BRULE「Viliv S10 Blade」
~マルチタッチ対応10.1型コンバーチブルタブレットPC



Viliv S10 Blade

3月23日 受注開始



 BRULEが発表した「Viliv S10 Blade」は、マルチタッチ対応10.1型ワイド液晶を搭載したコンバーチブルタブレットPCであり、この種の製品としてはコンパクトで軽いことが魅力である。本体サイズは、260×185×17~26mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.2kgと、携帯性はモバイルノートPCの中でも優秀な部類に属する。このクラスのタブレットPCはもともと製品が少なく、マルチタッチ対応製品はさらに貴重だ。

 今回は、Viliv S10 Bladeを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは仕様や細部の仕上げ、パフォーマンスなどが異なる可能性がある。

●CPUとしてAtomを搭載

 Viliv S10 Bladeは、CPUやストレージ、搭載OSの違いによって、S10-60、S10-32、S10-64、S10-64-2の4モデルが用意されている。ただし、今回の試用機はCPUは最上位のS10-64-2と同じAtom Z550(2GHz)だが、ストレージはS10-32と同じ32GB SSDというやや変則的な仕様になっていた。また、搭載OSも、本来は日本語版Windows 7 Home Premiumが搭載されているのだが、試用機には英語版のWindows 7 Home Premiumが搭載されていたため、ベンチマーク結果などはあくまで参考としてほしい。

 天板は光沢のあるブラックで、指紋などはやや目立ちやすいが、質感は高い。最厚部でも26mmとスリムなので、カバンなどへの収まりもよい。

 Viliv S10 Bladeは、CPUとしてAtom Zシリーズを搭載しており、チップセットはグラフィックス統合型のIntel US15Wを採用する。メモリは、全モデルとも1GB固定で、増設はできない。最上位のS10-64-2のみ、Atom Z550(2GHz)を搭載するが、それ以外のモデルはAtom Z530(1.6GHz)を搭載する。

 ストレージとして、S10-60では1.8インチ60GB HDDが、S10-32では32GB SSD、S10-64およびS10-64-2では64GB SSDが搭載されている。SSDのメーカーを調べてみたところ、試作機にはSanDiskのネットブック向け製品「pSSD」が採用されていた。また、OSは、S10-60のみWindows XP Home Editionで、それ以外のモデルはWindows 7 Home Premiumとなる(OSは日本語版)。

Viliv S10 Bladeの天板。カラーはピアノのような光沢のあるブラックだ「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。10.1型ワイド液晶搭載モデルなので、S10のほうが一回り小さい
Viliv S10 Bladeの底面。底面の約半分をバッテリが占めているバッテリとその上にあるカバーを外したところ。左上の銀色部分がストレージだViliv S10 Bladeでは、ストレージとして60GB HDD/32GB SSD/64GB SSDが採用されている。今回の試用機には、32GB SSDが搭載されていた

●3点マルチタッチ対応液晶パネルを搭載

 液晶ディスプレイとして、10.1型ワイド液晶を搭載している。解像度は1,366×768ドットで、解像度的にも十分だ。前述したように、3点マルチタッチ対応の抵抗膜方式のタッチパネルが搭載されており、Windows 7のマルチタッチ機能を活用できることがウリだ。抵抗膜方式なので、指先や付属のスタイラスペンなどで操作が可能である。タッチパネルが表面にあるため、通常の液晶に比べると、ややコントラストが低く感じ、外光も多少映り込みやすいが、タッチパネル自体の操作性や精度は良好だ。

 また、液晶パネルのヒンジは2軸になっており、時計回りに180度回転させて液晶を折りたためば、キーボードが隠れたタブレットPCスタイルとなる。コンバーチブルタイプのタブレットPCの場合、液晶を回転させると、自動的に画面表示の向きが変わる製品も多いが、Viliv S10 Bladeでは、表示の向きは変わらないので、持ち換える必要がある。

 キーボードは英語配列で、キーピッチは約17mmである。キータッチはしっかりしており、キーボード中央を強く押しても、たわむようなことはなく、快適にタイピングが可能だ。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載。パッド自体の操作性は悪くないが、左右のクリックボタンが一体となっており、ボタンのストロークがかなり短くクリック感が乏しいことがやや気になった。

液晶は10.1型ワイド液晶で、解像度は1,366×768ドットだ。抵抗膜方式のタッチパネルが貼られているため、ややコントラストが低く感じる。タッチパネルは3点マルチタッチに対応する液晶上部に、Webカメラを搭載しており、ビデオチャットなどに利用できる
通常のノートPCスタイルで使っている状態液晶のヒンジは2軸になっており、時計回りに回転できる180度回転させた状態で、液晶を折りたためば、タブレットPCスタイルで使える
キーボードは全84キーで、配列は英語キーボード配列となっている。キーピッチは約17mmで、キータッチはしっかりしており、不等キーピッチもないので快適にタイピングが可能だポインティングデバイスとしてタッチパッドを採用。パッドの操作性は良好だが、左右のクリックボタンが一体となっており、クリック感に乏しいことがやや気になった

●インターフェイスは必要にして十分

 インターフェイスとしては、USB 2.0×2とmini USB、ヘッドフォン出力、ミニD-Sub15ピン、VGA/TV出力を備えており、必要にして十分といえる。

 mini USBポートは、周辺機器を繋げるためのものではなく、Viliv S10 Bladeを他のPCのストレージとして利用するためのポートである。付属のUSBケーブルを介して他のPCと接続することで、自動的に双方でファイル転送ユーティリティの「EasySuite」が起動する。EasySuiteでは、それぞれディレクトリ構造がツリー表示されるので、ドラッグ&ドロップで直感的な操作が可能だ。このファイル転送機能は、Vilivシリーズではお馴染みのものだが、本機をセカンドマシンとして使うにはなかなか便利な機能だ。メモリカードスロットとしては、前面にSDHCカードスロットが用意されている。

 ワイヤレス機能として、IEEE 802.11b/g対応無線LANとBluetooth 2.0+EDRをサポート。最新のIEEE 802.11nに対応していないのはやや残念だが、公衆無線LANサービスなどでは11gが主流であり、実用上は問題ないだろう。

左側面には、USB 2.0×2とmini USBが用意されている右側面には、ヘッドフォン出力とVGA/TV出力(別途専用ケーブルが必要)背面には、ミニD-Sub15ピンが用意されている
本機のmini USBポートと他のPCをUSBケーブルで接続することで、EasySuiteが起動し、ファイルの転送が可能前面には、SDカードスロット(SDHC対応)が用意されている
スタイラスペンは本体左側面に収納できる付属のスタイラスペンは2段伸縮式である

●実測で8時間以上のバッテリ駆動を実現

 今回の試作機のバッテリには、何も印字がなかったため、電圧や容量などの仕様は不明だが、薄さから考えてリチウムポリマー電池が使われている可能性が高い。Vilivシリーズは、バッテリ駆動時間が優秀な製品が多いが、本機も公称約10時間のバッテリ駆動が可能(動画再生時は最大約7時間)とされており、このクラスのモバイルノートPCとしてはトップクラスだ。

 実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、8時間5分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定し、バックライト輝度は中)。バッテリ駆動時間は非常に優秀だといえる。また、ACアダプタはACプラグ一体型で、比較的コンパクトで軽いため、携帯性は優れている。

バッテリは非常にスリムであり、リチウムポリマー電池の可能性が高いCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較
ACアダプタは、ACプラグと本体が一体化した小型のものが採用されているACアダプタを側面から見たところ
ACプラグ部分を取り外して交換できるようになっているCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●描画性能がネックだがWindows 7も実用的な速度で動く

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にソニー「VAIO X」、NEC「LaVie M」、日本HP「HP Mini 2140」の値も掲載した。

 結果は、同じような構成のVAIO Xに近いが、CPUクロックが高い分、PCMark05の総合スコアやCPUスコアは、Viliv S10 Bladeのほうが高くなっている。ただし、Atom Zシリーズ用チップセットのIntel US15Wは、内蔵グラフィックスコアの描画性能が低いため、グラフィックス系のスコアは、Intel 945GSEを搭載したHP Mini 2140には及ばない(もちろん、Core 2 Duo+Intel GS45のLaVie Mは、数倍の描画性能を誇るが)。

 その代わり、SSDを搭載しているので(VAIO XもSSD)、CrystalDiskMarkのランダムリード性能は、HDD搭載のLaVie Mよりも数倍高い。512Kランダムライトの性能が、リードに比べて大きく落ち込んでいるのが気になるが、VAIO Xも同じ傾向であり、ネットブック用の低価格SSDの特性のようだ。

 肝心の使用感だが、確かにウィンドウの描画などにややもたつきを感じることはあるが、全体的なレスポンスは決して悪くはなく、十分実用的である。メモリを2GB搭載できればさらに動作が軽くなると思われるが、Atom Zシリーズ+SSDという組み合わせは、スペックから想像するよりも、快適にWindows 7を利用できる。

□ベンチマーク結果

Viliv S10 BladeVAIO XLaVie MHP Mini 2140(1,366×768ドット液晶)
CPUAtom Z550(2GHz)Atom Z540(1.86GHz)Core 2 Duo SU2300(1.2GHz)Atom N270(1.6GHz)
ビデオチップIntel US15W内蔵コアIntel US15W内蔵コアIntel GS45内蔵コアIntel 945GSE内蔵コア
PCMark05
PCMarks1458124828261566
CPU Score1755158329661482
Memory Score2432242130662350
Graphics Score3072451397546
HDD Score4876352649485713
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)3673652048718
CPU Score214207495242
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH43443619951010
LOW76676613671386
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP29.4336.1776.4336.9
HP45.7385.599.9775.97
SP/LP51.7310099.9799.97
LLP54.510099.9799.97
DP(CPU負荷)67786868
HP(CPU負荷)50784268
SP/LP(CPU負荷)52592842
LLP(CPU負荷)36392232
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード59.24MB/s65.90MB/s60.31MB/s未計測
シーケンシャルライト42.16MB/s38.42MB/s66.25MB/s未計測
512Kランダムリード57.47MB/s63.23MB/s27.50MB/s未計測
512Kランダムライト2.365MB/s3.108MB/s31.19MB/s未計測
4Kランダムリード4.275MB/s4.135MB/s0.369MB/s未計測
4Kランダムライト1.433MB/s1.523MB/s0.984MB/s未計測
BBench
Sバッテリなし2時間57分未計測未計測
Lバッテリ(標準バッテリ)8時間7分6時間2分未計測未計測
Xバッテリなし12時間56分未計測未計測

●バッテリ駆動時間の長いタブレットPCが欲しい人にお勧め

 Vilivシリーズは、4.8型ワイド液晶搭載の超小型PC「Viliv S5」をはじめ、ユニークかつ完成度の高い製品が多いが、今回レビューしたViliv S10 Bladeも、マルチタッチ対応コンバーチブルタブレットPCとしてトップクラスの携帯性を誇る製品であり、オンリーワン的なマシンとしての魅力は大きい。

 なお、Viliv S10 Bladeの受注開始は3月23日の予定だが、発売を記念して、3月23日から4月2日まで特別割引キャンペーンが行なわれる。キャンペーン期間中に予約を行なうと、64GB SSDモデルが通常の8,000円引きになるだけでなく、予備バッテリが1本無料で付属してくるので、合計18,800円分もお得になる。S10-64の通常価格は89,800円だが、キャンペーン期間中なら81,800円になり、最上位のS10-64-2も、通常価格107,800円がキャンペーン期間中なら99,800円となる。ネットブックに比べれば価格は高いが、Windows 7のマルチタッチ機能をフルに活かせるコンバーチブルタブレットPCとしては、十分リーズナブルな価格といえる。従来のコンバーチブルタブレットPCは、重くてバッテリが持たない製品ばかりなので、軽くてバッテリが長持ちするコンバーチブルタブレットPCが欲しいという人に特にお勧めしたい。

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(2010年 3月 19日)

[Text by 石井 英男]