがある | 前面右には、グラフィック切り替えスイッチ(銀色)とワイヤレススイッチ(黒色)が用意されている |
●「Lenovo Enhanced Experience 2.0」によりWindowsの起動が高速
バッテリは、一般的な円筒形リチウムイオン電池を採用。10.8V/62Whの6セル仕様で、公称約6.3時間の駆動が可能だ。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でWebサイトへのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、5時間34分という結果になった。モバイル用途を前提にした製品ではないが、かなり長時間の駆動が可能だ。ACアダプタのサイズは、このクラスの製品としては標準的である。
IdeaPad Y570は、Windowsの起動高速化技術「Lenovo Enhanced Experience 2.0 for Windows 7」を搭載していることも魅力の1つだ。SSDによるHDDの高速化技術とあわせ、Windowsの起動時間の短縮が期待できる。そこで、電源オフの状態からWindowsの起動が完了するまでの時間を計測したところ、約25秒だった。SSDモデルほどではないが、通常のHDDモデルに比べると十分に高速だといえよう。
IdeaPad Y570のバッテリ。一般的な円筒形リチウムイオン電池を採用 | バッテリは、10.8V/62Whの6セル仕様である | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
ACアダプタのサイズはこのクラスのノートPCとしては標準的だ | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●3Dゲームも遊べる3D描画性能を実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用として、ソニー「VAIO Z VPCZ21AJ」、ソニー「VAIO S(SA)」(VAIOオーナーメードモデル)、NEC「LaVie S LS550/ES」、富士通「LIFEBOOK SH76/C」の値も掲載した。なお、VAIO Z VPCZ21AJについては、Power Media Dock接続時と単体時の両方で計測を行なった。
【表】ベンチマーク結果IdeaPad Y570 | VAIO Z VPCZ21AJ (Power Media Dock接続時) | VAIO Z VPCZ21AJ | VAIO S(SA) (SPEEDモード) | VAIO S(SA) (STAMINAモード) | LaVie S LS550/ES | LIFEBOOK SH76/C | |
CPU | Core i7-2630QM (2.0GHZ) | Core i7-2620M (2.70GHz) | Core i7-2620M (2.70GHz) | Core i5-2540M (2.6GHz) | Core i5-2540M (2.60GHz) | Core i5-2410M (2.30GHz) | Core i5-2520M (2.50GHz) |
ビデオチップ | GeForce GT 555M | Radeon HD 6550M | Intel HD Graphics 3000 | Radeon HD 6630M | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 |
PCMark05 | |||||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A | N/A | N/A | 7584 |
CPU Score | 9268 | 9882 | 9869 | 9594 | 9608 | 7709 | 9211 |
Memory Score | 8964 | 9559 | 10547 | 10256 | 10255 | 8588 | 9846 |
Graphics Score | 8157 | 4594 | 4861 | 7608 | 5122 | 4580 | 5288 |
HDD Score | 17644 | 54455 | 51111 | 34742 | 33909 | 5616 | 5676 |
PCMark Vantage 64bit | |||||||
PCMark Score | 9886 | 11029 | 11089 | 10239 | 10019 | 5736 | 7188 |
Memories Score | 5337 | 7653 | 6599 | 6173 | 5483 | 4088 | 4263 |
TV and Movie Score | 5495 | 4969 | 5771 | 4767 | 4937 | 4271 | 4594 |
Gaming Score | 10114 | 13103 | 9942 | 10370 | 8027 | 4409 | 4864 |
Music Score | 10463 | 14642 | 15035 | 12876 | 12996 | 6394 | 6784 |
Communications Score | 8129 | 12599 | 12575 | 12045 | 12289 | 6305 | 9615 |
Productivity Score | 8125 | 8809 | 8769 | 8201 | 8134 | 3117 | 5241 |
HDD Score | 9964 | 28208 | 27473 | 17903 | 17649 | 3669 | 3593 |
PCMark Vantage 32bit | |||||||
PCMark Score | 9284 | 10196 | 10397 | 9921 | 9341 | 5317 | 6864 |
Memories Score | 5186 | 7278 | 6348 | 5943 | 5227 | 3902 | 4081 |
TV and Movie Score | 5442 | 4998 | 5778 | 4746 | 4900 | 4297 | 4509 |
Gaming Score | 8958 | 11197 | 8821 | 8602 | 7382 | 4121 | 4078 |
Music Score | 9545 | 13418 | 13927 | 12005 | 12193 | 5884 | 6308 |
Communications Score | 7469 | 12447 | 12279 | 11255 | 11212 | 6218 | 8840 |
Productivity Score | 7427 | 8041 | 7927 | 7797 | 7609 | 2901 | 4807 |
HDD Score | 9948 | 28058 | 27188 | 17788 | 17780 | 3662 | 3658 |
3DMark03 | |||||||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 23571 | 18859 | 11249 | 20441 | 11117 | 9325 | 11005 |
CPU Score | 1988 | 1268 | 1746 | 2573 | 1725 | 1533 | 1402 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||||
HIGH | 7706 | 5630 | 4014 | 7715 | 4009 | 3586 | 3850 |
LOW | 8791 | 8293 | 5898 | 10519 | 5766 | 5273 | 5568 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||||
DP | 99.97 | 100 | 100 | 99.97 | 99.97 | 100 | 100 |
HP | 99.97 | 100 | 100 | 99.97 | 100 | 100 | 100 |
SP/LP | 100 | 100 | 100 | 100 | 99.97 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 100 | 100 | 100 | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 8 | 25 | 12 | 12 | 12 | 14 | 13 |
HP(CPU負荷) | 8 | 11 | 7 | 5 | 6 | 8 | 6 |
SP/LP(CPU負荷) | 7 | 6 | 5 | 3 | 4 | 5 | 4 |
LLP(CPU負荷) | 6 | 4 | 4 | 3 | 3 | 4 | 3 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||||
シーケンシャルリード | 90.73MB/sec | 841.2MB/sec | 837.3MB/sec | 673.2MB/sec | 665.5MB/sec | 88.69MB/sec | 71.50MB/sec |
シーケンシャルライト | 86.12MB/sec | 278.3MB/sec | 311.5MB/sec | 652.6MB/sec | 644.2MB/sec | 89.30MB/sec | 72.73MB/sec |
512Kランダムリード | 36.70MB/sec | 603.6MB/sec | 599.4MB/sec | 431.1MB/sec | 418.7MB/sec | 35.77MB/sec | 36.46MB/sec |
512Kランダムライト | 49.21MB/sec | 309.7MB/sec | 307.8MB/sec | 636.1MB/sec | 644.6MB/sec | 55.99MB/sec | 63.73MB/sec |
4Kランダムリード | 0.504MB/sec | 19.67MB/sec | 19.47MB/sec | 13.95MB/sec | 13.89MB/sec | 0.456MB/sec | 0.558MB/sec |
4Kランダムライト | 1.320MB/sec | 45.66MB/sec | 45.75MB/sec | 31.67MB/sec | 31.64MB/sec | 0.847MB/sec | 1.149MB/sec |
BBench | |||||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 5時間34分 | N/A | 5時間43分 | 4時間9分 | 5時間52分 | 2時間10分 | 5時間57分 |
Lバッテリ | なし | N/A | 11時間12分 | 7時間38分 | 12時間4分 | なし | 未計測 |
PCMark05のCPU Scoreは、Core i7-2620MやCore i5-2540M搭載機に比べるとやや低いが、PCMark05のCPU Testでは最大4スレッドまでしか同時に走らせないため、8スレッドの同時実行が可能なCore i7-2630QMの真価がフルに発揮できず、クロックの高いデュアルコアCPUのほうが有利なためである。
PCMark05のGraphics Scoreは8157と、CPU内蔵グラフィックス機能を利用する製品はもちろん、Radeon HD 6550MやRadeon HD 6530Mを搭載した製品よりも高い。また、HDD Scoreにも注目したい。HDD Scoreは17644で、SSDをストレージとして搭載しているVAIO Z VPCZ21AJやVAIO S(SA)に比べると半分から3分の1程度だが、HDD搭載のLaVie S LS550/ESやLIFEBOOK SH76/Cに比べると3倍程度と高い。PCMark VantageのHDD Scoreも同様の結果であり、SSDをキャッシュとして利用するLenovo RapidDrive SSD Technologyの効果はかなり大きいようだ。
また、搭載されているGeForce GT 555Mは、NVIDIAのノートPC向けGPUの中でミドルレンジ上位に位置する製品であり、3D描画性能もかなり高い。そこで、「ストリートファイターIVベンチマーク」(1,280×720ドットで計測)と「バイオハザード5ベンチマーク」(1,280×720ドット、ベンチマークテストBで計測)を実行したところ、前者は131.24fps、比較的重めの後者でも56.5fpsという結果になった。いわゆるゲーミングノートPCではないものの、最近のゲームも十分に遊べるパフォーマンスを持っているといえる。
●基本性能が高く、さまざまな用途に使えるお買い得ノートPCIdeaPad Y570は、クアッドコアのCore i7およびSSDとHDDのハイブリッドストレージ、GeFroce GT 555Mを搭載しており、CPU性能、ストレージ性能、3D描画性能がバランスよく優れている。Blu-ray Discドライブや高音質スピーカーを搭載するなど、AV機能も充実しており、文書作成やインターネットの利用はもちろん、動画編集やゲームといった負荷の高い作業もまで、さまざまな用途に対応できることが魅力だ。コストパフォーマンスの高いノートPCとして、幅広い層にお勧めできる。
(2011年 7月 27日)
[Text by 石井 英男]