Hothotレビュー
「X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODEL」がついに発売。初の一般向けモデルは何が変わったのか?
2023年9月21日 06:21
ZUIKIは、シャープの伝説のパーソナルワークステーション「X68000」のリメイク版「X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODEL」を9月28日に発売する。記事執筆時点で、Amazon瑞起ショップで予約を受け付け中だ。
リメイク版である「X68000 Z」は、2022年12月に「HACKER'S EDITION」が一部開発者に提供され、2023年3月28日より「EARLY ACCESS KIT」が出荷された。今回のPRODUCT EDITION BLACK MODELは一般販路を通じて販売される初めてのX68000 Zとなる。発売前に本製品の実機を借用したので、主にハードウェアデザインや、最新ソフトウェアについてレビューしていこう。
スターター、ベーシック、コンプリートの3つのセットを用意
PRODUCT EDITION BLACK MODELには、スターターパック(2万9,535円)、ベーシックパック(6万5,780円)、コンプリートパック(8万7,780円)の3種類が用意されている。今回ZUIKIより借用したのはコンプリートパックだ。各パックの内容物は以下の通り。
スターターパック
本体、グラディウス、ジョイカード、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、システムディスク、ギャランティーカード、クリアファイル
ベーシックパック
本体、グラディウス、ジョイカード、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、システムディスク、ギャランティーカード、クリアファイル、キーボード、マウス
コンプリートパック
本体、グラディウス、ジョイカード、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、システムディスク、ギャランティーカード、クリアファイル、キーボード、マウス、X68000 Zモニター、ゲームコレクションVol.1、X68000 Zのテーマ曲CD、UARTケーブル
なお今回借用したのはあくまでもサンプルであり、ゲームパック(ゲームコレクションVol.1)の表紙が異なること、ゲームパックのSDメモリカードケースとSDメモリカードは量産版と色味が異なる可能性があること、システムディスク、グラディウス、ジョイカードは実際には本体と同じ化粧箱に入ること、マウスの化粧箱が仮のものであることは、くれぐれも注意してほしい。
スペックをおさらいしておくと、PRODUCT EDITION BLACK MODELはソフトウェアに「X68000エミュレータ」、SoCに「ZUIKI Z7213 SoC」を採用。メモリは512MB(DDR3)、ストレージは512MB(NAND)を搭載している
インターフェイスはUSB×4、HDMI、UART端子、電源用USB Type-C端子、SDメモリカードスロット×2を用意。
サイズ/重量は、本体が151×64×114mm/実測396.5g、キーボードが466×40×197mm/約1,450g、マウスが73×40×118mm/実測190.7g、ディスプレイが実測146×160×170mm/673g(スタンド含む)、ジョイカードが実測130×57×17mm/121gだ。
なお、PRODUCT EDITION BLACK MODELのマシンスペックはHACKER'S EDITION、EARLY ACCESS KITと同一だが、リセットがハードリセットからソフトリセットに変更され、マウスについてもEARLY ACCESS KITでは片側のみだったサイドボタンがオリジナルのX68000と同様に左右両側に装備されている。
本体とX68000 Zモニターについてはサイズが2分の1以下だが、さらに再現性が向上しているわけだ。模型としての完成度も高く、写真で見ているとオリジナル版だと勘違いしそうになるほどだ。
なお、X68000 Z キーボード(ブラック)(2万9,500円)、X68000 Zマウス(ブラック)(9,680円)、X68000 Z ジョイカード(ブラック)(5,478円)、UARTケーブル(5,478円)、X68000 Z ACアダプター65W(USB Type-C)(7,480円)については、Amazon瑞起ショップで単体購入可能だ(発売日は9月28日)。
スターターパックが2万9,535円で、それにキーボード、マウスを加えるだけで6万8,715円となるが、コンプリートパックには、ベーシックパックにさらにX68000 Z モニター、ゲームコレクションVol.1、X68000 Zのテーマ曲CD、UARTケーブルが追加される。お買い得なのは間違いない。
実際にPRODUCT EDITION BLACK MODELを使ってみた
さて筆者はHACKER'S EDITIONを前回のレビュー記事のために試用してから、その後のアップデートについては体験していない。そこで今回は最新バージョンのソフトウェアが適用されているPRODUCT EDITION BLACK MODELがどのような環境になっているのか、改めてレビューしていこう。
コンプリートパックに入っている本体、モニター、キーボード、マウス、ジョイカードを接続したのち電源を入れると、画面には「ZUIKI」と「X68000 Z」のロゴが表示されたのち、「ディスクから起動できません。正しいディスクをセットしてください。」というメッセージが表示された。
最初から躓いたのでまずはマニュアルに目を通すと、工場出荷時のブート設定は「X68000エミュレータ(X68000 Emulator)」になっており、上記のメッセージが表示されるのが正常な状態とのこと。やはりマニュアルは読むべきだ。本当に申し訳ない。
ただ、HACKER'S EDITION、EARLY ACCESS KITを購入するようなアーリーアダプターなら問題ないが、いわゆる「クラシックゲーム機」の延長線上のガジェットとして購入する方はちょっと戸惑うかもしれない。とは言えマニュアルにはしっかり起動方法が解説されているので安心してほしい。
以降はマニュアルの指示に従って操作を行なった。まず電源をオンにしたまま本体上部のINTERRUPTボタンを押し続けながらRESETボタンを押すと、「X68000 Z Setup utility」が表示される。ここの「Boot setting」で「X68000 Z Launcher」を選択して、「Exit」を実行するとX68000 Zが自動的に再起動する。そうすると今度は、「X68000 Z ゲームランチャー(X68000 Z Launcher)」が起動する。
このX68000 Z ゲームランチャーはクラシックゲーム機、エミュレータソフトのようなインターフェイスだ。一応ここでもマニュアルを見つつ操作したが、読まなくても問題はなかっただろう。設定を変えてしまっても、手軽に「初期化」できるのでやり直しは簡単だ。
X68000 Z ゲームランチャーの左側には、「SD:0」、「SD:1」、「X68000 エミュレータ(X68000 Emulator)」、「コミュニティ(Community)」、「設定(Settings)」のアイコンが表示されている。「SD:0」、「SD:1」に対応するSDメモリカードスロットにゲームのSDメモリカードを入れて実行すれば、ゲームのサムネイルが表示される。さらに、そのサムネイルアイコンを実行し、「NEW GAME」を押せばゲームが起動するわけだ。
クラシックゲーム機のようにゲームが一覧表示されているわけではないが、シンプルで分かりやすいランチャーだと思う。ゲームではセーブ、ロード機能も利用できるので、難易度が高いゲームであってもクリアしやすいだろう。
一方、「システムディスク」を入れても「SD:0」と「SD:1」にサムネイルは表示されない。X68000 Z ゲームランチャーからシステムディスクを起動する場合には、システムディスクをSDメモリカードスロットに入れた状態で「X68000 エミュレータ(X68000 Emulator)」を実行する。そうすると、「Huamn68k version 1.00」の起動画面が表示されたのち、ビジュアルシェル「VS.X」が起動する。
前回「HACKER'S EDITION」を試用した際には、ビジュアルシェル「VS.X」が含まれていなかった。36年ぶりに見たビジュアルシェル「VS.X」は、「グラディウス」以上に懐かしさを感じる。ただ久しぶりに触ってみて、ビジュアルシェル「VS.X」を実際にはほとんど使わなかったことも思い出した。需要は少ないかもしれないが、個人的には「SX-Window」や「OS-9」をぜひ触ってみたいと思う。
最後にお遊びとしてWindows搭載ノートPCにX68000 Z モニターを接続してみた。これはブラウン管風のモニターだが、デバイスとしては1,024×768ドット、60Hzの液晶モニターだ。ノートPCに接続すれば、普通のモニターと同様にそのまま利用できる。ただしUSB Type-C端子は電源供給専用なので、映像信号は送れない。映像を入力するためにはHDMI端子経由で接続する必要がある。
それにしてもサイズ感がなんとも可愛らしい。そしてX68000のモニターと同じフォルムなのだから、元ユーザーとしてはたまらない。今回は「サイバーパンク2077」をプレイしてみたが、メールソフトやSNSのタイムラインなどを表示するサブモニターとして非常に重宝しそうだ。現時点ではAmazon瑞起ショップでは購入できないが、単体で販売されることを強く期待したい。
ZUIKIがロードマップの先を描き、現実化できるように、個人的にも応援したい
前述の通り、X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODELは9月28日に一般ユーザー向けに発売される。人気ゲーム「ジェノサイド」と「ファランクス」がセットになった「ZOOMパックI」が8月8日に発売され、4本のゲームがセットになった「EXACT PACK」が今冬にリリースされるなど少しずつゲームソフトも増えてきている。個人的には「源平討魔伝」や「ドラゴンスピリット」が収録された「ナムコパック」が発売されることを期待している。
今回のX68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODELは、X68000 ZロードマップのPhase 3。ロードマップには、「ゲームコレクションVol.1やVol.2の販売など」、「もしも、XVIモデルやX68030の『次』があったなら・・・」という文言も記載されている。今後もZUIKIがロードマップの先を描き、現実化できるように、個人的にも応援していきたいと思う。