Hothotレビュー

GIGABYTE 「BRIX Pro」シリーズ

~Iris Pro内蔵CPUを搭載するBRIX最強モデル

GIGABYTEの超小型PCベアボーンキット「BRIX Pro」。サイズが114.4×111.4×62mm(幅×奥行き×高さ)と、従来よりかなり大きくなった
発売日未定

価格:未定

 インテルが発売する「NUC」シリーズとともに、超小型PCキットとして人気を集めている、GIGABYTEの「BRIX」シリーズ。2013年冬には、NUCシリーズともども、CPUにHaswellこと第4世代Coreプロセッサを搭載するモデルが追加され、ますます注目を集める存在となっている。そのBRIXシリーズの最上位モデルとして発表された新モデルが「BRIX Pro」だ。今回、BRIX Proを試用する機会を得たので、仕様や性能を紹介していこうと思う。ただし、今回試用したのは試作機で、搭載CPUなど製品版とは仕様が異なるため、その点はご了承願いたい。また、発売時期および価格も現時点では未定だ。

2.5インチドライブを収納できる新型ケースを採用

 BRIX Proを見てまず最初に気づくのは、ケースが大きくなったという点だ。これまでに発売されているBRIXシリーズでは、ケースのサイズが107.9×114.6×29.9mm(幅×奥行き×高さ)と、インテルより発売されている超小型PC自作キット「NUC」シリーズよりもコンパクトとなっていた。それに対しBRIX Proのケースは、サイズが114.4×111.4×62mm(同)と、特に高さが2倍以上に大きくなっている。インテルのNUCと並べても、かなり大きいことがわかる。

 これは、後ほど紹介するように、これまでNUCシリーズやBRIXシリーズに採用されていたCPUよりも、BRIX Pro搭載CPUは最大TDPが大きく増えており、マザーボードに搭載されるCPUクーラーがかなり大きくなっていることが要因の1つ。ケースを見ると、前方から右側面にかけて、大きなメッシュ状の吸気口が用意されるとともに、背面の排気口も従来より大型化しており、冷却にはかなり気をつかっていると感じる。

 そして、最も大きな要因は、ケース内に新たに2.5インチシャドウベイが用意されたことだ。ケース底面の蓋に、2.5インチドライブを1基装着可能となっている。これまでNUCやBRIX PROシリーズでは、内蔵ストレージとしてmSATA仕様のSSDの利用が基本で、2.5インチドライブの搭載は不可能だったが、BRIX ProではmSATA SSDに加えて汎用の2.5インチドライブが搭載可能となったことで、単体での大容量ストレージの確保も容易となった。また、HDDなど安価なストレージデバイスも利用可能で、コスト的なメリットもある。

 もちろん、ケースサイズが大きくなったといっても、一般的なPCに比べるとまだ十分にコンパクトだ。従来同様、液晶背面のVESAマウントに固定するためのマウンタも付属しており、設置場所の自由度は従来と大きく変わらないと考えていいだろう。

インテルのNUCキット「D54250WYK」(右)との比較。BRIX Proはフットプリントが114.4×111.4mm(幅×奥行き)とNUCよりもやや大きくなっている
高さも62mmと、NUCの2倍近くに高くなった
本体正面
左側面
背面
右側面
このように、前方右角付近にメッシュ状の大きな吸気口が用意されている
底面の蓋には、このように2.5インチドライブを装着し内蔵可能となっている
付属のマウンタを利用すれば、液晶背面などに取り付けて利用することも可能

マザーボード装着のCPUクーラーが大型化

 次に、内部を見ていこう。ケース内へのアクセスは、底面のネジを外して底面の蓋を外すことで可能となる。この蓋には、先ほど紹介したように、2.5インチSATAドライブを1基装着できるようになっており、2.5インチサイズのHDDやSSDなどを利用できるようになっている。マザーボードとの接続には付属する専用のケーブルを利用する。

 マザーボードには、メインメモリ用のSO-DIMMスロットが2本、2.5インチSATAドライブ接続用のSATAポート、フルサイズのmSATAスロットが1本、ハーフサイズのmini-PCIeスロットが1本用意される。このうち、ハーフサイズのmini-PCIeスロットには、標準でIEEE 802.11ac/a/b/g/nおよびBluetooth 4.0対応の通信モジュールが装着される。

 メインメモリは、最大16GBまで搭載可能。ただし、第4世代Coreプロセッサを搭載するNUCやBRIXと同様に、1.35V駆動に対応するDDR3L準拠のメモリモジュールの利用が必須となる。通常のDDR3 DIMMは搭載しても認識しないので注意したい。2.5インチドライブ用のSATAポートは、専用のコネクタを採用しているが、SATA 6Gbps対応なので、SSDの利用も問題ない。

 マザーボードを取り出し裏面側を見てみると、マザーボード全体を覆うほどの大きさのヒートシンクとブロアファンが取り付けられていることがわかる。従来のBRIXシリーズやNUCに採用されているものと比べると、圧倒的に大きい。BRIX Proに搭載される第4世代CoreプロセッサRシリーズは、最大TDPが65Wとかなり高く、それに対応するためにはこれだけ大型のヒートシンクとファンが必要だったというわけだ。

 BRIX Proシリーズに搭載されるCPUは、上位モデルの「GB-BXi7-4770R」が4コア8スレッド動作に対応するCore i7-4770R(3.2~3.9GHz)、下位モデルの「GB-BXi5-4570R」が4コア4スレッド動作に対応するCore i5-4570R(2.7~3.2GHz)となる。内蔵GPUは、双方ともIris Pro Graphics 5200となる。なお、今回試用した試作機では、CPUにCore i5-4670R(3.0~3.7GHz)と、製品版とは異なるCPUが搭載されていたが、こちらも内蔵GPUはIris Pro Graphics 5200と同じだ。チップセットは、Intel HM87 Expressを採用する。

 マザーボードに用意されている外部I/Oポートは、ケース前面側にUSB 3.0×2ポートとヘッドフォンジャック、ケース背面側にMini DisplayPort、HDMI、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2ポート、電源コネクタをそれぞれ用意する。USB 3.0が前面と背面にそれぞれ2ポートずつ用意されるなど、小型PCとしてはポートは充実していると言っていいだろう。

ケース底面の蓋を外した状態。メインメモリ用のSO-DIMMスロットが2本と、拡張スロットのフルサイズのmSATAスロット、ハーフサイズののmini-PCIeスロットが見える
メインメモリは、1.35V駆動に対応するDDR3L準拠のメモリモジュールの利用が必須。1.5V駆動のDDR3モジュールは利用できないので注意
mini-PCIeスロットには、標準で802.11ac/a/b/g/nおよびBluetooth 4.0対応の通信モジュールを装着
2.5インチドライブは、マザーボード上のSATAポートに接続。SATAポートは独自形状で、付属の専用ケーブルを利用して接続する
マザーボードを取り出した状態
マザーボード裏面側にCPUやチップセットを搭載。マザーボードほぼ全体を覆うような大型CPUクーラーが取り付けられている
ヒートシンク自体が大きいのに加え、冷却用ブロアーファンも大型のものを採用している
こちらはNUCキット「D54250WYK」のマザーボード、CPUクーラーのサイズがかなり小さい
BRIX Proは付属のACアダプタもかなり大きい
NUCキット「D54250WYK」のACアダプタ(下)と比べると、大きさの違いがよくわかるだろう
前面には、USB 3.0×2ポートとヘッドフォンジャックがある
背面に、Mini DisplayPort、HDMI、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2ポート、電源コネクタを配置している

3Dゲームを十分快適にプレイできる優れた3D描画能力を確認

 では、パフォーマンスをチェックしていこう。今回のテストでは、メインメモリ用として4GBのDDR3L-1600 SO-DIMMを2枚、ストレージとしてSamsungのSSD 840 Pro 256GBを用意し、Windows 8.1 Enterprise(64bit)をインストールしてテストを行なった。

 また、比較用として、CPUにCore i5-4250Uを搭載するインテルのNUCキット「D54250WYK」を用意し、同じ構成でテストした。D54250WYKには2.5インチドライブを内蔵できないが、今回は双方のテスト環境を揃えるために、底面の蓋を外した状態でマザーボードのSATA 6Gbps対応SATAポートにSSD 840 Proを接続し、別途ACアダプタを利用してSSDに電力を供給することでテストを行なった。詳しいテスト環境は、下にまとめた通りだ。

 テストに利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.1.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」の5種類。なお、先ほども紹介したように、今回のBRIX Pro試作機ではCPUにCore i5-4670Rが搭載されていたため、結果は参考値として見てもらいたい。

【表】テスト環境
BRIX Pro試作機D54250WYK
CPUCore i5-4670R(3~3.7GHz)Core i5-4250U(1.3~2.6GHz)
チップセットIntel HM87 ExpressIntel QS77 Express
メインメモリDDR3L-1600 4GB×2DDR3L-1600 4GB×2
内蔵GPUIris Pro graphics 5200HD Graphics 5000
ストレージSSD 840 Pro 256GBSSD 840 Pro 256GB
BRIX ProD54250WYK
CPUCore i5-4670R(3/3.7GHz)Core i5-4250U(1.3/2.6GHz)
チップセットIntel HM87 ExpressIntel QS77 Express
ビデオチップInte Iris Pro Graphics 5200Inte HD Graphics 5000
メモリPC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GBPC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB
ストレージSamsung SSD 840 Pro 256GBSamsung SSD 840 Pro 256GB
OSWindows 8.1 EnterpriseWindows 8.1 Enterprise
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score65234861
Lightweight score62865258
Productivity score55884091
Entertainment score54793579
Creativity score111599488
Computation score2008714843
System storage score55515555
Raw system storage score65266578
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/A
CPU Score139588255
Memory Score115687541
Graphics Score50503442
HDD Score6593265628
3DMark Professional Edition v1.1.0
Ice Storm9226546624
Graphics Score11935058571
Physics Score5142327204
Cloud Gate97484496
Graphics Score140315984
Physics Score47132405
Fire Strike1438680
Graphics Score1539739
Physics Score65343316
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 標準品質92713689
1,280×720ドット 高品質45681736
1,280×720ドット 最高品質44341693
1,920×1,080ドット 標準品質52751893
1,920×1,080ドット 高品質2064867
1,920×1,080ドット 最高品質2025862
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット76362871
1,920×1,080ドット41401477

 まず、PCMark7およびPCMark05の結果を見ると、ほぼ全ての結果でD54250WYKのスコアを上回っている。これは、BRIX Proの方がCPUの動作クロックが高いことに加え、CPUコア数が4コアとなっていることもあり、当然の結果と言える。BRIX Proの製品版で、上位モデルのGB-BXi7-4770Rでは、CPUに4コア8スレッドで動作クロックもさらに高いCore i7-4770Rを搭載するため、今回より優れた結果が得られるはずで、性能はさらに上回ると考えていいだろう。

 次に、3DMarkの結果だ。こちらは、先ほどのPCMark7やPCMark05よりもさらに大きな差となっており、ほぼ全ての項目でD54250WYKの2倍以上のスコアを記録している。Core i5-4670Rに統合されているGPUは「Iris Pro Graphics 5200」、対するD54250WYKのCore i5-4250Uに統合されているGPUは「Intel HD Graphics 5000」となる。どちらも実行ユニット数は40と同じだが、Iris Pro Graphics 5200は最大動作クロックが1.3GHzと、Intel HD Graphics 5000の1.1GHzよりも高く、さらにビデオメモリとして利用する高速なeDRAMも搭載されている。この違いが、3D描画能力にこれだけ大きな差をもたらしている。

 また、実際のゲームのベンチマークテスト2種類の結果も、同様に大きなスコア差を記録した。第4世代Coreプロセッサに内蔵されるGPUでは、3Dゲームは起動はできても、快適にプレイするには表示解像度を低くしたり、映像表現設定を落とすなどの工夫が不可欠だった。しかし、Iris Pro Graphics 5200であれば、そういった設定の変更はほぼ不要と言えるレベルだ。「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」のような世代の古い3Dゲームなら、フルHD解像度かつ最高画質で快適にプレイできると言える。「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」のような最新ゲームでは、さすがにフルHD解像度で表示品質を高めるとやや重くなるが、それでもプレイ不可能というレベルではない。

 もちろん、デスクトップ用のハイエンドGPUに比べると、描画能力は低いものの、それでもCPUに統合されているGPUとしては、非常に高い描画能力が発揮される。よほど高解像度かつ高画質を求めなければ、最新3Dゲームも十分快適にプレイ可能と考えていいだろう。

 ベンチマークテスト実行時などの高負荷時のCPUクーラー動作音は、かなり大きくなる。従来のBRIXシリーズやNUCシリーズでは、高負荷時にファンの風切り音は耳に届くものの、うるさいと感じるほどではなかった。それに対しBRIX Proはうるさいと感じるほどの動作音となる。加えて、高負荷時にはケース自体も比較的高温となる。このサイズに高TDPのCPUを搭載し、それを十分に冷却するには仕方のない部分かもしれないが、この点は少々気になった。それでも、低負荷時にはファンの動作音がほぼ聞こえなくなるので、通常利用時に動作音が気になることはないだろう。

現時点で最強の小型PC

 今回試用したBRIX試作機は、製品版と搭載CPUが異なるものの、それでもどの程度の性能が発揮されるのかを把握するには十分だろう。上位モデルのGB-BXi7-4770Rでは、この試作機よりもさらに優れた性能が得られるはず。また、下位モデルのGB-BXi5-4570Rでは、統合GPUは同じIris Pro Graphics 5200だが、GPUの動作クロックが最大1.15GHzと低くなるため、この試作機よりやや性能が下がるものと考えられる。それでも、3Dゲームをプレイするのに十分な描画能力を発揮するのは間違いないだろう。

 今回の検証から、BRIX Proシリーズはかなり優れた3D描画能力を実現しており、3Dゲームも快適にプレイできる超小型PCとして十分に活用できると言える。もちろん、ハイエンドゲーミングPCの描画能力にはかなわないが、それでも最新3DゲームをフルHD解像度で十分快適にプレイできるのは大きな魅力となるはずだ。超小型PCに優れた3D描画能力を求めるなら、現時点で最も魅力的な選択肢と言える。2.5インチドライブを搭載できる点も併せ、ビジネスからホビーまで、幅広い用途に柔軟に対応できる超小型PCとして、広くおすすめできる製品だ。

(平澤 寿康)