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あなたのデスクトップはこのノートに勝てる?Core Ultra 9 285HX搭載の「MSI Titan 18 HX AI」を試す

 Intelの「Core Ultra 200HX シリーズ」は、モバイル向け「Core Ultraシリーズ2」の中でもエンスージアスト用に位置づけられているCPUだ。

 今回、その最上位モデルである「Core Ultra 9 285HX」を搭載したハイエンドゲーミングノートをテストする機会が得られたので、その実力を最新デスクトップPCとの比較を通して確かめてみた。

エンスージアスト向けの最上位モバイルCPU「Core Ultra 9 285HX」

 Intel最新のエンスージアスト向けモバイルプロセッサ「Core Ultra 200HX シリーズ」(開発コードネーム:Arrow Lake-HX)は、デスクトップ向けに展開されている「Core Ultra 200S シリーズ」(Arrow Lake-S)をモバイル向けにチューニングしたかのようなプロセッサで、Lion Cove(Pコア)とSkymont(Eコア)を組み合わせたハイブリッドCPU、Xe-LPGベースのGPU、最大13TOPSの性能を有するNPUを搭載。

 また、最大20レーンのPCI Express Gen 5(PCIe 5.0)をサポートしており、ディスクリートGPU(dGPU)やSSDとの高速な接続を実現するなど、ハイエンドゲーミングノートの構築に好適な性能と機能を備えている。

 今回テストするCore Ultra 9 285HXは、24コアCPU(Pコア8基+Eコア16基)を備えるCore Ultra 200HX シリーズの最上位モデル。電力指標はPBP=55W、MTP=160Wと設定されている。

【表1】Core Ultra 9 285HXの主な仕様
モデルナンバーCore Ultra 9 285HXCore Ultra 9 285H
開発コードネームArrow Lake-HXArrow Lake-H
CPUアーキテクチャLion Cove+SkymontLion Cove+Skymont
製造プロセス(CPU)TSMC N3BTSMC N3B
Pコア数86
Eコア数168
LP-Eコア数02
CPUスレッド数2416
L3キャッシュ36MB24MB
ベースクロック
(Pコア/Eコア/LP-Eコア)
2.8GHz/2.1GHz/─GHz2.9GHz/2.7GHz/1.0GHz
最大ブーストクロック
(Pコア/Eコア/LP-Eコア)
5.5GHz/4.6GHz/─GHz5.4GHz/4.5GHz/2.5GHz
CPU内蔵GPU (iGPU)Intel GraphicsArc 140T
iGPUアーキテクチャXe-LPGXe-LPG+
iGPUコア数4基(Xeコア)8基(Xeコア)
iGPUクロック2GHz2.35GHz
NPUIntel AI Boost (NPU3)Intel AI Boost (NPU3)
NPUピーク性能13TOPS13TOPS
対応メモリDDR5-6400/2chLPDDR5X-8400/2ch、DDR5-6400/2ch
ThunderboltThunderbolt 4 (2基)Thunderbolt 4 (4基)
PCI Express20x PCIe 5.0+4x PCIe 4.08x PCIe 5.0 x8+20x PCIe 4.0
PBP55W45W
MTP160W115W
最小保証電力45W35W
TjMax105℃110℃
対応ソケットFCBGA2114FCBGA2049

Core Ultra 9 285HX搭載ハイエンドゲーミングノート「MSI Titan 18 HX AI」

 今回テストするのは、Core Ultra 9 285HXを搭載するMSIの18型ゲーミングノート「Titan 18 HX AI (A2XWJG-614US)」。dGPUとしてNVIDIA最新のハイエンドGPU「GeForce RTX 5090 Laptop GPU」を搭載した最新かつ最上級のハイエンドゲーミングノートだ。

 テスト機は英語キーボードを搭載した海外仕様で、18型のディスプレイには120Hz駆動とHDR1000に対応する4K+ミニLED液晶パネル(3,840×2,400ドット)を採用。DDR5-6400動作の64GBメモリ(32GB×2)や、2TBのPCIe 5.0 SSD×1台とPCIe 4.0 SSD×2台を組み合わせた6TBのシステムストレージなど、プロセッサ以外も最上級のハイエンド構成となっている。

Core Ultra 9 285HXを搭載する18型ゲーミングノート「MSI Titan 18 HX AI」
筐体のカラーリングは「コアブラック」
18型のミニLEDバックライト液晶パネルを採用。画面解像度は3,840×2,400ドットで、120Hz駆動やHDR1000に対応している
SteelSeriesのメカニカルキーボード(英語キー)を搭載。タッチパッドにはパームレストと段差のない「シームレスRGBハプティックタッチパッド」を採用している
本体サイズは404×307.5×32.05mmで、重量は約3.6kg
専用コネクタによる400W給電に対応したACアダプタが付属
【表2】MSI Titan 18 HX AI (A2XWJG-614US)の主な仕様
CPUCore Ultra 9 285HX (8Pコア+16Eコア/24スレッド)
dGPUGeForce RTX 5090 Laptop GPU (24GB)
メモリ64GB DDR5-6400 (32GB×2)
ストレージ6TB NVMe SSD (PCIe 5.0 2TB+PCIe 4.0 2TB×2)
ディスプレイ18型ディスプレイ (3,840×2,400ドット、120Hz)
有線LAN2.5GbE
無線機能Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
USBThunderbolt 5(2基)、USB 3.2 Gen 2 Type-A(3基)
そのほかのインターフェイスオーディオコンボジャック、SDカードリーダー、207万画素ウェブカメラ、HDMI
OSWindows 11 Pro
ACアダプタ400W
本体サイズ404×307.5×32.05mm
本体重量約3.6kg
Core Ultra 9 285HXのCPU-Z実行画面
GeForce RTX 5090 Laptop GPUのGPU-Z実行画面

テスト環境と比較機材

 Core Ultra 9 285HXを搭載するMSI Titan 18 HX AIの比較に用いるのは、Core Ultra 7 265KとGeForce RTX 5070を組み合わせたテスト用PCだ。最新かつハイスペックなデスクトップ・ゲーミングPCと、ウルトラハイエンド級のゲーミングノートの性能差がどの程度のものなのかに注目だ。

デスクトップ向けの20コアCPU「Core Ultra 7 265K」
GeForce RTX 5070 Founders EditionのGPU-Z実行画面

 各テスト環境の詳細は以下の表の通り。

 MSI Titan 18 HX AIは、レビュアーズガイドの推奨に基づいてMSIセンターのユーザーシナリオを「エクストリーム」かつ「ディスクリートグラフィックスモード」に設定したうえで、Windowsの電源モードを「最適なパフォーマンス」、電源プランを「バランス」に設定。これにより、Core Ultra 9 285HXにはPL1=200W、PL2=220W、Tau=128秒というデスクトップ向けCPU級の電力リミットが適用されている。

【表3】テスト環境
CPUCore Ultra 9 285HXCore Ultra 7 265K
コア数/スレッド数8Pコア+16Eコア/24スレッド8Pコア+12Eコア/20スレッド
dGPUGeForce RTX 5090 Laptop GPU (24GB)GeForce RTX 5070 Founders Edition (12GB)
dGPUドライバGRD 576.02 (32.0.15.7602)GRD 576.02 (32.0.15.7602)
NPUIntel AI Boost (NPU3)Intel AI Boost (NPU3)
ノートPC/マザーボードMSI Titan 18 HX AI (A2XWJG-614US)MSI MAG Z890 TOMAHAWK WIFI
BIOSE1824IMS.1127E32v1A71
CPU電力リミットPL1=200W、PL2=220W、Tau=128秒PL1=PL2=250W
CPU温度リミット105℃105℃
メモリ64GB DDR5-6400 (32GB×2)32GB DDR5-6400 (16GB×2)
システム用SSD6TB NVMe SSD
(PCIe 5.0 2TB+PCIe 4.0 2TB×2)
1TB NVMe SSD (PCIe 4.0 x4)
電源400W ACアダプタ1,200W (80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro 24H2 (build 26100.3775、VBS有効)Windows 11 Pro 24H2 (build 26100.3775、VBS有効)
GPUスイッチディスクリートグラフィックスモード (dGPUのみ)dGPUのみ
電源設定MSIセンター「エクストリーム」、電源モード「最適なパフォーマンス」、電源プラン「バランス」電源モード「バランス」、電源プラン「バランス」
計測HWiNFO64 Pro v8.24
室温約24℃

ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは以下の通り。

  • Cinebench 2024
  • Cinebench R23
  • 3DMark
  • やねうら王
  • Adobe Camera Raw
  • HandBrake
  • PCMark 10
  • UL Procyon
  • AIDA64 Cache & Memory Benchmark
  • ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク
  • VALORANT
  • サイバーパンク2077
  • Microsoft Flight Simulator 2024
  • アサシン クリード シャドウズ
  • モンスターハンターワイルズ

Cinebench 2024

 Cinebench 2024では、CPUのマルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」と、シングルスレッド性能を計測する「CPU (Single Core)」を実行した。テストの最低実行時間は「10分」。

 Core Ultra 9 285HXはMulti Coreテストで「2,253」、Single Coreテストで「137」を記録。Core Ultra 7 265KのスコアをMulti Coreで約13%、Single Coreで約1%上回った。

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」
Cinebench 2024「CPU (Single Core)」

Cinebench R23

 Cinebench R23では、CPUのマルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」と、シングルスレッド性能を計測する「CPU (Single Core)」を実行した。テストの最低実行時間は「10分」。

 Core Ultra 9 285HXはMulti Coreテストで「38,963」、Single Coreテストで「2,244」を記録。Core Ultra 7 265KのスコアをMulti Coreで約10%、Single Coreで約2%上回った。

Cinebench R23「CPU (Multi Core)」
Cinebench R23「CPU (Single Core)」

3DMark「CPU Profile」

 CPU性能をスレッド数毎に計測する3DMarkの「CPU Profile」では、それぞれのCPUが記録したスコアをまとめたグラフと、Core Ultra 7 265Kのスコアを基準に指数化したグラフを用意した。

 Core Ultra 9 285HXはコア数の優位性が発揮される最大スレッドで約6%、1~2スレッドで1~2%、それぞれCore Ultra 7 265Kを上回ったが、4~16スレッドではCore Ultra 7 265Kをやや下回った。

3DMark「CPU Profile」
3DMark「CPU Profile」 (Core Ultra 7 265K比)

Blender Benchmark

 3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフトであるBlender Benchmarkでは、CPUとGPUのレンダリング速度をそれぞれ計測した。テストに使用したBlenderのバージョンはv4.4.0。

 CPUを用いたテストにおいて、Core Ultra 9 285HXはCore Ultra 7 265Kをmonsterで約16%、junkshopで約17%、classroomで約10%上回った。

Blender Benchmark│CPUテスト

 GPUを用いたテストでは、GeForce RTX 5090 Laptop GPUがGeForce RTX 5070をmonsterで約38%、junkshopで約27%、classroomで約31%上回った。

Blender Benchmark│GPUテスト

やねうら王

 将棋ソフトの「やねうら王」では、ベンチマーク機能を利用してマルチスレッドテストとシングルスレッドテストを実行した。

 Core Ultra 9 285HXはマルチスレッドテストで「33,644kNPS」、シングルスレッドテストで「1,847kNPS」を記録。マルチスレッドテストでCore Ultra 7 265Kを約11%上回った一方で、シングルスレッドテストではCore Ultra 7 265Kを約2%下回っている。

やねうら王「マルチスレッド」
やねうら王「シングルスレッド」

Adobe Camera Raw「RAW現像」

 Adobe Camera Rawで、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル100枚をJPEGファイルに変換する「RAW現像」を実行し、1分間あたりの処理枚数(Frame per minutes)を比較した。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUの処理速度は「414.3fpm」で、Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070が記録した「200.9fpm」にダブルスコアをつけて圧倒した。

Adobe Camera Raw「RAW現像」

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

 Adobe Camera Rawで、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル20枚に対して「AIノイズ除去」を実行し、1分間あたりの処理枚数(Frame per minutes)を比較した。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUの処理速度は「16.03fpm」で、Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070が記録した「13.26fpm」を約21%上回った。

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

HandBrake

 HandBrakeでは、約60秒の2160p60(4K60p)動画をH.264、H.265、AV1の各形式でエンコードしたさいの速度を計測した。

 Core Ultra 9 285HXは、x264(H.264)で約9%、x265(H.265)で約0.3%、SVT(AV1)で約25%、それぞれCore Ultra 7 265Kのエンコード速度を上回った。

HandBrake「動画エンコード」

PCMark 10 Extended

 PCMark 10の詳細テスト「PCMark 10 Extended」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HXの総合スコアは「12,508」で、Core Ultra 7 265Kの「12,806」を約2%下回った。

PCMark 10 Extended

PCMark 10 Application

 Microsoft OfficeやWebブラウザのEdgeでのパフォーマンスを計測する「PCMark 10 Application」の実行結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HXの総合スコアは「18,040」で、Core Ultra 7 265Kの「17,516」を約3%上回った。アプリ毎のスコアを見ると、Core Ultra 9 285HXはCore Ultra 7 265KをExcelで約2%、PowerPointで約3%下回る一方、Wordではほぼ同等のスコアを記録。Edgeでは逆に約18%上回った。

PCMark 10 Application

UL Procyon「Office Productivity Benchmark」

 Microsoft Officeでのパフォーマンスを計測するUL Procyon「Office Productivity Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HXの総合スコアは「7,079」で、Core Ultra 7 265Kの「7,288」を約3%下回った。

 Core Ultra 9 285HXはExcelでCore Ultra 7 265Kを約5%上回っているが、それ以外のアプリでは、Wordで約2%、PowerPointで約9%、Outlookで約6%、それぞれCore Ultra 7 265Kを下回っている。

UL Procyon「Office Productivity Benchmark」

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

 Adobeの画像編集系ソフト(Photoshop、Lightroom Classic)を使ってパフォーマンスの計測を行なうUL Procyon「Photo Editing Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HXの総合スコアは「9,327」で、Core Ultra 7 265Kの「9,205」を約1%上回った。Core Ultra 9 285HXはレタッチでCore Ultra 7 265Kを約4%下回っているが、バッチ処理では逆に約7%上回っている。

UL Procyon「Photo Editing Benchmark」

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」

 プロセッサのAI処理性能を計測するUL Procyonの「AI Computer Vision Benchmark」では、CPU、GPU、NPUそれぞれのパフォーマンスを計測した。

 CPU性能をWindows MLで計測した結果、Core Ultra 9 285HXはFloat16で「69」、Integerで「201」というスコアを記録。Core Ultra 7 265KのスコアをFloat16で約5%、Integerでは約4%下回った。

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」│CPU (Windows ML)

 GPU性能をNVIDIA TensorRTで計測した結果、GeForce RTX 5090 Laptop GPUはFloat16で「3,389」、Integerで「3,949」というスコアを記録。GeForce RTX 5070のスコアをFloat16で約6%、Integerで約6%上回った。

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark」│GPU (NVIDIA TensorRT)

 Core Ultra 9 285HXとCore Ultra 7 265Kは、どちらも同じ設計で同じピーク性能(13TOPS)のNPU「Intel AI Boost」を内蔵しており、これを用いたテストではスペック通りにほぼ同等のスコアを記録した。

UL Procyon「AI Computer Vision Benchmark│NPU

UL Procyon「AI Image Generation Benchmark/Stable Diffusion 1.5」

 画像生成AIでのパフォーマンスを計測するUL Procyon「AI Image Generation Benchmark」にて、512×512ピクセルの画像を生成する「Stable Diffusion 1.5(FP16)」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUは、画像1枚あたりの生成時間が「1.802秒」で、スコアは「3,467」だった。これはCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070が記録したスコアを約23%上回るものだ。

UL Procyon「AI Image Generation Benchmark/Stable Diffusion 1.5 (FP16)」│スコア
UL Procyon「AI Image Generation Benchmark/Stable Diffusion 1.5 (FP16)」│生成時間

UL Procyon「AI Image Generation Benchmark/Stable Diffusion XL」

 画像生成AIでのパフォーマンスを計測するUL Procyon「AI Image Generation Benchmark」にて、1,024×1,024ピクセルの画像を生成する「Stable Diffusion XL(FP16)」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUは、画像1枚あたりの生成時間が「12.489秒」で、スコアは「3,002」だった。これはCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070が記録したスコアを約24%上回るものだ。

UL Procyon「AI Image Generation Benchmark/Stable Diffusion XL (FP16)」│スコア
UL Procyon「AI Image Generation Benchmark/Stable Diffusion XL (FP16)」│生成時間

UL Procyon「AI Text Generation Benchmark」

 UL Procyonの「AI Text Generation Benchmark」は、GPUを用いたテキスト生成のパフォーマンスを計測するテスト。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUは、PHI 3.5で約6%、MISTRAL 7Bで約9%、LLAMA 3.1で約10%、LLAMA 2で約54%、それぞれCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070のスコアを上回った。

UL Procyon「AI Text Generation Benchmark」

CPUコア間のレイテンシ

 MicroBenchXの「CoherencyLatency」でCPUコア間のレイテンシを計測した結果が以下のマトリックス表だ。

 Core Ultra 9 285HXのCPUコア間レイテンシは平均71.0nsとなっており、コアの構成的には似ているCore Ultra 7 265Kの37.5nsより明らかに大きなレイテンシが生じている。

 Core Ultra 9 285HXでは4基一組のEコアモジュールを跨いでのEコア間で100nsを超える大きなレイテンシが生じており、Pコア~Eコア間のレイテンシもCore Ultra 7 265Kより高いものとなっている。Core Ultra 7 265KをはじめとするCore Ultra 200S シリーズも、発売直後はコア間レイテンシが大きかったものの、その後のBIOSやマイクロコードのアップデートで改善されているので、Core Ultra 9 285HXにも同様の改善を期待したい。

Core Ultra 9 285HXのCPUコア間レイテンシ
Core Ultra 7 265KのCPUコア間レイテンシ

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリ性能」

 AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、メインメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。

 32GB×2のDDR5-6400メモリを搭載するCore Ultra 9 285HX環境のメモリ帯域幅は、16GB×2のDDR5-6400メモリを搭載するCore Ultra 7 265K環境を6~11%上回っている。メモリにアクセスするCPUコアの数が多いことに加え、容量差によるDRAM構成の違いが少なからず影響した結果だろう。

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリの帯域幅」

 Core Ultra 9 285HX環境のメモリレイテンシは110.6nsで、これはCore Ultra 7 265Kの101.4nsより約9%大きなものとなっている。

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリのレイテンシ」

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「キャッシュ性能」

 AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、CPUが備えるキャッシュメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。

 同じ設計のCPUであればキャッシュメモリの帯域幅はコア数が多い方が大きくなるため、Core Ultra 9 285HXはL0キャッシュで約9%、L2キャッシュで20~28%、それぞれCore Ultra 7 265Kを上回っている。ただ、L1キャッシュの速度については同等で、L3キャッシュのWriteとCopyは11~12%上回っているものの、Readに関しては27%と大きく下回った。

 キャッシュメモリの帯域幅は計測誤差が生じやすいテストであり、キャッシュのレイテンシ自体に大きな変化がない様子をみると、Core Ultra 200HXとCore Ultra 200Sのキャッシュ構造については特に変更されていないものと考えられる。

AIDA64 Cache & Memory Benchmark「キャッシュの帯域幅(Read)」
AIDA65 Cache & Memory Benchmark「キャッシュの帯域幅(Write)」
AIDA66 Cache & Memory Benchmark「キャッシュの帯域幅(Copy)」
AIDA64 Cache & Memory Benchmark「キャッシュのレイテンシ」

3DMark「Speed Way」

 3DMarkのDirectX 12 Ultimateテスト「Speed Way」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUのスコアは「6,494」で、Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070の「5,763」を約13%上回った。

3DMark「Speed Way」

3DMark「Steel Nomad」

 3DMarkのDirectX 12高負荷テスト「Steel Nomad」と、その軽量版「Steel Nomad Light」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUは、Steel Nomadで「6,190」、Steel Nomad Lightで「25,810」を記録。Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070のスコアをSteel Nomadで約19%、Steel Nomad Lightで約14%上回った。

3DMark「Steel Nomad」
3DMark「Steel Nomad Light」

3DMark「Port Royal」

 3DMarkのDirectX Raytracing(DXR)テスト「Port Royal」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUのスコアは「16,151」で、Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070の「13,989」を約15%上回った。

3DMark「Port Royal」

3DMark「Solar Bay」

 Vulkan 1.1を用いる軽量なリアルタイムレイトレーシングテスト「Solar Bay」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUのスコアは「114,192」で、Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070の「103,198」を約11%上回った。

3DMark「Solar Bay」

3DMark「Wild Life」

 3DMarkのVulkanテスト「Wild Life」と、高負荷版である「Wild Life Extreme」を実行した結果が以下のグラフ。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUは、Wild Lifeで「129,758」、Wild Life Extremeで「125,773」を記録。Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070のスコアをWild Lifeで約3%、Wild Life Extremeで約5%上回った。

3DMark「Wild Life」
3DMark「Wild Life Extreme」

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「最高品質」に設定して、3種類の画面解像度でテストを実行。ベンチマークスコアと平均フレームレートを取得した。なお、超解像は無効にしている。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUが記録したスコアは、フルHD/1080pで約4%、WQHD/1440pで約4%、4K/2160pで約13%、それぞれCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070を上回った。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク│スコア
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク│平均フレームレート

VALORANT

 VALORANTでは、グラフィックス設定をできる限り高く設定して、3種類の画面解像度で平均フレームレートを計測した。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUは、すべての解像度でCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070を約16%上回った。

VALORANT

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077では、グラフィックスプリセットを「レイトレーシング:オーバードライブ」に設定して、3種類の画面解像度でゲーム内ベンチマークテストを実行。DLSSフレーム生成の設定ごとに平均フレームレートを取得した。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUは、フルHD/1080pで14~18%、WQHD/1440pで14~18%、4K/2160pで13~18%、すべての解像度でCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070を上回った。

サイバーパンク2077│フルHD/1080p
サイバーパンク2077│WQHD/1440p
サイバーパンク2077│4K/2160p

Microsoft Flight Simulator 2024

 Microsoft Flight Simulator 2024では、グラフィックスプリセットを「ウルトラ」に設定して、3種類の画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時は超解像を「DLSS」、フレーム生成を「オン」に設定している。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUが記録したフレームレートは、フルHD/1080pで約1%、Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070を下回り、WQHD/1440pで約4%、4K/2160pで約18%上回った。

Microsoft Flight Simulator 2024

アサシン クリード シャドウズ

 アサシン クリード シャドウズでは、グラフィックスプリセットを「最高」、レイトレーシングを「全体的に拡散+反射」に設定し、3種類の画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時は超解像とフレーム生成を「DLSS」に設定している。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUが記録したフレームレートは、フルHD/1080pで約14%、WQHD/1440pで約13%、4K/2160pで約13%、それぞれCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070を上回った。

アサシン クリード シャドウズ

モンスターハンターワイルズ

 モンスターハンターワイルズでは、グラフィックスプリセットを「ウルトラ」、レイトレーシングを「高」に設定し、3種類の画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時は超解像とフレーム生成を「DLSS」で有効にしており、高解像度テクスチャパックは導入していない。

 Core Ultra 9 285HX+GeForce RTX 5090 Laptop GPUが記録したフレームレートは、フルHD/1080pで約16%、WQHD/1440pで約17%、4K/2160pで約17%、それぞれCore Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070を上回った。

モンスターハンターワイルズ

高負荷テスト実行中のモニタリングデータ

 モニタリングソフトのHWiNFO64 Proを使用して、MSI Titan 18 HX AIでCinebench 2024「CPU (Multi Core)」と3DMark「Steel Nomad Stress Test」を実行したさいのステータス情報を取得。Core Ultra 9 285HXやGeForce RTX 5090 Laptop GPUの動作状況をグラフ化した。テスト時の室温は約24℃。

 Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中、Core Ultra 9 285HXのCPU温度は平均100.0℃(最大103℃)、CPU消費電力は平均194.6W(最大226.7W)となっており、平均CPUクロックはPコアが4,869MHz、Eコアは4,384MHzだった。

 CPUの温度と消費電力は動作リミットの限界付近にまで達しているが、性能特化の動作設定に基づく静粛性度外視した冷却によって高クロック動作を維持しており、ノートPCとしては破格のマルチスレッド性能を発揮している。

Core Ultra 9 285HXのモニタリングデータ│Cinebench 2024

 3DMark「Steel Nomad Stress Test」実行中の動作温度は、CPUが平均73.9℃(94℃)、GPUは平均72.5℃(最大74.1℃)。Cinebench 2024実行中に比べれば温度的な余裕があるためか、ファンスピードも平均3,495rpm程度に抑えられている。

 GPU負荷が高くCPU負荷は低いテストであるため、CPUはクロックも消費電力も低い数値で推移して一方、GPUは平均173.8W(最大174.3W)の電力を消費しながら平均1,876MHzで動作している。GPUクロックは終始安定して推移しており、一貫性の高いパフォーマンスを保っていた。これは、MSI Titan 18 HX AIの冷却能力と電力供給の優秀さを示す結果だ。

Core Ultra 9 285HXのモニタリングデータ│3DMark「Steel Nomad Stress Test」

デスクトップ向けCPUのパワーをノートPCにもたらすCore Ultra 200HX

 MSI Titan 18 HX AIに搭載されたCore Ultra 9 285HXとGeForce RTX 5090 Laptop GPUは、Core Ultra 7 265KとGeForce RTX 5070を組み合わせたハイスペックなデスクトップ環境との比較において、互角以上と言えるパフォーマンスを発揮してみせた。

 これは性能を追求して設計されたMSI Titan 18 HX AIをフルパワーで動作させたからこその結果ではあるが、このような超高性能ノートPCを構築できるだけの性能と機能を備えていることこそ、エンスージアスト向けモバイルプロセッサたるCore Ultra 200HXシリーズの魅力であると言えるだろう。