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「X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODEL」がついに発売。初の一般向けモデルは何が変わったのか?

ZUIKI「X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODEL」2万9,535円~8万7,780円

 ZUIKIは、シャープの伝説のパーソナルワークステーション「X68000」のリメイク版「X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODEL」を9月28日に発売する。記事執筆時点で、Amazon瑞起ショップで予約を受け付け中だ。

 リメイク版である「X68000 Z」は、2022年12月に「HACKER'S EDITION」が一部開発者に提供され、2023年3月28日より「EARLY ACCESS KIT」が出荷された。今回のPRODUCT EDITION BLACK MODELは一般販路を通じて販売される初めてのX68000 Zとなる。発売前に本製品の実機を借用したので、主にハードウェアデザインや、最新ソフトウェアについてレビューしていこう。

スターター、ベーシック、コンプリートの3つのセットを用意

 PRODUCT EDITION BLACK MODELには、スターターパック(2万9,535円)、ベーシックパック(6万5,780円)、コンプリートパック(8万7,780円)の3種類が用意されている。今回ZUIKIより借用したのはコンプリートパックだ。各パックの内容物は以下の通り。

スターターパック

本体、グラディウス、ジョイカード、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、システムディスク、ギャランティーカード、クリアファイル

ベーシックパック

本体、グラディウス、ジョイカード、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、システムディスク、ギャランティーカード、クリアファイル、キーボード、マウス

コンプリートパック

本体、グラディウス、ジョイカード、HDMIケーブル、USB Type-Cケーブル、システムディスク、ギャランティーカード、クリアファイル、キーボード、マウス、X68000 Zモニター、ゲームコレクションVol.1、X68000 Zのテーマ曲CD、UARTケーブル

 なお今回借用したのはあくまでもサンプルであり、ゲームパック(ゲームコレクションVol.1)の表紙が異なること、ゲームパックのSDメモリカードケースとSDメモリカードは量産版と色味が異なる可能性があること、システムディスク、グラディウス、ジョイカードは実際には本体と同じ化粧箱に入ること、マウスの化粧箱が仮のものであることは、くれぐれも注意してほしい。

今回借用したのはコンプリートパック
「X68000 Zのテーマ曲CD」と「ゲームコレクションVol.1」が同梱されるのはコンプリートパックだけ。ただし「ゲームコレクションVol.1」は後日単品販売される予定だ

 スペックをおさらいしておくと、PRODUCT EDITION BLACK MODELはソフトウェアに「X68000エミュレータ」、SoCに「ZUIKI Z7213 SoC」を採用。メモリは512MB(DDR3)、ストレージは512MB(NAND)を搭載している

 インターフェイスはUSB×4、HDMI、UART端子、電源用USB Type-C端子、SDメモリカードスロット×2を用意。

 サイズ/重量は、本体が151×64×114mm/実測396.5g、キーボードが466×40×197mm/約1,450g、マウスが73×40×118mm/実測190.7g、ディスプレイが実測146×160×170mm/673g(スタンド含む)、ジョイカードが実測130×57×17mm/121gだ。

 なお、PRODUCT EDITION BLACK MODELのマシンスペックはHACKER'S EDITION、EARLY ACCESS KITと同一だが、リセットがハードリセットからソフトリセットに変更され、マウスについてもEARLY ACCESS KITでは片側のみだったサイドボタンがオリジナルのX68000と同様に左右両側に装備されている。

 本体とX68000 Zモニターについてはサイズが2分の1以下だが、さらに再現性が向上しているわけだ。模型としての完成度も高く、写真で見ているとオリジナル版だと勘違いしそうになるほどだ。

本体前面。左側にはSDメモリカードスロット×2、下部にはヘッドフォン端子、パワースイッチ、ボリューム調節を用意
本体背面。右側にUART端子、HDMI、USB Type-A×4、電源用USB Type-C端子を配置。左側のフタは開けられる
左側面
右側面
本体上面。RESETスイッチ、INTERRUPTスイッチは実際に機能する
本体下面
キャリングハンドルはプッシュイン・プッシュアウト方式

 なお、X68000 Z キーボード(ブラック)(2万9,500円)、X68000 Zマウス(ブラック)(9,680円)、X68000 Z ジョイカード(ブラック)(5,478円)、UARTケーブル(5,478円)、X68000 Z ACアダプター65W(USB Type-C)(7,480円)については、Amazon瑞起ショップで単体購入可能だ(発売日は9月28日)。

 スターターパックが2万9,535円で、それにキーボード、マウスを加えるだけで6万8,715円となるが、コンプリートパックには、ベーシックパックにさらにX68000 Z モニター、ゲームコレクションVol.1、X68000 Zのテーマ曲CD、UARTケーブルが追加される。お買い得なのは間違いない。

X68000 Z モニター。4:3の液晶パネルと湾曲したアクリルパネルを組み合わせることで、ブラウン管の雰囲気を再現。電源ボタンはオン・オフ操作が可能だ
左側面
右側面
上面
下面にはVolume(ボリューム)、Backlight(バックライト)、Contrast(コントラスト)ボタンが用意
背面には3.5mmオーディオ出力、HDMI、USB Type-C(電源供給用)を用意
スタンドはチルト調節可能だ
X68000 Z キーボード(ブラック)(2万9,500円)
キーボードのサイズは466×40×197mm
キーボード面の角度は3段階に調節できる。右下のスイッチではX68000とWindowsのキーレイアウトに切り替えられる
X68000 Zマウス(ブラック)(9,680円)
マウスのサイズは73×40×118mm。片側のみだったサイドボタンがオリジナルのX68000と同様に左右両側に装備
上面のカバーを開けるとトラックボールが現われる
底面のスイッチでマウスモードとトラックボールモードを切り替え可能だ
X68000 Z ジョイカード(ブラック)(5,478円)
ジョイカードのサイズは130×57×17mm。方向ボタン、連射機能付きA/Bボタンのほかに、上面にはLボタンとRボタン、下面にはSELECTボタンとSTARTボタンが配置
背面
本体の実測重量は396.5g
X68000 Zモニターの実測重量は673g
キーボードの実測重量は1,377.5g
ゴム製台込みのマウスの実測重量は190.7g
ジョイカードの重量は121.1g

実際にPRODUCT EDITION BLACK MODELを使ってみた

 さて筆者はHACKER'S EDITIONを前回のレビュー記事のために試用してから、その後のアップデートについては体験していない。そこで今回は最新バージョンのソフトウェアが適用されているPRODUCT EDITION BLACK MODELがどのような環境になっているのか、改めてレビューしていこう。

キーボード、マウス、ジョイカードは原寸なのに、本体とモニターが2分の1以下のサイズなので、設置すると頭がバグる
写真から本体とモニターだけを切り出すと、オリジナルのX68000そのもの。本体だけでなくモニターの動作インジケータも点灯するという驚異の再現度だ

 コンプリートパックに入っている本体、モニター、キーボード、マウス、ジョイカードを接続したのち電源を入れると、画面には「ZUIKI」と「X68000 Z」のロゴが表示されたのち、「ディスクから起動できません。正しいディスクをセットしてください。」というメッセージが表示された。

 最初から躓いたのでまずはマニュアルに目を通すと、工場出荷時のブート設定は「X68000エミュレータ(X68000 Emulator)」になっており、上記のメッセージが表示されるのが正常な状態とのこと。やはりマニュアルは読むべきだ。本当に申し訳ない。

 ただ、HACKER'S EDITION、EARLY ACCESS KITを購入するようなアーリーアダプターなら問題ないが、いわゆる「クラシックゲーム機」の延長線上のガジェットとして購入する方はちょっと戸惑うかもしれない。とは言えマニュアルにはしっかり起動方法が解説されているので安心してほしい。

電源をオンするとまず「ZUIKI」のロゴが表示
続いて「X68000 Z」の文字が映し出される
工場出荷時のブート設定は「X68000エミュレータ(X68000 Emulator)」になっており、正常に動作した場合は「ディスクから起動できません。正しいディスクをセットしてください。」というメッセージが表示される

 以降はマニュアルの指示に従って操作を行なった。まず電源をオンにしたまま本体上部のINTERRUPTボタンを押し続けながらRESETボタンを押すと、「X68000 Z Setup utility」が表示される。ここの「Boot setting」で「X68000 Z Launcher」を選択して、「Exit」を実行するとX68000 Zが自動的に再起動する。そうすると今度は、「X68000 Z ゲームランチャー(X68000 Z Launcher)」が起動する。

 このX68000 Z ゲームランチャーはクラシックゲーム機、エミュレータソフトのようなインターフェイスだ。一応ここでもマニュアルを見つつ操作したが、読まなくても問題はなかっただろう。設定を変えてしまっても、手軽に「初期化」できるのでやり直しは簡単だ。

電源をオンにしたまま本体上部のINTERRUPTボタンを押し続けながらRESETボタンを押すと、「X68000 Z Setup utility」が表示される
X68000 Z Setup utilityには、「Boot setting」、「Clock setting」、「Emulator setting」、「Font change」、「Manual boot」、「Factory Rest」、「Exit」の項目が用意。まずはClock settingだけ合わせておくといいだろう
ゲームをプレイする場合には「Boot setting」で「X68000 Z Launcher」を選択
「Exit」を選択するとX68000 Zが自動的に再起動する

 X68000 Z ゲームランチャーの左側には、「SD:0」、「SD:1」、「X68000 エミュレータ(X68000 Emulator)」、「コミュニティ(Community)」、「設定(Settings)」のアイコンが表示されている。「SD:0」、「SD:1」に対応するSDメモリカードスロットにゲームのSDメモリカードを入れて実行すれば、ゲームのサムネイルが表示される。さらに、そのサムネイルアイコンを実行し、「NEW GAME」を押せばゲームが起動するわけだ。

 クラシックゲーム機のようにゲームが一覧表示されているわけではないが、シンプルで分かりやすいランチャーだと思う。ゲームではセーブ、ロード機能も利用できるので、難易度が高いゲームであってもクリアしやすいだろう。

初回起動時と同じようにZUIKIとX68000のロゴが表示されたあと、X68000 Z ゲームランチャーが起動する
SDメモリカードスロットにゲームのSDメモリカードを入れた状態で、カーソルキーで「SD:0」または「SD:1」を選択して「Enter」を押すと、ゲームのサムネイルが表示される。ファイルの実体が表示されるわけではない点に注意
下から2つ目のアイコンを実行すると、コミュニティサイトにアクセスするためのQRコードが表示される
一番下の歯車アイコンを実行すると、「本体スピーカー出力」、「ディスク読込再現」、「日時設定」、「権利表記」、「スタッフクレジット」、「初期化」ボタンが表示される
ゲームのサムネイルを実行すると、そのゲームの解説が表示される。「NEW GAME」を押すとゲームスタート。「SLOT 1~3」を押すとセーブデータが読み込まれる
X68000 Z ゲームランチャーからの「グラディウス」の起動は3秒以下と高速。ゲームの再現度は申し分ない
ゲーム起動中に「BREAK」キーまたは本体上部のINTERRUPTボタンを押すと、「ポーズメニュー」が表示される
こちらは「ゲームコレクションVol.1」に含まれる「MAD STALKER X68K Z」
本作は1994年にファミリーソフトから発売された横スクロールアクションゲームだ

 一方、「システムディスク」を入れても「SD:0」と「SD:1」にサムネイルは表示されない。X68000 Z ゲームランチャーからシステムディスクを起動する場合には、システムディスクをSDメモリカードスロットに入れた状態で「X68000 エミュレータ(X68000 Emulator)」を実行する。そうすると、「Huamn68k version 1.00」の起動画面が表示されたのち、ビジュアルシェル「VS.X」が起動する。

 前回「HACKER'S EDITION」を試用した際には、ビジュアルシェル「VS.X」が含まれていなかった。36年ぶりに見たビジュアルシェル「VS.X」は、「グラディウス」以上に懐かしさを感じる。ただ久しぶりに触ってみて、ビジュアルシェル「VS.X」を実際にはほとんど使わなかったことも思い出した。需要は少ないかもしれないが、個人的には「SX-Window」や「OS-9」をぜひ触ってみたいと思う。

X68000 Z ゲームランチャーを起動した状態で、SDメモリカードスロットにシステムディスクのSDメモリカードを入れて「X68000 エミュレータ(X68000 Emulator)」を実行する
すると「Huamn68k version 1.00」の起動画面が表示されたのちに……
ビジュアルシェル「VS.X」が起動する

 最後にお遊びとしてWindows搭載ノートPCにX68000 Z モニターを接続してみた。これはブラウン管風のモニターだが、デバイスとしては1,024×768ドット、60Hzの液晶モニターだ。ノートPCに接続すれば、普通のモニターと同様にそのまま利用できる。ただしUSB Type-C端子は電源供給専用なので、映像信号は送れない。映像を入力するためにはHDMI端子経由で接続する必要がある。

 それにしてもサイズ感がなんとも可愛らしい。そしてX68000のモニターと同じフォルムなのだから、元ユーザーとしてはたまらない。今回は「サイバーパンク2077」をプレイしてみたが、メールソフトやSNSのタイムラインなどを表示するサブモニターとして非常に重宝しそうだ。現時点ではAmazon瑞起ショップでは購入できないが、単体で販売されることを強く期待したい。

X68000 Z モニターにはHDMI端子が用意されているので、汎用的な外部モニターとして利用できる
モニター名は「X68KZM01」。解像度は1,024×768ドット、リフレッシュレートは60Hzだ
「サイバーパンク2077」を起動してみた。1,024×768ドットでも特にレイアウトが崩れることなくプレイできた(全編での正常な動作を保証するものではない)
初代X68000ユーザーとしては、EARLY ACCESS KITのほうに愛着を感じるのは正直なところだ

ZUIKIがロードマップの先を描き、現実化できるように、個人的にも応援したい

 前述の通り、X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODELは9月28日に一般ユーザー向けに発売される。人気ゲーム「ジェノサイド」と「ファランクス」がセットになった「ZOOMパックI」が8月8日に発売され、4本のゲームがセットになった「EXACT PACK」が今冬にリリースされるなど少しずつゲームソフトも増えてきている。個人的には「源平討魔伝」や「ドラゴンスピリット」が収録された「ナムコパック」が発売されることを期待している。

 今回のX68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODELは、X68000 ZロードマップのPhase 3。ロードマップには、「ゲームコレクションVol.1やVol.2の販売など」、「もしも、XVIモデルやX68030の『次』があったなら・・・」という文言も記載されている。今後もZUIKIがロードマップの先を描き、現実化できるように、個人的にも応援していきたいと思う。