Hothotレビュー

ソニー「VAIO Tap 11」

~VAIOシリーズ初の11.6型タブレットPC

ソニー「VAIO Tap 11」
11月16日 発売

価格:オープンプライス

 ソニーのVAIOシリーズ秋冬モデルとして、意欲的な製品が多数発表されたが、その中でも注目したい製品の1つが、11.6型液晶搭載タブレットPC「VAIO Tap 11」である。VAIOシリーズでは、これまで、液晶をスライドさせることでタブレットとしても使える2-in-1タイプの「VAIO Duo 11/13」などが登場しているが、キーボードを装備しない、いわゆるピュアタブレットは、VAIOシリーズとして初となる。

 ただし、VAIO Tap 11は、単なるタブレットPCではなく、標準で着脱可能な薄型キーボードが付属しており、本体内蔵スタンドにより、単体で立てることも可能なので、ノートPC感覚で使うこともできる。今回は、この期待の新製品を使用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様などが異なる可能性がある。

Xperiaシリーズと同じデザインコンセプトを採用

 VAIO Tap 11は、VAIOシリーズ初のタブレットPCであり、厚さ9.9mmというスリムな筐体に、最新の第4世代Coreプロセッサを搭載していることが魅力だ。店頭モデルは1モデルのみで仕様が固定されているが、直販モデルのVAIOオーナーメードモデルでは、仕様のカスタマイズが可能である。

 VAIO Tap 11のVAIOオーナーメードモデルでは、筐体カラーをブラックとホワイトの2色から選択できる(店頭モデルはブラックのみ)。試用機のカラーはホワイトである。ピュアタブレットPCは、筐体デザインの自由度があまり高くなく、どこの製品も似たような印象になるが、VAIO Tap 11では、Android搭載のスマートフォンやタブレットのXperiaシリーズと同じ、オムニバランスデザインというデザインコンセプトを採用している。オムニバランスとは、全方位型という意味で、どの角度から見てもシンプルかつ美しく見えるように設計されている。

 本体のサイズは、約304.6×188×9.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約780gである。10.1型液晶搭載の「HP ElitePad 900」の重量が約630gであることを考えると、妥当な重量といえるだろう。片手だけで長時間持つにはやや辛いが、膝の上などに置いたり、スタンドを立てて使うには使いやすいサイズだ。

 CPUは、開発コードネーム「Haswell」こと、第4世代Coreプロセッサを搭載する。WindowsベースのタブレットPCでは、Atomを搭載する製品も多いが、AtomではCPUパワー不足を感じる場面もある。第4世代Coreプロセッサを搭載するVAIO Tap 11なら、Ultrabookとほぼ同じ感覚で、快適にWindows 8を利用できる。VAIO Tap 11に搭載されているCoreプロセッサは、型番の末尾が「Y」となっている、いわゆる「Yプロセッサ」であり、通常版よりもTDPが低い、タブレット向けの製品である(その分、動作クロックも低くなっている)。

 店頭モデルでは、CPUとしてCore i5-4210Yを搭載するが、VAIOオーナーメードモデルでは、Core i7-4510Y、Core i5-4210Y、Core i3-4020Y、Pentium 3560Yの4種類から選べる。メモリは増設不可で、店頭モデルは4GB、VAIOオーダーメードモデルでは2GBまたは4GBとなる。ストレージはSSDで、店頭モデルの容量は128GB、VAIOオーナーメードモデルでは、512GB/256GB/128GBから選択可能だ。なお、プリインストールOSはWindows 8で、8.1へのアップグレードはユーザーが選択して行なうことになる。

 今回の試用機は、CPUがPentium 3560Y(1.2GHz)、メモリが2GB、SSDが128GBという仕様であり、最もローエンドな構成になっていることに注意してほしい。この構成での価格は109,800円だ。

VAIO Tap 11の前面。シンプルなデザインだが、質感は高い
VAIO Tap 11の底面。中央下部に折りたたみ式のスタンドが搭載されている
「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。幅はVAIO Tap 11のほうが27.6mm大きく、奥行きはVAIO Tap 11のほうが21mm小さい
試用機の重量は、実測で760gであった

本体カバーとしても使える超薄型ワイヤレスキーボードが付属

 VAIO Tap 11のウリの1つが、超薄型のワイヤレスキーボードが付属していることだ。このキーボードは、液晶を保護するためのカバーとしても利用できる。本体とキーボードの通信は、2.4GHz帯の無線を利用しており(Bluetoothではない)、あらかじめペアリング済みなので、電源を入れるだけですぐに使える。

 キーボードと本体の4隅には磁石が内蔵されており、ぴたっと吸い付く感じで本体と装着する。上下が逆だと反発して、正しい向きでしか装着されないようになっている。キーボードにはバッテリが内蔵されており、本体に装着することで、本体のバッテリからキーボードのバッテリの充電が行なわれる。キーボードは、約3時間でフル充電が可能で、約2週間の動作が可能だ。なお、キーボードを本体に装着すると、自動的にスリープモードに移行するようになっているので、バッテリを無駄に消費する心配はない。

 キーは全87キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは1.1mmであり、キータッチは良好だ。配列も標準的であり、快適にタイピングが可能である。また、タッチパッドを搭載していることも評価できる。タッチパッドとクリックボタンは独立しているので(左右のクリックボタンは1つのパーツとなっているが)、ドラッグ操作などもやりやすい。タッチパネル搭載で、ペン操作にも対応しているので、タッチパッドが不要な時は、右上のスライドスイッチにより、キーボードのみを有効にし、タッチパッドを無効にすることも可能だ。ワイヤレスキーボードの電波到達距離は3mであり、少し離れた場所からでも問題なく操作できる。

付属のワイヤレスキーボード。全87キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは1.1mmと十分に確保されている。配列も標準的である
ワイヤレスキーボードの裏面。本体に装着するとこちら側が表になり、液晶面をカバーする
ワイヤレスキーボードを本体に装着すると、本体からキーボードのバッテリに充電が行なわれる。充電中は右下のオレンジ色のLEDが点灯する
右上にはスライドスイッチが用意されている。スライドスイッチを左にするとキーボードの電源オフ、中央で電源オン、右にするとタッチパッドのみ無効となる
ワイヤレスキーボードを本体に装着したところ。磁力でぴったりとくっつくのでこのまま気軽に持ち運べる
キーボード装着時を横から見たところ。キーボードと合わせても厚さは16mm程度と非常にスリムだ
本体とキーボードを合わせた重量は、実測で1,049gであった

角度を変えて立てかけられるスタンドが便利

 一般的なピュアタブレットは、手で持って使う場合は良いが、机の上に置いて使う場合などは、単体で立てて置くことができないので、不便に感じることがある。しかし、VAIO Tap 11は、折りたたみ式のスタンドが底面に搭載されており、単体で立てることができる。角度も115度から130度の間で調整可能であり、見やすい角度で立てられるのは便利だ。特に、付属のワイヤレスキーボードと一緒に使えば、ノートPC感覚で利用することが可能になる。

画面を最も垂直に近い状態にしたところ
画面を最も寝かせた状態。この状態で、画面と机との角度が130度となる
スタンドを使って本体を立てて置いた状態
ワイヤレスキーボードと一緒に使えば、ノートPCのような感覚で利用できる

筆圧検知対応のペンも付属

 VAIO Tap 11は、10点同時検出可能なタッチパネルの搭載に加え、ペン(スタイラス)操作にも対応していることも高く評価できる。VAIO Tap 11に付属するペンは、VAIO Duo 13に付属するものと同じで、256段階の筆圧検知に対応する。ペンを本体に取り付けるためのペンホルダーも付属しているので、スマートにペンを持ち歩ける。ただし、VAIO Duo 13とは異なり、ホルダーからペンを取り外したときに、自動的にアプリケーションが起動する機能(ペンウェイク機能)は用意されていない。

筆圧検知に対応したペンが付属する。ペンにはボタンが2つ付いており、消しゴム機能やクリック機能が割り当てられている
ペンは単6形電池1本で動作する
ペンで使う単6形電池(上)と一般的な単4形電池(下)の比較。単4形電池よりも細い
本体にペンを取り付けるためのペンホルダーが付属
ペンホルダーは本体の左側に取り付ける
ペンホルダーを装着すると、このようにペンを本体に取り付けることができる
摩擦の異なる2種類のペン先が付属しており、好みに応じて装着できる
【動画】ペンで絵を描いているところ。ペンの追従性は高く、快適に絵を描ける

厚さ9.9mmの筐体にUSBポートを搭載

 液晶として11.6型IPS液晶を採用。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、オプティコントラストパネルと呼ばれる、空気層がないパネルを採用しているため、ペン操作時の視差が少なく、イメージ通りの線を描くことができる。液晶の発色やコントラストについても不満はない。カメラ機能にもこだわっており、前面カメラとして有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーを、背面カメラとして有効画素数799万画素の「Exmor RS for PC」を搭載する。

 インターフェイスは必要最小限ではあるが、USB 3.0とMicro HDMI出力、ヘッドフォン端子などを搭載する。さらに、NFCをサポートするほか、赤外線ポートも備えており、TVやHDDレコーダなどAV機器を操作するリモコンとして使うことも可能だ。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooh 4.0+HSに対応。GPSは非搭載だが、加速度センサーとジャイロセンサー、地磁気センサーを搭載する。

視野角の広いIPS液晶を採用。解像度は1,920×1,080ドットである
前面カメラとして、有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーを搭載する
背面には有効画素数799万画素の「Exmor RS for PC」CMOSセンサーを搭載する
背面の左上には、ASSISTボタンとNFCが用意されている
上面には、microSDカードスロットと赤外線ポート、デュアルマイク、排気口が用意されている
上面のmicroSDカードスロット部分のアップ
上面の排気口部分のアップ。CPU温度が上がるとファンが回転するが、騒音が気になるほどではない
左側面には、USB 3.0とMicro HDMI出力が用意されている
USB 3.0とMicro HDMI出力部分のアップ。USBは薄型化のために専用コネクタを新たに設計したという
右側面には、音量調節ボタンや電源ボタン、ヘッドフォン端子が用意されている
音量調節ボタンや電源ボタン部分のアップ
下面には、特にポート類は用意されていない
内蔵の赤外線ポートを利用して、TVやHDDレコーダなどのリモコン操作が行なえる「VAIOリモコン」がプリインストールされている

Atom Z2760搭載機の2倍以上のパフォーマンスを実現

 バッテリの交換はできないが、公称バッテリ駆動時間は約8時間であり、タブレットPCとしては合格点を付けられる。ACアダプタは新型のもので、DCプラグのコネクタ形状が変更されている。ACアダプタにはUSBポートが用意されており、USB給電が可能なほか、オプションのワイヤレスルーター「VGP-WAR100」をACアダプタと一体化して利用することが可能だ。

付属のACアダプタは、新型になりコネクタ形状が変更されている
USBポートが用意されており、USB給電も可能だ
CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較
DCプラグの形状が変更されている
ACアダプタの重量は、実測で216gであった

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、日本HP「ElitePad 900」、パナソニック「Let'snote LX3」、ソニー「VAIO Pro 11」、「VAIO Pro 13 | red edition」のスコアも掲載した。

 結果は下の表に示したとおりで、第4世代のCore i7やCore i5を搭載したLet'snote LX3やVAIO Pro 11、VAIO Pro 13 | red editionに比べると、さすがに及ばないが、Atom Z2760を搭載したElitePad 900と比べると、PCMark 7の総合スコアは2倍以上も高い。CPU性能がAtomに比べて高いことはもちろんだが、ストレージのインターフェイスが高速なSATA 6Gbpsになり、SSDの性能を十分に発揮できるようになったことも効いているのであろう。


VAIO Tap 11ElitePad 900Let'snote LX3VAIO Pro 11VAIO Pro 13 | red edition
CPUPentium 3560Y (1.2GHz)Atom Z2760 (1.8GHz)Core i7-4500U (1.8GHz)Core i5-4200U (1.6GHz)Core i7-4500U (1.8GHz)
ビデオチップIntel HD GraphicsPower VR SGX 545Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/AN/A
CPU Score37092146937978648293
Memory Score37622084859999786708
Graphics Score1834N/A330221442722
HDD Score475326516560405512263337
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score5687未計測155401288115722
Memories Score4814未計測849371067637
TV and Movie ScoreFailed未計測FailedFailedFailed
Gaming Score5483未計測1103070259549
Music Score7092未計測180771574418049
Communications Score6546未計測179721493419798
Productivity Score8563未計測215031620924448
HDD Score48228未計測479075078462248
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score5371未計測141111194413652
Memories Score4581未計測810469947324
TV and Movie ScoreFailed未計測FailedFailedFailed
Gaming Score4588未計測969975548514
Music Score6817未計測165431496216885
Communications Score5995未計測160431350817580
Productivity Score8336未計測197191532521896
HDD Score49186未計測481175115763355
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score30061457531040164500
Lightweight score2102950578948923520
Productivity score1506594472438352624
Entertainment score19341060381626453097
Creativity score43233004998683128456
Computation score4513386616901997010444
System storage score51832983549153175466
Raw system storage score4886未計測612156796367
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)65492180128561012813605
CPU Score1127336207216552018
3DMark
Ice Storm15527未計測441552731234294
Cloud Gate1707未計測490034613923
Fire Strike237未計測721469501
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH3652879759867327424
LOW6062144210899993810862
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1280×720ドット 最高品質695未計測1580未計測未計測
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC)716未計測1598未計測未計測
1280×720ドット 高品質(ノートPC)1031未計測1894未計測未計測
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)1445未計測3350未計測未計測
1280×720ドット 標準品質(ノートPC)1448未計測3279未計測未計測
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.943.4710099.9799.97
HP100100100100100
SP/LP10010010099.97100
LLP10099.97100100100
DP(CPU負荷)5331421242
HP(CPU負荷)243134632
SP/LP(CPU負荷)161928430
LLP(CPU負荷)61827328
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード487.2MB/s80.52MB/s513.8MB/s481.2MB/s987.8MB/s
シーケンシャルライト156.4MB/s34.60MB/s455.1MB/s139.3MB/s434.1MB/s
512Kランダムリード366.9MB/s78.11MB/s454.6MB/s419.4MB/s604MB/s
512Kランダムライト142.3MB/s29.31MB/s444.9MB/s140.7MB/s416.2MB/s
4Kランダムリード20.53MB/s9.542MB/s24.57MB/s33.36MB/s28.42MB/s
4Kランダムライト54.06MB/s2.498MB/s56.09MB/s99.30MB/s69.71MB/s
BBench
標準バッテリ6時間13分7時間38分19時間16分8時間5分10時間18分
標準バッテリ+シートバッテリなし14時間27分なし未計測21時間

 ElitePad 900では、デスクトップアプリを使う場合に、ややレスポンスが遅いと感じることもあったが、VAIO Tap 11では、そうしたストレスはほとんど感じなかった。今回試用したモデルは、一番低いスペックになっていたことを考えると、店頭モデルやCore i7搭載機なら、さらに快適な環境を得られるであろう。

 また、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、6時間13分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。Atom搭載のElitePad 900に比べると、バッテリ駆動時間はやや短くなっているが、パフォーマンスの差を考えると、納得できる範囲だ。

いつでもどこでもWindowsを使いたい人にお勧め

 VAIO Tap 11は、VAIOシリーズ初のピュアタブレットPCであるが、ワイヤレスキーボードの付属や自立できるスタンドの搭載、筆圧検知対応のペンの装備など、よくあるタブレットPCとは一線を画す、ソニーらしい製品に仕上がっている。ペンを使って画像を切り抜ける「VAIO Clip」やノートアプリ「VAIO Paper」などの手書きを活かす独自ソフトも魅力の1つだ。単にWebブラウズをしたり、メールチェックをするだけなら、iPadでもAndroid搭載タブレットでもかまわないが、いつでもどこでも使い慣れたWindowsアプリケーションを使いたいという人には、魅力的な製品であろう。キーボードの使い勝手もなかなか良好なので、ノートPCとして使っても十分に実用的だ。

(石井 英男)