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「ニンテンドーDS」っぽい2画面携帯型ゲーミングPC「AYANEO FLIP DS」、ガッツリ試してみた!

「AYANEO FLIP DS」

 株式会社天空から、ポータブルゲーミングPC「AYANEO FLIP DS」がハイビームで予約開始された。価格は17万6,000円で、6月下旬に発売される。写真を見ていただければ分かる通り、折りたたみ型の端末に上下2枚のディスプレイを搭載している。

 誰が見ても「ニンテンドーDSだ」と思うに違いない外見はとても目を引く(ほかのポータブルゲーミングPCを「PlayStation Vitaだ」と言う人がいたかは定かではない)。そして本機がやりたいことも外見から何となく伝わってくる。

 今回は試作機の実機をお借りできたので、本機がどんなPCで、何ができるのか、使用感を含めてお伝えしていく。なお、お借りしたのはIndiegogo向けのモデルで搭載CPUがRyzen 7 7840Uとなっている。日本正規代理店のハイビームが扱うのはRyzen 7 8840U搭載モデルとなるため、性能が向上し細部が改善されている可能性がある点をご了承いただきたい。

ニンテンドー3DSと並べてみた。比べてみるとサイズはかなり違う

流行のスペックをクラムシェル型に搭載

 まずは試用機のスペックを確認する。

【表1】AYANEO FLIP DS
CPURyzen 7 7840U(8コア/16スレッド、5.1GHz)
GPUCPU内蔵グラフィックス(Radeon 780M)
メモリ32GB LPDDR5-6400(8GB×4)
SSD2TB(M.2 NVMe/PCIe Gen4)
光学ドライブなし
ディスプレイ7型光沢IPS液晶(1,920×1,080ドット/120Hz/タッチ対応)、3.5型光沢IPS液晶(960×640ドット/タッチ対応)
OSWindows 11 Home
汎用ポートUSB4×1、USB 3.1 Type-C×1
カードスロットmicroSD
映像出力USB4×1
無線機能Wi-Fi 6、Blunetooth 5.2
有線LANなし
その他OCuLink、ヘッドセット端子
本体サイズ約180×102×29.8~37.5mm
重量約650g
価格17万6,000円

 CPUはRyzen 7 7840U、GPUは内蔵のRadeon 780Mで、最近のポータブルゲーミングPCで最も多く採用されているものだ。なお、日本ではRyzen 7 8840U搭載モデルが販売される。

 メインメモリはLPDDR5-6400の32GBと高速大容量。内蔵GPUを使用することを考えると、高速なメモリを搭載してくれているのはパフォーマンスの面でも期待ができる。ストレージもPCIe 4.0接続の2TB SSDを搭載しており、こちらも安心感がある。

 ディスプレイは、上のメイン画面がフルHD(1,920×1,080ドット)で、120Hzのハイリフレッシュレートに対応。下のサブ画面は縦横およそ半分となる960×640ドットになり、リフレッシュレートは標準的な60Hz。上下ともタッチ対応となっている。

 端子類は背面にUSB4とUSB 3.1のType-Cが1つずつある。ほかには外付けGPUを接続できるOCuLinkとヘッドセット端子があるだけとシンプルだ。USB4端子は充電に使用するため、付属の充電機を使う場合は残りのUSB 3.1のみ使用可能ということになる。

 スペック的には昨今のポータブルゲーミングPCでよく見るものだ。つまり本機での注目点は、やはりデュアルディスプレイであることに尽きる。

期待のデュアルディスプレイは?

上画面を閉じたところ。外見はシンプル

 本機についてはスペックよりも機能や使用感の方が注目されているはずだ。従来のポータブルゲーミングPCと比べても特異な部分が多いので、可能な限り機能を見ていきたい。

 まずインターフェイスについて。ディスプレイは上下ともタッチパネルなので、操作はタッチで行なえる。また電源ボタンの横には光学式のポインティングデバイスが搭載されており、上で指を滑らせるとタッチパッドのようにしてマウスカーソルを動かせる。押せばクリック操作も可能だ。

 さらに左のアナログスティックでもマウスカーソルを動かせるようになっている。Aボタンが左クリック、Xボタンが右クリックに割り当てられいるので、コントローラだけでもマウス操作を代替できる。実際には画面を直接タッチした方が早い場面も多いので、それぞれの操作をその時その時で使い分けるのが便利だ。

下画面周りはコントローラやボタンが配置されている

 ディスプレイはWindowsから見ると、大画面の下に小画面が配置されたマルチディスプレイ環境として認識されている。マウスカーソルを上画面から下画面に持っていくことももちろん可能。下画面の位置も、上画面の真下ではなく、横や上など全然違う位置に接続させることもできるが、直感的でなくなるので真下に配置したままの方がいいとは思う。

Windowsからは単純な2画面として認識されており、接続位置の変更もできる

 2つのディスプレイについてハードウェア面を見ると、IPSパネルだけあって視野角は上下左右ともかなり広い。上画面は左右に30度ほど傾けたところで黄みがかる変化が少しだけあるが、本機は持ち方が決まっており正面以外から見るシチュエーションが皆無なので、何ら問題はない。発色も鮮やかで、光量もまぶしいくらいまで上げられる。

上画面は鮮やかな色味
斜めから見ると若干黄みがかかるが、視野角は十分に広い

 上画面部分を開くと、120度、150度、180度の3段階にロック可能になっており、好みの角度で安定してゲームをプレイできる。

上画面を120度でロック。手に持ってプレイするにはちょっと角度がきつい
150度でロックしたところ。これが一番自然な見え方だと思う
最大で180度まで開けられる

 下画面は基本的には「AYASpace 2.0」のウィンドウが表示される。パフォーマンス設定やショートカット機能などを利用できるほか、CPU/GPUの負荷や温度、ストレージとメインメモリの使用量、冷却用ファンの回転数やTDPなどの情報が見られる。ゲームプレイ中などにはフレームレートの表示も追加される。

下画面には「AYASpace 2.0」のウィンドウを表示
ゲームなどを動かすとフレームレートも表示される

 下画面の左上にある画面切り替えボタンを押すと、「AYASpace 2.0」のウィンドウが消え、デスクトップ画面が表示される。この状態でWebブラウザ(Edge)を起動すると、下画面にWebブラウザの画面が表示される。

下画面にWebブラウザを表示できる

 上画面ではゲームをプレイしながら、下画面では情報を検索したり、ストリーミング動画を再生したりできる。これがデュアルディスプレイPCにおける最も便利な使い方となるだろう。マルチモニター環境だと考えれば当たり前ではあるが、ポータブルゲーミングPCでこれができるのは価値が全く違う。

 実際にWebブラウザを使ってみると、解像度が低めで表示できる情報量が少なく感じる。筆者が普段、4Kモニターを使用しているからかもしれないが、これに加えて3.5型と画面が小さいため、文字も小さくて読みにくいのが気になる。文字入力も基本的にはバーチャルキーボードに頼ることになるため、情報検索性が高いとは言えない。

 それでも攻略サイトを見ながら遊べるという価値は確かにある。またYouTubeなどの動画を参考にするのであれば、解像度、操作感ともに不満のないレベルだ。「スマホを横に置いておけばいいじゃん」と言われそうだが、1台で済ませられれば端末を持ち変える手間もなく、視線移動も少なく済むというのはある。

下画面で動画再生も可能

 ニンテンドーDSをイメージするなら、下画面はタッチ操作デバイスとして活用するべきなのだろうが、そんなPCゲームは滅多にない。むしろ解像度が低くていいレトロゲームを下画面で動かし、上画面で情報検索する方が快適かもしれない。この辺りはユーザーの自由度の範疇なので、各々好きなように使えばいい。

 下画面の表示が不要な時には、「AYASpace 2.0」ウィンドウの画面の右上にあるアイコンから下画面をオフにもできる。ただしあくまで画面が消灯しただけで、マルチディスプレイとしては存在しており、Webブラウザなどのウィンドウも動作したままの状態だ。

 ちなみに本機にはジャイロセンサーが内蔵されており、本体の角度によって上画面の表示が回転する。本機については持ち方を変えることはほぼないと思うが、寝転がって遊ぶ際(そこそこ重量があるのでおすすめはしない)などに想定外の画面回転があると困るので、好みに応じて画面回転機能を切ってしまってもいい。

コントローラとソフトウェア周りも充実した機能

 続いてそれ以外の部分も見ていく。コントローラ部分はWindows側からはXbox 360互換コントローラとして認識されている。下画面の左下の方にある2つの小さなボタンは、コントローラ用のビューボタンとメニューボタンだ。

 下画面の左右にあるアナログスティックは、上画面を閉じても干渉しないよう、窪みに押し込んだような形になっている。一見すると操作しにくそうに感じるが、手に持って動かしてみると、思ったほど違和感なく指に収まり、普通に操作できる。ただ操作の際に窪みの縁に指が触れるのは確かで、瞬発力のある操作をするには少々慣れがいる。

 アナログスティックは一般的なコントローラと同じくらいのサイズがあり、傾きも大きく取られている。反発力もしっかりしていて、スティック自体の質は高いと感じる。ホール効果センサーを採用しているそうで、耐久性も期待できそうだ。

窪みの中にあるアナログスティック

 本機全体のホールド感としては、そこそこ厚みがあり、手の全体でしっかり持てるので安定感がある。ただ折りたたみ型の宿命で、各種L/Rボタンは位置が少々上すぎて押しにくい。この対処のためか、LT/RTのトリガーはまっすぐ押し込みではなく、本体裏の方向に倒れ込むような挙動になっている。おかげでトリガーを押し込んだ時に端末のホールド感が崩れず、操作が安定する。

LT/RTのトリガーは押し込むのではなく、奥に倒れ込むように動く

 コントローラは「AYASpace 2.0」から各種設定を変更できる。アナログスティックやトリガーの感度調整や、A/Bボタンの機能を入れ替える日本仕様への変更、各ボタンの連打機能などが用意されている。

アナログスティックの感度調整
A/Bボタンを日本仕様に入れ替える機能も

 下画面の右下にある2つのボタンのうち、AYANEOのロゴが描かれている方を押すと、上画面の右側に「AYASpace 2.0」のインターフェイスが現れる。ゲーム中に本体設定を変更することを想定しているようだ。ただ本機に関しては、多くの設定を下画面の「AYASpace 2.0」ウィンドウで行なえるため、あまり活躍の場面はないかもしれない。

上画面の右側に「AYASpace 2.0」を呼び出せるが、下画面を持つ本機では使う機会が少ない

 もう1つの2本線が描かれた小さなボタンは、ウィンドウを隠してデスクトップを表示する。この機能は「AYASpace 2.0」で変更が可能でスクリーンショット撮影やソフトウェアキーボード呼び出し、Steamのウィンドウを開くなどの機能から選んで変更できる。

2本線のボタンは機能を変更できる

 スピーカーは前面の左右にあり、手で持った時にふさがれない場所に配置してある。音質は若干こもった感じもあるが、そのぶん高音が尖った耳障りな感じがなく、聞き疲れしない。低音はかなり弱めだが、ステレオ感は適度にあり、ゲームの情報としては十分。音量も大きく、コンパクトな筐体であることを思えば、音のバランスはかなり良い。

スピーカーは前面左右にある

 冷却周りは、底面から吸気、背面から排気のエアフロー。ファンはアイドル時でも3,000rpm程度で回っており、高めの回転音が少し聞こえる。うるさくはないが、動作していることははっきり分かる。本体の左右側面はふさがれており、ボタンや端子類はない。

底面のメッシュ状の部分から吸気
背面から排気。USB Type-C端子も背面にある
左右の側面にはボタンや端子類はない

 高負荷時はホワイトノイズのような風切り音が大きくなり、TDPを28Wに上げるとファンの回転数は5,000rpmを超える。それでもゲームの音を出してしまえばさほど気にならない程度で、音質も耳障りな感じが少ない。コンパクトな筐体の割にはうまく対策している。

 排熱状況は、下画面がある本体上部はかなり熱くなる。下画面は全面がかなり熱せられており、アイドル時でも体温より高温になっている。さらにゲームプレイ中など高負荷時にはさらに熱くなり、手で触るのをためらうほど。気軽に情報検索したいのに、画面をタッチするのが嫌になるというのは少々問題だ。

 また手に持ってゲームをプレイしていると、本体左側の側面にも熱が伝わってくる。下画面のように熱くて触れないほどではなく、温かい程度で済んではいるが、冷えた右側面との対比で違和感がある。幸い、左アナログスティックにまでは熱が伝わらないので、ゲームの操作に支障はない。

 USB Type-C接続のACアダプタは、最大65W出力。出力の割にはコンパクトだ。仕様を見るにUSB PDのようなので、試しに筆者所有の27W出力のUSB PD充電器を接続してみたが、充電されなかった。

充電器は65W出力の割にはコンパクト

 最後に「AYASpace 2.0」についてもう少し見ていく。本機はキーボードを持たないため、ゲームパッドやボタンにショートカットを持たせる機能が各種用意されている。具体的には、先に挙げた二重線ボタンのほか、L/Rボタンのさらに内側にあるLC/RCボタンがショートカット機能のカスタマイズに対応。また方向ボタンの上下左右とRT/RBボタンの同時押しにも、スクリーンショットなど4つの機能が固定で割り当てられている。

LC/RCボタンにもショートカット機能を割り当てられる

 このほかパフォーマンス設定やWi-Fi設定、ストレージの状況確認、ソフトウェアアップデートなどの機能も有する。画面上にCPU/GPU使用率などの情報をオーバーレイ表示する機能もあるが、本機の場合は下画面に表示が可能なのであまり必要なさそうだ。ほかにもジャイロ操作をゲームの操作に割り当てる機能も持っている。

PCの状態をオーバーレイ表示できるが、下画面があれば要らないかも

TDP Limitの調整で性能がかなり変わる

 次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2662」、「3DMark v2.28.8217」、「VRMark v1.3.2020」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「Cinebench 2024」、「CrystalDiskMark 8.0.5」。

 本機にはカスタマイズツール「AYASpace 2.0」がプリインストールされており、パフォーマンスを調整できる。あらかじめ「Extreme」、「Balanced」、「Saving Power」という3つのプロファイルが用意されており、ゲーム機として使うのであれば最も高性能な「Extreme」を選ぶのが基本だ。

 ただ「Extreme」の設定でも、TDP Limitが15Wに制限されている。より詳細な設定では、TDPを最大28Wまで引き上げることで、さらにパフォーマンスを上げられる。ほかにもさまざまな設定項目があるのだが、今回は「Extreme」の標準設定であるTDP Limit 15Wと、最大の28Wに変更したものの2パターンでベンチマークテストを行なった。

カスタマイズツール「AYASpace 2.0」
パフォーマンスのプロファイルで「Extreme」を選んでも、TDP Limitが15Wに制限されていた。こちらを28Wに変更するとパフォーマンスがさらに向上するはず
【グラフ1】PCMark 10 v2.1.2662
【グラフ2】3DMark v2.28.8217
【グラフ3】3DMark v2.28.8217 - CPU Profile
【グラフ4】VRMark v1.3.2020
【グラフ5】STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール
【グラフ6】PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator(簡易設定6)
【グラフ7】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質)
【グラフ8】ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(最高品質)
【グラフ9】Cinebench 2024(10 minutes)
【表】バッテリ駆動時間
Idle Battery Life3時間15分
Modern Office Battery Life2時間56分
Gaming Battery Life1時間28分

 「PCMark 10 v2.1.2662」の一部データに異常があったため、その部分だけ省かせていただいた。

 結果としては、フルHDの解像度でも最高画質でのプレイは全体的に難しいという印象だが、内蔵GPUとしては上々だ。120Hzハイリフレッシュレートを活かすなら画質をどこまで落とすかを考える必要は出てくるだろう。とはいえ最高画質でも動作が破綻するほどではなく、ベンチマークテストの映像を楽しみながら見られる程度には動いている。

 TDP Limitを28Wに上げると、パフォーマンスは大幅に改善する。ベンチマークのスコアで見ても、30%前後のパフォーマンス向上が見られる。3Dゲームをプレイする際には、TDP Limitを28Wまで上げるのを前提にしてもいいと思う。TDP Limitは下画面で調整できるので、ベンチマークテスト中にも変更できる。15Wから28Wに上げると、フレームレートがはっきり向上するので見ていて面白い。

 CPUの性能も、TDP Limitを28Wに上げることで、マルチスレッド動作が大幅に改善する。本機に高いCPU負荷をかけ続ける状況は少ないと思われるが、もし必要になったとしても、冷却が間に合わずパフォーマンスが上がらないという状況にはならない。

 SSDはWestern Digital製「SN740 SDDPTQE-2T00」が使われていた。製品スペックでは読み書きとも5GB/s前後となっているが、「CrystalDiskMark 8.0.5」でテストすると、実測は3.5GB/s程度となっている。状況を調べてみると、PCIeが3.0相当の8GT/sで接続されているようだった。それでも動作には何ら不満のない状態ではある。

「CrystalDiskMark 8.0.5」

 また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度は上画面と同じフルHD(1,920×1,080ドット)で実施。

g10.jpg
Fortniteフレームレート
g11.jpg
Apex Legendsフレームレート

 「Fortnite」では、DirectX 12でクオリティプリセットを中とした。フレームレートはTDP Limitが28Wなら平均で約57fpsとかなり快適になる。フレームレートはもう少し上げたいところだが、画質をこれ以上下げるとプレイ感を損なう部分も増えるので、ポータブル機ならこれくらいで上等と思っておくのがいいと思う。

 「Apex Legends」では、画質設定を全て最高に設定。ただしVRAMが6GBなので、テクスチャストリーミング割り当てとスポットシャドウディテールは1段階下の「最高」にしている。フレームレートはTDP Limitが28Wなら平均60fpsを超える。こちらはまだまだ画質調整の余地があるので、さらに高いフレームレートも目指せる。

 ちなみに「AYASpace 2.0」を使うと、ビデオメモリ(VRAM)のサイズを変更できる。標準では6GBとなっているが、最大14GBまで確保が可能。なおここで指定したVRAM容量はメインメモリから削られ、VRAMを6GBに指定した場合、メインメモリはWindowsからは25.8GBと認識されている。

VRAMのサイズは最大14GBまで任意に変更が可能

デュアルディスプレイの仕上がりだけがやや惜しいが、方向性は高く評価したい

 本機についてのまとめを考察する。まず本機はクラムシェル型で、コンパクトに折り畳めるのは利点。最近のポータブルゲーミングPCは、ディスプレイの横にコントローラを設けたものが主流になっているが、どうしてもサイズが大きくなりがち。また持ち運びの際にはディスプレイやコントローラ部を保護するケースもほしい。クラムシェル型は畳めばコンパクトで、ケースがなくても問題ない。

 ポータブルゲーミングPCに物理キーボードはなくてもよい、というのも最近の流行だと考えると、クラムシェル型からキーボードを取り払えば、大きな場所が空く。そのスペースの有効活用としてもう1枚ディスプレイを入れるという発想は、ニンテンドーDSという前例とは関係なく、理にかなっていると言える。

 あとはデュアルディスプレイを便利に使えるかどうかなのだが、本機の仕上がりとしては、「下画面があれば確かに便利だが、もう少し改善してほしい」という気持ちだ。画面サイズを大きくできれば視認性が向上するし、解像度がもう少し高ければ情報検索性も高まる。筐体のスペース的にも、もうちょっとがんばれそうだ。また、タッチしたい下画面が熱いのも問題だろう。騒音の面では優秀だと思うので、冷却周りをもっと強化するか、せめてディスプレイへの熱伝導を抑える工夫がほしかったところではある。

 それ以外の部分に関しては、処理性能はとても優秀だし、ディスプレイの表示性能も十分。コントローラ部の仕上がりもとてもいいし、「AYASpace 2.0」の使い勝手と多機能も良い。クラムシェル型ポータブルゲーミングPCとしては満足度はかなり高い。

 肝心かなめのデュアルディスプレイ周りに不満を抱えるというのは、挑戦的な新製品にありがちな結果ではある。コンセプトとしては正しいと思うので、画面に触れることが少ないとか、よりメリットが大きい使い方があると言える人に選んでいただければいい。クラムシェル型には横長型にないメリットも多いので、今後も改善を続けて次の製品へと繋げてほしい。

意欲的なデュアルディスプレイだが、もう一声といったところ
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 気になるゲーミングPC、AYANEO FLIP DSのレビュー配信を実施します。特徴、性能評価、実動デモ、さまざまな角度から劉デスクが詳しく、楽しく切り込みます!