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3万円PCなどで人気のIntel N100はCore i5にどれだけ健闘できるのか?ブラウジング/表計算/写真補正を動画で同時比較
2024年3月1日 06:01
最近、ノートPCやミニPCにおいて、CPUに「Intel Processor N100」(以降Intel N100)搭載するモデルが注目を集めている。なぜなら、このCPUを搭載するPCは非常に安価だからだ。 ノートPCなら10万円を切り、ミニPCであれば3万円ほどで買えてしまうものまである。
そんなIntel N100について気になってくるのが、実用に耐え得る性能を備えているかどうかだ。今回は3万円~5万円くらいで販売されているIntel N100およびN95を搭載するノートPCと、10万円ほどで売られている第12世代Core i5搭載ノートを用意して実用上の性能を比較することにした。
検証では、実際にWindowsと各種アプリを動かした様子を動画で掲載し、CPUごとのレスポンスの差を体感できるようにしている。Intel N100の実力が気になるなら参考にしてほしい。
Intel N100はどういったCPUなのか?
Intel N100は、第12世代Core「Alder Lake-S」で言うところの省電力な「Eコア」(Alder Lake-N)のみを搭載するCPUだ。つまり高性能なPコアが欠けている。
とは言え、現行世代のCPUコアなので、性能はバカにできない。 コア単体でのパフォーマンスは、たとえば4コア4スレッドのIntel N100が2コア4スレッドのSkylake(Core i3相当)に匹敵するとか、4コア8スレッドのSandy Bridge(Core i7相当)に匹敵するとか言われている。
ただし、SkylakeのCore i3に匹敵するにせよ、Sandy BridgeのCore i7に匹敵するにせよ、前者は8年、後者は12年前のCPUだ。慎重に検討してほしい。「○○をしようと思っていたのに……ダメじゃん」と失望することになる。
冒頭で述べた通り、検証にはCore i5(第12世代)とIntel N100/N95という3種類のノートPCを用意し、実際に動作させてその映像をキャプチャした。
なお、Intel N100とN95は、4コア4スレッド動作と共通で、動作クロックも同じ3.4GHz。内蔵GPUのクロックはN95のほうが1.2GHzで、N100の750Hzよりも高いが、実行ユニット数はN100のほうが8基多い24基といったように、GPU面での違いがある。
さて、今回作成したフローはWebブラウジング、ファイル操作、表計算、写真補正、映像編集の5つ。表計算以降のについてはブラウザで参考ページを開いたり、エクスプローラーからファイルを起動させたりと、アプリケーション単体ではなく実際に使うシーンに寄せている。
これら映像から処理速度を確認したり、各用途における向き不向きを把握したりしていただければ幸いだ。
ブラウジング、ファイル操作、表計算、写真補正、映像編集で検証
ここから実際にPCを操作、アプリケーションを同時に実行した際の比較映像を見ていく。なお、使用したPCのスペックについては後段のセクションで紹介しているので、気になる人は目次から飛ぶなり、そちらを先に見てほしい。スペック表だけは先に置いておこう。
CHUWI GemiBook Xpro | BiTECOOL NC15N | mouse F4 (F4-I5U01OB-A) | |
---|---|---|---|
CPU | Intel N100 (Alder Lake-N) | Intel N95 (Alder Lake-N) | Core i5-1240P (Alder Lake) |
コア数 | Eコア4 | Eコア4 | Pコア4 Eコア8 |
スレッド数 | 4 | 4 | 16 |
最大クロック | 3.4GHz | 3.4GHz | 4.4GHz |
キャッシュ | 6MB | 6MB | 12MB |
TDP | 6W | 15W | 28W(MTP 64W) |
GPU | UHD Graphics | UHD Graphics | Iris Xe Graphics |
クロック | 0.75GHz | 1.2GHz | 1.3GHz |
実行ユニット数 | 24 | 16 | 80 |
メモリ | 8GB(LPDDR5 ) | 16GB(LPDDR5) | 16GB(DDR4) |
ストレージ | 256GB(SATA 6Gbps) | 512GB(PCIe 3.0 x4) | 512GB(PCIe 3.0 x4) |
比較映像についていくつか説明をしておこう。まず、これらは実際に「手」で操作したものではなく、Windows標準の「Power Automate」を用いて自動操作のフローを作成したうえで実行したものだ。いくつか制限があって、キーボード(ショートカットキー)入力や、マウスの座標を指定して操作している。処理の完了を待って次の処理に進むというのがイマイチ難しいため、各処理の間には一定の間(ウェイト)を置いている。そのため、処理が速いPCには待ち時間が生まれる点に注意してほしい。
そして、こうしたウェイトを置いてもなおフローが進むとズレが生じてくる。ここはどうしようもないとご理解いただきたい。これはと思うものは、映像の末尾に途中で生じたズレを補正し、処理時間を測ったものを追加している。
また、レギュレーションではなく機材の問題だが、以降の映像の左下、Intel N100(CHUWI GemiBook Xpro)のみ若干荒れた映像になっている。3台とも本体ディスプレイでフルHDを指定し、それをミラーとしてHDMI出力している。Intel N100(CHUWI GemiBook Xpro)は内蔵ディスプレイについては問題なかったが、HDMI出力については外部ディスプレイを接続してもキャプチャユニットを接続しても、いずれにしても荒れた映像になっていた。個体の問題とは思われるが、解決できなかったので映像はそのままとしている。
それでは実際の映像を見ていこう。
【Webブラウジング】
Webブラウジングやブラウザ上でのメールやSNS、コラボレーションツールの利用は、おそらくIntel N100製品を欲しいと考える方のメイン用途と言えるのではないだろうか。このフローはEdgeで30タブ分のWebサイトを順次開いていく内容だ。
2秒ごとに1タブ開くフローなので30タブ開いても最後のタブまでタイミングは3つのノートでほぼ同じだ。ただし途中、Intel N100(CHUWI GemiBook Xpro)だけ何も表示されないまま次のタブに移ってしまうシーンがあった。Intel N95(BiTECOOL NC15N)が比較的テンポよく表示されていることを考えると、Intel N100の問題はCHUWI GemiBook Xproのメモリ不足にあると思われる。
Intel N100(CHUWI GemiBook Xpro)も10タブくらいまでは軽快で、このあたりに境界がありそうだ。もちろん、そこで次のタブを開かず待っていれば、そのうち表示される。このくらいのラグが許容されるならよいし、タブの数を自制できるなら大丈夫だ。
ただし、タブの数を自制できる方というのは「分かっている方」であって、多くの方には無難に16GBモデルをおすすめする。非力なノートPCだからこそ足回りで快適さを向上させたほうがよいだろう。
そのIntel N100/N95だが、8GBでも16GBでも仕様上シングルチャネルだ。そして16GBが上限である。仮にSO-DIMMだったとしても1スロットなので増設ではなく挿し換えになる。ノートPCの多くは基板上にメモリを実装するため8GBを選んだら16GBにアップグレードすることはできない。
こうした注意点を踏まえて選びたい。安い製品だから、力不足を感じたときには買い換えといった選択ができる方はそれでもよい。ただし、学生期間中は使い続けたいといったように、長期使用を想定して選ぶなら16GBモデルをおすすめする。
【表計算】
マルチタスクを想定し、EdgeブラウザでExcelの参考となるサイトを8タブ表示した後、エクスプローラーからExcelファイルを開き、その上でデータ抽出を行なうフローを組んだ。Excelファイルは容量が108MBほどあり、シート1のB2セルにはデータ抽出を行なうための数式、シート2(100K)はデータが入っておりそのサイズは10万行×244列とした。
何を抽出するかだが、まずデータは多少加工されているもののHWiNFO64で取得したもので、PC稼働中のクロックや温度などのログが入っている。そしてシート1のA2セルはリストとして、温度「℃」とクロック「MHz」を選ぶ仕様となっている。B2セルに入っている数式は、
=IF(A2<>"",FILTER('100K'!B1:IJ100001,IFERROR(FIND(A2,'100K'!B1:IJ1),0),""),"")
とシンプルなもの。Excel 2019以降またはMicrosoft 365で利用できるスピルを使っている。注意してほしいのはまさにここで、たとえばデータ抽出で昔から使われているVLOOKUP関数で組むと計算処理にかなりの時間を要する。Excel 2019よりも前に組んだExcel集計ファイルを使いまわしているような場合、この映像のようなレスポンスは期待できない。
集計ファイルを作り直すというのは手間がかかり誰もやりたくないものだが、Excelも定期的に機能や関数が追加されており、業務効率を改善したいなら定期的にメンテナンスしたほうがよい。また、(スピルに対応していない)古いバージョンのアプリケーションを使いまわしている場合も時間を無駄にしている可能性がある。
さて、 このExcelの映像ではIntel N100(CHUWI GemiBook Xpro)も、Intel N95(BiTECOOL NC15N)も軽快に動作している。Core i5(mouse F4-I5U01OB-A)に対する遅れはIntel N95で1秒程度、Intel N100はもうワンテンポ程度だ。
今回は約100MBほどの比較的大きなデータを用いたが、実務で利用するデータ量はどのくらいだろうか。複数に分かれたファイルをパワークエリで集計する……といった場合は今回よりも大きなデータ、複雑な計算処理になると思われる。この映像の通りになるとは限らない。業務向けでIntel N100/N95の性能で十分という結論は急ぎすぎかもしれない。
一方で、学生がデータを取りまとめる、プライベートで家計簿のような、 小規模な集計を行なうならご覧の通り、Intel N100/N95の性能でなんら問題ない。Webブラウザでの作業、業務ではないところの表計算といった具合で、これだけで家庭向けのPCニーズの大半をまかなえそうな印象だ。
【ファイル操作】
写真(RAW形式)ファイルが詰まったフォルダをエクスプローラーで開き、サムネイルサイズを切り換えてレスポンスを比較、そこから17ファイルを選んでZip圧縮して、最後に解凍開操作を行なうフローを組んだ。
エクスプローラーを開いてからサムネイルのサイズ切り換え、ファイルを選択するところまで3つのノートに顕著な差はない。ただし、予想通り、 圧縮で大きな差が付いた。Core i5は35秒、N95は50秒、N100は53秒だった。
また、解凍はまだマシだが、Core i5の10秒に対し、N95とN100は14秒を要した。ファイル圧縮と解凍については、CPU性能が大きく影響しつつ、CHUWI GemiBook Xpro(Intel N100)とBiTECOOL NC15N(Intel N95)の差の通り、ストレージ性能も影響する。
性能のよいPCを使えば快適なのは当たり前だ。ただ、現在のPCにおいてファイル圧縮を行なう頻度はどのくらいだろうか。業務では確かに今でも使うが、プライベートではここ数年ファイル圧縮を行なうことはほとんどない。
解凍についてはソフトウェア配布がZip形式であることが多いので頻繁に使うにせよ、映像の通り、圧縮と比べれば短時間だ。プライベート用途前提なら、Intel N100/N95でも大して不満はなさそうではある。
【写真補正】
ここからはそもそもCPU性能がものを言うクリエイティブ系アプリケーション。まずは写真補正としてPhotoshopの動作を見てみた。
用いたデータはRAWファイル2点、PSDファイル1点。処理はRAW現像とHDRトーン、露出量、ガンマ、リサイズ、不透明度、ぼかし(移動)などだ。Excelの際と同様、まずWebブラウザでPhotoshopの参考サイトを7タブ開いているほか、RAWファイルはエクスプローラーから開く操作をしている。
CPU性能という点でCore i5に対してIntel N100/N95はハンデを負っているが、特にIntel N100のCHUWI GemiBook Xproはメモリが8GBという点で二重のハンデを負っている。そのため、1枚目のRAWファイルを処理している最中に処理が追いつかなくなった。
ただし、注意してほしいのはこのフローが処理と処理の間に「ウェイト」時間を設けている点だ。ウェイト時間内に完了できればIntel N95のような結果になり、ギリギリでも間に合えば次に進むことができる。ウェイトは各PCの性能を見積もった上で筆者の独断で決定したもので、たとえばウェイト時間を極端に長くとればIntel N100も完走できただろう。1つ補足だが、Intel N95も完走できたのは数回に1回の割合いだ。
なお、ウェイト時間を加えたためにCore i5とIntel N95の差が分かりづらくなっているが、ウェイト時間を詰めればCore i5のほうが断然速い。ストレスなく結果を返してくれることはクリエイティブワークにとって重要な要素だと思う。だからハイアマチュアやプロにとってIntel N100/N95という選択肢はないだろう。一方、いくら遅いと言っても「クリエイティブ系アプリをIntel N100/N95で使うのはやめたほうがよい」とまでは言わない。そこを説明したい。
まず、プライベート用途。Intel N100というよりもメモリが8GBしかないCHUWI GemiBook Xproも、メインメモリを使い切り、仮想メモリを使いだし、処理に時間がかかるものの、待っていれば完了するので次の処理に進める。
BiTECOOL NC15N、というか Intel N100/N95でもメモリが16GBならもう少し快適だ。処理する写真の枚数がそこまで多くないならば、家族写真やペットの写真、週末旅行の風景写真くらいの補正ならIntel N100/N95でもなんとかなりそう……と考えられる。
また、もう1つ考えられるのがこれからクリエイターになろうという学生。社会人と比べれば予算もきついだろう。高性能で高価なノートを目標にしてしまうと、それを購入できるまで数カ月、(学割が効くと言っても)ソフトウェアの購入にまたバイトなんてこともザラだろう。Intel N100/N95なら、一式揃うまでの期間を短縮できる。もちろんCore i5ほどの快適さは得られないが、できるだけ早くスタートを切ってスキルを身に付けることのほうが重要な場合もあるだろう。
【映像編集】
最後は最難関の映像編集。DaVinci Resolve Studio 18で映像を取り込み、プレビュー再生、H.265で出力した。映像ソースは解像度がフルHD(1,920×1,080ドット)で120fps、フォーマットはMPEG-4 AVC、時間は2分21秒。トランジションなどエフェクトは一切かけていない純粋なトランスコードなので実務的ではないが、そもそもIntel N100/N95には荷が重そうだったのでこのように軽めのフローとした。
このテストもIntel N100/N95ノートの完走率は低かったが、ギリギリ完走できた映像が撮れたのでそれを用いている。基本的にメモリ搭載量が小さいと、クリエイティブ系のアプリケーションを動作させるのはキビシイ。CPU性能が低いとウェイト時間中に間に合わなくなるというシーンが多発する。
DaVinciを起動する段階からIntel N100(CHUWI GemiBook Xpro)に遅れが目立つが、Intel N95(BiTECOOL NC15N)よりも顕著に遅いのはなぜだろう。アプリケーション起動段階なのでまだメモリ容量は使い切っていない。CPU性能もIntel N100とN95でそれほど差はないため、残るはストレージ性能だ。
後述するPCMark 10のApp Start-upでもほとんど同じなのだが、ここがSSDの性能評価で難しいところでアプリケーションが違えば結果も違ってくる。PCMark 10のApp Start-up(で用いられるアプリケーション)はSATA SSDのハンデがあまり出ず、一方DaVinciではモロに出たということだ。基本的にはすでにスタンダードとなっているNVMe SSDを搭載したモデルのほうが安心と言える。
クリップ取り込みからプレビュー再生にかけてはスムーズだ。ただしこの映像キャプチャ時、すでにキャッシュが作成されているからという要因が大きい。そのPCで初めてフローを実行する際、まだキャッシュが作成されていない段階ではプレビューはガクガクでとてもスムーズとは言えない。Core i5よりも、Intel N100/N95のほうがCPU性能で劣る分キャッシュ作成に時間を要していた。
そして当然だが、 トランスコード処理では大差が付いた。動画の最後に、出力部分のみを再度タイミングを合わせて切り出したものを加えている。Core i5は32秒、Intel N100は47秒、N95は43秒だった。
10秒以上とは言え思ったほどの時間差ではないのは、扱っている映像自体が2分21秒と短いことがまず1つ。2つ目はたとえハードウェアエンコーダを搭載していてもそこですべての処理が行なわれるわけではなく、CPU処理もメモリ転送もストレージの読み書きもあるためだ。
一応3つのノートとも処理が完走することは分かったが、たとえばクリップを増やし、トランジションを加え、音楽を乗せて……と処理を複雑にしていけばいくだけCPUの負担、GPUの負担、メモリの負担、ストレージの負担が増えていく。
Intel N100/N95の場合、メモリがシングルチャネルで上限16GBという制限もある。基本的にIntel N100/N95で動画編集するのは、この映像以上に大変なことになるだろう。 快適に動画編集したいなら、CPU性能の高いPCのほうがよいし、CPUだけでなくトータル性能のよいPCのほうがよい。ストレートに言えば、GeForceといったディスクリートGPUも搭載していたほうがよい。
使用したIntel N100/N95、Core i5のノートPC
今回使用した3台のノートPCを紹介していこう。
【Intel N100】CHUWI「GemiBook XPro」
Intel N100(Eコア4、計4スレッド)を搭載する14.1型ノートPC。ディスプレイ解像度は1,920×1,080ドット。直販価格で3万6,900円。メモリは8GB(シングルチャネル)でLPDDR5-4800、ストレージは256GBでSSD(SATA)を採用している。
【Intel N95】BiTECOOL「NC15N」
Intel N95(Eコア4、計4スレッド)を搭載する15.6型ノートPC。ディスプレイ解像度は1,920×1,080ドット。現在は後継モデルと思われる製品が販売されているが、およそ4万円台半ばだ。メモリは16GB(シングルチャネル)でLPDDR5、ストレージは512GBでSSD(NVMe)を採用している。
【Core i5】マウスコンピューター「mouse F4-I5U01OB-A」
Core i5-1240P(Pコア4、Eコア8、計16スレッド)を搭載する14型ノートPC。ディスプレイ解像度は1,920×1,080ドット。直販価格で10万9,800円から。メモリは8GB(シングルチャネル)でDDR4-3200、ストレージは512GBでSSD(NVMe)を採用している。
Intel N100とN95は実際のところCPU部分はほぼ同じだ。同コア数、同クロックで、TDPがN100は6W、N95は15Wといった違いになる。ただ、GPUは結構違う。実行ユニット数で言うとN100は24基、N95は16基。しかし、GPUクロックはN95のほうが高い。
一方で、CHUWI GemiBook Xproのみメモリが8GB、ストレージがSATA SSDという点でCPU以外のところでも性能差はある。これらよりも高性能と見られるmouse F4もメモリがDDR4でDDR5と比べれば低クロックだ。メモリ性能(主に容量)についてはベンチマークでの差が出やすい。
定番ベンチマークの結果
それでは定番ベンチマークの結果を見ていこう。
まずはストレージ性能をCrystalDiskMarkで計測した結果だ。Intel N100(CHUWI GemiBook Xpro)は今回唯一のSATA 3.0接続なので当然遅い。リードで見るとシーケンシャルはCore i5(mouse F4-I5U01OB-A)の21%、もっとも速いIntel N95(BiTECOOL NC15N)の16%の速度でしかなく、ランダムも明確に劣っている。ライトについてはリードよりは差が小さくなるが、基本的には同様だ。
PCMark 10。OverallはCore i5だけが飛び抜けて5,397ポイント、Intel N100/N95の2台はともに3,000ポイント台なのでCore i5の56~58%のPC性能といったところ。Intel N100とN95の性能差は105ポイント程度でそれほど大きくはなかった。
PCMark 10でストレージ要因が大きいEssentialsシナリオのApp Start-upテストの結果は興味深い。CrystalDiskMarkのときとは様相が変わり、まずCrystalDiskMarkでは2番手だったCore i5がトップに、もっとも速いNVMe SSDを搭載していたはずのIntel N95が2番手、CrystalDiskMarkでは大きく引き離されていたIntel N100が僅差で3位だ。
App Start-upは実際のアプリケーションを起動して計測するテストだが、こうなるとストレージ性能だけではなく、CPU性能やメモリアクセス速度も関わってくる。Core i5がトップという点で、CPU性能がかなり重要だということが分かる結果だ。そのほかのテストも、基本的にCore i5がほかを大きく引き離す結果だ。
CPU性能はCinebench R23で見ておきたい。およそCPUスペックから予想される通りだが、Intel N100のほうが、Intel N95よりも若干高スコアだった。最大クロックはスペック上同等、TDPが低く設定されているIntel N100のほうが高スコアというのは意外だが、実際のTDPやクロックはそのPCの冷却性能や設定で変わってくるためこうした結果になってもおかしくはない。
結論:Intel N100/N95は実用的かつ価格が魅力
検証を終えた感想として、まずIntel N100/N95は想像以上に使えた。やはりAtomとは違う。クリエイティブ系アプリケーションや、ファイル操作の圧縮・解凍以外ならそれほど顕著な性能差にはならなかった。ブラウジングに表計算、これだけで足りるという方も結構多いのではないだろうか。 もちろんもっと使い込めば分からないが、なにしろ安い。ノートPC必要だけど予算が……と悩んでいる方にもよいだろう。まずは触れてみないことには始まらない。
Intel N100/N95を選ぶ際は、メモリ搭載量とストレージの速度に注意したい。 もともと現在の基準からすれば低性能のCPUである。すべてをケチると早々と不満が出てくるだろう。CPUをケチった分、ほかを(少し)贅沢にしてあげると幸せになれる。 メモリは16GBに、ストレージもそこそこの世代のNVMe SSDとしたほうがよい。
先の通り映像的にはIntel N100/N95で広範囲をカバーできそうな印象を受けてしまうかもしれないが、ことビジネスについては積極的にはおすすめできない。Excelもそこそこ動いているが、実際に用いるデータ量で試してみないことには判断できない。使っている関数やアプリケーションのバージョンによる問題もある。不確定要素があるなら素直にCore搭載PCを選んだほうがよい。
それにビジネスでは与えられたタスクに対して軽快にレスポンスを返してくれることも重要だ。ストレスはできるだけ少ないほうがよい。性能面での余裕も必要だ。アプリケーションは毎年のようにアップデートされ、利便性が増す代わりに処理が重くなることもある。ビジネスシーンで一番売れるのがCore i5(または「5」のグレードのCPU)となるのはちゃんとした理由があるのだ。
なお、最後にファイルの圧縮、解凍、トランスコードと、時間を計測した3つをピックアップしてCore i5を100%とした際のIntel N100、Intel N95がどのくらいの割合いかを計算してみた。
結果、Core i5に対して、Intel N100は68.5%、N95は71.%だった。PCMark 10のOverallは順に55.8%、57.7%なのでそれよりは差が縮まっている。ただ、さすが実アプリケーションを利用しているPCMark 10だけあって実運用に近いとも言える。ここで紹介した以外のPCでも、普段使い想定の性能比較をするならPCMark 10 Standardのスコアが最適と言えるだろう。